56話 7属性魔法の考察
【 11歳 秋 】
改めて魔法の考察をしようと思う。
まずは元素系3種、火、土、水。取り合えず分かり易く名称を変えて説明する。
火は原子運動系魔法だと思われる。
他の使い方があるかも知れないが、原子を運動させる事で熱と言う結果を生み出す事ができる。もちろんその逆の熱を鎮める事も可能だ。
空気など軽元素を温めるのにはマナが少なくて済むが直ぐ冷める。金属等は温度を上げるのにマナの消費がかなり大きくなるし時間も掛かるが冷めるのは遅い。
また、簡単に着火のような事はできない。燃料があれば可能だろうが、適当な引火物の方を用意できない……
他の魔法や知恵で石油や可燃ガスが作れるならかなり便利かもしれない。
いや、自分を守れるかな?
空気を遮断しても熱と衝撃が来そうだ。
土は分子結合魔法かな。
原子は変えれないが、その組み合わせである分子単位の結合なら脱着ができる。火属性と同じで原子番号の多さでマナ消費が増えるから、原子番号をマナ抵抗って考えても良いかもしれない。多分係数はあるだろうけどな。
分子として取り出したり、物同士を剥離させて移動なんかも可能だ。移動ができるのは少し不思議だが、石だろうと流体として扱えている。この為、実は枯れた葉や枝などが落ちている森の土の方が操作し難かったりする。
水は電子操作魔法だ。
そうとしか思えないが、現状使い道に困ってる。操作としてはマナで電子を掴み、物質の中を移動させる事ができる。電気を通さない物は移動し難くマナの消費も増えるし、通し易く通る場所が太ければマナ消費量は減る。そして電子を動かせば電圧と電流が発生し、結果的に熱や磁場も発生する。
半導体も無しに金属片の片方に電子を集める何て事すらできるんだよ。ただ、指定範囲をイオン化させたりもできるが、何に使うのってなるだろ? 使い道に困る属性なのだ。
その中でよく使われる用途なのが水の生成。大気中の酸素と水素を結合させ水を生成できる。結合、分離にはエネルギーが必要なのだろうがマナで補ってしまえるのさ。ただ…… 遅いっ!
当たり前なのだが、材料の空気の量が関係する。大量の水なんて酸素の供給が間に合わない。と、言うか一気に結合させる事ができたら周辺の気圧が下がるわ。たぶん窒息するな。
その他だと、雷とか攻撃力高そうだがまず無理だ。雷ってのは電荷をどこかから調達した後の現象だから。ここでは自分が電源なんだ。しかも自分に電荷を貯めたりしたら相手に触れると両者の間に熱が発生してしまう。死ぬっての。
となると大容量のバッテリーとか絶縁素材の技術が必要になる。
……魔法の世界なのに何で科学の知識が必要になってくるんだよ!
今のところ、リング状にした物質内で電子をぐるぐる回す事によって磁気を発生させ、その磁場の中で鉄を加工し磁石にする事には成功した。ただまぁ、その磁石も使ってないんだけどな。
これらと言うか、全ての魔法の共通点だが、生物相手に中のマナを操作するのは非常に難しい。回復魔法を抵抗する事だってできる。敵対してる相手に触れ、熱や電子操作なんかは不可能なんだ。あくまで他の物質を操作し、その副産物で発生する熱などの現象を利用するしか無いのさ。
そして次が微妙な魔法群、2種。
まず風だが、ベクトル的な物、移動力の魔法である。
慣性とか重力、気体の均一になろうとする力なんかもそうだ。物には色々な要因が加わっている。押され続けているとか、天体と一緒に周っているとかな。
物体を観測した時に各項目で影響を受けてる方向と量があるのさ。もし仮に物体の詳細画面を開いて見えたのなら、〇〇から影響を受けてますって項目がわんさかあるはずだ。風属性はそれの書き換えを行なう魔法なんだ。もちろん見えないから習得が難しいんだけどね。
これのマナ消費量は未だ調査中。軽元素の消費量が軽いかって言うと不明だ。なんせ質量も低いからな。
この魔法で空を飛べるかと言うとまず無理。打ち上げるなら可能だが、着地には困るだろう。重力の影響を減らし体重を軽くする事は可能だが、それをすると気流の影響すら受ける。空中に静止するのは凄い集中力が必要である。
攻撃に使うとして重量のある物を飛ばす位なら肉体を強化して投げた方が早いし、何よりコントロールしやすいだろうな。
次に距離。これはかなり特殊魔法。
大雑把に言うと自身と物との間に長さの入力画面を開いて、無理やり数字を入力し固定するような魔法だ。多分それだけだと固定できていない項目が何かあるせいで、この次元からズレて消えてしまう。もちろん時間は固定できているはずなんだ。なんせ一緒に時間が進んでいくからな。
