2話 資格勉強の準備
1話で門番の仕事帰りにカフェに行き今までより打ち解けた二人は『一般国民認定資格 転生者部門』という試験を受けるため、召喚され転生者となった原因である「ロンアルク」で有名な書店に行くことになった。
今日は門番の仕事は休みである。でも外に出る準備をしている。
「財布も持ったし…これでいいかな」
高校の時のバッグのチャックを閉める。
「よし、行くか」
履き慣れた靴に足を通す。バッグと靴は新しく買うのも、支給された物を使うのもなんか違うなと思いそのまま使うことにしたのだ。
(私服で召喚されてたら服もレパートリー増えたんだけど)
流石に制服を私服にする気は出なかった。
ガチャ
自室のドアを開ける。
ガチャン
そして閉める。鍵は自動で閉まるタイプである。
「(えっと…ケイの部屋は…左だっけ?)
ここは寮であり門番として組んだ二人は部屋が隣である。
『???』
ドアの名札には違う名前があった。
(右だった…)
危ない危ないと、右に向かう。
『ケイジュ』
今度は合っている。
(よし…えっと…ノックだよね?)
トントン
「ケイまだ?」
軽くノックする。
「困っていてな…こっちに来て手伝ってくれないか」
声が聞こえる。
「開けてくれないと入れないよ」
「そうだった、すまない」
やっぱりどこか抜けている。
ガチャ
「入ってくれ」
「ありがと」
部屋から出て集合って話してたはずだがとりあえず入る。
「その…何を持っていけばいいか分からなくてな」
床に座り込んで困り顔でこちらを見上げている。
「そんなの…財布と連絡本と部屋の鍵くらいじゃない?」
「そうなのか」
どこか様子がおかしい。
「自信がなくてな。今まで機械に任せてたんだ」
そういえば機械だらけの世界から来たって言っていたが。まさか機械が仕事以外でも持ち物の準備をしていたとは。
「じゃあこの部屋の散らかりようも?」
物はそこまでないが(召喚されたので)全く整頓されていない。ゴミは無いので不衛生ではないが心配になる。
「そうだな。機械でなくても魔力とやらで掃除してもらえると思っていたのだが、そのような道具はお金が高いらしい」
「そっか…」
大丈夫だろうか。
(帰ったら部屋の掃除とか整頓教えないと…)
静かに決心した。
「それで…荷物を確認してくれないか」
ケイが支給された小さめのバッグと大きめのリュックを差し出す。
「分かった…」
僕もそこまで自信は無いが渋々中身を開ける。
『財布、連絡本、部屋の鍵、難しそうな小さくて分厚い本(全く読めないから多分ケイの世界の本)、携帯食、ハンカチ、ティシュ、銃と槍(不発防止済み)、救急箱と何個かの薬(多分支給されたやつ)』
これは予想以上の量だ。
「…本屋行ったあとにカフェ行くだけだよね?」
「そうだな」
凛としている。きっと元の世界では当たり前なくらいの荷物なのだろう。
(うーん…なんて言おうこれ)
「…これってケイにとって出かける時に必要な物たち?」
「そうだ」
「そらなら持ってこう、でも多すぎるからこれから少しづつ減らしてこうね。今日はそのままでいいけど」
「分かった」
ケイが物分かりが良くて良かったとしみじみした。
ケイの部屋を出て寮内を歩く。
「もしかして服着たり体洗ったりするのも機械に任せてた?」
気になったので聞く。
「そうだな。自分でする時は戦闘の遠征で機械の動力の節約をする時くらいだ」
全くしてないわけではないことに安心する。
「ハルタは自分で身支度できるのか」
「うん」
「凄いな」
「そうかな…」
