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38話  再誕

 【 10歳 初春 】



 今日は子爵領滞在組とエルフ領に来ている。

今回は農作物の種を分けて貰えないか提案する為である。


かなり図々しいお願いではあるのだが、エルフ領の限られた農地で行うより良いと思うんだ。

生産量が足りない物に限ってでも良い。


交渉の結果、かなりの種類の根菜と葉物野菜を分けて貰えた。

想像以上に簡単で驚いた。


良いのかな?


理由を聞くと、収穫できたら全種類一壷ずつ漬物にしてから持って来る事が条件なのと、子爵領で消費できずに残ったらこちらに売って欲しいと言われた。


どんだけ漬物が気に入ったんだ……


その他、おすすめの果樹の種をいくつか貰ったが、こちらは無償で良いとの事だった。

ただ、実が()るまで結構時間が掛かるそうだ。


ありがたく戴こう。お礼は別途考えるさ。良き隣人で居たいからなっ




 【 とある初春の日 】



 その日はロァヴェルナさんと二人で森を散策していた。


何やら気配を感じ、振り向くと背後に赤黒い巨大な肉の塊が居た。

「スラ……




 【 閑話 】   再生!



 「……あははっ 何やってんよぉ ……ほら、早く出てきなさいってば。 ? ……ちょっとぉ?」


……


「ちょっとっ ナメクジ! 腹の中の物を出しなさいっ! んっ? ……きゃーーっっ」

『ロァヴェルナより、緊急応援要請っっ!! 客人が死亡っ! これより救命・維持を開始します。クレイリナ、パスニーナ、ロニセは至急、応援に来てっっ! お願いっ! 急いでっ』


『死亡なの?! これから向かうわ。でも、生き返すなんて出来るの?』

『判らないっ! 昔、ラキシ姉さまが成功した話を聞いた事あるだけ。でも、やらないとっ!』

『巡回2班も向かってる。周辺警戒、集落からも人を廻せっ それと倉庫に近い者、布と水、蒸留酒を持って合流しろ!』

『他に治療が得意な子はなるべく来て。血が全く足りないの』



「「ロァヴェルナ!」状況は?!」


「客人がナメクジに飲まれて、救出したけどバラバラなのよ!」

「「ナメクジ?!」」

「とにかく、腹の中から体の残りを探して! 私は脳の維持で動けなくて」

「判った。ラゼは周辺の整地と簡易で良いから床を張ってくれ。他は警戒!」

「判った」

『ヴァンツェだ。状況はかなり悪い。急いでくれ』



「ロァヴェルナ!!」

「ロニセ! 後の二人は?」

「直ぐ来るはずよ。何をしたら?」

「ヴァンツェが今、体を集めてるから骨を組み立てて。胴体から優先で!」

「判ったわっ うぁ! これ、どういう状態よ」

「ナメクジに食べられちゃって……」

「ナメクジ?! ホントに? それで傷を負うの?」

「実際負ってるのよっ まともに残ってるのは頭蓋骨と左肩しか無いし、とにかく繋いで」

「でも、この状態で魔力なんて通るの?!」

「血の中を無理やり私のマナを通して延命してるからそのマナで骨を繋いで! 後はあの二人が来たら造血魔法で血を作って貰わないと、とにかく血が足りないのよ」

「解かったわ。骨ね……」



「おいっ ラヴェ…… うぁ、ひでーな……」

「男性は警戒と環境をお願い。女性はこっちの手伝いをお願い!」

「解かった。男の半数は残って除湿と清浄。上方(じょうほう)も警戒! 屋根も作れっ 残り、行くぞっ」

「「「おうっ」」」



「お待たせっ! 「きゃーっ どういう状況?!」」

「二人とも説明するけど、造血しながら聞いて!」

「判ったけど…… これっ 肝臓のほとんどと肺の片方も無いみたいだけど、このまま続行?」

「続行で。心臓は動いてないけど、血管内をマナを通してるから造血を優先。ある程度血を確保できたら肝臓の断片から修復をお願い」

「うん…… ここまでの治療はした事ないわ」

「……わたしもよ」



「ロァヴェルナ、これでほぼ全部だ」

「ありがとう」

「俺も周辺の警戒に回る。今は小さい虫だろうと来て欲しくないだろ?」

「うん、お願い」


「ねぇ、ロァヴェルナ。これ頭蓋骨も割れてない?」

「うぁ じゃ、髪全部焼いて、開いて修復ね。トァルケーお願いするわ」

「はいっ」

「それと顔は後回しで良いけど、眼だけは戻しておいてね」

「難しい…… けど、解かった」


……


「みんな、交代で休みながらお願いね。心臓を動かせれば楽になるから」

「その動かすのが大変なんじゃないの?」

「まぁねぇ 脳を維持できているから、脳から命令させれば動くはずなんだけどね」

「ラキシ様が行なった事があるって本当?」

「一度だけらしいけどね……」

「助かるのかな……?」

「この子、まだ10年しか生きてないそうよ。こんなところで終わって良いわけ無いじゃない……」

「10年…… そうね。そうよね」




 【 とある初春の翌日? 】



 起きたら裸のロァヴェルナさんに抱きしめられてた。と、言うか俺も裸?

どう言う状況だ??


周りにもエルフの女性が大量に寝てるし、意味が解からん!


あ~、そっちは服着てるぞ。でもホントどう言う状態?

朝チュン?


