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第6話 ちょっ、声が大きいですよ小泉さん!?




「響野くん、おはようございますっ!」

「お、おはよう小泉さん」



 梓とミルクレープを美味しく食べた次の日の朝。なるべく普段通りを意識して登校し自分の席に座ると、明るく挨拶してくる少女の姿があった。整った容姿にさらさらとした艶やかな黒髪、こちらに向ける柔和な笑みはまるで慈愛の女神のようでとても神聖的な輝きを放っているように錯覚してしまう。


 そう、彼女の名は小泉鏡花さん。昨日の放課後、俺に告白してきた美少女だった。彼女は俺より先に登校していたのだが、俺が椅子に座るなり綺麗でとぅるるんな黒髪を優雅に靡かせながらなんと教室で声を掛けてきたのだ。


 教室を見渡すと、どうやらまだ大司は登校して来てないようだ。緊張していたとはいえ、まさかいきなり小泉さんに話し掛けられるとは思わなかったので言葉が詰まってしまうが、彼女はそのまま言葉を続けた。



「その、えへへ……っ。まずはお友達からということなので、響野くんのこといっぱい知りたいです! えっと……良ければ、ホームルームまで一緒にお話ししませんか?」

「おっふ。……ご、ごほんっ。あぁ、わかった」



 はにかみながら上目遣いでそう俺に訊ねるのはやめてくれ小泉さん。その術は俺に効く……っ!!


 彼女を不審者から助けた次の日以降、これまではどことなくこちらを遠慮がちに伺うような視線を向けられていた。しかし今日は一転、俺を見る視線はとても柔らかくも清々しくて……うん、なんだか熱が籠っているように見えるのは気の所為かな?



(あっぶねぇ……。いくら純真無垢で真っ直ぐな性格をしている小泉さんとはいえ、俺が梓ラブな重度のシスコンじゃなきゃとっくに陥落してたぜ……っ)



 何せ友達からとはいっても、つい昨日の放課後に付き合ってほしいと告白されているのだ。いくら梓パワーMAXで俺のこんにゃくメンタルを支えているとはいえ耐久値はどんどん削れていってしまう。何かしら小泉さんの方からアクションを起こしてくると思っていたのだが、どうやら少しずつ距離を縮めていく作戦のようだ。


 だがまぁそれは置いておいて、俺は現在進行形で気になることがあった。それは……、



(視線が、クラスメイトからの視線が痛いよ……ッ!!!)



 俺は心の中で全身全霊でそう叫びながら、平然とした様子で力ない笑みを小泉さんに向けるとこしか出来なかった。あれぇ、夏なのに冷や汗が出てきたぞぉ? 風邪かなぁ? それとも血圧でも下がったかなぁガクガクブルブル……っ。


 小泉さんからにこにことした笑みを向けられているのに対し、その背後にいるクラスメイトは、明らかに俺と小泉さんの関係を訝しむように聞き耳を立てたり、視線をじーっと向けていた。


 女子辺りをちらりと見てみると「え、どういう関係?」「そういえばこの前響野くんにありがとうって言ってたよね」「気になります!」という小声が聞こえたので辛うじて好奇心の方が勝っているようだが、問題は男子の方である。



「くそっ、どうして拓哉なんかが……!!」

「ただ顔が良いだけのシスコンの癖に……っ!!」

「彼、素質あるよ」

「妹紹介しろよ」

「殺る殺る殺る殺る殺る殺る殺る殺る殺る殺る殺る殺る」



 普段話す野郎から全く話さない野郎まで。男子が座っている至る場所から殺意の波動がだだ漏れしているのだが、血涙を流すのは流石に病院に行ったほうが良いんじゃなかろうか? 額の血管の青筋バッキバキだけど、君ほんと大丈夫?


 あと妹紹介しろって言ったヤツ……おい田中、てめぇあとで覚えてろよ!!! 二度と梓に関する言葉を口に出来ないくらい、体育のバスケに紛れて金玉蹴ったるからなァ!!! 一番でっかい悲鳴あげたら俺の勝ちぃ!!! 



「響野くん、そんな難しい顔してどうしたんですか?」

「ううん、なんでもないよ小泉さん」



 俺の様子に不思議に思った小泉さんがきょとんとしながら後ろへ顔を振り向くと、男子らは殺意の波動から慈愛の波動へとサッと変換させながら器用ににこにことした表情を浮かべていた。


 この僅かな間だけ人間の醜さを垣間見たような気がするが……まぁ美少女の前ではどんな憎しみも怒りも無意味だということなのだろう。コイツらのことはひとまずそっとしておこう。


 やがて俺は小泉さんをまだ登校してきていない大司の椅子に座らせる。勇気を出したであろう彼女の告白を保留のような形にしてしまった以上、せめてリードするくらいは誠意を見せなければシスコン紳士の名折れ。



「そんなことより小泉さん、話って?」

「え、えっとですね……うう、なんだか恥ずかしいです」

「? 俺に答えられることだったらなんでも答えるぞ?」

「は、はい。では……」



 何故かぽぽぽと頬をうっすらと赤らめながら俺の瞳をじっと見つめた小泉さん。恥ずかしそうにもじもじと身体を揺らしたと思った次の瞬間、彼女はクラス中に響くような大きな声で、とある質問を訊ねてきたのだった。



「———響野くんは、どんな異性がタイプですかっ!?」

「ふぁっ!?」




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