表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/69

24話  幻想魔法工学

 【 9歳 春】



 引き続き舟の改修を進めている。

木の代用品があれば簡単なんだが、蔦を纏めたって舟の代わりにはならないからなぁ


代わりに作ったガラスの浮きは良いのだが、河原での使用は不安しかない。


なのでカバーか塗料、せめて縄を巻く位はしたいと考えていたんだが、樹脂からの連想で丈夫な材質を思いついた。


虫の殻である。あれってキチン質だよな。


もちろん生体由来の素材は土属性魔法と相性が良いとは言えないが、形状変形だけなら多少は行けるんだわ。多少と言うのはだな、認識していない混ざり物の材質は分離して連結から外れてしまうのさ。


生肉を炭素として扱えるのかって話だな。

だから虫の殻を操作すると曲げてる途中で裂けてしまうんだ。

なんか和紙を強く引っ張ったような断面になってしまうんだよ。


これをなんとかできないか色々試したんだが、まず布を手洗いしてるような感じでもみもみして不純物の方を分離する。次に折りたたむのではなく、短く厚くなるように潰していく。


この状態ならある程度曲げる事もできるのでプラスチックの代わり位にはなりそうだ。残念ながら折り返して端同士をくっつけるような事はできないので空気の密封なんかはできそうにない。乾いた紙粘土のような感じかな。



で、これの使い方だが、ガラスの浮き球の保護に使う事にした。浮き球と言ってもガスボンベみたいな長い形状で、積載重量が重い際に三胴船の下に入れて使うようにした。ガラスのままだと何かとの接触で削れて空気が漏れると困るからな。


浮き球の中の空気をヘリウムにでも替えれたら更に良いのだが、気体は手が出ない。まぁ、要検討だな。




 養護院を越え倍の距離に水路を伸長(しんちょう)したところ、領地の真ん中に小さな滝ができてしまった。


水路は領主邸前の川の高さを基準にしていたので、造成し続けると川上に向かう程どうしても水路の水面が地面より低くなってしまう。

どのみち(つつみ)を作る必要があるので河川敷と合わせ領主邸から水平にどんどん伸ばしていったのだが、河川敷と地面との高さもだが元の川との高低差がかなり出たのさ。


まぁ、滝のままにすると音もうるさいし川底が削れても困るので、二個目の堰を作って川の水が伝い落ちるようにした。念のため魚が登れる魚道(ぎょどう)も作る。

必要かどうかは知らないがあった方が良いだろう。



舟は形状はそのままで船体の長さを10m近くに伸ばした。

水路は真っ直ぐなので前後を同じ形状にして方向転換の必要性も無くしたのよ。


方向を微調整できるように両端の舳先に舵を付け、進行方向側の舵で進路の微調整をして貰うようにした。これで問題が出るようなら順次対応だな。


堰の上下には小さな池を作って舟が待機できるようにし、ついでに河原付近に浅瀬を作った。川が周りより結構低い位置になった事で川の水に触れる機会が無くなるから何となくの配慮さ。この世界がもう少し平和で休みが楽に取れる世の中ならば飲食店やデートスポットにも成り得たろうに残念な事だ。


俺には相手も居ないんだがな。




 魔道具の事が書かれている本を入手した!!


ただし王都で使われている教科書なので基本しか載ってない。商用に使えるような物は載っていないとの事だ。まぁ、それは仕方ないだろう、飯のタネだしね。


本を読むと中々に興味深い内容だ。この道に進むのも良いな。


例えば、この世界にも目が悪い人はいるので眼鏡がある。

なのにガラスのレンズが無いんだ。意味わからないだろ?


顔に掛けるアンダーリムな何かがあるんだが、レンズも無しに焦点が合うんだそうだ。無茶苦茶だ。専用に調整する必要はあるらしいが魔道具としては一般的らしい。


どうも光系は魔道具としては作り易い分類なんだとか。ただ鏡の魔法のように使い手が多すぎてなかなか売れないとの事だ。

普段から使う用途の眼鏡なら買うだろうが、本を読む時だけ必要な物だとしたら魔法を使うのさ。遠くを見る時もそうだが、魔法の方が距離の融通や拡大、輝度調整までも使えて便利だからだ。


この世界の方々、頑張れば真昼間に星が見れるからなぁ



魔道具の本にはそこそこ使える物の説明はされているが、売れる製品は当然秘匿されるため本当に基本を覚えるだけになりそうだ。


この辺の感覚が判らないのでどこまでが売れる製品なのかが知りたいわ。ヒーターやライトなんかは十分に広まっているので売れない扱いで、着火装置は秘匿らしい。


可燃性ガスを作るわけでも無く、着火部分が秘匿ってのが理解し難いよな。

火属性魔法では無いのだろうか?


