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73話  いい湯だな

 【 11歳 初冬 】



 建築可能な場所を見せて貰った。下から登るのは中々に大変だが凄い見晴らしが良い。弧状の住居 2列のうち、外側。西の森寄りの最上階、しかも最南端で南向きだった。しかも一つ下の階がロァヴェルナさんの家だそうだ。


いつまで居るかは判らないが凄く良い環境である。


ロァヴェルナさんに移動する事を伝え、住宅を作っていく。こう言う時は本当に土属性魔法が役に立つ。コンクリートとか要らないし、乾燥などの時間も必要が無い。初日は俺の寝室とメイド隊の寝室を優先し建築。中々の大仕事。最上階はやはり高いし怖いわ~


「家まで在ったら、もうこっちの子よね~ ふふふっ」

「退去時に戻せるようにはしておきますよ?」

「どうせなら譲って喜ばれる位、良いものを作って残すのがエルフのやり方よ?」


「なるほどぉ がんばりますっ」


この日はある程度進めた後、内装用にタペストリーや家具をエルフの職人たちから買い集めた。家具に合わせた調整も必要だろ? 規格(きかく)とか無いから特にな。



翌日も朝から開始していたのだが、ダイニングを作り終わった所でお風呂も作ろうって話しになった。無ければ我慢するが自分たちで全部を設計するなら増やしてしまおうとね。床と壁、天井を俺が担当し、湯舟はメイドたちが作る事にする。


浴場が終われば、俺はお湯を出す魔道具の製造を開始だ。(こだわ)るぜ~


とは言っても大した事はできなかった。上水道も無いしな。水を川から収納魔法で運ぶのは良いのだが、熱湯は作れても丁度良い温度が作れない。よって誰かが温度を手動で調整しないといけないんだ。結局、メイドたちが大きな浴槽と少し高い位置に追加のお湯の用の水槽、後は熱すぎた時用の水の水槽を用意。そして俺が水槽間の配管と蝶型開閉弁(バタフライバルブ)、あとは再加熱用の魔導器ヒーターを作ったくらいだ。洗い場の排水だけは、申し訳ないが 1階までの配管を引くことになった。



魔道具職人として思ったより活躍できて無いので、意地になって無駄な魔道具を作製した。水生成魔道具である。技術としては一般的ではあるのだが、製品としては一般的では無い、そんな魔道具だ。大気中の水分を集めて貯めるだけだから、技術としては簡単なんだが効果が低すぎて要求仕様に届かないのさ。もちろん真水が必須な海上など、需要はあるので研究はされ続けているがな。


しかし、ここの場合は条件が異なる。エルフの里は精霊樹の近くで、大きな枝の下、直射日光も当たらないので湿度もそこそこあり、周辺のマナ濃度は人間の都市とは比べ物にならない程に濃い。ならば、水属性回路の強化ではなく、複合魔方陣と贅沢マナ利用で対応してやろうじゃないかと。


まずは水蒸気を集める。これは風属性を使い周辺を疑似低気圧にし空気をかき集め、魔道具の変換素子部の気圧を無理やり上げる事で対応する。次に変換だが、素子周辺に銅の 放熱板 (ヒートシンク)を大量に立てて火属性で冷却。表面積を大きく取った金属片を凍らないギリギリまで冷却する事で結露させ、大気中の水分を抜き取るのさ。更に中央の変換素子では水属性の電子操作により酸素と水素を化学反応させ水に変換しつつ、周辺の減圧を補助させる。アホみたいにマナを消費するのでトンボから採れた大きな魔結晶を使う事にした。どうせこんなバカでかい魔結晶を使う魔道具なんて持ち運べないしな。


これで集めた水は飲料水にした。冷却で大気中の水分を集めているため、普通に冷たい水で湯上りには良さそうだろ?


腰に手を当てて飲んじゃうぜぇ





 数日後、完成した浴場は素晴らしかった。


最上階なので覗かれる心配なし。屋根が無くても精霊樹の枝で雨風はほぼ防げるので露天。ガラスのはめていない窓枠は大きく取り、目に映るのは精霊樹の枝の(ひさし)と原生林の先端で作られる緑色の草原。そして斜め上に(わず)かに空が見えている。


メイド達が頑張った湯舟は大きく、形も申し分なし。寒くなり始めたエルフの森を見ながら露天風呂を楽しんでいる。


「天井は鳥が入って来れない程度に(はり)を何本か渡せば良いかな?」

里に居ても上から何か降ってきた事は無いし平気だとは思うんだ。


「そうですね~ 無い方が風があって気持ち良いですね」

「でも、これから寒くなりますよ?」

「お湯が温かいので問題無いです……」「……」


「……良いのかなぁ~」

何故か混浴になって居る…… この子ら俺を男と認識して無いんじゃなかろうか?


