86話 探索隊
【 12歳 夏 】
ヴァレニーの曲を聴き、そのまま湖畔で寛ぐ。
周りの危険性も想定より低いし中々に良い場所だと思う。この世界は陸上の生物がやたらと強い割りに、水生生物は余り強くないので湖周辺なら後ろと上だけに注意したら良いのだ。
「でもまだ連絡来ないの? あれから結構経ってるんじゃない?」
と、ルティ姉。ドワーフの領地の回答についてだ。
「こうやって延びてる場合は、決まってなくて現状把握中だと思うわよ?」
と、こっちはロァヴェルナさん。
「まぁそうでしょうね。後で何かが見つかると揉めるでしょうから、多少時間掛かっても最初にしっかり確認して貰ってから正式に回答を貰った方がこちらとしても安心できます」
「ウチの時も同じ感じだったのかしら?」
「いえ、エルフの人たちとはあの時点で国交も無いですから、回答が早くて助かりました」
ロァヴェルナさんはいきなり村まで招待してくれたからな。
あの場合だと俺の方が状況の把握をできて助かった。
「こっちはここの南が手付かずみたいですし、海に行けるなら通路を作りたいですね。もちろん既にあるなら交易の交渉をするだけですけど」
「無いわよ? 多分。昔、泳いで行った人居るもの」
「「「えっ 居るの? 誰?」「初めて聞いた!」崖から降りたんですか?」
「いえ。意図して降りたんじゃなくて…… その…… 落ちたのよ」
「大丈夫だったんですか?」
相当高かったろ……
「結構な怪我をしたみたいだけど、そのまま西に泳いで登れず、結局岬を越えて東に泳いで帰って来たわね」
いや、待て! 怪我したまま泳いだの?!
「いやイヤいや…… 怪我したまま、自力で? 帰りは山越えとかですか?」
いや違う! そうじゃない! 下って浅瀬じゃなかったか?! 怪我で済んだの?!
「まぁ、そうなんだけど。その時はまだ 7村が山の先に残ってたから、そっちで治療は受けたわよ?」
生きてるだけでも凄い気がするんだが……
「へぇ じゃ、ウチらが生まれるより前なんだ」
「まだ今の里が無くて、西の山との間に仮拠点が在った頃だったわ」
「じゃあ、400年くらい前とかぁ?」
「そんな訳ないじゃん! その頃にはもうみんな移り終わってるってばっ」
「そうね。樹を見つけたのが 700年くらい前だから、650年…… 600年前ってところじゃなかったかしら?」
エルフ 3人の会話を聞いてるが、昔過ぎるわ。そんなちょっと昔って感じじゃないだろ。
「 7村ってその頃もあったの?」
「今の里の食糧が安定するまでヌィグラインが残って居たもの」
「「ふ~ん」」
「そうなんですね。話戻しますけど、登れない…… 降りられないって事なんですか? ここの南って」
「里の南と同じ感じの崖になってるはずよ。登れる場所が無かったって言ってたし」
「そうか残念~」
◆
それから数日後、父がドワーフ領へ行く事が決まった。
ドワーフ領と交渉が行われていたのだが、どうもあの地域の共同開発を提案されたっぽい。この南西の森に無関心で放置してたのだろうと思っていたが微妙に異なり、あの地域周辺は数百年前に一度火山の噴火で溶岩に飲まれてたらしく、当初はただの岩場だったそうなのだ。ドワーフは噴火後にやってきて住み始めたのだが、その時は当然森なんて無いし、次の噴火がいつか判らないので自然が回復するまで放置していたらしい。
無っ茶苦茶…… なぜ噴火してから来たんだよ……
ドワーフたちもエルフ程ではないが寿命が長く 500から 700年近く生きるそうで、移住当時の人もまだ存命らしく話を聞きながら色々と交渉をしているそうだ。意外とウチとの取り引き量が多いらしく関係は良好で、侵略とかを警戒してる訳でも無く純粋に新しい道の開通に前向きに事前調査を行なっていたとの事だった。
この辺の原生林みたいな森より年上が居るんだぜ?
