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15話  紙漉き   / 国と富 2

 【 7歳 秋 】



 皆が忙しく出歩けないからこそ研究だ。

行けたとしても、この時期は養護院すら忙しいからな。

今回は紙もあるし、砂盆である程度研究をし検証して紙にメモを貯める。


ちなみにだが、土魔法を覚えてからは砂は自分で用意している。

そして出来の良い研究はそのまま石に変えたりしていたのだ! 石板イカす!


俺の部屋だけ何処か古代の風格があったのだが、メイドには不評で母様から石板を置く建物も作るように言われた……


マジで左官になりそう、そんな7歳の秋よ。




 土魔法しか使えない現状、これの可能性を広げたい。

第一はこの使えない感じの形状変形魔法のままで、使い道の方を工夫する。

第二は使える魔法にする方法を調べる。


川の造成とかやって暮らしてくの嫌だもの。

誰かもっと凄い事してたりするんじゃないのかね?


前提として領民の仕事を奪うのは不味い。

だから壺や甕を作るような方向へはいかない。


魔力量が増えて鉄や銅を加工できるようになるのが一番理想的だろうな。

ある程度の知識が役に立つだろうし、道具を作った上でそれを利用した加工物が出来れば尚良い。


他の使い道が欲しいな。


無難なのはやはり容器系だろうな。

カップとかの形状や色を改良して見栄えの良いものにする感じだな。

もちろん、その場合は領地の外で売る目的で作らないといけない。


ただなぁ…… 他の領の人間が作った輸送費が乗っかったカップを買うかね?


色々と文化が遅れてそうに感じるが、魔法関連は予想ができない。


適切な石さえあれば、ローマの大理石の彫刻みたいのだって時間掛けて作れるんだぞ? まだ見た事は無いけどな。削るの失敗したって戻せるし、綺麗な石が足りなければ内部は入手し易い石にしても良い。


そんな状況じゃマグカップ程度ならどうとでもなってしまうだろうさ。


どちらかと言えば造形より材料の方が苦労しそうだ。

つまり結果を言うと、良い石が取れる領地に勝てる気がしない……


まぁ、魔法は慌てず基礎力の強化だな。魔力量はやっぱ重要だわ。



ちなみになのだが、土以外の属性は試したのだが発動しない。

一番簡単なはずの無属性が発動せず、行商人に見せて貰った距離属性は何言ってるかも解らなかった。


距離を裏返すって何?

位置情報なんて何処にあるんだよ。そこに触れる方法こそを教えてほしいっ




 紙は継続中。

ネギの紙は良いアイデアだと思ったのだが、書いたら食べれないし食べるなら無駄な事をするなと母様に言われてしまった。ごもっともだ……



領兵にお願いし、枯れた白っぽい草を仕事のついでで拾って来てもらう。

色々な種類で実験してるが今のところ成功せず。草も木の葉も繊維が硬いんだよ。

米と麦は実の大きさが同じだからか藁の太さも近い。だが他は背丈も高いし繊維が中々(ほぐ)れない。


もう少し良い紙ができないものか~

上手く行けば輸送容量あたりの単価は良さそうなんだけどなぁ


とにかく出来る事は並行して行なっていこう。

お金持ちとまでは行かなくとも、時間に追われるような仕事には就きたくない。

今の内から目指せ知識層よ。



人生の目標は生涯健康! 生涯現役!

出来たら家族を持って、その家族も生涯健康であれば言う事無しだな。




 【 初冬 】



 養護院の子の小遣い稼ぎとして紙漉きを依頼する。

輸出は今の所微妙だけど需要はあるんだよ。俺に!


とにかく作ってくれれば賃金は払う。

商人経由で他領の紙なんて絶対に買える気がしないからな。


石製とは言え、道具を自分で作れるようになったのが大きいな。どんどん改良するぞ。




 ある日、図らずも麺が完成した…… 誘導する事も無くだ。



養護院で紙漉きを教え、紙の作成依頼をしてたのだが糊を作る材料として米を渡していたんだ。で、養護院の子が米と水の分量を間違えて、ぐったりした変な物ができたらしい。


まぁ、そういう事なのよ……



それを見ていた女の子が藁を使わなくても糊だけで紙が作れるんじゃないのかと言い出し、やってみた結果、白い板状の何かができたわけよ。


とりあえずは乾燥させようと言う事で乾燥させてはみたのだが、もちろん紙より硬いし曲がらない!


そして何故か乾燥したそれを別の子が食べてみたいと言い出したと……



……ちゃんと道具を洗ってからやったのだろうか?


