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12話  幻想世界の商人事情

 【 7歳 春 】



 各種辞典を買お…… 買って貰おう。

特に植物が重要だ。奴らはおかしいからな……


とは言えだ、多分だが本は領外で写本しているだろう。そうなると対価が必要だ。

この領内なら物々交換でも良いだろうが、別の領と交易するなら目減りしない交換可能な何かが要る。

両親と言うか、領の経費で買って貰うのが(いささ)か心苦しいのもある。

安いとも思えないしなぁ


何か無難な加工品の知恵が出てこないだろうか……


賞味期限のあるような物では保管も困るし輸出可能距離に制限ができてしまう。

塩などの外部の資源に頼らず、乾燥だけで済むような椎茸や茶葉なんが理想なんだけどな~


本来はここに貨幣が来るんだが、この世界では貨幣の価値が低い。

存在意義が低いって言えば良いのか、余り活用されていない。

労働力が貨幣に変換されないのよ。


実際領内でも余り流通していないのだ。


何故かと言えば使う機会が無い。

貧しいわけじゃないぞ。


領内で労働をすると給料が発生するが、購入可能なのは領主が管理する商店のみの為、貨幣が要らない。

石器時代みたいなこの世界、既にキャッシュレスである。

なんなら全員顔見知りなのでマイナンバーカードすら要らないのよ。

領民は商店で買い物すると店員は残高から引くだけで良いし、現金化しても使う場所が無いのだ。


貨幣を使うとしたら領外に出る商人だが、商人は物を運んで交易がして利益を上げるのでやはり使わない。

もちろん価値の共有化としての意味はあるし取引単位としても必要ではある。

貨幣の価値が出るのは貴族以上の階級なんだが、こちらも証文が主流なんだよね……

偽造されないなら紙幣の方が便利なのは現代と同じなのだよ。


貨幣自体はあるようだし、個人的に使える資金が欲しいな。

とりあえず独立した際に使えるよう今から計画して行こう。



あぁ、大前提の話を忘れていた。

この世界、金銀銅、レアメタルに価値が無い。使わないからな。

メッキの材料位にしか思われていないのよ…… 燃料の関係で溶かせないからさ。

何より窯の技術が無い。(かまど)と煙突位だったな。



それで肝心の貨幣だが、通貨単位は塩! そして材質は石!!


もちろん単位の塩ってのは意訳なんだが、その上の単位も100人の人が1年で使う分の塩みたいな感じだった。

ある意味尺貫法(しゃっかんほう)みたいな基準になっている。

やはり石器時代じゃねーの?


元は期間労働者に一日毎に塩の支払いをする為の引換券だったっぽい。

魔法で加工できるからな。もちろん国の紋章が入っているので当然、偽造すると重罪だ。


今は働くと口座に塩10日分みたいな感じで預塩? がされ、それをそのまま使うか、商店で物品に変換するってだけだ。

国の生産量が変わらなければ価値は変わらず、消費期限も無い。

安くなっても人が摂取する消費量は変わらないからな。


まぁ、厳密には生産地から離れると手数料分価値が上がるのだがな。


だからこそ人一人の消費量が基準なのだろう。魔法があるとは言え運送手数料は馬鹿にならない。

価値は上がるがそれは交易品全て同じだし、結果領主が手数料を経費として負担する事になる。


前に言った税の話を覚えているだろうか?

受け入れ側が税を掛けるのだ。当然商人は塩なんて利益の乗せ難い商品を運んでくれない。

だから領主が領民の為に兵に輸送させるのさ。産地から離れると辛いよな~




 金策第一弾、紙の製造計画開始!

労働して金銭を得るよりは簡単だし、和紙製造機器を作ってみよう。

実際には和紙は目指さない。それ用に使える木を知らないからな。

よって目指すのは藁半紙(わらばんし)


枝で作った木枠に粗い目の布を張る。

(のり)はどうしたら良いだろうか?

いや、その前に適当な繊維質の素材を探すか~


子供部屋に引いてるタイルは薄くしても紙にならないらしい。

子供が落ちた時用のマットで他に使い道も無いのだとか……


これの材質は樹液だった、真緑なのに。あのままの形状で木の側面に生えてくるらしい。

(こけ)ですら無いのか! 無っ茶苦茶っ

草食動物から樹皮を守るために進化したらしい。舐めたらすっごい苦いっっ

山羊に与えてみたら凄い顔で固まっていた。もちろん当然速攻で逃げた。


やっばいね、あれは……



しようがないのでそこらの草で挑戦してみたが上手くいかなかった。

乾燥させた雑草同士は当然くっつかない、煮てもな!    

繊維同士の接着って何だろ?          ※実際には正しく処理さえすればくっつくらしい

米や片栗粉? そう言えば片栗粉ってあるのか??


無い物を聞けないもどかしさ(ジレンマ)よ~

ほんと各種辞典が欲しい!


調べものは端末を叩けば良い現代と違うのだ。物理法則すら怪しいのに手探りなんてしてられん。

と、言う訳でお願い! 母様!!



