85話 マナトリカル 6弦ギター
【 12歳 夏 】
南西側の山の先の調査をメイド隊にお願いしたのだが、魔物は多いものの子爵領とさして変わらない強さとの事だった。やはり精霊樹周辺だけが強くて、離れれば影響は無いようだ。
人は住んで無さそうだが念のために両親や商人に話を聞いてみたところ、どこかの領地って訳では無いものの、森を越えた先の山の斜面にドワーフたちが住んでいるって話だった。火山に住んでるのかと疑問に思い確認したところ活火山は更に奥にあるらしく、別に熱に強いとか火山を利用しているわけでも無い様だ。
まぁ、俺がドワーフって訳してるだけでこちらでは別の名前だし、まだ見た事も無いんだけどな。髭もじゃのムキムキな容姿に金属加工が上手で、山を掘って内部で暮らしてると聞けばそう訳したくもなるってもんだろ。
彼らの主な産業は食事用道具と一部の魔道具の製造らしい。
武器じゃないんだわ。ナイフやフォークといった道具が主で、それ以外は金属のインゴットで販売しているそうだ。インゴットは俺も商人経由で結構買っているらしく、人間側で精製した物は魔力量や技術の関係で品質が悪く余程の事が無ければ取り扱わないそうだ。
逆に王都では人口の割に魔力を使う仕事が少ない為、そう言った所から安く仕入れ大人数で再精製をするんだとか。そして武器を作ってるのは実は王都らしい。
木が伐れなく石炭なども無い為、溶かしての精製ができず、その結果の魔法頼りなのだが個人の魔力量では量が採れない。その為、魔力の消費に余裕があり人口の多い王都で精製、もしくは魔石、魔結晶にマナを込めて鉱山へ輸出する方法を取っているんだとか。何とも普通の物語りを裏切ってくれる。
そしてこのマナ充填の装置を製造販売してるのがドワーフらしい。平和主義なのか? どうにも武具、兵器より日常品寄りな気がする。
取り敢えずは商人が取り引きをした事があるのだから、ドワーフに領地の認識や開発計画なんかを聞いて貰う事にした。今の南西側は道すら無いし、別に道を通しても近くなるわけですら無い。北西周りで移動した方が人里を通るので断然便利なんだわ。もちろんドワーフが森の中にも居住地でもあるなら近くなる可能性もあるし、湖と水路を使えばもっと移動が楽になる可能性もある。山とはかなりの距離があるし、大丈夫だとは思うが回答待ちかなぁ
◆
連絡が来るまで湖までの移動経路の構築と生物調査を行なった。ヴァレニーは大体俺にくっついて行動する為、伝えない訳にもいかず前の人たちには内緒にして欲しいと話してある。ドワーフの回答次第では湖を見て終わりって事もあり得るからな。
西の森はエルフの森とも違い樹海って感じの様相だった。樹の高さと密度が全く異なるんだ。気にしてなかったがエルフの森では適度に間引きされていたのかもしれない。こちらの森ではエルフの森より樹の高さが低い代わりに樹と樹の間が狭い上、朽ち果てた樹も散見できる。
「湿度も高いし随分生えてる物が違うね。また森歩きの人に来てもらった方が良いかな? あ~、きのことかも危ないかもしれないから触らないでね」
「「「はいっ」」」
「は~い。何かあっちの森より過ごしやすい温度だね」
ヴァレニーはそう言うが、視界が悪すぎて快適からは程遠い。
「その分暗いし、足元がじっとりとしてるけどねぇ」
ナメクジとかが出たりするんだろうか……
完全に密林、落ち葉も凄い量だ。ウチの領民ならよろこんで拾いそうな枝とかもかなり落ちている。もちろん領民は全然戦えないのでこの辺の動物とかにも負けるだろうし難しいだろうな。
現状の調査は進めて行く。これは万が一…… 百…… 五十に一くらいだが、魔物や強めの肉食獣、ヤバ気な鳥とかが子爵領に来る可能性があるのでその調査だ。武装や人員の調整が必要になるからな、絶対要る! この世界は油断しちゃダメだからっ
「エルフの森に比べると何とも可愛い感じですね。鳴き声も安心できる……」
これはルンの感想。
「油断するなよ~」
「でも、あっちのムカデとかと比べると、コレなんかもう可愛いで済みそうです」
今度はルセアである。
「それと比較するな。ほら、来るぞ!」
「はいっ」
とは言うもののべしっっと一発で沈むイタチっぽい何か。
こんな表現しかできないが一応体高 2mを超える。だが、メイド隊が持ってる装備は馬鹿デカい鶴嘴! そんなんで蟀谷を打貫かれたら絶対死ぬっつーの。後ろに立ってて巻き込まれないかの方が心配だわ。
さっそく解体され内臓の分別に入る。この子ら、ホント肉を無駄にしない。初めて見た獲物でも内臓を見る目は厳しく専門家のそれ。戦闘中より真面目に吟味してるし、食肉業者かよお前ら!
