79話 お給仕戦隊 メイドレンジャー!
【 12歳 春 】
秋口にエルフの里で収穫した物の中に変な作物があった。豆類と異なり茎ごと収穫し束にして倉庫に保管されていたのだ。結果的に作物は知っている物だったのだが莢に入ってる状態では予想もできず、乾燥が終了し貯蔵時になって漸く胡麻だと判った。
一粒食べてみたんだけど、何と言うか只管に硬いっっ
見た目は少し大きめな白胡麻なのに食品に使うにしては硬すぎで、調味料どころか口に入れる食品とは思えない程に異物状態!
植物油は作ってないって聞いてたが胡麻油用の可能性もあるのかな?
「ルティ姉。それ、そうやって食べるんだ…… この前食べたら、硬いし味しないしで困ったよ」
「あははっ そのままじゃ食べれないね~」
何に使うのかと思ったらスナック菓子用で、ポップコーンのような爆裂品種だった。石製のボウルを二つ合わせた容器に入れ、下側を加熱すると小さく弾けた音が始まる。
道理で硬い訳だ。乾燥したコーンみたいな物じゃ食べれんわ。出来上がった小さなポップコーンを塩と脂でくっつけて少し大きな塊にしてくれた。
「はい。どーぞ」
「ありがと~」
うん。小さいが食感はポップコーンだな……
もう少し大きいと良いのだけど、何か良い物無いかな?
この後、ルティ姉と調理実験し生まれたのは想像とは異なるゴマ団子。ある程度ゴマが爆裂した後のボウルに団子を投入し振って小さなポップコーンを纏わせた感じのお菓子。上手く全体に付かなくて失敗気味だが、手に付かないので良しとした。
そしてその実験の末に生まれたのが、ブリトーのように筒状に包んだお菓子だった。辛めの味に調理されている為、当初の予定とは随分違う。食べやすくなったし、サクサク感は変わってないけどシンプルな塩味が良かったな~
「塩味が良いなら、コレで良いじゃんっ」
塩振った揚げ玉を出された……
それが定番化してるのかよ。
合ってはいるけどさ~
……こう言う物も探してみるかな? 玄米も爆裂する物があったはずだし、スナック菓子の無いこの世界なら需要あるんじゃね?
取り敢えず、焼いたら弾ける作物が無いか商人経由で調べて貰う事にした。
余り食糧事情が良くないこの世界では簡単に食べれない物など作って無いだろうが、いっそ野生の品種で食べれない物が食用になりえる。探すのは無駄には成らないはずだ。たぶんな。
それと、胡麻についても商人に聞いたのだが、この種はエルフの独自の品種改良だった。油脂が少なく、少し大きいらしい。ただ人間側にある胡麻も食用で、食用油にはほとんどしていないそうだ。どうも椿のような採油に向いた種が採れる樹木が複数あってそれぞれが、更に品種改良されて行ってるそうだ。
「そう言うのって買えるのかな?」
「良い品種は無理でしょうね。ただ、新しい品種ができて入れ替わりで古い方が流通する事があるそうですよ」
「へ~」
その後、爆裂する作物がいくつか届いた……
「甘ぁぁ」
周囲に漂う強烈な甘い匂い。果物じゃねーか。
依頼内容を確認する。
……済まないっっ 説明不足だったわ。
爆裂胡麻と欲しい特徴が書かれた解説付きの依頼書を再発行した。
普通のポップコーンは無いんだろうか……
◆
新たに加わったメイド達の装備を作りつつ、エルフの森の子爵領寄りで訓練を行なって行く事にした。こちらの世界は冬眠する魔物や動物が多いので空腹で目覚めてくる初春は当然危険で、子爵領に比べると大きな個体が多くかなり危険なんだ。なので訓練は精霊樹から離れた場所で行なう。国境付近だとほぼ子爵領と変わらない大きさだし、知ってる獲物しかでないからね。
前世に比べ何でこんなに生き物が大きいのかと言えば、多分だが冬眠ができるからだと思う。虫にしても魔石を持つ種類は一年で世代交代しないんだよ。でもって、生態系も 2系統ある。魔石を持たない虫は匂いが違うらしく、魔石を持つ虫や魔物に襲われる事がないんだ。両方を食べるのは人間やエルフくらいなんだよね。
