9話 UMA! UMA! UMA!
【 6歳 春 】
魔法の教本を読んでいるのに全く上達しない。
と言うか、本の内容がポンコツ過ぎる!
擬音は使われていないとは言え、内容が気合や根性を頼りすぎっ
これで皆が覚えたとか、おかしくないだろうか?
まず大前提のマナが判らない。
更にそれの使い道が属性の数だけあるのに説明できていない。
マナを計測する装置が無いから動きも判らないと来る。
もっと普及してるイメージだったのだけどなぁ
色々な人に聞いても無属性を利用している人が多く、やはり気合だと言われる。
説明になってないんだよ!!
気合入れる練習とかって意味判らんだろ?
ただまぁ、力んでると確かに何かを消耗して疲れる。
これが取っ掛かりらしい。
気力って事? MP制なの?
……無茶だ。
【 夏 】
今の内から家督に興味ないアピールをしていこう!
兵士達とはほんの少し距離を置き、独り立ちできるような知識を得よう~
本がもっと読みたいと母に相談した。
「将来は商人か学者に成りたいのです」
途中で変わっても良いだろ。とにかく、兵士は嫌なんだよぉ
「そうは言ってもね~、まだ早いと思うし何を揃えるかってのも…… そうだ、弟の蔵書を見せて貰いましょうか!」
北に隣接した子爵領は母様の弟が継いでるらしい。
さて、母様の実家にご挨拶だ~
移動は馬だった。もちろんでかい!
UMA?
胴回りが象以上あるし、足が長いので凄い高さだ。
頭まで8~10mはあるんじゃないだろうか。鹿どころじゃね~
この大きさ振り落とされたら確実に死ねるな。
馬小屋は屋敷の横にあった。壁の片面が石垣と共通である。
しかし、馬に鞍を付けるのに吊搬機構、乗るのに乗降橋が用意されてるとか色々と混乱するわ。そこだけ宇宙世紀してる。
もちろん射出路は無かった。
クレーンを動かす人がヘルメットとグローブをしていた。
有るじゃん、防具っ
戦いに使えないのか聞いたら、獣が出たら速攻で外すらしい……
アイスホッケー選手かな? 外してどうする!!
母は普通に乗馬ができるらしい。ただし鞍の構造が前世と全く違うし、乗り方も何か違う。馬の首の後ろ辺りに自動二輪みたいな風防付きの座席が着いている。手綱も無ければハンドルもないのにどうやって曲がるんだろうか……
どうやら座席が馬の胸に固定されて居るため、僅かな体重移動を馬が察してくれるらしい。では、馬の首で隠れる前の確認はどうするかと言うと魔法で対応なんだそうだ。
走り始めると軽い助走ですぐに時速100kmは出てそうな感じ。上下運動が脳に来る。
すっごい吐きそう~~
今朝、何故か俺だけ朝食抜きだった理由が分かった。きついっス。
馬は一頭で移動の為、護衛とかは付かないって言ってたけど、そりゃ並走できんだろ~って思う。一応、女性兵士で2番目に強い人が一緒に乗っている。そして俺は抱っこひも状態。
ちなみにだが、領内でこの馬の世話と山羊の世話が一番人気が無い。
給料は良いのだが、しに…… 事故が多いのだ。
兵士より危険な酪農って何なんだろうか……
酪農について
豚が猪の家畜化、犬が狼の家畜化だと聞いた事は無いだろうか?
この世界、それが起こってない。なんせ、でかいからな。
何故か馬は家畜化とまでは行かなくとも共存ができたのだ。
なんせ、この世界の馬は大きすぎて人間が後ろに立っても蹴りもしない。
小さいので脅威に感じないし、蹴ろうにも低すぎる。
なんつーか、あれよ。
馬と猫が仲良くなる話があるじゃないか、この世界の人間は猫ポジションなんだわ。サイズ的にな。
近くに住んで貰うのも簡単。屋根があるからだ。仔馬の頃から育てると危険が無くても森の中で寝たがらない。餌を与えてる訳では無いのだが、屋根と水、少量の塩があるせいで戻ってきてくれるらしい。
不思議共存である。
ちなみに食事はキリンのように高い所の葉をもりもり食べるようだ。
用意なんてできそうにない……
◆
母様実家に到着。
叔父さんしか居なかった…
「姉さん?! 何かあったの?」
流石に連絡も無しに馬で乗り付けたら驚くか……
「久しぶりね。息子が本を探してるのだけど、あなたの蔵書を見せて貰おうと思って」
「本? 構わないよ。この子がルァウフェイム?」
「ルァウフェイムは上の子、この子はルァニエスよ。ほら、ご挨拶なさい」
「初めまして…… ルァニエスです。」
「初めまして。よく来たね。うちもそれほど有るわけじゃ無いけど、気になるものがあれば貸してあげるよ」
叔父さんは父とは違うタイプの細マッチョ。
顔立ちが母に似ている。
多分だが高機動型と見た!
