77話 大浴場
明けましておめでとうございます!
【 11歳 冬 】
最近、エルフ領に建設した俺の住居が乗っ取られかけている。
原因はお風呂である……
そんなにお風呂は重要か? 今まで無かったんだろ?
「 …… 」
「冬の景色を見ながらってのがまた良いよね~」
屋上にお風呂を付けたら、ロァヴェルナさんが友達を連れてきて流行らせてしまった…… ロァヴェルナさんの部屋の真上って言うのも理由の一つだろう。ほぼ毎日来ているし。そして、今日はルティ姉も一緒だった。
「何でサウナを屋上にするって発想が出なかったんだろ~」
「温度が逃げるから窓必要だし、プールも上にしないといけないじゃない」
「そっか~ そーよね~」
エルフの里でも昔の子爵家同様、湯舟は使って無かったらしい。ただサウナはあるし、プールもあるんだよ。もちろん洗浄用の石鹸もあるし、用途によって魔法でピンポイントに水蒸気生成や乾燥なども使える。皮膚の洗浄はそれで問題無かった。なので一番洗うのに困るのが髪だった。この影響でエルフは男女共に、髪が結構短いんだ。本人たちは伸ばす事を考えた事すら無かった。音楽家だけが例外なのさ。
どちらかと言うと綺麗に切る魔法が発展してるくらいだもの。
ほんと面白いよね。真面目に取り組む彼らは、最初の一歩目が違ったのさ。その所為でエルフの里にはリンスとかコンディショナーにあたる物が生まれていなかった。と言うのも、これは揚げ物が無かった理由にも繋がっている。動物性の脂が大量に獲れる事で、植物性の油の製造がされなかったんだ。もし移住前に需要ができて重要視していたら絶対それ用の作物の導入をしていたんだろうし、実に惜しいと思う。
そして人間側だが、子爵領では動物由来の油が多いのだが王国全体としては植物油が主流だ。理由は単純で、どちらが酸化せず、より長持ちするかと言えば植物油のほうなんだよ。人口の多い王都での需要が高い為、長距離輸送に向く植物油の製造が推奨され、その中には整髪料用に香料を含んだものまで作られ流通しているらしい。
俺も香料入りは使った事が無かったので「在ったのかよっ」って感じである。
ちなみに、この情報を商人たちに伝えると周辺貴族たちに喜ばれた。
あちらもあちらで整髪料が無いとは思ってなかったらしい。
しかも高級品なほど売れるのだ。鮮度と香りに拘り、容器を小分けにし蝋などで蓋を密封した物がエルフの里に流通しだした。
「私も髪伸ばそっかな~」
「だから、言ったじゃない~」
「夏の頃は余り良いと思わなかったんだってば~」
ロァヴェルナさんは子爵領に居る頃から少しずつ伸ばし始めた。ルティ姉は変わらず短いままである。興味が湧いても実際に伸ばす人は今のところ極少数なんだ。
◆
結構寒くなって来たある日、大浴場の建設の話しが持ち上がった……
エルフの男性からの要望かと思ったが女性かららしい。
プールを温めたら? って思ったのだがそれは嫌だそうだ。あちらはサウナと一組で運用されており半分水風呂として活躍しているらしい。ちなみにサウナとプールは建物毎にあるそうだ。7村のしか使った事ないけどね。
「あとはやっぱ、景色も必要でしょ~」
「ルティ姉。ここを広げるって話なんですか?」
「違うわよ。今回は 1村の屋上を使うらしいわ」
ロァヴェルナさんが訂正する。
エルフの里の建物の最南端は 7村と 1村となっているんだが、通りを挟んだ 1村の最上階から俺たちの浴場から昇る湯気が見えているそうだ。そりゃそうだ……
俺はロニセさんなど 1村とも交流があるので彼女は結構来てるのだが、他の女性や旦那、子供と一緒に入りたいそうだ。男性はサウナを使っていたので気にしてなかったのだが、他の女性からも要望があり、それなら作ってみるかとなったそうだ。
建設は得意な人たちで行なったので浴場と浴槽の完成は異常に速かった。
ここから俺の仕事だ。浴槽の大きさに合わせ断熱した水槽の設置と配管施工をエルフの職人にお願いし、俺は保温用の魔道具をそれぞれに埋め込んで行く。最初の水の加熱は、断熱した水槽の容器を直接魔法で加熱したら良いが、追加用のお湯の保温にはマナを蓄積できる魔道具が便利だからだ。浴槽へはお湯と水の弁を付け、洗い場のシャワーの為に温度調整用の水槽を別途作って貰った。
子爵領と違い、こちらの住人は全員が大量のマナを持っているのでいくらでも魔道具を設置できる。エルフの里の初の大浴場なのでかなりの大きさとなり、追加のお湯の水槽も大きい。俺の魔道具の性能では全く足りないが、それなら数で勝負だぜ。水槽に仕切りを多めに入れ、その数だけ魔道具を設置した。その後、建物全体の補強作業と浴室に更なる仕上げ作業が入るらしいので、任せて俺は外部に飲料用の水生成魔道具の設置に取り掛かる。
それから数日後、完成したらしいので俺も入りに来たんだが……
混浴だった。いや浴槽は別なのだが、仕切りは在っても壁が無い。
まぁ、そうなるよなぁ
だってサウナでも男女一緒だったもの。プールも裸で共用だったし……
気にする俺がおかしいのだろうか?
