オーディオドラマ『吸血日和』
配役2名
掛け合い台本
ひより役:男女どちらでも可
吸血鬼役:男女どちらでも可
吸血鬼M「私はバートリ、いわゆる吸血鬼だ。今日も新鮮な生き血を求めて夜の街を彷徨っている。」
ひより「あー、今日も遅くまで疲れたぁ。」
吸血鬼M「おやおや、今宵の食事が向こうからノコノコとやってきたぞ。しかもなかなかの美貌じゃ無いか。」
ひより「早く帰ってお風呂入って寝よう。」
吸血鬼「ふっふっふ、待ちたまえ。」
ひより「うわあっ?ビックリした!な、何ですか貴方は?」
吸血鬼「私はバートリ、高潔なる吸血鬼だよ。」
ひより「きゅ、吸血鬼?吸血鬼ってあの、東欧の妖怪の?」
吸血鬼「まあ日本的に言うと妖怪で合ってはいるけど、なんか嫌だな。」
ひより「十字架とかニンニクとか日光とか、あの弱点だらけの?」
吸血鬼「認識が酷いな。そんな物が弱点たり得るのは下級の眷属だけだよ。私は真祖だからね。弱点なんて無いよ。」
ひより「え?貧相?まあ確かに貧相な…ですけど。」
吸血鬼「どこ見て言ってるの!?失礼な!」
ひより「え?服装ですけど?何だと思ったんです?いやらしい。」
吸血鬼「目を見ていってみろ!絶対違うニュアンスだった!」
ひより「自意識過剰なんじゃないですかー。」
吸血鬼「ムカつく!てゆうか服装も貧相じゃ無いから!」
ひより「え?だってボロボロの布纏ってるだけだし。」
吸血鬼「マント!これは我が家に代々伝わる吸血鬼マントだから!」
ひより「吸血鬼マントはネーミングセンス無くて草。」
吸血鬼「重ね重ねムカつく!」
ひより「そんなマント一枚でふらふら夜の街をふらついているとか…まさか変態?」
吸血鬼「マント一枚じゃ無いから!ちゃんと下に吸血鬼ス…ヴァンパイアスーツ着てるから!」
ひより「英語で言い直してもダサくて草。」
吸血鬼「あーーっ!あー言えばこー言う!そもそも貧相じゃないから!真祖!真祖だから!」
ひより「真祖…?って何ですか?」
吸血鬼「え??あー、えーとアレだ。王様的な…吸血鬼の代表…的な?とにかく偉いヤツ!」
ひより「真祖は他の吸血鬼に吸血されて吸血鬼化したのでは無く、自然界がバランス調整のために生み出した生命体ですよ。いわば吸血鬼の始祖ですね。別名カミのソと書いて『神祖』とも呼ばれています。」
吸血鬼「詳しっ!めちゃくちゃ詳しっ!気持ち悪い!」
ひより「失礼な。てゆうかその真祖の吸血鬼さんが何のご用ですか?」
吸血鬼「フッフッフ。吸血鬼の用事といったら…一つしか無いだろう?」
ひより「あのー、残業で疲れているんで…早く帰りたいのでその勿体つけた言い回しやめてもらって良いですか?」
吸血鬼「雰囲気台無しだなー。まあ良い。今宵、貴様の血をいただきに来た。」
ひより「まあそうですよね。」
吸血鬼「クール。めっちゃクール。動じてないにも程があるよ?コレから吸血されるんだよ?怖く無いのかな?」
ひより「いやー、多分無理だと思いますよ?」
吸血鬼「無理?抵抗でもするつもりかい?この吸血鬼の真祖たるバートリに?」
ひより「いや抵抗はしないですけど…多分貴方は私に噛みつけないですよ?」
吸血鬼「ん?どゆこと?」
ひより「まあ試しにやってみたら良いですよ。」
吸血鬼「ふっ、何だかわからないが…それならば遠慮無く…いただきます!カプッ!」
ひより「ぬらり。」
吸血鬼「…え?あれ?今確かに噛み付いて…いきなり消えた?」
ひより「後ろです後ろ。」
吸血鬼「うわっ!?ビックリした!いつのまに!」
ひより「ね、ダメだったでしょ?私の事は誰もとらえられないんですよ。」
吸血鬼「そんなバカな?私は真祖だぞ?人間が私の動きをかわせる訳が無い。もう一度…捕まえた!カプッ!」
ひより「ぬらり。」
吸血鬼「また居ない!今度は腕を掴んでいたのに消えた!」
ひより「後ろです。」
吸血鬼「うわっ?に、人間の動きじゃ無い!」
ひより「あー、あのですね。実は私人間じゃあ無いんですよ。」
吸血鬼「へ?に、人間じゃ無い?見た目は完全に普通の…美形の人間に見えるよ?」
ひより「びっ!美形!?…あ、ありがとうございます(照れ)てゆうか見た目で言ったら貴方だって人間と変わり無いじゃあ無いですか。」
吸血鬼「まあ確かに。吸血鬼はベースが人間だからね。」
ひより「そうなんですね。」
吸血鬼「じゃ無くて!人間じゃ無いって事は…君は妖怪なのかい?」