新人の 3人に話を聞くと最初から俺のところに来る気だったらしく、かなり早めに領兵の訓練や母との訓練にも参加していたそうだ。
道理で一年目とは思えない程に強いわけだよ……
レイを俺の護衛に残し、残り 3人にそれぞれ新人を付け二人一組を 3チームで狩りの訓練を行なった。領兵と訓練していただけあり去年の 4人の初期よりも集団戦に慣れている感じがする。
試しに少し組み合わせを変えてみたが、問題なく対応できるようだった。ただ、集団戦の慣れと言うよりは指示を受けたり合わせるのが上手なようで、新人 3人だけだと途端に動けなくなった。短期間で即戦力、且つ自己防衛できるよう、補佐役に特化して訓練させられたそうだ。
しばらくこの子らの適正の確認と装備の最適化を繰り返して行ったんだが、まぁ父たちの訓練の影響もあり複数の長柄武器を好んで扱うようになった。収納魔法が使えるので荷物になるのは気にならないしな。戦闘中に上手に入れ替えられるかの訓練は必要になるが、狩る対象の種類が多すぎるので補佐役としてはそれぞれに対応できるのは利点だろう。
若干習熟度的にどうなのかとは思ったので、長柄武器の長さと重心を統一することにした。
ただ、要望を受け作った装備は半月型の鋸と鶴嘴を組み合わせた武器、三又の槍、両刃の大鍬、更には両手で使うデカいペンチという構成で、完全に戦闘系な一次産業従事者!
多方向モニター付きのマスクの色に合わせ、メイドの積層エプロンの色も揃えた所為か見た目がほぼ戦隊モノになっており、その内合体技を使い始めないか密かに心配している。ただ、獲物に群がる姿は屠殺業者か何かにしか見えず、血と脂塗れのエプロン姿が実に恐ろしい。確実に良い子も悪い子も、ナマハーゲすら逃げるわ。
装備を渡し扱い慣れて来た今、狩りの収穫量が格段増えてきている。狩っては解体、一部はその場で食べるなんてのを繰り返した結果、一気に習熟度があがったのだ。狩るのもだが、お肉大好きな新人たちは解体が凄ーーく上手い。
彼女らがナイフと各種魔法を組み合わせて解体すると、焼き魚を食べた後みたいに頭と背骨しか残らないんだ。
……やり過ぎじゃないかい?
まぁその後、俺が残った骨からリンやカルシウムを抜くんだがな。
彼女たちはかなり綺麗に骨から身を剥がすし、内臓もまとめて回収。食べれる物を分け、残りは堆肥の材料に使うそうだ。俺の記憶から石の密封詰めを見つけた為、脱泡の上で加熱し寄生虫含め滅殺しドラム缶状態で子爵領へ輸送している。
色々と怖いっす。嫌われないよう気をつけよう……
解体後にその場で焼肉を始めたりするので各部の肉は一通り食べたのだが、食生活が豊かになってきてメイドたちの好みにも差が出来て来ており、好きな部位も様々だ。
「若様、こちらをどうぞ」
「ありがとう」
最初の宣言通りのなかなかの献身振りで、なるべく美味しい部分を丁寧に調理してくれる。ちなみに最初に色仕掛け? で失敗した彼女は肋骨内側の肉が好きだったりする。それと元々は頭までは解体していなかったのだが、舌はどうなってるのか気になって解体して貰ってからは何故か俺に舌が献上され、ほほ肉はメイド達にって流れになってしまった。偶にで良いんだけどな~
もちろん肉は熟成させた方が美味しいので、現地で食べるのは骨周辺の分離させ難い部分である。現地では一口大に刻まれた肉と森に生えてる食べれる野草の野菜炒めが主なのだ。
この子ら、肉ばっか食べてるのに太る気配ないなぁ
この状態で焼うどんとかに変えて炭水化物増やすと運動しない俺だけが太ったりしないだろうか? 野菜を…… もやしでも育てようかなぁ
胡麻の味がしないは噛み切れないので外側の話です。
噛み切れさえすれば風味はあります。
あちらの世界には皮とは思えないほど頑丈な果物が存在するのです。
もちろん中身は果肉なのでポップコーンの様にはなりません。
大型のプライヤーは獲物の解体時に使う物でしたが、後日それを見たエルフの依頼により納品。プライヤーで戦うエルフが出現し新たな武芸となりましたとさ……