複雑である。
(ケイは本気でだろうから…)
黙々としていると、
「『転生者試験』どうする?まあまあ難しいらしいぞ」
「基礎やるだけだろ?」
「戦闘の基礎もやるらしい」
「それはキツいな」
「ほぼ2回受ける奴ばっかだって」
「一発合格厳しいんか」
気になる会話をしている二人とすれ違った。
「…2回覚悟か」
大学受験で取れと言われた資格もそんな感じであった。僕は英語の試験の三級以降は2回以上やっても受かれなかったが。
「受かれるなら何度でもやるべきだろう。特に戦闘試験は私が教える」
ケイが笑む。
「そうだね」
僕も笑んだ。
寮の外に出て本屋に向かう。
「『基盤都市書店 本店』だよね?」
「そうだ。そこはこの国で人気な本屋らしいからな」
ケイがどこかわくわくした様子だ。
「楽しみなんだね」
「楽しみだ。本屋も人気店も行ったことがない」
(マジか…)
戦闘ばかりとは聞いていたがもしや自由時間すら無かったのだろうか。
(…今は聞かないでおこう)
そのうち聞くことにした。
「あと10分は歩くはずだ」
連絡本の地図ページを見ながらケイが呟く。
「地図見ただけで分かるんだね」
この地図ページには時間機能は無かったはず。
「地図での時間把握は機械が無くともできるように教わったからな」
「そっか…」
これは正確そうだ。教わった経緯は複雑だが。
「疲れたら教えてくれ、止まって休むか背負うぞ」
「休むで大丈夫」
「そうか」
所々心配される。僕からしたら日常生活は君の方が心配である。
「どんな本があるんだろうか、楽しみだ」
「だね」
僕は内心悲しさがある。なぜなら好きな小説や漫画はこの世界にはないなため本屋に行っても辛くなるだけではと思っているからだ。
(資格の本買わないとだし仕方ないけど)
せめて新しい好みの小説との出会いを期待したい。
「ここか!」
「そうだね」
『基盤都市書店 本店』と書かれた看板の建物が目の前にある。
(本店だからでかいな)
このくらいの大きさは僕の近場には無い。そもそも本屋が減っていたのもあるが、この大きさは東京とかに行かないと無いだろう。
「先に入ってくれないか…」
「わ、分かった…」
僕も人混みは苦手だがケイは慣れてないだろし断るのも可哀想である。
カチャ
ドアを開く。
(これは…)
本棚だらけである。そして人もまあまあいる。人混みというレベルではないが。
「凄いな…こんなに本が沢山ある」
ケイは感動しているようだ。僕は「古めの図書館みたい」としか思わなかった。
「…資格の本探そうか」
ケイはスッと頷く。緊張しているのだろうか。
(僕がしっかりしないと…)
まずは本棚と本棚の間にある通り道の上にあるぶら下がっている看板から勉強や資格と書かれた看板を探す。
『最新の書籍』『売れている小説』『おすすめの雑誌』
(違うな…)
3列目までの本棚は違う。
「これはどこを見れば分かるんだろうか、店の地図はないから困るな…」
ケイは上にある看板に気づいてないらしい。
(後で説明しよう…)
今は看板を見ながら誰かにぶつからないように歩く。
『基礎学習塾生の参考書』『魔術・技術院入学試験参考書』『一般国民認定資格 転生者部門の参考書』
あった。6列目だ。
「6列目だよ、ケイ。あの看板に書いてあるよ」
歩きながら看板を指差す。
「…」
ケイが立ち止まってまじまじと看板を見ている。
「どうしたのケイ」
僕も立ち止まる。
「…いちぱんこくみん…なんとかしかくなんとかしゃぶ、もん?のさんこうしょ…」
「…」
これは…読んでいるのか?
