第10話 同年代くらいの金髪お嬢様に絡まれる、待っていたのはダンジョン料理対決
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ダンジョンの一角で、エミとディザは焼肉をしていた。
肉を食べ終え、片づけをしようと立ち上がると、誰かに話しかけられる。
「あなたも料理人かしら?」
エミが振り向くと、そこにいたのはエミと同年代くらいの少女であった。
肩まで伸びた金髪ヘアをしており、喋り方や雰囲気からは、お嬢様っぽさを感じられる。
防具は布タイプのものを装備しており、ただでさえ高そうなその防具にはワンポイントとして、宝石が取り付けられている。
「え?」
突然のことで驚いたエミだが、得意げな表情を浮かべる彼女に対し、すぐに返事をする。
「料理人っていうよりも、趣味で料理をやっているみたいな?」
「ふぅーん。ま、たしかにダンジョンではそういう人多いわよね。あなたもその1人って所かしら」
「そうですわね!」
エミは対抗して、お嬢様っぽい口調で返答した。
「素人って所かしら?」
「そうですわね。素人ですわね」
「馬鹿にしてるのかしら?」
「そういう訳じゃないけど、今日は家でこれからアイス食べるからじゃあね!」
と言ってその場を去ろうとするエミだが、その途端彼女の様子が一変する。
「ちょちょちょちょちょちょあーっ!? 私のことを聞かないんですの!?」
「えっと、じゃあ……」
彼女は、どうやら自分に興味を持って貰いたかったらしい。
なんとなくそれに気が付いたエミは、聞いてみる。
「お嬢様って料理人なの?」
「そうですわ! このダンジョンに眠る食材の数々を料理する、ダンジョン料理人ですわ! 折角だから私の料理をご馳走しますわ!」
お嬢様はアイテムボックスから、シチューとパンを取り出し、また片付けが終わっていない机の上に置く。
「いい匂い! 食べていいの!?」
「ええ、私の実力を思い知るがいいわ!」
と言われたので、遠慮せずにパンにシチューをひたし、それに口に運ぶ。
「凄いクリーミー!」
「でしょう? 高級な食材を使っていますからね!」
物凄く嬉しそうな表情をしたお嬢様。
そして、そんな2人を後ろの方で見ていたディザが前面に、ズイッと出てきた。
「俺も食っていいか?」
「私はいいけど、お嬢様がいいっていうかどうかだね」
「え? モンスターが喋った!?」
珍しい状況に驚くお嬢様だったが、そんな彼女にエミは軽くディザの説明をする。
「ってことで、安全だから気にしないで!」
「わ、分かったわ! 食べていいわよ!」
それを聞いたディザは、残ったパンをシチューにひたし、それを口に放り込む。
そして残ったシチューも全て飲む。
「ず、随分とワイルドですわね! で、美味しかったの?」
「ああ! 肉が物足りなかったがな!」
ディザは10年間同じダンジョンでモンスターをそのまま食べていたので、どんな料理でも美味しく食べることができる。
とは言っても、このお嬢様のシチューはエミが食べても、レベルが高いと感じるものであったのだが。
「ごちそうさま! 凄く美味しかったよ!」
「うんうん! で、それで提案なんですけど、私と勝負しなさい!」
「ええ!? どうして!?」
なぜ趣味で肉を焼いていただけの探索者に、勝負を挑んだのだろうか?
「さっきのお肉の匂い、悔しいけどかなりのものを感じたわ! おそらく味付けも特別なものなのでしょうね!」
スーパーで売っていた焼肉のタレである。
「とにかく、何かを感じたのよ! 勝負しなさい!」
「勝負って、料理だよね? 私の料理ってまだそんなにレベル高くないよ?」
エミはゼリーに砂糖をかけたりするだけでも料理と言い張っており、自信満々であった。
だから別に自分の料理に自信がない訳ではないのだが、それでも先程のシチューとはレベルの差を感じてしまったのである。
「いいから勝負しなさい! 私には勝負する友達がいないのよ!」
と自信満々に言い放って来たので、エミは勝負を受けることにした。
その後勝負の日時を決め、彼女はその場を去って行った。
◇
料理対決の日は今日から3日後になる。
彼女が去った後、後片付けを終えた2人は作戦会議をする。
「お前、勝てるのか? 確かにお前の料理の腕も中々だが、向こうもかなりのものだぞ?」
ディザはゼリーに砂糖をかけただけでも感激していたので、エミの料理もレベルが高いものだと思っている。
「負けたら、アイスクリーム工場で3日間働くことになるんだろ? 大丈夫か?」
ディザの言う通り、負けたらアイスクリーム工場で3日間働くことを条件とされてしまった。
勿論形としては職場体験的なものだが、給料が出ないのでタダ働きのようなものだ。
「貴重な夏休みの3日は大きいからね……!」
エミはゴクリと唾を飲み込んだ。
「で、勝機はあるのか?」
「一応ある……かな? ディザさんの活躍次第な作戦なんだけど」
果たして、その作戦とは?
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