表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/64

2話  ここは何処だ?   / 未知と不可知 1

 【 0歳 冬 】



 日々寒くなってきた。

メイドが熱を発する何かを何個か部屋に設置していった。


何だろ?


煙、匂いは感じられない。焼いた石か何かだろうか?

熱源としては部屋全体を温めるにはちょっと弱いかもだが、布も豊富でそれほど寒くは無い。

もちろん、触れない距離に置いてあるぞ。



実際の緯度(いど)がどの辺りかは不明だが、ここは日本くらいの気温帯じゃないかと思う。


そう言えば今のところ雨が多い(雨季の)記憶も無いか。


年間の気候が緩やかだと良いのだけどなぁ

電気やガスの供給が怪しいからな、極寒や豪雪とかはとても困る。



 排泄(はいせつ)ブツから毛布を守る為なんだろうが、おむつも毛布も無茶苦茶増やすから暑いし蒸れる……


風邪じゃないのに熱出そう~

これにプラスで、メタンガスによる温室効果が局所的(オムツ)に発生するのだろ? 泣けるぜ~



最近気付いたんだが、俺の衣類は袖が無い浴衣(ゆかた)に似ている。

真っ赤なので着物の襦袢(じゅばん)に似てるって言った方がいいだろうか。


妙に赤黒い感じが不穏で怖い。

これ、染料はなんだろうか……


浴衣と微妙に違うのは襟の部分が太めの帯状になっていて反対側の脇下で止める事かな。

後は左右の胴の部分を巻いて帯で留める感じだ。


そう、帯なんだよな~


スナップボタンどころか普通のボタンも無し。

西洋文化圏ですら無いかもだわ。






 暇なんだよ! 誰か話掛けてよっ。

メイドに抱えられ母の所に移動すると母が俺より2個くらい上の幼児を抱えていた。


お~っ 兄弟居たのか~


それで俺はメイド任せなのか?

今頃初顔合わせって普通なんだろうか?


兄(仮)がじーっと見てくる。


さぁ、何か言え……


兄(仮)が指を触って来た


きゅっ


ファーーーストコンタクト戴きましたぁ~~


ちっちゃ……

かわえーっ


兄(仮)がにっぱーと笑う。



2歳児?

かわえ~、やはり元の私は女だったのかもぉ?


ショタか~

拙いね……

うふふ。



……いや、ちげーよ! 今の無し!!


あっちのが年上じゃん、あと俺は男だ! あぶねぇ!! そぉじゃねーんだよ!



お互い(しばら)くニコニコ、ペタペタしてたがジュースが来たタイミングで終了。


ジュースに負けた~っ

少しは躊躇(ちゅうちょ)してよぉ


こっちがしゃべらないとは言え、何か言って欲しかった……

もっと(かま)え~



思うに、この時期に言葉を多く聞くかどうかが、言語能力と情操(じょうそう)教育に係わって来ないか? 暇すぎて虚無(きょむ)(おちい)りそうだ。


能面(のうめん)顔になっちゃうぞーーっ

俺の表情筋に程良い負荷をくれ~


……いや、ここは能動(のうどう)的に動くべきだろ。



んー、構って貰うには……


やっぱり食事かな?

でもいっぱい飲めるもんでも無いし、腹も空かないんだよな。


いやっ、いっそ少なくして回数増やせば良いか?

バレないようゆっくり飲みつつ、飲む総量を減らすのだ。


その上で腹六分目を心掛けつつ、運動し筋力を付けエネルギーを消費。

心地良い疲れで睡眠を取ると……


行けるか?


……行ける気がする。


まるでアスリートだな。来たれっ 勝利の女神(母様)!!



まー、現実は囲い付きベッドな上、布(まみ)れではできる運動も限られるけどな。

鍛える筋力は手足の指と首の筋肉、それと腹筋、背筋、内転筋っ!

そして最重要…… 括約筋だぁ!


アレが(ゆる)めなんだよぉ。


早くオムツを卒業した~~い!



結果、この小賢(こざか)しい作戦により母に構って貰えるようになった。


更に言うと飲む回数と総量が増えた事でオムツの交換頻度も上がり、メイドさん達の手間(ふれあい)も増やしてしまった。


すまにゃい……


自分の足でトイレに行ければどれほど良いか……


あぁ、乳児なのに気分は介護老人……

しかも頻尿(ひんにょう)


夜は多めに飲むので許してほしい……




 【 閑話 】   母は不本意



「奥様、下の若様が最近私達の言葉を真似し始めました」

「あら、そうなの? 随分と早いわね」

「口元を見て真似てるだけなので言葉と認識してるかは疑問なのですけど……」

「そう? 覚えるのは悪くないわ」


「それが、その…… どうもおしめを替えてる時の言葉を覚えたらしく…… その…… 『おしっこ』と……」


「……連れて来てもらえる?」

「はい」


「良い子ね~ 次に覚える言葉は『お母さま』よ~」

「?」

「『お母さま』」

「う゛ぁ?」

「『お・母・さ・ま』」

「おう゛ぁ??」

「『お母さま』!」

「流石に一度では無理では無いでしょうか?」


「それもそうね、少し多めに話しかけるようにしましょうか。変な言葉は教えないでね」

「気を付けるように致します」


「ぐぁ~ぅ」

呑気(のんき)な子ね~ も~」




 【  1歳 春 】



 日常観察からの推測~っ


布は結構良い物が使われているが材質は不明!