「えっと…全部読まない感じ?」
「あぁ、その通りだ」
清々しい顔で答えてくる。
(一人で勉強してもよく分からなかったとは言ってたけど…このレベルを読めないとは…)
言語統一は強制的にされており、元の世界の言語で見えているはずなためこれは元々読めないことになる。
「必要最低限以外は機械音声で聞いたり、代わりに書いてもらったりしててな。こちらの世界でも連絡本は文字を押せば音声が流れるからな、問題なかったのだが」
ケイは苦笑いしているが僕は笑えそうにない。
(戦闘以外の教育がされてないんだ…本当に…)
だが困らせたくないため驚愕してることは出来るだけ隠す。
「…『いっぱんこくみんにんていしかく てんせいしゃぶもん』って書いてあるよ」
「なるほどな、ありがとう助かった」
「分からなかったら言ってよ、教えるから」
「ありがとうハルタ」
嬉しそうである。でも僕は複雑だ。
(顔に出すな…困らせたくない…とりあえず公認対策本を探すんだ)
6列目の本棚に向かう。
『「一般国民認定資格 転生者部門 ロンアルク公認対策本」今なら30%オフ!是非転生者さんはお見逃しなく!』
見覚えのあるポップが本棚に置いてある。
(どこの国の人のせいで転生者になったと思ってんだが…)
ポップが他人事な書き方すぎてイライラする。
「具体的に何ロアになるんだ」
「えっと…」
ロアとはこの国の通過だ。全くなれない。円にしてほしい。
「ここに貼ってあるよ、1500ロアだって」
「そうか」
後付けされだろうシールを指差す。
(割合の計算苦手だから助かった…)
安堵する。
「思ったより高いな…」
見た感じここの本は100〜500ロアが平均の価格だと感じている。そしてここでの価格は日本の二分の一になるイメージがある。つまりこの本は3000円くらいだ。
(ゲームの攻略本かよ…)
ため息が出る。
「そうなのか」
ケイがキョトンとしている。
(あ、そっか。買い物もしたことないのか)
また勝手に複雑になる。
「私は買えるが君は大丈夫か」
「うん、買えるよ。予想より高くて萎えてるけど」
月給3万ロア(前払い)しかないが、生活費(寮の宿泊費用)、食堂での食費、医療費が無料であり支給品があるため問題はない。
「そうか、君もバイトするか?」
「あの兵士ならすぐにできる城のバイト?」
「そうだ」
どうやらケイはもう始めているらしいが僕はやる気が出ない。
「3万もあれば充分かな…」
「そうか」
(…あ、そういえば)
店を一緒にしないかって言われていた。
(流石に僕だけ貯金しないのもな…)
「…少しだけでもいいんだっけ?」
「そうだ。担当者任せの日給制度だからな。」
「とりあえず一回やってみるよ」
「分かった、それなら次の仕事の帰りに行こう」
決まってしまった。バイトなんてしたことないが大丈夫だろうか。
「ではこれを持って行こう」
「うん」
並んでいるところからお互いに一冊手に取る。まあまあ分厚くて大きくて重い。
(やっぱりゲームの攻略本じゃん)
内心苦笑する。あの持ち運びしづらい本にまた会いたい。
「どうする?公認ではない他の参考書も見るか」
ケイがこちらを見る。
「あ、うん」
顔に出ていたか少し焦った。
「私は読み書きの本を買うべきだろうか」
『読み書き基礎』の参考書を手に取りながら悩んでいる。
「僕が教えるから買わなくていいよ」
ケイの方を見る。
「いいのか?」
心配そうにこちらを見てくる。
「うん、気にしないで」
本当に気にしないでほしい。読み書きは僕の住んでたところでは当たり前なのだから…
「そうか、ありがとう」
嬉しそうに参考書を元の場所に戻している。
「僕は戦闘についての本あった方がいいかな?」
聞いてみる。
「そうだな…私が教えるが本として見れる方が動きやすいだろうし、試験の基準が分からないからな…」
「じゃあこの公認のやつ読んだ後に考える?」
「そうしよう」
僕も戦闘の本は買わないことにした。二人で話していると別の二人組が近くにやってきた。
「これが公認のだって」
「たっか。あとあんまり気分上がる表紙してない」
