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23話  川舟づくり

 【 9歳 初春 】



 冬の間中舟の模型を作っていたのだが、取り合えず舟は保留だ。


造形する事自体は良いのだが、問題は川の方だろ。最低でも川の深さの確保が必要だし、水量の割に流れが急なので緩やかにする必要がある。


今の川の状態のまま船で実験して王都に着いちゃいましたー、なんてやったら絶対怒られる奴じゃん!


と言うわけでだ、春は地形の把握と材料集め、夏に浚渫がてら川を深くしつつ(せき)と堤防を作ろう。この地はかなり川上なので洪水は無いのだけど川が浅く流れも速い。雨が降った時だけ川に浸かる川岸も調整が必要だ。まずは北東と南から来る川の合流地点の先に堰を設置して池にする予定だ。


未だ父様には内緒、直前か直後に言う予定だ。多分察してくれてるはず。

多分な。さて、まず領内の川の位置と高低差の確認が先だな。



ひと先ずは川の高さが変わると困るであろう、俺の水田の位置調整からだな。

土魔法で治水をしたらもっと川のぎりぎりまで農地が作れると思うんだけどなぁ

なんでしないんだろ?


北東の川から入る水口(みなくち)を少し川上にずらし、水田の(あぜ)を高く補強する。去年の収穫は悪くなかったので少し拡張しようと思う。土属性魔法がとにかく便利だ。誰かに依頼せずに済むってのはありがたいわ。既に趣味の領域は超えてる。農夫一直線だな。



農夫と言えば、放置していた肥料も完成させたい。

色々放り込んで肥料を作ったんだが、分析ができないので効果は植えてからじゃないと判らないのよ。虫の死骸やヤギの糞を混ぜた物にリン酸カルシウムと純カリウムの塊を放り込んで放置していたんだよ。


カリウムの扱いが判らなかったからな。発酵してるのか化学反応してるのか知らんが湯気が出てようと放置した。


今年はこれを自分の畑に使ってみる予定だ。そしてもちろん今年も新たに実験せねば~




 川の造成だが、予定を繰り上げて堰を作る事にした。水はまだ冷たいんだがな。もちろん川の形状が変わらないよう川底から少しずつ堰の高さを上げ、水が緩やかになる場所を作った。側面も要注意だ。失敗したら怒られるからな。


ああ~、何かビーバーの気持ちが解かって来たかも。

徐々に変わっていく水の流れる速度や水音が実に心地良い。



あー、なぜ前倒したかと言えば、春は冬眠から覚めた動物などが活動し始めるので徐々に食材にならない細かい廃材が出始めたからだ。ウチらが食べない虫の胴体部分とかな。これで魚が育たないか実験として石垣横の堀の魚に与えてみたら結構食べるんだわ。それなら流れが緩やかにしたら川に居る魚たちも食べるんじゃないかとね。養殖、養殖~



日がな一日、領主邸に近い川の合流地点の造成を行う。山に近いって事もあり川底もほぼ岩。砂や石はあっても泥は無いので材料に苦労することはない。

そしてできた池に舟を浮かべ、両岸から張った綱に掴まりながら移動する。川の水は当然きれいで川底までくっきり見えるがやはり大きな魚は居ない。まぁこれからきっと大きくなるさ。