商人は意外と近い場所に居た。


考えれば当たり前なのだが、商人も個別に蔵を持っていたら防衛が必要になる。

そこで倉庫は持たず領主にすぐ売却してしまうのだ。

その為、倉庫と商店と税務部署は同じ場所になり、結果領主邸のすぐ近くなのである。


売れないと次を仕入れてくれないので、領主の経営する商店を民間の商人が手伝っていたりする。

商人の負担が大きそうだが部屋が無料で借りられて顧客の要望が聞けるのが利点のようだ。


領主も小規模の行商人から宿代が取れると思ってないし、待遇を悪くして来てくれないと困る。

商店は領主邸のすぐ横で、二階が宿、一階が商店で領主邸の倉庫とは地下通路で繋がっていた。

そう、堀の下に通路があった。実は石垣フロアの下に更に地下室と地下通路があったのだ。

まぁ、石垣の下の全域では無いのでそこまでは広くないけどね。


これが商店の建物の地下倉庫と繋がってるようだ。


商店は数少ない石垣の無い建物である。

社宅との違いは中庭があるかどうかだな。あちらは小さいながらも中庭がある。

その関係で虫に壁を登られたくないんだよ。



商人はこの地に販売員を置く中規模商人と売買で2、3日滞在するだけの行商人に分かれる。

行商人は結構多く3日に1人は来るようだ。


頻繁に来るのを不思議に思うかもしれないが、これは冷蔵ができない為である。

運送速度は規模とは別に2種類存在し、徒歩型と飛脚型が居る。

これは生ものを含めた消費期限の短い生産物を脚の速い商人がお高めに販売する為だ。

まぁ、危険だが体力があれば稼げる業種で、それぞれの領で生まれた者が近隣の領を往復するのだ。


山側であるこの地から平地側へ売るものは薪と脂である。

薪は枯れ落ちた枝だけらしいが平地より圧倒的に取れるからな。

生肉を運ぶのは信用が無いと無理なのだ。


だいたいは依頼をあった場合だけ専門の飛脚が走る。宴とかな。

身分証明された人が往復、消費期限の証明書を発行して貰う感じよ。

夏にどうしても必要な場合は冷却魔法が使える飛脚が重宝されるらしい。何か解るわ~



ただお隣さんも山に接してるので条件は同じだ。

なのでお隣さんの所に集めた物を平地の行商人がやって来て買い取るわけだな。

お隣さんより移動コストが掛かっているのに同じ値段でしか売れないのさ。


そしてお隣で平地の商人が帰ってるとも言えるんだ。


この地独自の産業が欲しいなぁ



商人と話しをし、植物の辞典と種籾と藁の購入依頼した。




 この領地と言うか国の交通網は発達していないようだ。

まず外敵が多い為、領主も道路の整備がままならない。

領地運営している人間の判断になるが、優先度は領内の外敵駆除に兵士を取られる事が多い。

平地で王都が近いなら道の優先度も上がるだろうが、なんせここは端である。


商人も自衛ができなければ別途護衛が必要になる。しかも馬が使えず、馬車も無し。

山羊は大きいが車を牽いて歩いてはくれないだろうしなぁ

あの大きな狼を家畜化できたら一気に発展できそうなのに惜しい。


旅行なんてありえないので商人が移動する程度。

となるとだ、各領主達は自分の領地から発展してる側への道は積極的に敷くが、反対側へ敷く理由が発生しない。


うちだと王都側しか道を整備していないし、西の貴族はやはり西側しか整備しないのだ。

西の貴族とは領兵が定期的に皮と穀物を輸送している関係で獣の間引きがあり比較的安全だ。

北の道など親族なのにほぼ手付かずである。




 行商人は距離魔法が使える者がなる。

なりたい訳では無いのだろうが使えて他に選択肢が無いとならざる得ない感じだな。

魔法の属性は遺伝しない。コツが掴めれば誰も使える代わりにコツの伝え方が難しい。

魔力の量自体は遺伝してる可能性はあるんだがなぁ。


距離魔法ってのは物を収納可能だが、人を転送できたりはしない。

なので人だけは移動する必要があるのであまり便利では無いんだよね。



距離魔法とは

物を魔力で包み対象座標を反転させることでこの次元から消すらしい。

他に使い道が見つかってないので収納魔法とも呼ばれている。

条件として生き物は無理らしく、その為転移みたいな使い方はできないんだそうだ。

時間は同じく進むが重さからは解放されるんだとか。本人の魔力量で輸送量が決まるようだ。



行商人自体はそこそこ多いらしいが小規模だと儲からないし、年間行方不明者も中々居るらしい。

こーわーいー

一応領地の西側の道には夜寝る為だけの建物が、何点か作られていて比較的安全なんだそうだ。


とは言え、国で見ると場合によって整備されて無い道を徒歩で移動、峠越えもあれば野宿もあるらしい。

夜行性の動物に追われたり、火を焚いてたら巨大な蛾などの虫が飛んで火に入る砲弾と化すんだとか……

そのため国内の特定の区間は国に雇われた専門の輸送隊が存在するらしい。


俺には絶対無理だわ~



蝶と蛾について

基本同じ系統のようだが、蛾の一部だけが何故かデカい。

デカい蛾は主に森に生息するため人間に害はなく、小さい方は作物を食べるため嫌われている。

デカい方の蛾だが五つの眼を持っており、中央の小さな眼に左右二列に並んだ複眼を持つ。

絵だけでも泣きそうになる容姿をしている。


大きさや重さは大体今の(若様)と同じ位なんですよと行商人に言われ、本気で対策をしようと思った。

そんな野営、嫌だよっ


とりあえず綿毛ちゃんとは仲良くなっておこうかな……



すいません、誤って投稿、削除、再投稿です。

アクセス解析で増えてないの見て削除しました。時間差で不具合出た方ごめんなさい。


主人公は何でも知ってる万能ではありません。

無知から育って行くのが好みであります。


編集中に見たら増えててご迷惑おかけしたかもですーーっ

お話の都合で1話追加、本日あと1話投稿します。

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