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第三十九話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 至高の聖女である私、カンデラリアは『天翔る聖女の聖戦』のヒロインなのだけれど、ループし続ける自分の人生に対して、正直に言ってうんざりしているの。


 特に今回の私はバッドエンドになっちゃったみたいで、国境の街スブラで下民に拘束されるし、癒しの力を施してやろうと思えばうまい具合に使えないし。


 普通、ループしている最中って前回のスキルはそのまま継続した状態になるわよね?今回だって腕の一本を間違いなく再生しているし、癒しの力が無いはずないのよ。


 はあ?下働きで連れてきたアマーリエが癒しの力を使っている?

 冗談言うのはやめてよ!王都生まれが癒しの力を持っている訳がないじゃない!

 アマーリエこそ本物の聖女だ?

 寝言は寝てから言って欲しいわよね!


 誰も面倒を見ないって事で見かねたアマーリエが牢屋までやって来たんだけど、王家から見捨てられたミソッカス王女が私を見下ろす姿を見て、私は覚悟する事にしたのよ。


 絶対にこんなエンドは認められない。

 悪役姫であるセレスティーナを処刑以外でぶち殺して、今回の人生はリセット、さっさと次の人生を始める事にするの。


 私を護衛していた聖騎士たちも拘束を受けていたらしいんだけど、その中でも熱狂的信者である二人の騎士が、私を助けに来てくれたの。

 二人とも無理やり手足の拘束を外して来たものだから、右手や左足なんかが再起不能な状態。


 怪我を治してくれって言うんだけど、治せるわけが無い。治癒の力が使えるのならスブラの街で堂々と披露して、自分こそが本物の聖女だと喧伝して、偽者聖女のアマーリエを排除して、私に暴力を振るった男どもをぶち殺してやるもの。

 スブラの住民を這いつくばらせた状態で謝罪させなくちゃ気が済まないわ!


 欠損した腕を生やしたんだから、これくらいの怪我なんか治せるだろうって騎士たちは言うんだけど、治せるわけが無い。だって骨が砕けちゃってるのよ?


「聖国カンタブリアの姫巫女であるセレスティーナに呪われた所為で、私の力は封じられてしまったのです」


 あまりに不服そうな態度を露わにするから、セレスティーナの所為で力が使えないって事にしたんだけど、それでも態度を改めないから、私の体を与える事にしたの。


 バレアレス王国にある聖女教会へと駆け込む事が出来れば、後はどうにでもなる。教会へとたどり着いたその日のうちに、二人の聖騎士に性的暴行を振るわれたと訴えて、破滅に追いやる事にしたの。


 本当に頭にきちゃうわよ!このゲームは全年齢対象作品じゃなかったの?


 傷ついた心を聖国の姫巫女に癒して貰うためという理由で、信者を利用して王宮の最奥にある庭園にまで潜り込む事が出来たのだけれど、まさかここで、アデルベルト陛下に殺される事になるとは思いもしなかったわ!


 せっかくセレスティーナを殺したのに!どっちが先に死んだか分からないじゃない!


「カンデラリア!ねえ!貴女!そこに居るんじゃないの!」


 暗闇の中、突然声をかけられたから飛び上がりそうになったじゃない。


「もしかしてマリアネラ?そこに居るの?」

「ここよ!ここ!リリアナも一緒に居るわ!」


 真っ暗闇の中で再会したのはマリアネラとリリアナで、二人ともあえなく殺されてしまったみたいなの。

 二人は自分たちがループ出来るのかどうかで心配しているみたいだけれど、私は胸を張って宣言したの。


「私がセレスティーナをナイフで刺して殺したから、全てを忘れた状態で十歳前後に戻るはずよ!」

「嘘!殺せたの!」

「隠れルート解放できるパターンじゃん!」


 私は『天翔る聖女の聖戦』っていうゲーム、全然やり込んでいないから知らないんだけど、何かのフラグをきちんと立てた状態で次に進んだっていう事になるのよね?


「今度こそ!隠されたトゥルーエンドに進んでループを終わらせる事が出来ると思う!」

「マリアネラ、それ本当?」

「ねえ、マリアネラ、私、マリアネラが言う通りにやったら、あっさりスパイ容疑で捕まったんだけど?」


 リリアナの恨みがましい声が暗闇の中に響き渡る。


「本当だったらセレスティーナがスパイ容疑で捕まるはずだったのに!私がスパイ容疑で捕まって処刑される事になったんだよ!推しのデメトリオ様は服毒自殺しちゃうし!宰相も死刑になっちゃうし!私が処刑台に上がっている間、二人はさぞかし楽しく過ごしていたんでしょうね!」


「楽しいなんて馬鹿言わないでよ!」

 私はリリアナの言葉に思わずブチギレた。


「私の方なんて!蛮族クピの所為で川が氾濫して大きな被害が出ちゃって!民衆は怒るわ!私に襲いかかるわ!命からがら逃げられたけど、逃げるまでだって散々酷い目に遭ったんだからね!」

「その名前は言わないで!」


 発狂したような声でマリアネラが叫んだ。

「その名前は言わないで!」

「その名前って誰の名前よ?」

「もしかして・・・蛮族クピ?」

「ひいいいいいいいいっ」


 暗闇の中でも、マリアネラが尻餅をついたのが分かる。

 蛮族クピって山に住んでいる民族でしょ?

 それが一体なんだっていうのよ?


「いやよ・・いや!いや!いや!」

「もう、マリアネラはうるさいなあ、私だって死ぬほど酷い目に遭ってるんだからね?本当だったら、私を嵌めたマリアネラは八つ裂きにしたいくらい憎んでいるんだから」

「それよりもループ、いつになったらするのかしら?」


 発狂したように転がるマリアネラを無視して暗闇の中に目を凝らすけど、本当に何も見えないのよね。

 そういえば、アデルベルト陛下が何か言っていたような・・・


「切って・・離して・・神の加護を受けられなくする?」

「カンデラリア?何を言っているの?」

「ねえ、リリアナ、貴女、処刑されたって言ったわよね?」

「そう、斧で首をバサッって」


 私は思わず自分の首に手を触れた。


「私もアデルベルト陛下に首をガッと切り飛ばされたんだけど」

「なんで陛下に斬られているの?陛下ったらセレスティーナにはとことん鬼だけど、私たちには優しい人だったじゃない?」

「それは私がセレスティーナをぶち殺したから・・・」


 あの時、陛下から何か大事な事を聞いたような気がするんだけど、あの時、陛下は何を言っていたんだろうか・・・


「ねえ、本当に、一体いつになったらループするの?」

「怖い・・いやよ・・怖い・・・」

「マリアネラ王女、マジでうるさいんだけど」

「ね・・ねえ?もしも・・もしも万が一、転生できなかったとしたら、私たち、これからどうなると思う?」


 一瞬、リリアナもマリアネラも黙り込むと、

「そういう冗談やめてくれない?」

「いやよ!いや!そんなの冗談でも聞きたくない!」

と、二人はほぼ同時に言い出した。


 私たち三人はヒロインで、主役級なわけで、世の中は私たちを中心にして回っていく事になるのよね?

 だったらこの暗闇は何?見えないのに圧迫感は強くなっていくし、自分の存在感が薄くなっていくような気がするんだけど、単なる気のせいよね?誰か教えてよ!


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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