25話 作成と課題
【 9歳 晩春 】
お久しぶりでございます。ウッカリ者で愚か者、ルァニエスでございます。
あれからまー、怒られました。はい。やっちゃダメって本にも書いてあったんだわ。
最後の方になっ!!
失敗事例集みたいのはまとめて最後のほうに記載されていた。
その都度忠告しろよ!!
あの時、自室じゃなく倉庫の一室で作業してたんだよ。もちろん一人で作業しないようお付きのメイドも居たんだわ。で、少し危険かもって思って少し離れて見てて貰ったのだが、まさかの爆発よ。
メイドに拠ると、作業中の俺の手元が急に雷のような光と音を発し、大量の煙が出たらしい。多分その時点で俺は気絶。
室内は真っ白に煙で満たされ、刺激臭がしたそうだ。慌てて近寄ると火傷と傷で血まみれの俺が倒れていたので仲間に連絡、治療に当たったとの事だった。
俺の怪我の状態だが、顔の一部と胸周辺に火傷痕が残っているが、指などに欠損は無し。治療後でこれなので、まぁ、結構酷い有り様だ。どうも魔石を伸ばし、途切れる瞬間にマナが電気のように短絡し、激しめの放電を起こしたらしい。残った魔石は俺の指で持ってた部分位しか残ってなかったので、もしかするともう少し大きな魔石での反応だったら指が無かった可能性もある。火傷は衣類に火が点いて燃えたからで、治療されたので余り酷くは無いが胸元がチリチリと痛い。
そして今ですが、母様のお膝の上でございます。9歳にもなって……
言い訳を試みましたが、泣かれてしまい平謝りですよ。
お仕置きよりキツイ。ごめんなさーいっ 失敗じゃ~
今後は安全第一で行かせて戴きますっっ
とりあえずは魔道具作成は一時禁止。再開は本を全部読む事が最低条件だ。もう一度何か起こしたら、学校に行って教師に習ってからだと決まってしまった。
魔石の加工なのだが、本来はハンマー等で砕いた後に抽出するらしい。本にはこれの失敗事例は複数載っており、身体強化して指で圧し折ったら爆発、強化魔法を使ったノミで割断して爆発と続き、三例目に俺がやった、直接魔力を流し引き伸ばして爆発と続いていた。
電池と同じなんだものな。充電しながら割るなって話だよな。
あたり前じゃねーか。
部品を作る程度の量の抽出なら、魔石の表層から一層ずつ抽出するのが良いらしい。
そのくらいであれば漏れた分のマナを魔石が吸収しようと爆発しないし、止めるとマナが押し戻されるだけなんだとか。あくまでマナ過充填状態の魔石に断面を作って短絡するのがいけないらしい。魔石の全ての層が纏めて魔法的な反応、魔学反応? を起こしてしまうようだ。
反応した魔石は多分、空気か何と結びつき白い煙となって拡散したのが爆発なのだろう。反応時に結構な熱が出たのか、両端の残った魔石の断面は熔けて歪な形だったからな。
【 初夏 】
漸く魔道具作成が解禁! 簡単な魔道具の作成をする事にした。
記念すべき第一号は卓上ライトだ。魔石に接点を二か所作りバッテリー化させ、魔力回路に接続。光属性に変更し希望する輝度に合わせて流れるマナ量を絞り、マナを光に変換し消費させる。
やっぱり電子回路じゃないか?
