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63話  ラウンド 2!!

 【 11歳 晩秋 】



 こちらに向かってくるのは馬鹿デカい蜻蛉(とんぼ)

速度は判定不明だが 100k、200km/h出てるんじゃないだろうか?

『山越え』とは比較にならない速度だ。


(まず)いな、拙い。あの速度で体当たりされたら挽き肉(ミンチ)に成りかねん。


『ヴェイザルト! ルァニエス! どうするんだ? 放棄で良いのか? 流石にアレは止めれんぞ!!』

4班班長が叫ぶ。


『……放k『こちらをお願いします!』』

そう言や、アレが有ったわ。視力強化で再度トンボの特徴を探る。


『はぁ?! あっちは?!』

『足止めします。こっちのはそのまま地面に降ろしてしださい』

『あれを止めれるのか? 俺らも陸上に居る時にしか勝てた事無いんだぞ?!』

『仕留めれはしませんが、()らします! 援護の方は上下に大きく離れてください、お願いします!』


デカいし速いがトンボなのは変わらねぇ


『山越え』にしがみ付いたまま収納から懐中電灯の魔導器を取り出す。


超高出力の光線魔法をトンボの頭に照射(しょうしゃ)するとトンボは遥か手前で急降下した。逸れたトンボは体勢を立て直し再度こちらへ突っ込んできたが、再び光を頭へ照射されると今後はこちらに背を向け大きく迂回(うかい)するか如く旋回して行く。


しっかし、でっけぇーーっ 大きさだけなら小型の旅客機くらいはあるぞ!


俺はそのままトンボの頭に照射していたのだが、取り付いている『山越え』の陰に行かれてしまい中断する事になった。


助かった…… 良かった、流石の異世界でもトンボに(まぶた)があったりはしなかったか。


『何だぁ?! ……どういう事なんだ?!』

『ルァニエス! 説明しろ!』


『虫は強い光と太陽の光が区別できないんです。だから、目に強い光を当てるとその方向を太陽が有るはずの『上』と認識して背中を向けてしまうんですよ』

『……その道具、まだあるのか?』

『あと 1個あります』

『それをトニルヴェレフに渡しておけ』


『……どなた?』

『横の奴だ。で、次はどうするんだ?』

『とにかく光を目に当て続け、真っ直ぐ飛ばせないようにしようかと』


『よし! ルァニエスの代わりに『山越え』に 2人取り付け! ルァニエスは一先ず離脱して誰かと合流しろ!』


『はい!』「ではこれをっ よろしくお願いしますっ」

「あぁ、がんばれっ またなっ」

「はい!」


『グラウは済まんがそのまま下で待機してくれ。安全優先で頼む。済まんな』

『了解っ! 任せておけ!』



『山越え』から飛び降り、直ぐに収納から紙飛行機モドキを取り出して乗る。流石に山より上昇する気流が無いので風に乗せてもゆっくりの降下だ。


再度、『山越え』にトンボが近づいて来るが、トニルヴェレフさんがトンボの目に光を当てて逸らす。俺は推進装置を使って急上昇し他のエルフの人たちと合流した。


『援護の方々はもう少し高度を上げてください! トンボは色の差で判別してるはずなので、影になる板の裏に薄く発光魔法を掛けたら襲われる事は無いはずです! 雲と同じくらいの薄めでお願いします』