「お邪魔するわね」

ロァヴェルナさんまで来た…… 良いのか?


「これは凄いわね。最上階に湯舟作った人は居なかったわ……」

「えーと、ロァヴェルナさん…… 良いのですか?」

「ん? 何が? ……あ~ 今更でしょ」

視線で察したらしい。


「……良いのかなぁ~」



ふと、ルセアが胸を隠す。そして、何故か俺の記憶にルセアの裸の映像が……


?? 誰の視点よ?! 皆の視線がトルテへ向く。


トールーテーーっ 何故保存したっっ





 冬になり外部をうろつく獲物が減った結果、俺の護衛兼お肉収集班は暇を持て余していた。冬はエルフの警備隊も縮小ぎみだしな。なので 4人ともお勉強期間である。興味ある事があればロァヴェルナさん経由でお願いするよう言ったのだが、結局レイが診療所で医療を、ルンがルティ姉の所で料理と調理魔法を習うようだ。ルセアとトルテは思いつかないのでメイド業を(いそ)しむらしい。


そんな中、俺は目新しい制作物を探しては製造技術を学んでいく。もちろん、技術の剽窃(ひょうせつ)をする気も無いし、模倣品(もほうひん)による利益の搾取(さくしゅ)の予定も無い。とにかく、基礎学問が知りたいのだっ


その俺が最近優先的に学んでいるのが 4村の衣料品制作班。その中でも染料を扱っている女性研究者のリストナーテさんから学んでいる。染料ってかなり難しいからな。色の種類と発色、濃淡。洗濯による色落ちなどの耐久性。紫外線など外部環境による劣化や、染料に対する糸の変質まで気に掛けなければいけない項目が多々ある。


分析機器も無いこっちの世界で化学の授業だぞ? 凄く無いか?


どうやらエルフも原子番号の違いを感覚的に理解しており、人工的に分離した薬品に名称を付け管理しているようだった。


俺と若干違うのは、俺が土属性魔法のマナ抵抗で原子数を確認してるのに対し、この人は水属性魔法で電子数を確認しているところだ。


土属性魔術は単元素を取り出すには便利だ。ただ、土属性で元素指定し無理やり引き出すよりは水属性で電気分解して化合物を得て行けば、想像力次第で無茶が通るこの魔法世界で再現性のある実験結果が得られるのである。まぁ、電気分解と言っても想像と違うかもしれんがな。


まず、電極を使ってね~


この方法で自然界にある水溶液を片っ端から分解し違うものと混ぜ、何か有用な物ができないか実験を継続して行ったのである。


自然由来の素材を使うのにろ過、沈殿、遠心分離すらしない。

全部魔法の荒業で、熱による分離、精製も行わない化学だものな~



リストナーテさんと知り合った経緯は衣服関連でも染料でも無く、ロァヴェルナさんが流行らそうと宣伝していたサングラスが発端である。化学的な実験で水溶液を扱うので安全器具として欲しくなったそうだ。結局、ロァヴェルナさんには断った、前しか見えない板状のサングラス? 型魔導器を作る事になってしまった。


一応、俺たちの使っているエアコン付きマスクも進めたんだが遠慮された。


可愛く無いらしい。


安全器具だろうがっ! 呼吸関連は最重要なので魔法でとっくに対策済みらしく、目だけ保護ができれば良いらしい。



しばらくこの実験に付き合っていたら、俺よりトルテが嵌まったようだ。彼女はこう言う黙々と作業するのが好きらしく、俺が他の場所に行っても手伝うようになった。


ちなみにリストナーテさんはサングラスのお得意様でもある。少し垂れ目がちな彼女は目尻の上がったサングラスを気に入っており、色や形の違うものをいくつも所有している。



彼女のお気に入りはアメジスト製、紫色っ!


無いほうが美人なんだがなぁ



村の配置:

 村と説明はしてますが、昔あった村の出身者で建物(マンション)が分かれてるだけです。

 精霊樹の東側は魔物だらけで、内側両端に戦闘が強く、人数の多い一族が住んでます。

 住居は横に長く繋がり 2列になっており、その間が通路兼広場です。

     2村    +

 5村        +

    3村    +

6村         +           精霊樹

    4村    +

 7村        +

     1村    +



特定元素が欲しい場合は土属性は有用ですが、水溶液側が実験対象なので水魔法を使ってます。


実際こんな事で染料ができるか解りませんが、こちらの化学とは異なるアプローチで染料を作ってる事を描写したくて書きました。怪しい樹液やら動物の怪しい体液が使用されてます。

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