結果、平たい米粉(ビーフン)もどきが出来上がってしまった。


乾燥させた物を割って茹でて食べていたようなので、雲呑(ワンタン)の皮みたいな物だな。その後少し厚めに作るなど工夫をしたらしいのだが、手漉きの枠から取り出すのが不便だったらしく乾燥過程で割りやすい様、糊モドキに格子状の線を書いたようだ。



そして俺が再度来た時に見たものは、きし麺のような何かを(すす)っている幼女達だった……



……お前ら、紙はどうなった……


肌艶は悪くないが、食料が十分では無いのかもしれない。

勝手に作物を採るわけにいかないし、売ってもいないものな。

それで卒院した人が差し入れをしてるって事か……



やはり収入が必要だなぁ


俺が払うなら俺に収入がいるし、この子らに稼がせるならもっと判りやすい商品が要るわ。



……いや、このまま領内の人に売っても良いんじゃないか?

通貨が無いから忘れてたが……


外貨に(こだわ)る必要は無いだろ。

欲しいって思って貰えたらそれは商品だ。


小麦を分けて貰って、付加価値を付けて領民に売る。

必要なのは今の筋力と技術で出来る仕事の方だ。



このままでは米が無くなるし小麦を粉にして麺を作って貰うか~

一先ずひと月程度なら珍しさで買ってくれる可能性がある。


と言うか、領主邸で採用されるよう頑張ってみるか。



小麦を挽くための石臼と篩、石の麺棒を渡し乾麺を作って貰う事に。


包丁を渡すのは怖いので、麺状に切る道具は三角形の溝の付いた太目のローラーを作って渡した。麺棒で伸ばした生地の上で転がせば麺ができる。断面が三角の麺は少々食べにくいカモだが諦めて貰おう。


……


紙漉き機より石臼の方が圧倒的好評でつらい……




 小麦を粉にしていると汚れとは違うが粉まみれになる。人も部屋もな。

女の子達の肌も髪もなんとも粉っぽい。


浴場でも作るか~


「石、集めてくれる?」


作る場所が結構難しい。


養護院も他の建物と同じく石垣仕様だ。中庭は水の重さと給排水で問題が出そうだ。

父に確認を取り、中庭下の一部を改造する事になった。


人海戦術で集まった石はちょっと汚い色だけど、色違いはある程度表面を均一にしたら良いだろ。たぶん。



「石魔法…… 形状操作……」


3日に分けてだが何とか大き目の浴槽が完成。

厨房の近くで水道配管を流用した。


それと、換気用に屋根の一部を開閉可能にしておいた。


夏は涼めば良いさ



「若様、これなぁに?」

「ちょっと待っててね」


熱源は食事の調理の際に石を一緒に焼いてそれを投入。

火傷しないよう石で、持ち運び用の穴あきの手桶を作りそのまま沈める。


この世界、前世と色々違うが遅れてる訳ではない。

井戸にポンプはあるし、別途飲料用に湧き水から繋がる水道すらある。ただ配管に水圧は掛からないし材質が石ってだけ……


湯舟が無いのは熱源の供給不足ってのもあるだろうが、自分を茹でるって発想は誰かがやってないと思いつかないのかもしれん。もちろん温泉が湧いてたり、寒い国の領地にはある可能性はあるがね。


入る前に体を洗う。

前に…… 手桶を作るか…… 石で。



さ~て入るか!


「うぉ~()みるぜ~~」

「「ほわぁ~~」」




__________


 【 国と富 2 】



同じ労働を行なっても価値が変動する事がある。


同じ商品が数多く出回り、必要とする人以上に供給されれば必要とされず価値を失う。その逆で数が少なく、必要とする人が多ければ価値が高まり値段を上げても交換されるだろう。


必要とする人の数とその場に存在する量が需要と供給となり価値を変動させるのだ。


また人の生み出す労働価値も変動する。

熟練の製作者が作る物は価値が高まり、練達の作業者が数多く作れるならば時間に対する価値の総量が増えるからだ。


よって人の教育こそが重要となる。

精確に作業する能力、作業を助ける道具を作り出す能力、それらを教える能力などだ。


人ひとりを教育するのには時間が掛かる。だからこそ分業が必須である。

教師が戦闘をできる必要は無く、農夫が糸を紡げなくても構わない。

人はひとつに特化、熟練した方がより多くの価値を生み出す。


富みとは、価値を生む能力を使った時間に比例して得られるものだからである。



 【 閑話 】   とある未来の襲撃者



ガチャッ

「父様っ!」

「な、なに?! ……何かあったのかい?」

「父様の本を読んでいたのですっ」


「……判らない所でもあったの?」

「いえ! 戦闘を教えて貰おうと思いまして…… 父様、戦えますよね?」


「あれ? 何故?? 何を読んだらそうなるの?」

「ここは父様が戦える教師である事を、皆に見せつける必要があると思うのですっ」


「いやぁ、教師も女の子も戦う必要が無いと思うんだけど」


「私は父様に教えて欲しいのですぅ! はーやーくー」



「……負けたらどうしよう。威厳の危機だわ」




後書きに閑話……

何となくです。

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