『おう。解かった!』


『あと、私の板に誰か来てくれないでしょうか? 両手が(ふさ)がってて道具が使えないんです!』


『俺が行こうか?』

『待て待て、俺が行くよ』


『待てっ! 俺が行く!』

『『()りーっ』』


何故か上層の責任者、獲物の輸送中で余裕が無いはずの 3班班長、ヴェイザルトさんが参戦した。





 何故か獲物の輸送指示をしていたはずのヴェイザルトさんが近くに居た。

『輸送は良いんですか?』

『もうかなり近い所まで来てるからな、さっさとこいつを片付けないと下に降ろせん! 今はすぐ上の雲の中で頑張って持ち上げてる最中だぞ。余程辛いわ』

『……なるほど』


『で、どうしたら良いんだ? 取り敢えずルァニエスの板に乗るとして、その後は?』

『私が板でトンボと並走しますので、目に光を当てるのと板の進行方向の微修正をお願いします』

『おう。解った。まずは合流だな』


そう言うとそこそこ離れていた距離を飛び移ってきた。回収されなかった乗っていた板は風に舞いながら下へ落下していく。


『落ちた板は良かったのですか?』

『俺らは複数用意してるからな。問題ない』

『ふむ』

いや、そのまま捨てて良いのか?


『……では、これを』

懐中電灯の魔導器を渡す。


『板の先端に立つが前は見えるか?』

『大丈夫です。マナ共有とマナ収集の刻印も動いてるので偏光(へんこう)魔法で対応できます。ただ、私の技能(ウデ)だと視界 1つの上、かなり視野が狭くなってしまいそうなので、当たりそうなら何とか機体を曲げて回避してください』

『分かった。良いだろう、任せろ』


『最終的にはこちらが少し下側の状態で光を当てて、地面に叩き落とす事が目標になります』

『はっはっはっ 何だ、お前っ、こいつも食う気なのか?』

『あっはっは『ルァニエス、やるぅ』期待して待ってるからね~』


お姉さま方からの声援も届く。流石にそこまでは考えて無かったんだが……

まぁ、やる事は一緒か。さぁて、お土産に成って貰おうじゃあないかっ!



ヴェイザルトさんは靴を脱ぎ、紙飛行機の先端に仁王立ち。色々突っ込み処が多すぎるが、まぁ頼もしい。


俺も推進装置の水を満タンまで補給し手袋や靴、コートも外して収納。バックパックへのマナ残量を気にしたくないのでマナの供給は俺からに切り替える。


準備万端。


両手で紙飛行機を掴み、視覚を紙飛行機の裏面後方、垂直尾翼付近に飛ばして速度を上げて行く。マスクの各種カメラは稼働してはいるが、速すぎてほぼ中心の視野しか意識できない。



『……では、参ります!』


こうして、紙飛行機 対 蜻蛉と言う(この)世界初であろう空中戦(ドッグファイト)が始まった。





 トンボ退治の位置取りは単純だ。結局、トンボの目が前と上側に向いている以上、下や後ろに居ても意味が無い。なので俺の仕事はトンボの上方、()つ若干後ろの位置を維持しなければならない。その状態を維持しながらトンボの横へ移動すると、トンボはこちらに背を向け続ける為、重力に引かれ旋回して行く。この旋回に巻き込まれないよう、後ろになり過ぎないようにしながら高度を下げていけば、トンボは地面側に背を向ける事になり森に墜落してくれるはずだ。


もちろん接触なんて厳禁っ! 背中側だから掴まれる心配は無いが、近付けば確実に大きな翅に当たって撃墜される事だろう。安全を考えある程度は離れて飛ぶ予定だ。 



言うのは簡単だが、問題は適切な速度で並走できるかなんだよな。遅いとトンボは『上』を維持するため、こちらの前に回り込んで来てしまう。離れて照射するのが楽なんだけど、目に当たる光が外れると途端に体勢を戻されてしまい再度の位置取りが困難になるんだ。できれば一度で終えたい。



加速しトンボに近付くが一先ずは順調に進んだ。空気抵抗の塊みたいな人が前に居るのに何故か機体は安定している。ヴェイザルトさんが何かをしてくれてるっぽい。器用過ぎだろっ


トンボに光を当ててると、若干後方の為かこちらの進路を塞ぐように旋回してくるのでこちらも旋回。当たらないよう少し高度を下げると、トンボは重力が手伝ってるのか更に加速、旋回半径をより小さく旋回して行く。流石に速度が上がると辛くなって来たのか、ヴェイザルトさんもしゃがんで片手で紙飛行機の淵を握っていた。


俺も正直、変な体勢で全身の筋力が辛いっっ

背中に背負った推進装置の角度を変えるのは俺の姿勢だけなんだっ!


