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4話  幻想世界の武具事情

 【 3歳 秋 】



 みんな忙しいので建物から出れない。見るからに人が居ないのだ。

去年は気付かなかったがこの時期の日中は忙しいらしい。

何してるか聞いたら男性は大半が虫退治とのこと。

その間、女性が農作物の採取をしてるのだとかで、屋敷からも手伝いに出てるそうだ。


まー、あの大きさの虫に作物食べられたら大変だものな。

当然だが、俺は外には出ない!


食欲旺盛であろうこの時期に奴らに出会ってたまるかっ



最近は母の所で過ごしたりしている。なるべく話し、さらなる知識を~

もう一人の母や妹とも結構話す。母たちの仲は良いようだ。


兄はどこに行ってるのやら、食事の時以外はどこかへ行ってしまう。


あと、最近気付いたのだが茶は無いようだ。ここで流通して無いって可能性はあるけどな。

母たちが談話してる最中に飲むのは只のお湯か果物を絞ったものが多い。


まぁ、お茶の木が無ければそうなるよな。

      ※主人公がチャノキの名称を知らない設定




 【 冬 】



 庭を歩き回ってると兄に会った。最近は兵士の巣に行ってるらしい……

巣? 聞き違えか? 兵士が間違ってるのかな?


「兵士って兵士? 兵士にも巣があるのですか?」


身振り手振りで確認する。


「あるんだよ、いっぱい居るんだ」


兄も身振り手振り付きで回答。


解決しねーっ

兵隊蟻とかじゃなく? 人?


巣と寮? が同じ単語ならしょうがないと納得した。

この世界では巣と住居って区別してないのかもしれんしな。



その後、兄の間違いで別の単語がある事が判った。


俺もしばらく兵士の巣って言ってたから赤面ものだーっ

ウチのメイドは訂正(ていせい)せずに裏でくすくす笑ってるから困る! 母もな! 父だけが味方だった。






 この世界の冬は凄い穏やかだ。

なんせ寒さに弱い虫が一気に減るせいか動物の大半も冬眠するらしい。本来なら気温的にうろついてそうだが、食物連鎖に虫が居るので大半が冬眠するようだ。どうもこっちの世界の鹿は虫を食べるのだ……

秋は冬眠に備えた鹿が凄い肥えるらしい。


お前ら、それは肉食なんじゃねーの……

こちらでは草食動物の分類方法が異なるのか、消化器官が別進化しているのかもしれない。

いや、そもそも歯が凄い事になってる可能性もある。


既に油断とか無いから良いけどさ!



最近めっきり虫の出没も無くなり心穏やかな日々を過ごしている。


時間ができた事で無意味に転生の考察をしてみる訳だが、やはりここは地球ではないか?

別の惑星で人が人の形で発展するだろうか?

同じ目の数、位置で? 同じ指の数で? 地球の遥か未来とかじゃないのかね?

バッタもバッタの形だったもの、大きさは許し難いが……


もしくは、前世もこの世界も想像も付かないような上位存在の娯楽のスターターキットなのかもしれん。水を注ぐだけで低位知的生命体が育つ! 夏休みの宿題にぜひ! みたいな。


あとは、神のシミュレーターか何かで過去のプレイデータが誤って初期化できてなかった、とか?

どこからやり直したら虫が大きくなる世界になるのかさっぱり判らんがね。


まぁ足掻くしかないんだけど……


俺以外にも記憶持ちは居るのかね~




 【  4歳 春 】



 そろそろ、ゆっくりでも知識を増やさねば! 何せ常識が異なるからな!


とは言え、まず文字はあるのかだ。数字もだが家の中で一度も見たことが無い。

しかも、それを聞こうにも「文字」「読む」の単語すら判らない!


さらに、話を振ろうにも紙、羊皮紙どころか筆記用具すら見た事も無いと続く。

看板はもちろん壁や扉に記号っぽいものすら無いんだよ。どうしろと?!


知らないはずの物なのでゼスチャーする訳にもいかないしさ。

なんせ、現時点で絵本らしいものすら見たことが無いんだ。

製本された辞典や歴史の本なんて存在するのだろうか?



