表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/69

20話  ぼくの夏休み

 【 8歳 晩夏 】



 領兵の定期巡回に父が参加すると聞いたので参加させて貰う事にした。

何か無いか見て回る。ゴムでも漆でも何でも良いので見つからないだろうか~


お茶の木とか、きのこでも良いぞ~~

食べれる山菜とかさ、もっと有っても良いと思うのよ。



結局何も見つからず。物語的にどーよ。

いっそ他領から導入するしかないかね~


なんか日々夏休みっぽい活動計画だよな……

命がけってのが無ければただの小学生の夏休みだわ。夏休みの工作に終わる気配が無いのが困るけどな。



今日の父の用事は猪退治だった。足にロープが絡まった猪が暴れている。

走り回ったのか地面が凄い削れている。


「ルァニエス、あれの足を止める事はできるか?」

「どうかな? やってみて良いですか?」

「ああ。他は周辺警戒、ディエルタはルァニエスを守ってやれ」

「はい」


右前脚で地面を()いてこちらを威嚇している。

「行きます!」


ゴフッ


「おっ うぁー、失敗だけど…… 固めます」

体重の掛かった左前脚に落とし穴に開け、その土の分で右後ろ脚を持ち上げるつもりが、猪の股間に撃ち込んでしまった。

(わざ)とじゃないんだ、すまん……


前のめりになった事で浮いた後ろ脚を、股間を打ち抜いた石を延長して固めてしまう。


「何て格好で固めるんだ、お前は……」

「ついでに左後ろ脚の下も穴にしちゃいます」

「ああ。では止め刺してしまうか」


猪は前脚一本しか地面に着いていない上に片脚を固定しているため、体を捻って暴れるが移動もできず近寄る父を睨むだけだ。

とりあえず俺は血を浴びない程度まで離れる。


そして父が猪の首に何度か槍を突き入れた。


「少し待つか。狼達が来ないか警戒しろよ」

「「「はっ」」」


その後は動かなくなった猪の血抜きをした。血は落とし穴を再利用。

冷やす事などはせず、皮を剥ぎ持てる大きさに肉を切り分けていった。

領兵は血が付くのも構わず肉を肩で担ぐ。


骨と内臓は埋めもせず放置らしい。

モツはデカすぎて食べれなさそうかな。レバーはいけるかな?


「持って歩くと狼が来るかもしれん。内臓はまとめて置いていくんだ」

「少しくらい持ってかないのです?」

「狼は肝臓が好きならしくてな、我らを見逃すのは自分達の取り分を置いていくからなんだ。だから持っているところなんて見られたくない」


「なるほど、そうなんですね。あっ 少し待って貰えますか?」

「どうした?」

「骨から素材取れないかやってみたいのですけど」

「まぁ、それくらいなら良いぞ。ただ急ぐようにな」

「はい」


骨から取れる物と言えばカルシウム? あとは何だ? あとは…… リン? 畑に撒く奴。

いや、思い出した。リン酸カルシウムだろ。骨灰(こつばい)

肥料に手を出してたのに忘れてた。窒素、カリウム、リン酸。カリウムも探さなきゃ。


魔法で取り出し、ガラスの容器を作り内部に保管。


「意外と取れるな。終わりました~」


「よし撤収。ロープや仕掛けを忘れるなよ」

「「はい」」


荷物が増えたので歩くのは遅かったのだが、俺に帰り分の体力が残っていなかった為帰りは担がれて帰る事になった……


ご迷惑お掛けします。




 ガラスペン用の道具が到着した。

さて、ガラスを柔らかくし道具に通し溝の入ったガラス棒を作る。

出来上がったガラス棒の先端だけにマナを通し、今度は先端だけをゆっくり引き伸ばす。


「難しいな、なかなか」


ガラス職人と違ってやり直しのコストが低いとは言え、思ったものは簡単にはできなかった。


まぁ時間はある。頑張ろう。




 【 秋 】



 護衛が借りにくい秋こそ研究だ。

研究課題は土魔法による、資金稼ぎだ。ガラスインゴット以外が欲しい。

誰かが真似したらできちゃった、なんてことが起きると思うんだ。只の認識の話なんだもん。


今一度土魔法の可能性も考えよう。


まず、土属性魔法だが、石を柔らかくできる。


砂は直接は作れないが、形状変更と強度を下げる事を組み合わせれば二つの素材を擦り合わせる事で作れる。粒の大きさの調整は難しいが、すり鉢なり乳鉢でも作れば何とかなるだろう。


それと結晶構造も変えられる。ガラスの原石を熱を加えずガラスにできるからな。



さて、これで何か作れるだろうか?


