表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/69

30話  近未来系森人

 【 9歳 夏 】



 翌日も朝から交渉である。

今日のお昼過ぎには帰路に就かなきゃいけない。


どうしても聞いておきたいのは海と塩だ。


もしかして製塩してたりしないだろうか?

王都より確実に近いから値段次第では是非とも置き換えたい。


「こちらって、塩はどうしてるんですか?」

ロァヴェルナさんに聞いてみる。


「ん? 動物からの抽出よ? 魔法ね」

「あれ? 海では無いのですか?」

「不足してないしね。そう言えば、海に行きたかったんだっけ?」

「ええ…… 塩が確保できたら良いな~と思って」

「南に行っても崖を削らないと降りられないわよ?」

「崖のままか~ 皆さんが通路を持ってるんじゃないかと少し期待しちゃいました」

「塩のためだけにそこまでする気はないわねぇ」


塩の抽出方法を聞くと土属性魔法らしい。

そして残念な事に売るほどは採れないそうだ。

残っ念っっ


「そうですか~ その仕方って見せて貰う事はできないでしょうか?」

「一緒にやってみる?」

「是非っ」


「帰りまでに獲物を用意して貰っておくわ」

「よろしくお願いします」


うれしい~ 凄い収穫!



その後、次回の交易のお話しを進めていった。

穀類が売れそうで、布は売れない。だが、糸でなら売れる可能性が有り。


そして、紙は全く売れないそうだ。


こんな知識層だらけなのに紙の需要が無い? 見もしないで断られてしまった。

また筆記用具が違うのだろうか?


質問してみたところ、文字が(すた)れたらしい……

これだけの高度文明なのに??



でな、聞いたら凄い事がわかった。


この人ら、脳内にメモを取れるらしい……



文字でも音でも無く、思考を保存する魔法を開発したそうだ。


思考なので簡単な画像もイケるらしいぞ。

更に、お互いがその魔法を使えるなら渡す事すらできるんだとか。



……どーいう思考回路してたらそんな物作ろうってなるのか!

ぶっ飛び過ぎっっ


脳内に画像保存機能や通信機能搭載とか、サイボーグじゃないだろうな?


……いや、


そうか、機械が文字を必要としない理由と同じなのか。

伝達できるようになった事で目を経由する『文字』の必要が無くなったわけか。


意外とこれも順当な進化なのか?




 帰る時間が迫って来たが、ロァヴェルナさんが塩の作り方を教えてくれるらしい。


良かった、覚えててくれたか~


「今回は獣でするけど、虫でもやり方は変わらないわ」


「はい! よろしくお願いします」

「他の人は良いの?」

「この中だと土属性魔法を覚えてるの私だけなので……」

「そうなんだ」


「じゃ、まずは体液から精製するので獲物の血管に傷口を作ります」

俺も見て真似をしていく。


「そして傷口に手を当てて、体液全体に魔力を通す」

全体? こうかな?


「できて無いね~ 液体全部を握る感じよ?」

「握る?」

「魔力の効果範囲が全然広げられてないじゃない? きちんと自分の魔力の通りを見ながらゆっくり、しっかり広げてみて? 血管に沿()って奥に奥にね」


「見る??」

「ん? え?! そこから?」


またもや常識違いです。見える物が異なるのか?