「そろそろ昼だし安全そうなのは食べちゃおーぜ」
働いてないヴァレニーが言い出す。もちろん俺も貢献してないがな。
「では準備しますね」
ウチのできたメイド達は当然の様に対応。素晴らしいね。俺も地面に土台を用意し貢献しておく。それと周りに視界を遮らない程度の間隔で長い杭を多めに打って不意打ちを防ぐ壁替わりも用意だ。
「今日は昨日とは別のもやしを使ってみようか」
「「はい」」
食生活だけは充実していってるなぁ
◆
湖周辺をぐるりと探索して数日、どうやらこの湖は水の出口となる川の無い内陸湖のようだった。湖の形状は複雑で波は少なく、砂浜のような地形は見当たらない。多分だが火山か何かで出来た窪みに水が溜まって出来たものだと思われる。その所為か陸地から急激に深くなっており底が全く見えなかった。
「深そうですねぇ」
「水は綺麗だよね。潜ってみようか?」
「ドワーフの回答を貰ってからにしましょうよ。それと見ただけじゃ水は安全か判りませんよ?」
「大丈夫じゃない? 魚居るみたいだよ?」
ヴァレニーはそう言うが、俺には全然見えないんだが……
未だに知覚強化の類の熟練度は全然追いつけそうにない。
「誰かが放した可能性がありますね。やっぱり回答待ちかなぁ」
「折角来たのに残念ねぇ」
今日はロァヴェルナさんとルティ姉も来ている。湖に近づける場所が限られていたんだが、やった見つけたので涼しくて過ごし易いって言って誘ってみたのだ。
季節は真夏ではあるが木々が直射日光を遮ってるし、水分を若干含んだ風が心地良い。
「じゃ~ 一曲弾こうか!」
「ん~ 静かなのでね。絶対に」
「解かってるって~」
そう言ってヴァレニーは収納魔法からギターを取り出す。
弾いてるところを何度か見てるが、今回は初めて見るギターで 6弦の物だった。形状も今まで見た物とかなり違う。
「新しいギター?」
「違うんだな~ 取って置きなギタ~」
静かな感じの演奏が始まるが、確かに凄い! エレクトリックギターの記憶は無いから想像でしか無いが、こっちの世界製のアコースティックギターよりそっちに近そうだ。
音が生の音じゃなく加工されてる感じだ。もちろんケーブルも無ければスピーカーも無く、目の前のギターから鳴っている。どうなってるんだ?
音楽も楽器も素晴らしい! 普通に感動した。ホント凄い。
「凄い素敵な演奏と楽器ですね。でもどう言う事です? 魔法? 魔道具?」
「凄いでしょ~」
「凄いです! 私にも作れますか?」
「「「あ~」うん」止めた方が良いかな……」
エルフの3人が目を逸らす。と言うか、言い難そう。
「危険な物なんですか?」
「いや、危険では無いよ。これは」
「まぁ、後で調べられても困るから言っちゃうけど、そのギターはヴァレニーの魔石が使われてるのよ」
「ん??」
どうやって? 何が??
「原理は知らないけど、ヴァレニーのお腹の中の魔石と響き合ってるって言ったら良いのかな?」
「待ったっ! 魔石って取り出せる物なんですか?!」
「まぁ 一応? しばらく魔法の起動が不安定にはなるけどね。魔力量も激減するし」
「えぇええ~ どう反応したら良いものか……」
「ちょっとルァニ。聞いとくんだよっ! ヴァレニーのやらかしの 1番か 2番だから」
話を聞くと、ヴァレニーは父親であるヴァリアルトさんのギターを見せて貰い、そんな技術があると教わったらしいのだ。しばらく魔法が使えないとか色々注意も受け、やるべきじゃ無いがどうしても欲しかったんだと彼は自慢げに娘に見せたらしい。
で、ヴァレニーはその夜、自分で魔石を取り出したらしい。
エルフの村、騒然! 血の匂いで気付いた母親がヴァレニーを見つけ里中に緊急連絡! 治療班の大半で救命作業を行なったそうだ。
「普通に考えて自分じゃやらないでしょ。見つかった時は意識は無いし、血の海だし……」
この治療辺りからロァヴェルナさんとヴァレニーの付き合いがあるそうだ。
「いや、あれはおとーさんの説明が悪いよ……」
「いえ、ヴァリアルトだって自分ですると思わないでしょ」
「いや、それは治療自体ができないからだと思ってさ。って、前も言ったじゃんっ!」
「ルァニエスに教えとかないと、やりそうだも「やりませんよっ!」の、聞かせておかないとね」
やらないからっ やだよっ そんなの。
原理としては自分と楽器を共鳴させる、アコースティック寄りの魔道具? である。いや、分類すら困る道具なんだよ。アコースティックギターの真ん中に穴があるじゃん? あれの先にヴァレニーが繋がってるような状況なんだぜ? どうなってんだよ。動力だし、アンプだし、スピーカーなんだ。
腹筋で音量調節できる楽器って何よ?!
エルフの音楽界隈を嘗めてたわ~
ファンタジー楽器が怖すぎです。誰だよ、最初にやった奴! って感じ。
もちろん追加で魔法操作が必要です。
音をマナに変換してないのでマナトリックじゃなくマナトリカルに~
Tは何なんだって話ですので暫定です。名称は困るけど、前提としてマナが素粒子でマナトロンなる物質を観測する必要があるかもなんだよね、あっちの世界で。流石に物語中でやる予定は無いですが、近い事はします。
あちらでは当然別の名称ですのでそう言った悩みはありません。
全く読まれず。少しストックを貯めるのとタイトル、あらすじの調整を検討をします。
検証、工夫、実験、実験。