しかも、浴場の壁に大量の彫刻が設置されていた。男女の彫刻はどちらが凄いか甲乙つけ難いレベルである。ただ、理解できないのがどうも女湯に男が自分の裸の像を作り、女が男湯にやはり自分の裸の像を作ってた事だ。どういう文化だ? 肉体賛美なのか? 結果出来上がったのは裸婦像、男湯、女湯、裸夫像とか言う奇妙な大浴場。
しかもこの像、若干盛ってるな…… 男は肉を盛り、女は脂肪を盛っている感じだ。違和感が起きないギリギリを狙うのが凄い。もちろん気付いても何も言わないのがマナーである。
天井も梁も無い露天風呂には休める場所も用意され、足だけ浸かり楽器を弾く者や湯舟で酒を飲む者まで居る混沌。文化が違い過ぎて少し怖い。
でもま~
芸術的な大露天風呂に、後ろは精霊樹と大きな枝の庇。
前は原生林、横には裸の美女! 澄んだ空気に見渡す青空! いい湯だぜ~~
◆
さて子爵領と他貴族間の経済戦争はどうしようかなぁ
戦争じゃないって? その位で考えないと危機感が湧かないんだよ。
さて、利益を諦めるのは無理だ。価格を下げれば需要が増えてしまうからな。となると恨まれない別の対価を探すしかない。つーか、これは本来あちらの仕事のはずだろっっ
今欲しい物が無いなら、未来に必要になるかもしれない物でも買い集めるか? 金、プラチナ、あるかどうか知らないが原油とかか? もしくは魔物に襲われなくなる平和な世の中を来る事を夢見て宝石の原石や貴金属、絵画などを集めるか?
倉庫代の方が大変そうだよなぁ
それに未来に価値が上がったとしても別に欲しくも無いんだよな。別の恨み、妬みに曝されそうだしさ。それをするくらいならその資金を消費して国力を鍛え上げた方が良いだろう。突き詰めればより子孫の為になる。
問題は何を作るかだな。
学校なら外部の貴族からも人が来て、更なる利害が出てしまうかもしれない。しかも、現在学校がある王都と対立してしまう可能性もある。研究所だと研究分野次第ではやはり利害がでる。
目に見えず、かなり先の未来で必要になる物が良いな…… やはり研究か。
前提として資金が掛かって途中で中断するような物で無い事が条件だ。
……良いな、そうしよう。
となると資源である塩以外で他の貴族から何を買えば良いのだろうか?
出稼ぎの労働力は要らないぞ。死亡率を下げれば自領の子は増えてるんだし、嫁、婿でも無い者を養う気にはならない。真逆なのに、まるで少子高齢化を悩む現代日本のようだ。
同じなのか。つまり、貧困を演じながら未来への投資が必要なのか……
未来の投資に使える他領の持つ資源とは何だろうか?
知識や書籍、教師などでは一時的で効果は無い。研究の外注をしては成果が漏れる可能性が高い。となると漏れても良い次元まで下げるべきか……
そうだな!
品種改良の外注をしよう! 種を選定して育てて貰い、特定の特性を持つ物を送って貰おう。そしてこちらで集まった作物を再度選定し、改良を増やして行くか。これなら多分王都の学校とも対立しないだろ。
それに成功すれば恩も売れるし、仲間としても親近感も増すはず!
よし、ついでだ。最近川魚の他にエビも始めていたが、増資する事にしよう。
……ん? ん~??
あ~~ 農作物をあっさり渡したのはこの為か!
もしかして、これってエルフの策なのか? 凄いな!
つまり子爵領とエルフ領の経済が釣り合った原因はここか。
エルフの長老たちに戴いた作物の研究を外注して良いか確認したら、簡単に許可が出た。とぼけてるだけかもだが、念のため大いなる策か何かなのかと聞いたら、大笑いされてしまった。
純粋に漬物が欲しかったそうだ。
正直に話し、利益を分配し悪意を躱すのが目的だと伝えたところ、エルフの里からも出資すると言われた。
結果! 俺、塩と酒ありすぎ問題!!
さーて! さっさと契約を取り付けるとしようじゃないか!
物語の方向は決まっていたのに、世界観の説明をしている内に経済戦争始まってるし、物語りが進まない!!
何故か自分に税金を掛けるわ、途上国支援みたいな国連じみた事を始める事に。
どこ向かってんのやら?
国家有機体説と閉鎖経済の作中作を書こうかと思いましたが中止で~
明日も連続投稿で行きます。
休みとは言え年越しは閲覧が全く伸びないなぁ