ここから更に説明して貰うと、別に目の構造が違う訳では無いらしい。


要は魔法で目を強化しながら見ると魔力の流れ、マナを通した際の微量の発光が見えるのだそうだ。長波長、赤色側に微量の発光があるらしい。


何かな~~

どんだけ発展してるんだろうか……

可視光の外側、赤外線の概念を理解しているっぽい。



土属性魔法以外は全く使えないと言うと、器に血を移して行なう事になった。


「じゃ、手を入れて血、全体に魔力を通してね」

「はい」


「今度はできてるわね。じゃ、まずは塩を思い浮かべる。脂や水が一切混じってない塩よ」


「……はい」


「最小限の物質。粒、結晶の形までしっかり想像してね」

想像する。


「じゃ、水分を器に全部残すつもりで、手の中に結晶を掴んで持ち上げて……」

「こうかな?」


手を開くと少量の塩が残った。


「お~ お?!」

「え? それは??」


何故か彼女の手には赤い塩が……


「赤いっ?!「白い??」」



ここでも常識が違ったようだ。


衝撃的な色をしているな~


「随分とサラサラしてるのね」

そう言って俺の作った塩を一つまみ舐めた。


「成功かな。まぁ、これで海に行かなくても良くなったでしょ?」

「ありがとうございます!」



そう言う意図だったのね……

単なる善意かもしれないけど、海が見たいとは言えなくなったな。


そのあとは次に伺う日時を決め、別れを告げて帰路に就いた。




 南端の停留所兼兵舎で一泊し、翌日の昼前に家に着くと直ぐに両親に捕まった。

こちらからも色々報告したいので居てくれて助かる。


父様はこの後文官や護衛からさらに話を聞くだろうが、先に報告をしておかないとね。

特に俺からは魔法関連と食料に関してだ。



両親と兄と俺の4人だけで話し合いが始まった。


まずは、見張りで会ったエルフですら光、無、土、距離の属性魔法を複数使いこなしていた事。集落には結構な人数が居た事。そして、その人数分の食糧を自給自足できてる事などを伝えていく。交渉に対する穏やか拒絶の反応も含めてだ。



「侮れないどころか、かなり進んだ文化の人たちでした。集落と言ってますが小国と考えた方が良いかもしれません」

「それほどか……」


「あのような種族って国内に多いのですか?」

「いや、見た事も聞いた事も無いな。フィルトルァは聞いた事あるかい?」

「無いわ。西の山のドワーフとは違うのよね?」

「そちらも私は知らないのですけど、1000年も生きるような種族なのです?」

「どうだったかしら? 覚えていないけど、1000年は無かったんじゃないかしら」


「500年前から居たのに何も無かったのですから、危険な人たちでは無いとおもうのですけど……」

「その辺は国が考えるだろう」



「エルフの人から昔は争った事があるって聞いたのですけど、争いになりますかね?」

「そうなのか? ならないと思いたいが、過去に何があったのか判らないしな……」

「知らない種族なのですから、知らない種族と報告してはどうですか?」

兄が曖昧にする事を提案した。


「それに賛成です。何なら今も交渉中って報告しちゃうのはどうですか?」

「そうだね。僕もそれが良いと思うかな」

「そうね~ でもお義父様には本当の事を伝えておいた方が良いと思うわ」

「だが教えて隠させるってのも気が引けるんだがな……」

「ですから、調査中で判ったらまた連絡するって知らせましょうよ。もしお爺様に心当たりがあれば連絡が来ると思いますし」

「ん~ そんなところか」

「そんなところかしら?」


「では、また調査に行ってきて良いですか?」

「待ってよっ 次は僕が行ってみたいな」

「えぇ~ あ! 良いですよ。鍋を注文しないといけなかった」

「「「鍋?」」」


「鍋って、鍋?」

兄が身振り手振りで確認。


「いえ、深めの片手鍋の予定です」

俺も身振り手振りで回答する。


「あの人たちの料理は美味しかったのですけど、鉄の調理器具は無いようなので贈り物にしようと思って」

「微妙な贈り物ねぇ」

「織物でも負けてましたからね。何で喜んでくれるのか判らないんですよね~」


エルフの布は少量貰っており、既に両親に渡している。

贈答する相手が居なかったため反物のような形では用意されておらず、衣類にする前の物を少し貰っただけだ。それでも技術の差が大きいと両親も解ったらしい。


「僕は何を持って行けば良いかな? 手ぶらは嫌だよ?」

「穀物で良いと思いますよ。平地の穀物は無かったので何種類か用意するのが良いかも。後はお酒かな? ワインのような物は飲んでましたね」

「なるほど。それで良いか~ 父様行ってきて良いですか?」

「既に行く気じゃないか…… まぁ気を付けて行っておいで」


次回は兄が文官と一緒に行く事になった。



そして俺は鍋と鉄インゴットの注文をした。


鉄の到着まで赤外線が見える眼鏡でも作ろうかな。

できるのかね~ プリズムでも使えば良いのかな?


いや、長波長をどうやって可視化したら良いのやら……

感光素材を使う必要があるのだろうか?


何で出来てるんだろ?



エルフは機械生命体ムーブしてますが生身です。


エルフの塩はこれだけでは供給が足りません。

過去からの貯蓄分を持っています。


会話が誰の発言か判りますかね?

多少は情報を込めてるつもりなのですがどうでしょうか。


相変わらずのボディランゲージ兄弟です。



新学期に合わせてみた! みんな勉強がんばって~

一週間連続投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