ひより「あ、はい…私は一応『ぬらりひょん』一族の末裔でして。」
吸血鬼「ぬらりひょん?どこかで聞いた様な名前だな。」
ひより「ぬらりひょんは人の家に上がり込んでお茶とかご飯を無断で拝借してくつろいだりする妖怪なんです。」
吸血鬼「なにその迷惑な妖怪。家の人に見つかったら大変でしょ?」
ひより「いや、見つかっても家の主人だと誤認させたり、捕まえようとしてもぬらりとすり抜けて逃げたり出来る能力が有るんですよ。」
吸血鬼「あ、それでさっき私の吸血を避けられたんだね。お茶やご飯を拝借した後で人間を殺すのかい。」
ひより「いや殺しませんよ?普通に帰ります。」
吸血鬼「え?なにゆえ?何の為に家に入り込んだの!?」
ひより「お茶飲んでご飯食べて…私は吸いませんけどタバコとかも拝借してくつろぐ為ですね。」
吸血鬼「ショボ!スケールちっさ!」
ひより「そう言われましても、そうゆう妖怪なんで。」
吸血鬼「…えっと、ぬらりひょんさん。つかぬ事をお伺いするけど。」
ひより「ぬらりひょんは種族名なので名前で呼んで下さい。「ひより」で良いですよ?」
吸血鬼「じゃあひより。さっきの私の吸血もだけど、ひよりは全ての攻撃を自動で避けてるの?」
ひより「あ、はい。基本的には勝手に避けちゃいますね。」
吸血鬼「避けない事は出来ないのかな?」
ひより「え?まあ一応出来ますけど?」
吸血鬼「お願いなんだけど…血、吸わせてもらえないかな?」
ひより「は?嫌ですよ!なんでわざわざ。」
吸血鬼「いや、実はかれこれ三日間血を飲んでいなくてさ。もうさっきから限界で…ふらふらして来た。」
ひより「なんで三日も飲んで無いんですか?真祖なんでしょ?」
吸血鬼「最近コレステロールが気になり始めてさ。ダイエットの為に断血してたんだけど。」
ひより「断血?断食みたいなものです?」
吸血鬼「そうそう。で、匙加減を間違えちゃってね。死にそうになって慌てて屋敷から出て来たんだよ。」
ひより「何やってるんですか!?女子高生ですか?」
吸血鬼「いや、もう800歳だけど?」
ひより「そうじゃ無くて!…あー、もう!仕方ないな。ちょっとだけですよ?」
吸血鬼「え?いいのかい?」
ひより「…さっき、美形って褒めてくれて嬉しかったから…特別に一回だけ許可してあげます。ただし、眷属にはなりませんからね!」
吸血鬼「ああ、そこいら辺は調整可能だから心配しないで。」
ひより「じゃあ避けない様に我慢しておきますから、吸っちゃって下さい。フンっ!(目を見開いて何かを我慢する様なポーズをとる)」
吸血鬼「え?いやいや、何そのポーズと表情?怖いんだけど?」
ひより「避けない様に我慢するとこんな感じになるんですよ!」
吸血鬼「そうなの?」
ひより「トイレ漏れそうなの我慢してる時と同じ感覚です。」
吸血鬼「嫌なんだけど!」
ひより「わがまま言って無いで早く吸って下さい。漏れちゃいます!」
吸血鬼「ちょ?ま!?なにが漏れちゃうの?」
ひより「いや、妖力ですけど?」
吸血鬼「ああ、そっちか。ビックリした。」
ひより「いいから早く!」
吸血鬼「はいはい、落ち着かない吸血だなぁ。んじゃあまあ頂きます。カプッ!」
ひより「あれ?意外と痛く無い。」
吸血鬼「チューチュー」
ひより「痛く無い…けど…。」
吸血鬼「チューチュー」
ひより「長いっ!長いしくすぐったい!ちょっとだけって言いましたよね!もう良いでしょ?」
吸血鬼「ぷはッ!ふぅ…。」
ひより「はいお終い。」
吸血鬼「う…うぐっ、う〜!」
ひより「え?どうしたんですか?そんなに私の血、不味かったんですか?」
吸血鬼「うんま〜い!めちゃくちゃ美味い!こんな美味い血初めてだよ!」
ひより「マジですか?」
吸血鬼「ヘンテコな能力の妖怪だし実は大して期待してなかったんだけど…ひよりの妖力めちゃくちゃ濃くて大きい!なんで?」
ひより「ああ、まあ一応この辺の妖怪取り仕切って居るので…それなりには。」
吸血鬼「え…取り仕切る…?あ、いや待って思い出した!…「ぬらりひょん」って…日本妖怪の総大将じゃない??」
ひより「はい!改めまして。日本妖怪総大将、8代目ぬらりひょん事「奴良・日和です。宜しくお願いします。」
吸血鬼M「こうして私、吸血鬼バートリと奴良・日和との奇妙な関係はひょんな事から始まったのだった。ぬらりひょんだけに。」
ひよりM「全然上手いこと言ってないです。」
吸血鬼M「手厳しいなぁ。」
ひよりM「続く。」