つーか、結構血腥(ちなまぐさ)いな、この部屋。


この部屋はやたらと太い柱がある不思議な部屋だった。全体的に真っ黒な色彩の部屋だがエルフの技術なのか全体的に明るい。初めて見ると思うんだがな。何故だろ? と言うか、入った覚えが無い。


ほんと解からん。起こすのも何だが裸なのがちょっと気まずい……


寝る前に何があったっけ?


……ダメだ、全っ然っ思い出せんっ!!


しゃーない。寝るか……


……寝れんわっ



それからしばらくして周りの女性が起きたようだ。


「? ……お~ 無事生還したね。おめでとう。ロァヴェルナに感謝するんだよ。うあ~~、体が(きし)む~」

「……ん? ……ロニセ? おっ 生き返ってるじゃん。流っ石っ」

「「……ん ……何っ? お~~っ」」


騒いだ所為でみんながどんどん目を覚ます。

生き返るって何だ? 死んでたの??


「えと?」

「ロァヴェルナは最後まで頑張ってたから、もう少しそのまま寝かせてあげなさい。私は帰るわ」

「わたしも~ あ~~ 今日はこのまま診療か…… 流石に(つら)いわ~」

「そっか。私もだわ…… 客人! 感謝してね。いっぱい感謝してね。それじゃっ」

「じゃっね~」


まだ寝てる人も居るが順次帰って行く。

ホント誰か説明してください……




 それからしばらく経ってロァヴェルナさんが起きた。


「! 良かった…… ほんと良かった……」

きつく抱きしめられた。


「私って死んで居たのですか? 「ごめんなさいっ」なんか……」


「ほんとに?!」

「どこまで覚えてるの?」

「全く記憶が無くて……」

「ナメクジに食べられたのよ……」

「ナメクジ?」

「そう、ナメクジ……」

「思い出せない~ 本当に?」


ナメクジ? どうしてそうなる? 人を食える大きさなのか?!

この世界の本は姿が描いてあっても大きさが書いてないんだよ。年齢次第で大きさがかなり違うし、大体は親から教わるのが普通だ。生息域って余り変化しないからな。


「本当に! ナメクジに飲み込まれた人ってのは聞いた事あるけど、怪我した人なんて居ないから驚いたわ。と言うか、過去含め一番(あわ)てたわ……」


800歳のエルフの過去で一番(カコイチ)って凄いな。いや、俺の事なんだがさ。

死因がナメクジとか……


「お世話になりました。命の恩人です。この御恩はいつか必ず返させて貰います」

「いえ、もっと先に知るべきだったし、注意もするべきだった。取返しのつかない事に成りかけたのだもの……」


「いえ、それでも助けて戴いたのは変わりませんし、身を守れないのに来たのは自分の意志ですから」

「それでも、次は護衛を増やして貰いましょう。こちら側に来るのを()めるなら別だけどね」

「両親と相談します。止めるのは嫌ですよ。折角出会えて、仲良く成れたのに」

「魔法を教えるだけならあなたの家で教えるわよ?」


「あなた達と経験する全てが楽しいんです。だからこちらに来るのも止めたく無いのです。お願いします!」

「……あなたがご両親を説得しなさい。私はあった事を伝えて謝らないといけないの。判断はご両親次第だわ」

「解かりました。でも、本当にありがとうございます。助けて戴いて」

「まぁ、かなり冒険的だったけどね。まさか使う事になるとは思わなかったわ」



本当に死んでいたらしい。

それもバラバラのぐちゃぐちゃだったらしいぞ。


前世のナメクジの構造は知らないがこちらのナメクジの喉には刃が生えてるらしく、飲まれてバラバラにされたらしい。


ちなみにエルフの子供だと無傷の上、自力で腹をぶち抜いて出てくるらしいわ。

基本性能(スペック)が違うっっ!


兎に角死んだ俺を組み立て、心臓を動かしたそうだ。

全身、取り合えず違和感は無し。記憶が怪しいが直前が消えてるくらいだと思う。

いや、それどころか火傷痕なんかも全部消えてる。と言うか、髪がねぇ。



しかし……

冷静になってきて、裸で抱き合ってるのが気になる。恥ずかしいんですが……


「全身触ったのに今更じゃない。私なんてあなたの内臓まで触ったわよ?」

「それ、数に含めないで良いです…… 私は解かりますが何でロァヴェルナさんは裸なんです?」

「服着てたらどんどんあなたの血を吸っちゃうんだもの。どうせ、もう着れないし」


指さされた方を見ると血腥い布の塊があった。


「……ご迷惑を」

「まぁ、良いわ。帰りましょ」


大き目の布を渡され、それを羽織って建物を出ると森の中だった。

太い柱だと思ってたそれば樹を(おお)った物で急遽作った物だと判った。


聞くと男性、女性問わずかなりの人が俺を救うのに協力してくれたらしい。

……生きてる内に恩を返せるだろうか。



生きて、長生きして、積み上げて返して行こう。



この物語の治癒魔法での傷の(ふさ)がる速度は傷の状態で変わります。

欠損の無い切り傷等は内側から順に塞げば両面から回復するので速いですが、切り離された物は本体側の回復力しか発揮せずかなり苦労します。そして切り離された物同士は治癒魔法が効きません。


不測の大仕事を頑張ったにも関わらず、翌日も関係無くお仕事。OL的悲哀……

遅れて来た2人は仕事中でした。

エルフにも仕事はあります。

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