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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

吟遊詩人のブルーデイズ

作者: 泉川里士

明確なシーンはありませんが、一応ボーイズラブにつき注意と書いておきます。

 あたしは、ソフィア。冒険者のパーティの紅一点の吟遊詩人よ。戦士のハンス、魔術師のルドウィッグと一緒に旅をしているの。

 戦士なのにクールで知的なハンスと魔術師なのに勇ましくてワイルドなルドウィッグは、二人ともカッコよくて、町を歩けば振り向かない女の子がいないわ。

 でも、そんな二人と行動を共にしているあたしには、とても大きな悩みがあるの。

 それはね……


「ああ、ルドウィッグ、君は僕の太陽だ!」

「ハンスこそ、とっても魅力的だよ」

 ブチューッ!

「ええい! 朝っぱらから何やってるのよ!」


 そう、ハンスとルドウィッグは、愛し合っていたのだ。


 あたしの職業は吟遊詩人。いつもは、神話や歴史に出てくる英雄の伝説を歌にしている。

 だけど、あたしの横にはせっかくイケメンが二人もいるんだから、たまには彼らをモチーフにしてみようと思う。

「三百年間、誰にも攻略出来なかった地下迷宮を踏破した時は……。♪深い地の底で 二人は愛し合うーっ。魔物から姫を救出した時は……。♪眠れる美女を尻目に 二人は愛し合うーっ」

 駄目だこりゃ。

 とっても大変な冒険だったはずなのに、あたしの記憶は時も場所も考えずに愛し合う二人の姿しか残っていない。

 と、いうか、あの二人が愛し合う度に他の出来事の印象が薄くなって記憶がぼやけてしまっている!

 やっぱり、隣国の龍騎士の活躍でも歌にしよう。


 あたしの職業は吟遊詩人。そのはずだ。

 しかし、戦闘の時にあたしがやる事といったら……

「薬草、薬草、毒消し草、治療薬、薬草……」

 どうして、薬ばっかり使うのよ!

「だって、ヒールソングは時間がかかるだろう」

 いや、それ以前の問題でしょ、ルドウィッグ。

「なにしろ、俺達の仲間には僧侶がいないからな」

 何を当たり前のように言っているのよ!

「この国の神様は、誰も同性愛を認めていないのに、僧侶を仲間にできるわけないでしょ!」

 あたしだって、戦闘で活躍したーい!


 僧侶がいないのは、ブチキレない程度に何とか我慢できるとして、もう一つの疑問があった。

「あたし達って、どうして盗賊を仲間にしないの?」

 そのせいで、あの迷宮を攻略した時も宝箱の九割をスルーする羽目になったのだ。

 今更すぎる質問に、二人は居心地悪そうに目を合わせた。

「いや、だって、盗賊って夜がつよいだろ?」

「やっぱり俺達より先に寝てくれないとな」

 そんな理由なのかい!

 結局ブチキレた。


 そういえば、どうしてあたしは二人とパーティを組んだんだっけ?

 ちょっと記憶をたどってみよう。


 初めての冒険者の酒場で、あたしは仲間を探している二人に会ったのよね。

 その時、イケメンな二人の周りには仲間になりたがっている女の子達がわんさか集まっていた。

 人気も実力も町一番の二人と、今日がデビューのあたしとでは勿論つりあわない。

 自分は自分で仲間を募集しようと、ボードに自己紹介を書いて張り付けた。

「それで、あいつらから声をかけてきたのよね」

 なんであたしだったんだ?


 急に気になったので、二人に聞いて見た。

「だって気が付いたらそこにいる位、影が薄かったし」

「これなら、俺達が愛し合う時に気が散らないなと思ったんだ」

 そんな理由だったんかい!


 今日は、森の中でキャンプすることになった。

「見張りの順番は、どうする?」

「最初の見張りは、あたしだからね」

「何、仕切ろうとしてんだよ」

「二人が夜通し愛し合って、体力も精神力も回復させないからじゃないの!」

 あたしが二人を寝かしつけないと、旅の予定が遅れてしまう。


 村にやって来たあたし達は、宿屋に泊まる事にした。

「二部屋あいていますが……」

「一部屋でいいから!」

 あたしが見張っていないと、あいつらは壁の薄い宿屋でも構わず愛し合うから。


 次の目的地に行くのに必要な物を買うため、あたし達は商店街をうろついた。

 肩を寄せ合って歩いている二人がウザいので、あたしは少し離れて歩いていた。

「きゃっ」

 いきなり、何者かに腕をつかまれて、路地裏に引きずり込まれた。


 路地裏であたしは、冒険者風の女の子達に囲まれていた。

「また、このパターンか」

 何度も経験しているので、見当がついていた。こんな田舎の村まで追っかけるなんて、なんて暇人なんだろう。

「あなた、あの二人と……」

「絶対に別れませんからね!」

 なんであんなホモだちのせいでねたまれなきゃならないのよ。


10

 あたしの職業は吟遊詩人。なのに、腕力ばかりついてしまう今日この頃。

 宿屋には、なんとか一人で戻ってこれた。

「どうしたんだ、そのかっこう!?」

 あいつらをどうにか撃退したのだが、今のあたしは傷だらけのボロボロだった。

「まあ、ちょっとね」

 それだけ言って、あたしは床に倒れた。


 目が覚めると、あたしはベッドに寝ていた。

 体中の怪我は、惜しげも無く使われた薬草で綺麗に治っていた。

 壁には、あまり上手くはないが破れたところを繕ったローブがかけられていた。

「あいつら、あたしを脱がすのに全くためらわなかったんだろうな」

 隣のベッドで抱き合って寝ている二人を見て、もうしばらくはこいつらと旅を続けてみようかと、あたしは思った。


end

RPGにありがちなパーティを題材にした、ベタな話にチャレンジした、筈だったのだが。

何か、ファンタジーっぽくないですね。

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