第三十八話
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芹那の死亡事故は全国ニュースで散々流される事になった。
完全なる片思い、ストーカー並みの執着行動、行きすぎた愛情が憎悪へと繋がり、その怒りの矛先が芹那へと向けられた。
警察からの事情聴取、続けられる裁判、実刑判決がくだったけど、出所してきたら殺してやると俺は決意していた。
「敦史くんー!またルーレット出てきた!お願いだからルーレットやってください!」
俺の最愛が乙女ゲームにハマった時にはどうしてやろうかと思ったものだが、現実の男に見向きするよりか二次元の方が百万倍マシと思って許す事にした。重要な選択の場で運試しが適用されるこのゲームは、芹那一人ではとてもクリアする事は出来ない。
「敦史くーん!まただよー!お願い助けてー〜!」
芹那に頼られて悪い気がするわけがない。芹那がいなくなった後も、俺は縋るようにしてゲームをやり続けていた。芹那の声を思い出しながら、ゲームに夢中になっている芹那の姿を思い出しながら。
正直に言ってあの時の自分についての詳細な記憶が残っていない。ただ、夢中になってやり込んだクソみたいなゲームだけに、細かい設定まで記憶に残り続ける事になったのだ。
今居るこの世界がゲームの中の世界なのか、それともゲームに酷似した世界なのか、俺自身にも良くわからない。
ただ、間違いなく言える事は、この世界には神というものが存在していて、その神の差配によって同じ人生を繰り返しているという事。
いつの人生でも、セレスティーナは嵌められて処刑台へと送り込まれ、あらゆる罪をかぶせられた状態で命を落とす。
ヒロインの記憶がどうなっているのか知らないが、大概の場合、セレスティーナ以外の女と結婚の儀を行った時点で世界が滅んでしまう。
これが神の怒りという奴なのだろうとは思うのだが、そうしてループを繰り返す事になるわけだ。
この世界がゲームの世界なのか何なのか良くは分からないが、絶対にセレスティーナを死なせるような事はしないと俺は神に誓った。セレスティーナは間違いなく芹那だ、絶対に死なせるわけにはいかない。
最短で帝国と話をつけ、新たなる聖国の建国のために動き出す。
三人のヒロインは『切り離し』を行った、ビスカヤの王女であるマリアネラの生首も、皇帝が確認後、無事に帝国で燃やされたらしい。二度と転生する事はないだろう。
セレスティーナが無事だという報告に喜んだ皇帝は、王家を潰したビスカヤをバレアレス王国の属国にしても良いというお墨付きをくれたわけだが、
「セレスティーナ、遂に、ツェーザルとアマーリエが結婚する事になったらしいよ」
俺が声をかけると、セレスティーナは指先に人差し指を当てながら、俺に黙るように目配せする。
ベビーベッドの中ですやすや眠るのは俺たちの子供で、父親似の金色の髪に母親似の金色の瞳をした、顔立ちの整った王子様だ。
「せっかくラウルが眠ったのだから静かにしてください」
バレアレスの王子は乳母が育てるものなのだが、前世の記憶を持つセレスティーナは自分で出来るだけ育てる事を望んでいる。
ようやく昼寝に入った息子を乳母に任せて子供部屋の外に出ると、嬉しくて仕方がないといった様子で彼女は俺を見上げてきた。
「なかなか前に進まない二人だと思っていたのですが、ようやっと結婚する事になったのね?だとすると、二人にビスカヤの統治を任せるつもりなのですか?」
「ツェーザルにはすでに公爵位を与える予定でいるから、ビスカヤ公爵領を統治するという形になるとは思う」
川の氾濫で被害を被った東部ビスカヤはバレアレス王国の直轄領とした。ビスカヤの王都から西をビスカヤ公爵領としてツェーザルが統治する事で話は纏っている。
新たに公爵としての地位に就くツェーザルには早々に伴侶をあてがわなければならない状態だったのだが、うんともすんとも言わない状態が半年以上続いていたのだ。
処刑された国王の血を引くアマーリエは、修道女として国の安寧を祈り続ける道を選ぼうとしていた為、色々と二人がゴチャゴチャとやり続ける事になってしまったのだ。これ以上続くようだったら、王命を出す事も考えなければと思っていたところで、二人からの手紙が届いたのだ。
ビスカヤ王家への断罪はスムーズに行われたとは思うのだが、王女アマーリエとしては色々と思うところがあったらしい。
特に第三側妃という奴がアマーリエに対して助命嘆願を続けていたらしいのだが、アマーリエが何かを言う前にツェーザルが処断してしまったそうだ。
聖女教会は幹部を捕縛して裁判にかけ、極刑を言い渡される事になった。
教会内部には善良な人々も残っていたため、聖女教会は解体後、光の神を信奉する教会に吸収される事になったという。
セレスティーナを救ったアマーリエには幸せな道を選んで貰いたいと思っていたので、ツェーザルの妻となるのなら安心だ。
「結婚式には二人で参加出来るかしら?」
「視察のついでという形にすれば、大丈夫じゃないかな」
ファティマ帝国が主導となって、新たなる聖国カンタブリアも形作られている。聖都はそのままに、ジェウズ侯国はジェウズ領となって聖国の統治下に入る。
ジェウズ領はランメルトが領官として、帝国から派遣された官僚としての立ち位置を取ることになる。生き残ったジェウズ侯国の貴族は爵位を帝国に返上し、官吏として統治を任される形となるが、数年後には、完全に聖国の支配下に置かれる事が決定していた。
「ツェーザルとアマーリエの結婚式の後は、聖国にも行かなくてはならないし、帝国にも行かなければならないだろうし・・ああ・・考えるだけで嫌だ・・・」
「私は色々と楽しみですが?」
家族との再会を済ませたセレスティーナだったが、疎遠だった両親や兄達との交流を楽しみにしているし、皇帝の妻である皇妃との再会も待ち望んでいるところがある。
「面倒だけど、君が一緒ならそれでいいか」
セレスティーナの頬にキスを落としながら考える。二人目を望む事を考えたら、今のうちに出せる所には顔を出しておいた方が良いだろう。
どうせ移動するなら二人で移動したいし、セレスティーナ一人の時に何かあっては困ってしまうのだから。
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