とは言え、面白い! 異世界って感じだよなっ



主な材料は魔結晶なんだが、うちの領は余り気味のようだ。売れるが他領へ運ぶ程じゃないらしい。なんせ、平地以外は害獣だらけの世の中だからな。地産地消を目指すか~


久々に学習意欲が湧くぜ~




 魔道具の原理はなかなかに興味深い。物語の魔法陣なんかとは完全に方向性が違う。なんと言うか、これはどちらかと言えば電子回路じゃないのか?


動力源としての無属性魔力を属性、強度、深度を指示して発動させる。その為にインクの種類を変え属性変更したり、配線を太くして強度を高めたりと法則がある。


属性が単独の場合は最初から属性付き魔力源を別途用意したりと、機能に合わせて配線となるインクが重要なようだ。


そんなのを平面で描こうとするからか、まぁ入り組む、入り組む。裏面使って良いなら穴開けて配線を回避させたいわ。いや、いっそ子基盤か積層基盤を作りたくなるゾ。


こんな事やってるのに本では配線の美しさが重要とか書いてるし、この世界の連中は危機感が足りないんじゃないか? 魔物が居る世界なんだから、美しさより機能数、効率の方が重要だと思うんだけどな。




 魔石について

ある程度の大きさが必要だが魔石にはマナの蓄積が可能らしい。


前に吸いだしたら吸い取られたんだが、どういう事だろうか。

本を読んで行くと基礎となる原理が書かれていた。


魔石はマナを動かす事のできる生き物の体内で生成された余剰物質でできているらしい。なので長時間魔法を使い続けマナが枯渇したときや、マナの吸収で体内の魔力濃度が上がった際に何らかの核となる部分へ余剰物質が吸い寄せられ結晶化していくと考えられている。


できた魔石はマナの入れ物では在るもののそのままでは引き出す事はできない。だが、入口と蓋を作ることで加充填できるらしい。


そして加充填の状態の魔石は徐々に外へマナが溢れ出る。この溢れるマナを利用し魔法効果を発揮する道具が魔道具と呼ばれるものだ。


電池じゃねーかっ

電子の代わりにマナがあったりするのか?



つまりこれって電子容器(キャパシター)だよな。

俺は空の電池から電気を得ようとして失敗してたのかもしれない。


本を読んで行くと最初の実技は一方にしかマナを通さない部品を生成する事だった。この部品とその効果の発見が魔道具開発の始まりらしい。


……整流素子(ダイオード)かな?



原材料は虫の魔石で、魔石には二種類の素材が交互に積み重なってできているらしい。これを認識し二つの素材に分離する事ができれば大半の部品作りができるそうだ。


あれって魔法的な半導体だったのか!

材質は判らないが結石なのは理解したわ。


本にも書いてあるが、魔石はその生物の魔力総容量が増えるのに役立っているらしい。


多分、魔法を使うことで体内のマナ量が変化して、マイナスイオン、プラスイオンみたいな感じでメッキのように積み重なったんだろ。で、その元素を別々に分離しろって話なんだよな?



最初の作業なのでごみ扱いの虫の魔石で作業開始。

土属性魔法で分離していくが、作業はそれほど難しくは無い。結構軽元素のようで魔力消費も少ないようだ。とは言え、玉ねぎのように一枚ずつ()いでいくのが面倒くさい。しかも大して取れないっ


結局二種類の積層なら真っ二つに切ってから断面から抽出した方が楽なんじゃないだろうか?



流石に包丁で割断は怖いので魔力を込め、ゆっくりとねじ切る事に。


マナを通し、うにょ~んと伸ばしていくと


……



爆発した!



続きます。こう言う1話の終わり方は良くないらしいですが、今少しお付き合いください。

実験、実験。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