「あら、義妹は居ないの?」
「先日、子供が生まれたばかりでね。隔離期間なんだよ」
「あら、おめでとう。大事な時期に申し訳ない事をしたわね」
母の実家から本を借用~
治安について
簡単に他領に入ったわけだがこの世界の治安は良い。なんせ盗賊とか山賊は居ない。大型の野生動物だらけのこの世界で、山中に隠れ家なんて用意できないからだ。
更に兵が良く死ぬので腕力自慢は就職先に困らない。冒険者や傭兵も居ない。
ダンジョンなんて都合の良いものは無いし、それ以外は兵士のお仕事だ。
街の治安は領主で行い、お金が取れるような雑用があるなら誰かが起業して請け負うからな。兵士は平民が多いし、気も荒いから領主もサボるとか民を見捨てるとか有り得ない。
まさに協力して生きているって感じだ。
犯罪を犯してしまったら? 国境越える以外思いつかん。
普通は自首して領主に裁定してもらい罰金の方がましだ。追い回すのが見回りを主業務とする警備員じゃなく、練度も死亡率も高い前線の山岳狩猟兵だもの。気性が荒すぎるんだわ。
この世界、見回り業務は警備員じゃなく、兵だから! 警棒や杈なんて無い、投げ鶴嘴とか投擲用トラバサミが使われる事になる。投降を求めながらテトラポッドサイズのマキビシを投げ付けるのさ。装備からして既に釈明を聞く気配が見当たらない。
死刑レベルの犯罪を犯したら……
どうなるんだろ? 国境越えて辿り着いた先の国で身元調査もされず働けるかな?
行商人と偽って旅を続けるくらいかな~
この世界には、大きさは異なるがマキビシがある。その名称であるが、まず鶴嘴と俺が呼んでいるのはこちらでは「爪牙」と言う名称だ。なのでマキビシは四方爪牙であり、大きさ毎に一号とか二号と型名が付く。四号ともなると片手では投げられず、爪の中程に手が入る握りが付いており、振り回して遠心力で投擲する。大型生物相手に足元へ撒く事もあるが通常は中型生物への投擲武器だったりする。
当然、人間が踏んで痛い、なんて可愛らしいサイズの物は存在しない。
対人戦は無いし、鉄は貴重だからな。
気分的に良くないので今後も鶴嘴とマキビシと呼んでいこうと思う。
ファンタジーなのに冒険者居ないんだ~
したきゃしろ、援助は無い! な世界だし、マジでレベル1勇者は木の棒から開始よ。現代日本に冒険者が居ない理由と一緒! 信用無いと仕事くれない。
所属無しの魔物ハンターは居るかもしれないが、それは引退した兵士の小銭稼ぎか手伝いに過ぎないんだよ。強くてもなっ 言わば定年後にマタギしてるだけだ。第一、現役の元同僚が手に負えないから退治お願いなんて言って来る仕事とか怖いだろ? あくまで貯蓄がある者が余裕を持って引退し、無理の無い範囲の獲物を狩るだけなのさ。
それと、いくら強くなっても少人数で狩りができない理由は簡単で、獲物がでかすぎて罠の大半が使えないのと獲物側が罠を張る……
そう、虫だよ虫!
擬態も長時間潜伏も得意だからな!
森にはできれば入りたくないのだ。
3m超えの迷彩仕様の蟷螂相手に根競べに知恵比べとか嫌だろ?
赤外線装備が要るんじゃないか?
いや、虫は体温低いからダメかなぁ
神様! もっと俺を甘やかしてくれ~~
過酷すぎるわっ
UMA (Unidentified Mysterious Animal) 日本だけの造語のようですね。
日本の小説サイトの日本人の作品なのですから気にせず採用ですよ。
タラップ等の日本語訳はそれを知らない人用に改編しています。
舷梯って言われても困るでしょうしね。
あと、彼の辞書には宇宙世紀が載っている…… 常識ですしね。突っ込みは無用で。
アイスホッケーでは乱闘の際にグローブを脱ぎ捨てます。
ヘルメットは外してはいけないらしいです。
あちらの世界では視野が狭まると命の危険があるのでヘルメットすら脱ぎ捨てます。
当たらなければ良いのです。
名前が呼び難いかもですが、慣れてくださいっっ
話進めてから名前を出すと自己紹介を挿入し難いですな。
いや、実は未だにプロローグなのかもしれんっ
そろそろ独り言スタイルから会話を増やしていきます。