休憩中の父が居たので色々話すぞ。

幼児言葉な上に知らない単語で会話が行ったり来たりするから結果だけ箇条書きでお送りするぜ~


1.父は強く部下がいっぱい居るらしい。


例の兵士? ふむふむ。

すまん、10以上の数はまだ教わってないないんだ……



2.父は槍が得意で最近は兄にも教えてるらしい。


この辺全部自称なので、戦う人間の上官にあたる職にいるとだけ思っておこう。

体格からして父自身が兵士なのは間違いは無いはず。


だけどさ、兄は 2個上だから 6歳だろ? 早すぎ無いか?


……本人希望との事。お兄ぃ凄いな~



3.父の普段の業務(しごと)に虫や鳥の間引きがあるらしい。


父よ!? いくら虫がでかいとは言えそれでは農家なんじゃ……

豪農(ごうのう)の可能性も出てきたか?

いや、豪農の豪って豪傑(ごうけつ)って意味じゃないんだが……

それとも辺境の開拓民なのか?


もしかして兵士も農民兵か?

一気に戦国時代な気がしてきた。


それとも、もっとでかいのが居るのか?

でも、まあ戦う相手が人間でないなら平和とも言えるのか。

……のか??


平和の前提や概念(がいねん)から考えないといけないわ。

外に出るのが不安になる情報しか出てこね~



4.妻は 2人らしい。


父と実母とは学生時代に出会い、もう 1人は元部下でこの領地出身の人なのだそうだ。

父はモテるらしく母達から告白されたらしい。へぇ



5.学校が王都にあるそうで、俺も大きくなったら 3年程行くらしい。


お~~、貴重な情報ありがと~

王都はかなり大きく両親の両親一家もそこに住んでるんだとか。


父も元々王都に住んでたのか聞いたら、父や祖父はここの出身で母は王都出身との事。

祖父から父へ代替わりした後、祖父は王都勤務になったらしい。

引退したのに勤務なのか? って思ったら、槍の指導役として呼ばれたそうだ。お強いのね~


俺としては武芸より技術の方が知りたいんだけどな~

その方が貢献できそうだし。


そうだ、兄の勉強にお邪魔しよう!

知識レベルが近い兄の勉強なら内容も易しいはずっ


父にお礼を言い、移動!


早速お邪魔~っ



……紙、本はあるが高価らしい。字の練習はトレイに砂を張ってするようだ。

文明レベルがホント判らないが書物がある事は判ったので文字を覚えよう。


さっそく学習っ

兄がちょっと不満顔……


いいじゃん、混ぜてよぉ






 こちらの文字は表音文字のようだ。助かった!

表意文字で漢字並みの文字数が合ったら覚えきれんからな。


文字数は 20ちょっと、ローマ字表記に近いが母音の記号を重ねて書くので少し奇妙。


「N」の真ん中に「―」を重ねる感じだ。聞くと横線がイ行なのは口の形が由来らしい。

そう聞くと納得と言うか面白い発展だと思ってしまう。母音分類からは抜けれないんだな。


オが縦線、ウが中央に小さめの丸、アが⌒、エがその逆の記号だったりする。

そして「ん」が独立で「∧」だ。


書式が左上から縦書きって辺りが文化の発達の違いだろうか。

縦書きって事はもしかして、普段は本じゃなく巻物や木簡(もっかん)って可能性もあるのか??


聞きにくいな……

保留しよう。



勉強は続く。


父は普通に偉かった。国の体系は封建国家で、父は貴族階級制度の子爵らしい。もちろん意訳ね。国家同士の戦争は 100年は行われていなそうだ。


そんなもんなのか?

農業主体なら領地の奪い合いの時代じゃないのか?

戦国時代でもそうだろ。


と、思ったが害虫がそれをさせないんだとか。

兵站(へいたん)をでかい虫が妨害(ぼうがい)する訳だ。

まず夜営(やえい)がヤバい。人より虫や夜行性の動物の方が遥かに脅威(きょうい)である。


確かに戦争をしてる場合じゃないな……

過去にあった人同士の戦いも大半は冬だけで終了したらしい。




 兵士の武装について


驚けっ!! なんとこの世界の兵士は鎧に当たる物を一切使用しない!

