第12話 軟派? いやいや、ジブン、硬派な男を目指してますんで。
「………………うーん」
小泉さんと連絡先を交換してから一週間、普段通りの高校生活を送り自宅に帰ってきた俺は自分の部屋の勉強机の椅子に座りながらウンウン悩んでいた。
別に勉強の課題がわからず悩んでいるだとかマイスウィートシスターへのポエムを考えているとかそういう訳ではない。というか既にこれまでノート十冊分は自作ポエムを書き連ねているので筆が進まないこと自体あまりないのだが。
では何故俺がこんなにも唸っているのか。
「最近の俺、絆され過ぎじゃね?」
そう、先程から腕を組みながらずっと脳裏に思い浮かぶのはクラスメイトの清楚系S級美少女、小泉鏡花のことだ。あの不審者から襲われそうになっているところを超HE☆N☆TA☆Iになって助け出したのをきっかけに交流を始めたが……うん、なんだか妙にここ最近彼女に心惹かれる機会が増えたような気がする。
「いやまぁ小泉さん健気だし、言葉も感情もまっすぐだし、良い匂いだし、何より可愛いし……あんな美少女から積極的に好意を寄せられたら、思春期真っ盛りの男子高校生なら気持ちがぐらついても仕方ないんだろうけれどもさ……」
それがより顕著になったのは彼女とスマホで連絡先を交換してからだ。
「朝におはようってメッセくれたり、寝る前に少しだけ通話で話したり……。それだけならまだしも、パジャマの格好をした自撮り姿の写真も送ってきたりさ……。いやはや、なんというかもっとこう、手心というか……」
そう、スマホでの通話というもはや付き合っているとは言わずとも、友達以上恋人未満の関係のようなことをもう既に繰り返しているのである。もう一度言おう。繰り返しているのである(念押し)!!!
うーむ、もし俺が相手を信用出来ず疑い深い性格だったのならば何か美人局とか企んでいるんじゃなかろうかと訝しんでしまう程の積極具合だ。……あ、小泉さんが良い子なのはもう十分これまでの出来事から知っているのでそれは絶対にないと断言出来ます、はい。失礼なこと考えてすみませんでした(全力土下座)!!
さて、話を戻そう。
「このままじゃ、今まで梓一筋だったシスコンとしての威厳や誇りが消えてしまいそうで怖いなぁ……」
そう、これまで長年シスコンとしての信念を貫き通し続けてきた俺が一番恐怖しているのはそれだ。血が繋がってはいないとはいえ、梓が小さい頃から俺は見守ってきた。家族の一員として両親に負けぬ程、並々ならぬ愛情を注いできたという自負もあるつもりだ。
だからこそこう言ってはなんだが……すんごく失礼だが! ———仲良くなってたかだか数週間程度のクラスメイトに心が傾いてしまうのは、愛する妹への不義理に思えて仕方がないのだ。
だって、これまで培ってきた性格を自分で矯正するのが難しいことと一緒で、梓一筋シスコン一本で生きてきたのだ。周囲にはシスコンと公言し今まで妹以外に関心を持たずにいた分、小泉さんと向き合う度に日に日に関心が強まっていくけれど、それに比例して梓への愛や関心が少しでも薄らいでしまったら目も当てられない。
「覆水盆に返らず。変わらないものはないっつっても、自分の根っこにある信念を無理に折っちゃあ世話ねぇよな……」
自慢ではないけれど、俺はあまり器用な方ではない。シスコンであることから読み取れる様に俺は好きなものには一直線タイプで、それがあったら周囲へ関心を持つことはほぼほぼない。
だが運命か必然か同じクラスのS級美少女、小泉さんと縁が出来て彼女は積極的に俺のシスコンという分厚い壁にアタックしてくれる。諦めずに、何度も、何度も。そんな健気で真っ直ぐな気持ちをぶつけられたら、小泉さんの方へ気持ちの関心が向いてしまうのも仕方がないじゃあないかっ(切実)。……この気持ちが、好きというものなのかはまだわからないけれど。
だから、今の俺がするべきことはただ一つ。
「純度100%のシスコンのまま、積極的にきてくれる小泉さんにしっかりと友達として向き合ってこの気持ちの答えを出す。そのためには———」
「ただいまっ、おにいちゃん!!」
今しがた部屋の扉を開けたマイスウィートシスターに、俺のシスコンぶりを存分に発揮することだっ!!!!!! 梓かぁいいよヒャッホーイ!!!!!
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