綿では無いような気がする。


手触り的にシルクっぽくはあるのだけど何かが違う。

糸一本に紡ぐ本数が多いとかなのかな?

疑似的に作られた化学繊維ってわけでは無いと思うが何だろ?


実は次世代的な化学繊維とかなのか??

ナノファイバーが更に発展したとかでトレードオフで染料が付き難いとかなのだろか?


でも、窓ガラスの歪みからして国が発展してると思えないんだよな~

何を疑って良いか判らーん。



布の織目の品質から見て機械織りだとは思われる。

そして色も多彩で染料も豊富なようだ。ただ、色は薄い!


色は趣味や流行(はやり)の可能性は多々ありそうだが、着色技術の差の可能性が高そうだ。


模様は壁掛けやカーテンには多いのに衣類には余り無いんだよ。

プリントや刺繍が無いのかな?



メイドの靴は柔らかそうな皮で出来ている。

足の裏は見えないが、歩く音からしてゴムじゃないと思う。

皮に見えるが、新素材とかの可能性もあるか?


過去の時代よりは未来の方が納得できる程度かなぁ


日常での素材はプラスチックは全く見当たら無く、木材はそこそこ、籠のような編み物が多い気がする。床は石の上に植物系のスポンジのマットのようなもの。どうなってるんだろ。



そう言えば掃除機のような家電も一切見当たらない。

時代が違うのか?


改めて見ると、腕時計もしてないな。


携帯電話を使ってる所も見てないし電話の音、車のクラクションも聞いたことが無い。ほんとに時代が違うのか?

     ※クラクションはホーンと言うべきかもですが主人公はこちらを使用



それでも近代的では無くとも平和ではあるのかな?

しばらくは言語の取得に努めよう。飢えと凍えの心配が無いのは大きい。


今後の方針は……


目立たない方向で!!




 【 夏 】



 まだ立てんが()う、転がる事で行動範囲が若干増えた! ……気がする。

ここは長期的視野を持ち、更なる鍛錬に勤しむベきだろう。暇だしな。


石の上にあったタイルっぽい何かだが、草を固めたものっぽい。

乾燥したマリモってこんな感じなんじゃないかな?


行くぜ!

我による我の為の新兵教育(ブートキャンプ)じゃ~



……籠に入れられた。


ふっ、まずは脱出の任務(ミッション)か。

中々に困難(ハード)だぜぇ




そうそう、俺にも歯が生えてきた、ついに。


成長を実感するが、乳が遠のくぜ~

だが母がニコニコだから、こっちもニッコニコよ~




 【 とある夏の日 】



 思いついた事がある。夜に星座を確認したら地球かどうか位は確認できるんじゃないかと!

南半球だと知らない星座かも知れないけどね。


……


夜、起きれませんでしたーーっ


いや、もうちょっと背が伸びてからでも良いかな。どうせ自分じゃカーテン開けれないわ。



その後、数年忘れていたのだが夜空を見て現代の地球では無い事が判った。


まず星座での判別は無理だったよ。

なんせ闇が深すぎて見える星の量が全く違い、知ってる夜とは別の光景だったからだ。


一等星どれ? ってなるレベル。星が多すぎて北極星もオリオン座も判らん。

それでも判別できた理由は地球なら当然あるべき光景が異なったからだ。


衛星は月っぽいのが確かにあったんだぜ?

だがそれ以外に何か変な真っ黒い何かが一緒に周ってた……


光を反射しない材質のゴミ(デブリ)の集合体?? ガス?

鉱物ですら無いかもしれん。


背後の星座が見えない程の丸い何かだった。



月っぽい方も合ってるのは大きさだけで、模様に違和感がある状態だったからいっそ判断に困る。

むっちゃボコボコ。何があったの君?!

しかも、ゆっくりとだが回転している。

多分原因は側面に走る長い傷跡! 歴戦の戦士っぽい。



星座も一切見覚えがない。


これでここが地球の北半球だとしたら万年、億年は違うと思う。

もちろんまだ南半球の可能性はまだあるのだろうがな。

荒廃した地球の可能性も考慮せねばならんのか……



ここまで来ると大前提が重要になる。


太陽は東から登ってくるのか?