大~きくなれよ~


「何やってるんだ…… 規模の大きすぎる水遊びは止めなさい」


狩りから戻ってきた父様に見つかってしまった。


「大雨の対策もしましたし、魚が獲れるかもしれないのです」

「橋まで作り直してどうする。……これ、渡って大丈夫なのか?」

「多分?」

「……」


今俺は舟に乗って魚に餌やり中だ。安全用の紐を腰に付け、紐の反対側は岸でメイドが握っている。鵜の気分だな。気まずいのか鵜飼い(メイド)は顔を背けている。


「……何かあれば元に戻せるようにだけはしておきなさい」

「はーい」



舟は浮かべるだけなら問題無くできた。

とは言え、石製ってのは改良の余地ありだ。沈まないか怖いし、何より船底が冷たいっ

気泡をいっぱい入れて水より軽いガラスでも作れると良いのだけどなぁ




 【 閑話 】   妻たち



「……また、あの子が何かを始めるって言って来たわ」

「相談をしてくれるなら安心では無いですか?」

「半分作ってから来るのは相談ではなく、報告なんじゃないかしら」

「そんなに進んでるのですか?」

「橋が一段高くなって、その下に堰が出来ていたわね。既に手前が池になってるし……」

「それはまた……」


「あなたの子はどう育つのかしら?」

「ルァウフェイムさんの方に似てくれると嬉しいのですけど」

「兄弟でもあの子以外は魔法に偏重(へんちょう)してないから平気だとは思うのだけどね」

「魔法の何がそんなに面白いのでしょうか?」

「本を読んで、何でも試してる感じなのよね」

「フィルトルァ様も何か書かれてみてはどうですか?」

「ふふっ それも良いわね。悪い事をしたら怖い人に追いかけられる物語でも書こうかしら」

「うふふっ それは今でもそうですから怖がらないのではないですか?」


「そうね。それじゃ、未来の母親たちの為に困った子の扱い方についてでも書こうかしら。どう?」

「ふふふっ それは是非。わたしも読みたいですわ」


「あなたも一緒に書いてみない?」

「そうですね~、それも良いのかしら」

「では少しずつ書き進めましょうか」

「そうですね」




 【 春 】



 少しずつ進めた川の造成だが、流石に子供の遊びでは済まないため合流地点以外は据え置きだ。とは言っても、川を南に少し(さかのぼ)るところまでは作らせて貰った。これで舟で養護院まで行けるようになる。


この舟に動力なんて無いので、竿で押し進む感じだ。竿は乾燥させた真っ直ぐな蔦を三本束ねて作った。石の竿だと落とすと浮いて来ないからな。


それと竿で押して進む以上、立って操作しないといけないので、舟が倒れないよう三胴船に改造した。三胴船と言うのは本船の両側に補助の船を付けて横方向の転倒を防ぐ形状だ。


補助の船は乗れる必要は無いので密封したガラス製のバナナボートにし、本船より深めに接続した。透明にしたのは水が漏れたか確認ができるようにするためだ。


なんせ、本船の材質は石だからな。浮力も足りないし、木と違い割れる可能性もある。川底の石に削られるのが一番怖いのよ。


本船のスペースは三人乗れる程度しか無いが、まぁ、安定はしていると思う。木と違ってこの舟は船べりから水が入ると沈みかねないからな、安全対策だ。船底は丈夫にし、操船する人以外の場所は毛皮を二枚貼り合わせたキルトもどきを敷いて乗る人にも配慮。どう? 中々良いのではないだろうか。



自分用に作ったこの舟便だが直ぐに利用者が増え、川幅と運航距離を拡張する事に決まった。


何故なら単純に便利だからだ。今まで養護院の子供たちは小麦を少量ずつ運んで居たわけだが、舟ならかなり負担が減る。また、各村から領主邸へ納品に向かう人達も養護院から乗るようになったのだ。この世界、荷車は一般的じゃないから…… 理由は判るな?


運搬道具だと蔦を編んだ背負子(しょいこ)はあるんだが、木が使えないせいで荷車の類は車軸が困るんだわ。石でやっても良いが一般人が修理できない道具は使いにくいんだよね。一応、王都みたいな人口の多い所では車輪は普通に使われているらしいので発想が無いわけではない。



実際の増便は夏以降になりそうだが、魔法士の数人が川の拡張をする事になった。俺は舟の改良をするように言われていて試作品を作り続けてる。大人がやるべきでは? って聞いたが、船は両親しか見た事ないので結局お前に任せると言われてしまった。9歳がやって良いのかね~


「その慎重さは一つ目を作る前に発揮して欲しかったわ」

「そ、そうkそうですよね!」


まぁ、小さい模型から始めて行くさ。船体に六角形の構造を採用するかはまだ判らないが体積当たりの重量は減らしたい。浮かせるだけなら補助にガラスの浮き玉を連結したら良いだけなんだろうが、割れないようにするのにするのが難しい。ゴムや樹脂が塗れたら良いのにって思うわ。


無い物ねだりだけどね~



家族の出番増やすの難しいねー


切りが悪いので数話投稿していきます。

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