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40話  魔道具製作所

 【 10歳 春 】



 昨日に引き続き刻印術を刻む事になった。


前回の念話は全てのエルフで普段使いされる程度の一般的な技術だそうだ。そしてここからは特殊な刻印術でエルフは必要としないものらしい。



刻印の書く場所はお腹みたいな太ると歪む場所は向かず、できるだけ皮膚の薄い場所が望ましいそうだ。


通常は記憶系、通信系、感知系なんかは耳の後ろや(ひたい)など脳に近いところに書き、活力系は胸骨で心臓や肺に近い位置。魔力系は肝臓に近い位置で胸骨なのだが、今回は面積の都合で骨盤側に書くそうだ。その他、脚力を上げるなら(すね)に書くなど直接的なものもあるらしい。


「額は目立つし、髪が無い今だと頭には書きやすいけどお爺さんになったら困るでしょ?」

「ですね~」

……禿げる前提なのか。



この技術は凄い便利なように感じるが、聞いたところ最低限しか使わないものなんだとか。


どうも筋力アップなどの刻印を使っても、一時的には良いが徐々に本来の筋力が衰えていくらしい。たぶん負荷が減った分、筋肉が使われなくなる影響なんだろう。



まずは鳩尾(みぞおち)の少し上に結構大きめの物を刻んだ。効果はマナの回復で、周辺からの吸収を促進するものらしい。


「マナって食べ物から吸収してるんじゃないんですね」

「もちろんよ。食べ物から吸収も多少はするでしょうけど、ほぼ無いわ。どちらかと言うと魔石の材料を取り込む感じね。だからこそ、好き嫌いしてはダメよ?」

「え……」


うわ~ 予想が半分だけしか合ってない。魔物の肝臓食べてもマナは回復しないのか。


「魔石の材料を取り込むとどうなるんですか?」

「マナの総容量が上がるわね。人間とエルフのマナ容量の差は種族と言うより、寿命とか食生活の所為だと思うわ。たぶんね」

「では魔物が肝臓とかを好んで食べるのはマナ容量を上げる為と言う事なのですか」

「そこまで考えてるかは知らないけど、魔物が使う魔法なんて生命属性ばかりだからマナ容量が多い方が強くて生き残るんじゃないかしら?」


なるほど。魔物もマナ自体は外部から吸収なのか……


「では、容量の少ない今の私では余り意味が無いのですか?」

「あなたは今、念話や思考強化の刻印に若干だけど消費し続けてるし必要でしょ?」


そだ、そっちがあったか。


「それに容量を上げる効果は無いけど、連続で魔法の練習するなら便利じゃない?」

「なるほど~ 容量の少ない今こそ必要なんですね」

「まぁね。精霊樹の近くなら有っても無くても一緒かもしれないけど、ここはマナ薄いしね」

「そっちもあるのか……」


なるほど、なるほど。外部の環境と吸収性能に最大容量と……


しかし、この刻印だが魔道具とは全く原理が違う。刻印はインクも二種類しか使用しないし、刻印の形から回路的な物が読めない。これも習えないかな~



「じゃ、最後にマナ共有の刻印ね」

「共有ですか?」

「そう。私の方が多いからあなたにマナを送る事になるわね」

「大丈夫なんですか?」

「何が?」

「ロァヴェルナさんの方が一方的に減るんですよね?」

「あなたが減ってなければ受け取らないし、受け取らなければ止まるから(あふ)れたり無駄になったりはしないわ」

「そうなんだ。解除できないって言うからちょっと心配しました」

「大丈夫よ。皮膚を削るなんて言ったけど、たぶんあなたの美白魔法で消せるもの。 ……さて、始めましょうか」



最後の刻印は結構小さなものだった。尾骶骨(びていこつ)の上辺りだ。耳の後ろに書いたのも小さいから、胸の刻印だけがかなり大きいく感じる。胸に書いた刻印はいくつかの機能を組み合わせてあるのかもしれない。


しかし…… この人、すっごい尻をなでるのですが……

危険な人か? 刻印書いてる場所はもっと上だぞ?