この星は24時間で一回転しているのか?

などだ。



まず、ここは地球なのか?

見えてる恒星が太陽じゃなかったら星座が異なって当然だ。


あとは時間が経って太陽の位置が大きく変わったとかでも星座は変わるのだ。


例えば時間が経ち銀河が膨張し、形状が変わって太陽の軌道が変わったとか、金星や火星を振り落として地球の軌道がずれたとかさ。

多分気温からして太陽と地球の距離は大きく変化はしてないとは思うが、星座の違いは怖い。


更に言えばだが、同じ次元なのか?


元素数は同じなのか? 質量は同じなのか? とかね。


転生なんて未知の現象を体験したんだ、何も確信できない。

異次元、異時空だったら原子と電子の関係は同じなのかって事よ。


それに、そこまで行かなくても宇宙船に乗って違う星に移住した可能性だってあるんだぞ。

その場合、辿り着いた星の重力が地球と異なれば何らかの変化があるはずだ。


まぁ、科学レベルは低そうだしそれは無いとは思うけどな。



人の顔を覚えてないのに星座を覚えてる。


奇妙なんだが、たぶんって感じで自信も無い考察だが、自分自身を忘れた影響なんじゃないかと思う。

自分の知り合い等、自分のって付く項目がまとめて消えてるようだ。


消さなくても閲覧(えつらん)出来ないようにするだけで同じ状態になる。

それこそハードディスク内では1Bitの変更でまとめて消えるのと一緒だ。


先頭を消せば参照先(リンク)がまとめて外れる。

要は前世の「俺の経験」ホルダーがゴミ箱に入ってるんじゃないかな? きっと。

一般常識の方は言語側に分類されてるのかも知れない。


ゴミ箱から 回収 (サルベージ)できれば一気に情報が増えそうだが相当危険な気がする。

無理やり思い出せたとして、問題なのは回収した記憶がどこに書き込まれるかだ。


既に俺は他人(新品)なんだぞ?

上書きは困る!


少し考えて止める事にした。『今』を対価に払う価値なんて無い。


母が大好きだからなっ!




 【 秋 】



 謎のジュースが美味い!

是非とも実況解説したい程だが、何味か全く言い表せないあたり異世界なのか? ってなる。


過去の経験が無いせいもあるかもだが、比類無く無暗に美味い。


この家は基本、裕福ではあるようだ。メイドも一時雇用って感じじゃないしな。

ただ文明レベルは低めかなぁ、コップが(いびつ)だ。



リビングに行くと赤子を抱えた10代くらいの女性が居た。


父の反応、対応を見るに妻っぽい。

いや、妹の里帰りとかか?


二人の雰囲気からして妻だと思うんだが……



赤子は大きさからして俺の半年か1年下くらいかな?

生まれたてって感じじゃない。


妻が二人以上は居ると?

この家庭は結構裕福なのかもしれん。


いや、待て待て。兄はどっちの子なんだ?

母は正妻? 側室? 謎だらけだ!


あ!!

いや、違うな。落ち着け、俺っ!

兄は母の子だろ。この女性だと流石に3歳の子持ちは年齢的に有り得ないわ。


一夫多妻ができる国ってどこだ?


ある程度四季がある緯度で電気が無い地域??

国土が広い国なのか? もしくは離島なのか? 情報が足ら~ん。




 相変わらず母たちの会話も理解できず、知ってる単語も出てこない……


う~~む。


まっ、いっぱい聞いて使ってみるしかないか!


がんばれ、俺!!




__________


 【 未知と不可知 1 】



過去より人々は思考し、道具を駆使して未知を可能な範囲で減らしてきた。

このため過去の人より今の我々は知識があり、未来の人々は今の我々より必ず知識がある。


己の未知を理解し、学べば知識は追いつくだろう。

しかし追い越すためには意欲と知恵が必要である。


意欲とは好奇心であり、知恵とは複数の知識を組み合わせて生む新たな工夫(くふう)だ。

届かない知識を欲するなら既知(きち)の知識、既存(きぞん)の道具を組み合わせ予想を証明して行くしかない。



その上で人は完全な知識を得る事は叶わないと心得るべきである。


人の目で見えぬ物、人の耳で聞こえぬ音、人の足で辿り着けない場所があるからだ。


よって、神の存在や人の内の善悪(ぜんあく)好悪(こうお)など、証明できない事は議論すべきでは無い。


自らの目や耳、感覚、感情が他者と等しく機能しているかを証明する必要が出てくるからである。



一生懸命覚えたその言葉が自分の名前で無いと気付くのは更に先の事です。



既存は「きそん」にするか「きぞん」にするかで迷った。

フリガナは普段会話で使わない物に振ってます。

読めると思うので多すぎと言われるかもですが、どこまでと判断する事こそが難しい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