「分かる。もっとおしゃれにしてほしいよね」
会話がJ Kっぽい。
「でもこれ多機能っぽい」
「まじか。それは便利かも」
そうなのか。だから高いし重い分厚いのか。よく分からないから後で確認しよう。
「ケイ、小説と雑誌コーナー見たい」
「分かった」
3列までのところに行くことにした。
「どこから見ようかな…」
着いたものの本棚の本が多い。
「まだ昼前だ。いくら悩んでいい」
ケイが微笑む。
「ありがとう…」
なんか申し訳ない。ケイ読めないのに。
「重いだろう。持っておこう」
ケイが手を差し出す。
「いいの?持ってもらって」
「構わない」
「じゃあよろしく」
公認の本を渡す。
「自由に見てきてくれ」
左手腕でどちらも持ち上げている。
(流石元戦闘員)
僕はとりあえず話題の書籍から見て行くことにした。
『全国民が泣いた!感動の魔物と人間の絆の物語「沢山の花を教えて」』
また見覚えのある文面である。
(全〇〇が泣いた!ってここでも言うんだ)
なんだか面白い。
『10%オフで250ロア』
値下げされている。更に面白い。
(これだけで面白くなるって疲れてるのかな)
自分が心配になる。
「君、転生者かね?」
横から聞こえてきた。
「は、はい」
知らないお爺さんだった。
「ここまでの有名作品をまじまじと見るのは転生者さんばかりだからねぇ」
お爺さんはニコニコしている。よく見ると『基盤都 市書店』と書かれたエプロンをつけている。
(店員さんか)
ホッとする。
「知らない世界で何を読んだらいいか迷うだろう?好きなジャンルを言ってみな。ワシが案内しよう」
「えっと…」
困った。ファンタジーが好きだが、ファンタジーな世界にファンタジー小説はあるのか?
「ファンタジー…とか…」
「あるとも。例えば話題作ならこれがおすすかな」
『異種族小話シリーズ17巻「ありがとうの言葉を」』と書かれた本を差し出してくる。
(いつのまに…)
「これは最新巻でね。どの巻も素晴らしいし、どこから読んでも良いからおすすめだよ」
「あ、ありがとうございます…」
断りづらいためそのまま受け取る。
「ひとまず裏側にあるあらすじを読んでみてね」
「分かりました…」
表紙を見る。
(綺麗なイラスト…ドラゴンみたいのがいる)
「ハルタ」
「あっ、ケイ」
「店員さんと話していたのか」
「うん」
「そうか」
ケイが表紙を見ている。
「気になる?」
「気になる」
「そうかい、そうかい」
お爺さんが嬉しそうにしている。
「このシリーズは手に取りやすさを目指していてね。120ロアなんだ」
「え、安いですね」
「だろう?ワシのおすすめは財布にも優しいのだよ」
凄くニコニコしている。
「ではワシは仕事に戻るとしよう」
「ありがとうございました…」
「ありがとう」
「良い良い」
お爺さんは満足そうに歩いて行った。
「凄いなハルタ」
ケイが関心している。
「なんの話?」
「あの人はたまに店内を散歩する店長だ。会ったら運が良いらしいぞ」
「え?」
なんの話だ?
「名札が付いてなかっただろう?店長の存在を知らない転生者に話しかけるのが好きらしい」
確かに名札は付いてなかったような…
「えっと…たまに出てくるからレアなの?」
「それもあるが、どうやら書店業界で有名らしい」
「まじか」
びっくりである。
「……なんでケイが知ってるの?」
「先程、君が店長さんと話してる時に他の客が話していてな」
「なるほど……なんて名前なの」
「それは知らない」
ケイがまた清々しい顔で答える。
「そっか」
つい笑ってしまった。
「どうした?」
「君の素直なとこいいなって」
「そうか、それは良かった」
よく分かってなさそうなのに褒められたということで嬉しそうである。やはり素直だ。
書店を出てカフェに向かう。
「あと15分は歩く」
「了解」
とぼとぼ歩く。カフェでの昼ごはんは楽しみなためわくわくする。
「そういえばなんて名前のカフェだっけ?」
あまり名前について考えていなかったため今聞いてみる。
「カフェはカフェではないのか?」
おっとこれは…