魔物が出ないなら三方向ある山に坑道作って貴金属や宝石探したいところだ。


いや、価値があるか判らんのか。金なんて重元素、土魔法じゃまず加工不可能だろ。しかも炉と燃料が無いと溶けないしな。宝石はカット次第で売れると思うが、王都に行かないと需要が全く判らない。


いや、母様に聞けば良いか。王都育ちって言ってたし、後で聞こう。


宝石の研究とかされててもおかしくないけど、秘匿とかなのかな?

結合できるならひびでも治るから、宝石の大きさに価値があるとは思えないけど。



母様に化粧品や宝石の価値を聞いたところ、価値はあるらしいが需要が少ないらしい。

イメージしている貴族よりは遥かに清貧な感じだ。パーティーとかしまくってるのかと思えばそんな事は無かった。もちろんそれなりの収入があるため裕福ではあるが、何かを収集したり暴食に(ふけ)る文化自体が無いっぽい。王都の役割は法と教育、それと製塩による経済らしい。


人口も多く文化も発達しているが凄く裕福ってわけでもないそうだ。

それと一般市民は常時職不足らしく、定期的に開拓団として地方に送られるらしい。




 アイデアが浮かばない。


前提は軽元素だ。じゃないと操作できてもマナ量的に収集量が少なくなる。

アルミが大量に取れれば使えそうだがほぼ採れないし、炭素から石油でも作れたらな~

大気から作れたらエネルギー革命なんだがな~


ま、実用的な案としては、今現在無い日用雑貨、武器、農具、工具なんかかな。


……石灰とか作れたとして売れるだろうか?


鉛は危ないだろうが亜鉛でも採れたら白粉(おしろい)的な化粧品にでも使えるのか?

いや、原材料の類はガラスと同じ懸念がでるか。


とは言えだ、まかり間違って空気や水と触れると燃えだすような物質が出来たら堪らないしな。

途中過程が全く無く元素が抜けるからホント怖い。

第一、地球と同じ石なのか? とか、日本と同じ石なのか? ってあるだろ。

そこらの石にウランとかが含まれて無いことを祈るよ。見分けれないからな!


頑張っていろいろな物質を分離する。カルシウムやアルミニウムなどだ。

ただ分離できても保管はしない。直ぐに元に戻す。含まれている事が判れば良いんだ。保管方法が判らないので居ない間に発熱、発火なんて起きたら困るからな。


最初は貯めようかとも思ったのだが、多分カリウムだと思うんだけど、抜いた瞬間燃えだした。

どの状態で安定するのか知識が無いので怖くて中止、先送りだ。これこそ学校まで待つ。危ないわ。



そして……


使い道に困った。考えたら土魔法士は居るが、焼き物屋、陶芸家は居ないんだよ!

土を提供する相手が居なかった~ 俺が陶芸家になる未来は嫌だ!


折角リン酸カルシウムが手に入ったのに陶器にしてくれる人が居ない~


この領の器はろくろで作ってなくて魔法で成形してる。

だから壺も皿も手捏ねな出来栄え。もちろん良いものはあるかもしれないが魔法使いの腕なんだよね。

あと、この領地は条件に合わないってのが大きい。陶器に使う土って泥なんだよ。山に近い川の上流って言うのは石の粒が大きいので、なんとか魔法で細かくしないと使えない。これが凄い手間なんだ。


そりゃ、石にマナ流して直接形を整えるわってなる。結果、石色の手で捏ねたような出来なのだ。



ろくろの開発でもするか~

念のため商人に聞いたら普通に売ってるとの事。だが生産地は山と河口に近い場所らしい。


資金は大事なので開発続行ーっ

砂や土からパーツが作れるのは大きいな。不純物多すぎて強度は全く無いけど。

強度が必要な歯車なんかは、石で作って動作確認後に現物渡して商人経由で職人に鉄で複製して貰う。


そして出来上がったのは足踏み式のろくろである。


とりあえずガラスにリン酸カルシウムを加えたもので皿などの食器をガラスで作る。耐久性に不安があるかもと伝えた上でな。

耐熱性とかは後日調査だ。


ちなみに俺がしょっちゅう石を拾う所為で領主邸の周辺には石が落ちて無い。

それどころか堀が若干深くなってたりする。

倉庫のガラス用の石は売上が発生するので俺個人用には使えないのだよ~



ほんと発想を現代の商品から外していかないと、売り手も買い手も困る状態だ。

紙は儲かるどころか売れる気配が無いし、白い皿にニーズがあるのかすら不明なんだよ。

もし魔法で光る皿があったりしたら、白いだけの器なんて売れないだろうしな。


取りあえずは領主邸の中だけでも手びねりな器からの脱却よ。

量産が必要なら誰か引き継いでくれ~



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