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33. イケメン研修生


 私は武藤蘭香、十五歳の女子高生。

 思春期とは言わないが私にだって異性に対しての感情が芽生えない訳ではない。


 「武藤ーーー今日こそはーーーゴハッ!」


 だから昨日の義理兄の私への扱いには少し困る。


 「お前を倒しーーーヘブッ!」


 心配してくれるのは分かるがいい大人が裸で私の部屋まで付いて来るのはどうかと思う。

 

 「俺が一番にーーーブホッ!」


 そのまま抱きつこうとしたから抵抗して断ったけど、流石に恥ずかしいって!

 今、思い出すだけで顔に火が出そうだ。


 「クソビ◯チーーーガバッ!」


 誰がビ◯チだ!! 


 「毎朝毎朝、しつこいんだよお前ら!」


 同じ男でも、どうしてこうも違うんだろう?


 「おはよう武藤さん」


 いつものように襲って来た不良達を叩きのめし足元に転がるという光景を気にせず挨拶しながら軽快な足取りで駆け寄って来た人物がいた。


 「泉・・・・・・先輩」


 選抜選手女子の個人選手代表、二年生の泉先輩だった。


 「どうしたの?」


 どうしたの? はこっちの台詞だよ。

 少し前まで誰も近づこうとしなかった私に先輩は挨拶をくれた。足元に転がる不良達という光景が見えているのに臆するコトなく声を掛けて来たのだ。

 だから私は目を黒くして驚いた。


 「いや、この惨状を見て、何も思わないんですか?」


 「そうねぇ~、今日も朝から武藤さんは元気だなぁ~って」


 大分丁寧に言葉を選んでいる。

 校門から学校の敷地内に入って下駄箱で靴を履きかえ自分のクラスへ向かった。


 「ねぇ武藤さん、選抜選手の件、考えて貰えない?」


 「その件なら既に返事はした筈ですよ」


 「そうだけど~、でも実際成績が悪いのも事実だし・・・・・・」


 その話し、まだ終わってなかったのかよ。


 「一度でいいから見に来ない、見るだけで良いから、ね?」


 ね? じゃないよ。

 なんやかんやでそのまま部活の部員に入れるつもりだろうが、そうはいくか!


 「答えはNOーです」


 「じゃあ、部活に出なくて良いから名前だけ貸してくれない」

 

 私を幽霊部員にする気か!

 東生徒会長に洗脳されているなこの人。

 私はキッパリと断り、泉先輩とは別れ自分のクラスへ向かった。

 教室の扉を開けるとパーン、パーンという音と共に紙吹雪が飛んで来た。ビックリして動けないでいるとクラスの女子達は使用したクラッカーを持ったまま眉間にシワを寄せた。


 「何だ、アンタなの」


 あからさまにガッカリした顔でタメ息までつかれた。人に向けてクラッカー鳴らしておいて、何だはないだろう、何だは!


 「朝から何なんだ?」


 ブツブツ言いながら頭に乗った紙吹雪を払うとボスっと軽い音がした。


 「おう武藤席に着け、朝礼やるぞー」


 担当教師が気だるそうに教室へ入って来た。

 席に着くと相川が残っていた紙吹雪を払ってくれた。


 「()()()ちゃんと来たわね、偉いわよ」


 今日は? 何だ朝から、やけに機嫌いいな。

 教室の中を見渡すと女子生徒だけ何やらソワソワしている様に見える。


 「今日は何かあるの?」


 相川に尋ねると、頬を赤らめムフフッと笑った。

 何だ、気味が悪い笑い方だ。

 実はねと先を言う前に朝礼を進めていた担当教師からその先の内容を聞くコトになった。


 「静かにしろお前ら」


 教室の中がザワついた。

 教室の扉を開けて入って来たのは何と男性だった。

 キャーーーと女子生徒の黄色い声が上がった。


 「!?」


 「初めまして皆さん今日から研修生として勤務します、アラン・スミスです。」


 研修生? こんな時期に?

 だから相川もクラスの女子達の様子がおかしかったのかと、チラッと相川を見ると目を輝かせていた。

 研修生、アラン・スミス

 パッと外見だけ見ると二十代後半位の男性だ。金髪で腰まで伸びた長髪を後ろで結って清潔感を出している大人の男性って感じだ。

 目は・・・・・・両面とも色が違うオッドアイで珍しい。

 男性にしては綺麗という言葉が似合う人だ。クラスの女子達がキャーキャー言いたくなるのも分かる気がする。


 「短い期間中ですが宜しく」


 離れた距離にいるのに研修生と目が合った気がした。

 まさかね?

 簡単な挨拶をして朝礼が終わり一度、担当教師と一緒に職員室まで戻って行った。

 すると女子生徒は甲高い声を上げて研修生の男性の話しで盛り上がった。


 「見た見た、超ーイケメン!」


 「カッコいいー!」


 「外国人ー!」


 「彼女いるのかなぁ~?」


 「私、アタックしてみようかな~!」


 浮かれている女性陣とは逆に男性陣の空気はドンヨリと重く負のオーラを発している。


 「相川知ってた?」


 相川は恋をする乙女の様に顔を赤くして悦に浸っていた。

 あ、ダメだなこれは。 


 「え? なになに?」


 目尻が垂れ緩んだ笑顔で聞いてきた。


 「だから研修生の事、理事長から聞いてたの?」


 「新しい人が入るかもとは聞いていたけど~・・・・・・エヘヘ~・・・・・・」


 相川さーん、妄想に浸ってないで現実世界に戻って来ーい。

 今日は一日教室から女子生徒達が振り撒くピンクのオーラの生で背景がお花畑状態で居心地が悪かった。特に研修生のアランさんが付いた授業はとてもじゃないが教室の空気が全然違う。

 大至急、誰か部屋に業務用の空調機か換気扇を付けてくれ!

 そんな女子達とアランさんを唇を噛みしめ血の涙を流しながら授業を聞いていた男子生徒達からは呪詛の言葉が聞こえてくる様で、その対比がえげつなかった。


 「イケメンが何だ!」


 「男は顔じゃねーよ!」


 「女子からチヤホヤされやがって!」


 「◯◯◯※自主規制※ ヤローがぁ!」


 研修生アラン・スミスが笑顔を向ける度に女性陣からはピンクのオーラが男性陣からはダークなオーラが漂って滞留(たいりゅう)していた。


 ウプッ!! 気持ち悪っ!


 喉の所まで出かかったモノを堪え、午前中の授業はひたすら耐えた。午前の終わりの予鈴が鳴るとお昼用に用意していたご飯を掴み、急いで階段を上がり屋上へ走った。

 昨日、負傷した頭の怪我の生か?

 気分悪ぅ・・・・・・

 人酔いして危うくリバースする所だった。

 後を追って相川も屋上へやって来た。


 「武藤さん大丈夫?」


 私はどうも周囲の雰囲気や人から伝わって来るモノを感じたりしてしまうコトがある。

 今日は特に酷かった。こんな時こそ仮病を使い帰りたい。

 オウチ帰りたいと小さく呟いたのが聞こえたのか相川が眉間にシワを寄せた。


 「何言ってるの武藤さん、日数足りなくなったら留年よ!」


 留年・・・・・・それは嫌だな。

 

 「今日こそは午後も授業参加して一日いなきゃ!」


 午後の授業かぁ~・・・・・・しんどいなぁ~。

 それにしてもあの研修で来た人、少し変わった感じの人だった。雰囲気というか立ち振舞いというか説明が上手く出来ないけれど少し近寄りがたい人だった。

 アラン・スミスさんかぁ~、変な時に研修生として入って来た人だった。

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