「うーん…地図見して」
「分かった」
渡された連絡本の地図を見る。
『カフェ・プリム・プリン』
安心した。カフェに関しては元の世界と同じでカフェというジャンルがあるらしい。
「えっとね、カフェはカフェって言うジャンルでね。このカフェは『カフェ・プリム・プリン』って名前なんだよ」
とりあえず説明する。
「そうなのか」
「カフェっていうのはお菓子とかデザートとかドリンクがメインなんだ。場所によってはしっかり食事できるメニューがあったりするよ」
自分の中のカフェを説明する。
「なるほど。それならマスターのところのカフェはしっかりと食事できるメニューのあるカフェなのだな」
「そうそう」
歩きながらカフェについて話す。
「面白いな。飲食店は他にも種類があるのだろう」
「うん」
「全部行きたいな」
少し笑んでるだけだが多分わくわくしているのだろう。なんとなく感じる。
「資格勉強頑張ろうね」
「そうだな、頑張ろう」
「めんど」しか行ってこなかった自分が、友達と勉強頑張ろうと言う日が来るとは思わなかった。良いことだ。
「二人とも偉いな」
マスターがドリンクを持ってきた。
「そうですか?」
「そうだよー勉強熱心な転生者はあまりいないからね」
まあ気持ち分かる。勉強しても帰れるわけじゃないし。
「困ったな、戦闘以外は受かる自信がない」
参考書に集中していたケイが俯いてる。
「僕は戦闘科目は無理な気しかしない……この参考書は思ったより見やすいけど、できるかは別だよ……」
僕も落ち込む。
「大丈夫かい。二人とも張り詰めすぎないようにね」
「ありがとうマスター」
「ありがとうございます」
「なんてことないよ」
マスターは厨房に戻って行った。
「…マスターって本名プリム・プリンなのかな」
ボソッと呟く。
「本名?本名はマスターじゃないのか」
「…」
ここでも天然ボケをかましてくるとは。
「…マスターは飲食店の店長の別名だよ」
自信はないがそれっぽい説明をしておく。
「そうなのか、詳しいなハルタは」
「いやそんな……そのうち本名聞きたいね」
「……」
ケイはゴクゴクとオレンジジュースを飲んでいるため頷く。
「美味しい?」
「美味しい。柑橘類のジュースなんだな、オレンジジュースとは」
「そうだよ」
所々心配になるが微笑ましい奴だ。
「そのリンゴジュースは美味しいか?」
「美味しいよ」
二人でのんびりと昼ごはんを待つ。テラス席はお昼の暖かさと光に照らされていた。
寮へ帰宅後。
「それで……どうやって片付けようか」
ケイの散らかった部屋を二人で見渡す。
「分からない」
相変わらず清々しい。
「種類別に床に並べようか」
「分かった」
並べるのに数十分使った。
「じゃあ支給されてる収納用品に入れてこうか」
「分かった」
また数十分は使った。
「これを机とか棚に置くよ」
「分かった」
再度数十分使った。
「片付いた、やっと……」
「ありがとうハルタ。機械に任せず片付けられた」
ケイは満足そうである。
「荷物多いね」
ぼくの荷物の2倍はある。戦闘員関係の荷物が多く見える。知らない文字ばかりだからよく分からないけど。
「召喚される時に一緒に来た物が売りたくない物の方が多くてな」
「なるほど…」
ぼくは私物より堤防の雑草の方が多かったのでだいぶ状況が違うのだろう。
「ケイ……満足そうなところ悪いんだけど、部屋っていうのは定期的に掃除しないといけないし、無意識のうちに私物が散らかるんだよ」
そう言うとケイの顔が曇り始める。
「……今したことを一人でするのか。しかも掃除も含めて?」
「そうだよ」
「それは……」
心配でしかない。なので。
「大丈夫、定期的に手伝うから」
「いいのか」
「うん」
ケイがニコニコしている。相当一人でできる自信がなかったのだろう、だいぶ安心していそうだ。
(そのうち一人でできるようになってほしいけど)
戦闘時とのギャップでパンクしそうだ。
この時の僕は次の日にまた部屋が散らかっていることを相談されるとは思っていなかった。
読んでいただきありがとうございました。地味に更新していきます。