なんなんだよそれ……


武器も多彩とは言い(がた)く、剣、槍、鶴嘴(つるはし)、あとはそれらを混ぜた複合長柄武器である。


剣って訳してはいるけど、(なた)だな。バカでっかいけど。


形状から言えば菜切り包丁とか中華包丁って言った方が近いかもしれん。

先が垂直の奴な。突きは考えて無いらしい。微妙に厚く、食材には同情を禁じ得ない。


(つか)が日本刀のように長いが(つば)は無し。

片手でも両手でも使える片手両手兼用(バスタード)中華包丁だ。


何度かバッタに叩き込まれる光景で目にした、メイドもお気に入りの兵装(いっぴん)である。



で、だ。この世界、剣より鶴嘴の種類が豊富ってくらい戦闘形態が違う。

そう! 戦闘の主役はなんと鶴嘴だ!


刺突(しとつ)剣とか両刃(りょうば)剣は存在しないのに鶴嘴は釘抜き(バール)位の取り回しの良い物や刃の形状が異なる物が多彩に存在し、それぞれで名称が異なる。


刺さる深さを調節する目的で作られた、全ての刃の長さが異なる十文字(じゅうもんじ)鶴嘴とかがあるんだぞ。

見た目はほぼ(いかり)っ!!


ワイヤーが付いてたら兵士を(えさ)にした釣り針じゃないのとか誤解しそうだ。


予想ではあるが多分この世界の斧の原型は刃が横向きだったんじゃないかと思う。

(くわ)が同分類の武器扱いだからな。


両刃の鍬とか舗装道路(アスファルト)でも(たがや)せそうな見た目だぞ。


なんつーか、石器時代の段階で製作者と使用者に齟齬(そご)があったんじゃないですかねぇ



槍もなかなかにおかしい。


斬る機能が無く頑丈な針状の武器で、2本爪、4本爪などがあるらしい。

見た目は農具のピッチフォークに近いかな。

鉄が貴重なせいか、この世界の農具の方にはフォークは存在しない。


槍とは柄の長い刺突武器な訳だが、この世界では刺すより距離を取るための武器とのこと。

柄もやたらと太いし、何との闘いを想定しているのか聞いたら鹿だった。


そんなに狂暴なのだろうか……


話を聞くと、まず大きさがおかしい。最低でも3mはあるらしい。角を除いて。

そりゃ、盾で受けたく無いわ!


こいつの角を受けるのが槍の重要な役目なのだ。


槍と言うより(さすまた)と言った方が良いかな?

複数の爪があるのは十手(じゅって)のように攻撃を受けるのと、(ひね)って固定するのが目的のようだ。


二本爪槍の亜種に音響槍と呼ばれるでかい音叉(おんさ)が含まれてて笑いそうになった。

耳の良い連中を相手にする際ガンガン鳴らすらしい。



それと意外なのは(つち)などの鈍器がほぼ無い。


……鈍器が効かない敵ばっかなんだろうなぁ、嫌すぎる。

そこらを蜘 蛛(多脚戦車)がうろつく世界だからな、察して欲しい。

除夜の鐘を真横に吹き飛ばせる位の質量が要るっての。



あと、遠距離だと弓はあるんだが、かなりデカくて矢じゃなく(もり)を撃つ。


弓の中央から伸びた支柱を地面に付けて脚を掛け、全身で引く殺意高すぎな兵器である。

しかも行動制限が目的なのでロープ付きで、当然の如く(かえ)しも付いた代物(しろもろ)だ。


先端だけじゃないぞ? 銛の中ほどまで螺旋(らせん)状に 20箇所はあるんじゃないかな。まじ凶悪……


もう領主と言うより猟師とその仲間だよな。

装備からして(くじら)でも追ってるのかって言いたくなるもん。



防具に鎧は無いけれど盾はあるんだよ。

丸盾から両手で持つような(たたみ)サイズの物まで充実の品揃え(ラインナップ)だ。

ここまで揃えるなら籠手(こて)位はあっても良さそうなものだが無いそうだ。


腕に固定って発想が危険らしい。

即座に外せない武装は命取りだと真面目な顔で教えられた。


……


俺はこの世界で生き残れるだろうか……



独り言スタイルですので、自己ツッコミが多いです。



逸れてくファンタジー、既にかっこいい戦闘は期待できず……

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