地面に向けぐるぐると螺旋(らせん)(えが)きながらトンボを追走していくと、加速し過ぎて徐々に旋回半径が伸びていった。


両手で紙飛行機を掴みながら、足を延ばして無理矢理機首を上げさせている。既に俺自身も上下感覚が全く無し! トンボを視界の端に入れて固定してるので他が見えてないんだ。(たま)に地面が視界の端に映っては凄い速さで消えて行く!


『きついです! 私たちもかなり地面に近付いてたりしませんかね?!』

『そろそろ拙いな!』

『最後は一気に下に回り込んで地面に叩きつけましょう。ただ、今私はほぼ見えて無いので最後の姿勢制御をお願いできませんか?』

『あぁ良いぞ。合図で魔道具を止めてくれ。慣性だけで十分だ』


『……では数える! 3,2,1,今っ!!』

『はいっ!!』


トンボが俺たちの前を追い抜き視界から消えた。視界はぐるぐると回るが 3、4周程すると機体は水平に戻り、軽く上昇をし始める。俺の視界はまだ回ってるがな。


まーぢー、吐きそぅ~~


『『『すっげ~~~っ』すごーーいっ』』

歓声が上がる。上からも下からも見ていたようだ。


『流石に疲れたわ……』

『お疲れ様です。助かりました』

俺も腰が痛いっっ 明日は筋肉痛かな……


『ルァニエス、見てたぞっ! 凄かったな。下の獲物は警備隊で仕留めて回収しておく。残りの『山越え』の回収に参加すると良い』

『グラリエントさん、ありがとうございます』

『樹に当たって派手に吹き飛んでいたが、バラバラにはなってなさそうだった。期待しとけ』


『じゃあ、上の 2体を降ろすとするか。ルァニエス、上がれるか?』

『大丈夫です!』

魔力は平気。目と吐き気の方が辛かったりする。


『あ~、でかい方はもうすぐ降りるぞ。ルァニエスが仕留めるか?』

俺たちが戦ってる間に地面付近に到着したらしい。


『いえ、お願いします。それに効果ありそうな武器を今持って無いですし』

『そうか。了解。仕留めて里で引き渡す事にするわ』

『お願いします』


『じゃあ、上がるか』

『はい』


上空へ向かうと網で丸められて藻掻(もが)く小型の『山越え』を周りから掴み、ゆっくり降下してくるエルフ達が居た。



俺も参加し、網を掴みながらゆっくりと回り、一緒に降下していった。



結構なピンチのはずなのに主人公の提案に乗った理由は、狙われてるのが『山越え』だからで、最悪トンボに渡してしまえば良いだけなのです。トンボはエルフや人間を好んで食べません。足で掴んでも口に持っていけないからです。


懐中電灯を懐中魔灯に直すか検討しましたがわかり難いので中止。

蜻蛉は文字の視認性の為、トンボにしてます。


ヴェイザルトさんは両足の指で紙飛行機の淵を掴んでます。主人公は器用だと言ってますが、身体強化と体周辺の気流操作の2種類しか使ってません。もちろん熟練度は凄い高いです。たまに目の範囲から外れそうになると身体強化を短時間切り、懐中電灯の光を偏光させたりもしてます。


戦闘中の情景は雨雲で無い、厚めの白い雲が多くある状態です。雨雲だと『山越え』の白は目立つので降りられません。『山越え』はこの明るめの曇り空を待って移動しています。ですので太陽が 2個って状態にはなり難いです。


エルフの本来の予定ではこの最後の降ろす作業だけでも参加させよう、ってつもりでした。

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