「さて。じゃ、画像を送るから私にも書いてくれる?」

「はい」

そう言って下着まで脱ぎだす。いや、見えてる! 見えてる!


「赤くなっちゃって~ その記憶を保護しても良いわよ」

「しませんから!」

「コツは、良ーく見ながら特徴を口にしながら行なうと詳細まで思い出せるわよ?」

「しませんってば~」

「ふふふっ 冗談よっ」


距離感が近すぎるんだが、こっちが元々の性格なんだろうか?

好感度上がるような事をした覚えがないんだが……



刻印の効果は絶大だった。マナが全く減らない。胸のマナ吸収も効果が解るほど回復してるし、かなり大量に使って減らしても共有刻印で腹の奥に注がれてくる感覚がある。


これだと共有刻印だけでも良さそうなものだが共有には効果範囲があるらしく、ロァヴェルナさんと離れ過ぎると止まるらしい。帰っちゃうかもしれないしやっぱ必要かぁ




 【 とある春の日 】



 使える魔法と魔力量が増えたので魔道具の製造関連も何とかしたい。


今年成人した数人が、何故か俺の下に付く事になったしな。ただ、出身が商人の関係者ばかりなので今一信じて良いか判らない。それでも母の推薦もあるようだし、分業させ独立を警戒しつつ業務委託(ぎょうむいたく)しようと思う。魔法の原理の教育なんかは後回しだ。


現在生産が全然足りないのが、足と腰用の2種類の補助具である。そう、メイドさんのご要望に応えたアレ。長距離を歩く行商人が旅用に買ってくれるんだそうだ。


何故か巡回する兵士から農家、果てはエルフの警備隊にも売れてるらしい。

そして何故か短パンと組み合わせて使ってるそうだ。意味が解らん!


足用の靴下っぽいあれ、太ももの上まで長さがあるんだよ。効果範囲の関係で太もも、脹脛(ふくらはぎ)(おお)う必要があるからな。で、ゴムが無いからベルトで吊ってあるんだわ。男のガーターベルト姿なんて見たいか? 何故かそれ用の短パンもウチで作ってたりするしさ。それごと入る太いズボンって発想は無いらしい。


弁明しておくと別に女性のそういった姿が見たかった訳じゃないぞ?

メイドはスカートだし、長い靴下(サイハイソックス)が多少厚手の生地でも問題なかったんだ。



分業は魔道具の魔法陣を版画の色分けのようにパーツ毎にパターン分けし、インクの種類毎に作業担当を変える事にした。結構細かい作業もあるのでそう言う物は手先が器用で技術や適性を持ってる人や土属性魔法を持ってる人に任せている。魔法があるこの世界にわざわざ光学顕微鏡まで作って目視検査の工程も入れた。


版を作るのも手順書(マニュアル)を作るのも面倒ではあるが、他にできる人がいないし俺がやるしかない。流れ作業で魔法陣を積み上げて行き、最後は土台となるベルトと組み合わせて実際に動作確認して貰う。そこまでいけば販売は父様のところで一括だし、後はお任せだ。



時間の掛かる作業が手から離れて嬉しくはあるが、新しい製品ができたらまた俺が版を作る事になるんだろうなぁ


まぁ、この収入の一部が俺の護衛代金になるのだし悪くは無いんだけどね。

それに魔力が増えたって事で金属を含む魔道具にも挑戦できるようになったんだ。作り終えた物より新しい技術を是非とも試してみたい。新人職人たちには今後も意欲的に協力して貰えるよう、職場環境と給与は配慮しないとな。



さて、次は何を作ろうか。舟の船外機とか、何とか作れない物かな~

    ※ 船外機 モーターボートなどでプロペラ付いてるアレです。



靴下の魔道具は回復の副次効果として発汗が減る効果があったりします。


魔法陣についてですが、電気回路と似てるのは動力に配線が繋がってるってだけです。それと主人公は電気回路の知識は無く、あるのは電子部品の雑学です。ですので魔道具の本で学んだ技術しか使っていません。


版画風の組み立てが現地にあるかどうかは不明です。

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