第16話 首を9つ持つ毒竜
ディザはダンジョンの地面を貫き、下の階層に直接行くことができる。
おそらく、特殊能力などではなくただのゴリ押しだ。
「おっと! ちょっとかてぇな!」
何回か地面を貫いた後、ディザでさえ少し硬いと感じる層があった。
だが、所詮は少し硬い程度なのでそれすらも貫く。
そして、おそらく一番下の層まで来たディザは優秀そうなカメラマン候補を発見した。
「ヒュッ!?」
「お前、カメラマンをやってみる気はないか?」
9本の首を持つ、紫色の竜に対して早速スカウトを申し込む。
なぜ、カメラマンとして優秀だと感じたのか?
「お前首沢山あるから、カメラとか沢山持てるだろ!」
といった理由であった。
「ヒュ……ッ!」
周辺にモンスターはいない。
このモンスターが全て倒してしまったのか、それとも滅多にモンスターが来ないのか、はたまた両方か。
それもあって、かなり警戒している様子だ。
「まだ行ったことのない場所、一緒に行こうぜ!」
「ヒュッ!」
9本の頭から、紫色の液体が噴射され、それがディザの体中にヒットする。
「何しやるんだ! 汚ねーな! 食い過ぎで吐いちまったのか!?」
「ヒュッ!?」
9つの首を持つ竜は、後ろに下がり、先程以上に怯えているかのように構える。
「とにかく、今回は許してやるから行くぞ!」
「ヒューッ!?」
ディザは龍を抱え込むと、今度はエミの元へ天井を何枚も貫いて戻る。
◇
「ディザさんお帰り! 早かったね! ……って、何そのモンスター!?」
エミはディザが抱えているモンスターを見て、驚きのあまり大きめの声が出てしまう。
「ヒュ!? ヒュ!?」
辺りをキョロキョロと見渡す竜。
あの場でずっと過ごして来たので、人間が珍しいのだろう。
「こいつカメラマンに丁度良くないか!?」
「えっと……うーん」
このモンスターは、多分エミも初めて知るモンスターだ。
こちらに攻撃をして来ないか? など、心配な点もあった。
「そのモンスター、攻撃して来ない? 大丈夫?」
「どうだろうな?」
ディザは解放した竜の方へ首を向けた。
「まさかとは思うが、攻撃したりしないよな? 俺達友達だよな?」
一体いつから友達になったというのだろうか?
「お、俺達友達……だよな?」
もしも友達でなく、敵であるというのならば、倒さなくてはいけない。
そう考えると、ディザは少し心が痛んだ。
「ヒュッ!」
9つの首が上下に激しく動いた。
どうやら、人間の言葉は話せないが、なんとなく言っていることは理解できるようだ。
「よっしゃあ! 実は俺、モンスターの友達いなくてよ! 仲良くしような!」
「ヒュ!」
こうして、竜はディザの友達となった。
実際どう思っているかは分からないが、ディザ的には友達になったつもりである。
「じゃあ、名前を決めないとね!」
「そうだな! 呼び名がないのは不便だし、何よりあった方がいいだろ!」
エミは「う~ん」と頭を悩ませると、竜をビシッと指差し命名をする。
「ヒユさんで!」
ヒュという名前から取った、シンプルな名前である。
「おお! 良かったじゃねぇか!」
と、ここでエミは確認をする。
「ヒユさん、私と一緒に来る?」
「どういう意味だ?」
ディザはエミに対して問いかける。
「いやだって、友達になることと私と契約するかはまた別な話でしょ?」
「確かにそうだな!」
ディザの場合はカードに封印された状態でも話せるが、他のモンスターがどうなのかは分からない。
となると、かなり寂しい思いをさせる可能性も出てくる。
「よしっ! じゃあ、このダンジョン限定の仲間ってことにしようぜ!」
「今の所はその方がいいかもね。よろしく! ヒユさん!」
「ヒュ!」
ヒユは笑顔で名前を呼ぶエミに対し、元気に答えたのであった。
エタってないので、今後ともよろしくお願いします!