電力が魔力、圧力と流量に線の太さによる抵抗があるしさ。
それから本に書かれていて材料が足りる物をどんどん作っていった。
今日は新しい物を作ってみようと思う。
と言ってもそれほど変わった物では無い。この世界には魔法の絆創膏があるんだが、それの変形だ。
絆創膏は元の世界の物と違い分厚いし、粘着しないので包帯で巻き傷口に固定する必要がある上、魔石を使うので余り売れない。何より大半の人は自分で治癒できるからな。
では何故そんな道具があるかと言えば、意識のない怪我人が大量で出る所では必要なんだなぁ、これが。もちろん切り傷くらいにしか使えないんだけどね。
さて、まずは商人から買った薄手の皮を加工して靴下を作る。最初は靴にしようかと思ったが技術的、経験的なハードルが高い。どうせ最初は効果があるかどうかの実験なので、取り合えず靴下で妥協した。
この作った靴下に絆創膏の魔法陣の効果を改変した物を付属する。
考えたのは効果位置を筋繊維にしたら、長時間の運動でも筋肉の疲労を回復し続けるんじゃないだろうか、だ。筋肉に微細な断裂が多少なりでもあるんなら回復するだろうし、疲労物質が増減するならそれはそれでデータとして役立つ。
作って試した結果、若干疲れない気がする程度の微妙な効果だった。
だが、メイド達には何故か好評……
しようがないので、形を変えて作り直す事に。
靴下では無く、足の裏や足首、脹脛などに這わせる帯状の補助具のような物ができた。
効果が弱すぎて血行が良くなるだけのはずなんだがな……
どうも靴下の内側に履くと長時間の家事で重宝するらしい。
領主邸は倉庫を兼ねてるから広いしね。
……別途胸の下からお尻辺りまでを対応した物を作ると大変感謝された。
やはり腰痛問題はこちらにもあるんだな。
当然のように広まり、何故か領兵や領民の分まで作る事に!
無理だからっ!
少量ずつ生産しながら生産効率の向上方法を研究する事にした。
重要部分以外を外注できれば出荷数が増えるのは判るが、重要部分こそ任せたいっ
俺の魔力は無限じゃないし、ガラスの最終工程は俺だけしかできないし、何か対策は必要なんだよなぁ
とは言え、ガラス精製の魔道具化はできないし、出来ても他領に漏れれば飯のタネが消える事を意味するしな~
要検討だな。
今日は春に使って減った肥料の仕込みだ。
今日の為に色々な魔道具を組み合わせ、作業者用の防臭マスクを作った。これは作る肥料の量と種類が予定より増えた事で、人に依頼する事になってしまって心が痛いからだ。自分でやろうとしたが筋力や身長的に作業に向いてない。
他の人もそのぶん魔法で働けば良いじゃないかと言うしさ……
力仕事なのに今回も手伝ってくれるのは女性兵士。
男達は森の近くで別の力仕事らしく、こちらより危険なんだそうだ。
「若様、これ良いですね」
「若様、私もこれ個人的に欲しいです」
「……何に使うのさ」
「臭いのきついお仕事って結構色々あるんですよ~」
「そうそう」
「そうなの? 使ってて要望とか有ったら教えてね。もう少し機能を増やしてみたいからさ」
「はい、判りました」
「がんばります」
防臭マスクは見た目はオウトツの無い透明な仮面だ。後頭部の魔道具から伸びた配管が仮面の側面下につながり、口元へ綺麗な空気を送っている。あとは淵を皮で塞いで臭いが入らないようにした程度、それほど気密も高くない物だ。
見た目で苦情が来ないか心配だったが問題ない様だ。
俺から見ると、見た目は完全に戦隊もの……
しかも悪役の方!
こちらのマスクもサポーター程じゃないが作るよう父様から依頼が入った。
そう、依頼なんだよね…… お金を出してくれるらしいが、このままだと俺の休みが消える!
本気で生産効率を上げないと拙いな。
……
いや、生産性の効率化ってのが商売に成り得るんじゃないだろうか?
これも並行に研究だな。
行くぞ!
未来の俺を救うために!
負けるな、俺!
追加情報が後ろに増えるのはあちらの世界では常識です。
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魔道具作成が完全禁止にならない理由は、就職が難しいので起業するのが一般的だからです。
安全を確保した上で再開しないと成人後に苦労するので止めはしません。
魔道具ですが、この世界に同じ物が無いかは不明です。子爵領の人が見た事が無いだけです。
流通と宣伝が行き届かず、量産ができない中世と同じ事が起きています。
特許が無い代わりに製法の秘匿が行われています。