もしかしたらもっと便利な魔法なのかもしれないし、時間を止めれる可能性すらもある。もちろん時間を止める何てしたら自分と物との時間軸的な距離がどんどん離れるから、マナの消費は凄い事になりそうだがな。今のところは収納魔法としてだけ使っている状態だ。
この魔法の消費量は対象の大きさのみだと思う。違っても誤差だろう。
そして最後、この世界の基本魔法。
生命魔法と精神魔法だ。
生命属性とは命そのものであり、この世界における存在の係数っぽい。この数値が高くなると低いものよりも強くなる。筋肉が物理的多かろうと、この存在値が高いほうが強いんだ。
ゲーム的な言い回しだとレベルを上げるになり、宗教的な言い回しだと神とか高位生命体に近づいてるって感じかな。
この神様の作った世界では物体は係数『1.0』が一般なのに、生命属性魔法で『1.2』くらいに強化できてしまう。鉄だろうが木だろうが、世界に対し存在が『濃い』方が強いんだ。
多分だけどな。
生命力の強化により自己治癒能力を強めたり造血細胞など特定の器官の強化もできる。そしてこの世界で良く使われる用途なのが、腕の筋力だけ強化とか目の視力強化などである。何なら目の感度のみの強化で可視光以外の観測も可能だ。
エルフからは生命属性と習ったが人間側では光属性と無属性と別々に認識されている。実際には同じで、存在係数を操作する事で光すら曲げる脅威の属性である。
そして精神魔法。
いまだ不明。一部しか習って無い。ただ、記憶の固定や書き込みで体験はしている。
あくまで仮説ではあるが、魂の魔法じゃないかと思う。
脳だとおかしいからな。
通信魔法が使えてるのは魂同士の会話なんじゃないかと思う。
そしてその仮説に至った原因だが、魂と魂の距離と肉体と肉体の距離は同じなのかって疑問が出たんだよ。マナ共有の刻印と念話の有効距離が異なるんだよね。
マナ共有はこの世界に在るであろうマナを送り合ってる。だから有効送信距離があるのは不思議じゃない。念話もマナを使ってるなら同じ有効範囲じゃないとおかしくないか?
昔考えた、転生とは魂と肉体の割り当てに過ぎないってのが合ってるなら、実は全ての魂は大きさの無い場所にまとめて入ってるんじゃないだろうか? それなら距離はゼロだ。
あくまで仮説だけどな。魂の方の証明をしようが無いし……
◆
さて、この仮説の前提の上で有効的な攻撃手段かぁ どれもこれも使えねぇ
肉体強化したくなる気持ちも解るわ。そして魔物もそう思って、そう進化してきたんだろう。硬い皮膚に衝撃を和らげる獣毛、大型の肉体とそれに見合う筋力。
最 適 解 だよな。
だが、何とか対策しなければいけない。
少し魔法から離れるか…… ようは生き物を殺す手段を考えてるんだ。
もっと冷酷、冷徹、合理的に考えよう。
一つは呼吸を止める。鼻と口を塞ぐだけでも良いだろう。窒息と言う意味では、酸素を取り込んでるだろうからそれを除去して待機するのもアリだ。必要なのは密封方法と酸素の除去、もしくは変質。容量次第では待てば良いが、多分大人しくはしてくれないだろうしな。固体二酸化炭素か液体窒素でも作れば良いのだろうか? 密封は風魔法を使えば意外と行けると思う。要検討だな。
二つ目、毒物。これはこっちの世界だと無理だな。用意できない。どっちかって言うと相手に使われないか心配する側だ。
三つ目、失血か。前に子爵領でそんな武器を見た気がするが、獣にしか効かないんだよな。蛸も百足も血管無いし平気で動くだろう、多分。
四つ目、気絶させる。睡眠ガスでも良い。意識を失わせてから窒息でも失血でも良いのだ。電気によるスタンガンが使えたら良いのだが、直接の魔法としては無理。物理的に電気を貯めるキャパシターを作れば可能かもしれないけど、作ったキャパシターにどうやって充電したら良いのだろうか。
いや、物理で考えちゃ行けないのか、魔法の世界なんだし。単純にU型の金属で片方に電子を移動させればキャパシターは不要だわ。チャージ時間は必要になるけど魔導器で行けるな。
やってみるかぁ
実験の結果…… 全部ダメでした……
一つ目は蛸や百足など厄介な連中ほど無酸素で長時間動く。何より移動が速い。そして口を狙えないと来る。この手段が効くのは他の手段でも倒せる小型の魔物だけだった。
四つ目は電力が足りないっっ
電子を動かせるって言っても必要量を賄えない。多少大きな金属の全電子を移動させても大して効果が無かった。あと体が大きすぎて、多分脳まで届いてない。
やはり武器の強化しか無いのかな~
過酷過ぎんだよっ! この世界っ!
誤字修正の際に考察文章を増やしました。水属性の水生成や生命属性の光操作が抜けてました。
物騒な話は書きたく無いのですが、あっちの人は命がけの真っ最中ですのでご理解ください。多少物騒にやって尚、野生動物の方が強いですが……
あちらでは人間こそ愛護されるべき弱者なのです。