色々と判断に困るよな。見守ってましたって言われたらどうにもならんわ。
ドワーフについて補足すると、この種族はこの国には所属をしていならしい。そして定期的に移住していて事前に王家と交渉し居住地を決めてるそうだ。ただ、余り頻繁でも無い上に基本的に人間が住まないような山の奥で暮らすので勢力圏で争うよう事も無く、しかもこの国の建国時の街作りや生活に必要な魔道具の供給など色々と支援を受けた事もあったそうで、王家としてはかなり友好寄りな独立した種族って事で優遇しているそうだ。
またドワーフから人間の集落へ近寄る事は無いらしい。集落は点在しているそうだが人間側から交易目的で伺う場合、交易ができる集落はあの森の北西側にある低めの山の中腹辺りだけなんだとか。
「噴火って 400年前くらいのようですよ? 何か覚えてますか?」
「噴火って?」
そうか…… その説明からなのか。
説明したところエルフ 3人の反応はバラバラ。
「あったわぁ「有ったかしら?」」「あたしはまだ生まれてませ~ん」
「 …… 」
「あったよ! ロァヴェルナが何で覚えてないのさっ」
「どんな事だったかしら?」
「ほら、西ですっごい音がして、すっごい長い間曇りだったっ」
「あ~! 思い出したっ あったわね、山に登って雲を押し返した時のっ」
何やっとんじゃ…… いや、待てっ もしかして王都に届いた灰ってのはこいつらの所為か??
「避難とかしなかったんですか?」
「何故? 精霊樹持って行けないし選択肢無いじゃない」
「うんうん」
「こ…… そうですかね」
優先順位と対応できてしまう実力が人間と違いすぎる。
ルティ姉は当時 100歳程で結構しっかり覚えていた。それに対しロァヴェルナさんは誰かの魔法の失敗だろう程度の認識で、迷惑な事があったと言う記憶のようだ。山の噴火はそれが初で、以降は無く、噴火と言う現象自体の知識すら無いようだった。ただ魔法の失敗って考えてた辺り、似たような事をどこかで経験していてもおかしくは無いんじゃないかとは思った。聞かないけどな。
その後、父と兄がドワーフ領へ要望や予定の最終交渉で伺う事となったので、念のためレイとルンを護衛に加えて貰ったけど特に何事も無く帰ってこれたようだった。
そして交渉から帰って来た父からドワーフの状況を教えて貰ったのだが、まず手付かずな理由は農業などを一切しない上、熱源として薪などの燃焼を利用していない事が挙げられた。彼らって洞窟内で生活しているので燃焼行為は酸欠になるのだ。当たり前だな…… なのでこちらから薪拾いで入りたいなら好きにして良いとの事らしい。
次に道の増設などの共同開発についてだが、最近のドワーフ領では当家の食肉とエルフ領の調味料や道具が主な輸入品らしく輸送時間の短縮やコスト削減には賛同なんだとか。こちらとしても森が生い茂る前の地形の情報提供は大いに助かる。
「でだ、ルァニエス。調査に行ってくれ」
父からの突然の要望……
「はい? 私が?」
「ああ。地図の作成も頼みたいんだ」
ああぁ しょうがないか……
誰かに引き継ぎたいんだが、測量って結構高度な事をしているから色々な基礎知識が無い人には教える事すらできない。なんせ、こちらでは等高線とかの概念すら無いしな。
※ 等高線 地図上の同じ高さを繋いだ線
ちなみにエルフに地図を説明したら、木に 1m毎にメモリを書き魔法で水平を出しつつ遠くの木に光を当てて測り、同じ高さに印を付けて測量をしだした。作業が速いのなんの……
「わかりました。行ってきます」
一度ロァヴェルナさんたちとはお別れかな……
何て考えてたら急に扉が開いた。
「はいっっ!! あたしも行くっ!」
「待ちなさいっ ヴァレニー! ……えぇと。 ……ふぅ 良いわ、私も付き合う事にする」
「もちろん、わたしは行かないっ だから、何か美味しい料理や食材見つけたら教えてね?」
自由人とその保護者も同行する事になった。
ロァヴェルナさんの火山の知識は煙が出る山、までです。理由など考えたこともありません。実際の灰は雲の高さとは限らないので何かをしたと思われます。
旧 7村からの秋の食料の輸送で『山越え』さんは見つかってしまいました。
連続投稿はしませんがゆくっり投稿の方向で。




