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第二十三話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「お前らの所為で神の呪いを受けたんだぞ!」

「私の息子を返して!」

「聖女は殺せ!八つ裂きにしろ!」

「聖女教会を滅ぼせーーー!」


 い・・い・・意味がわからない・・・


 国境の街の手前に差し掛かった所で襲撃を受けたみたいだけれど、集まった人間は千人を軽く超えているように見えた。


 私の護衛は聖騎士三十人だったのだけど、数の多さに負けちゃったのかしら?姿が見えない。


「ど・・ど・・どういう事なの?私は至高の聖女なのよ?聖女の中では最高位よ?敬われるべき私に対してこんな事をしても良いと思っているの?」


「何が至高だ!金を払わなければかすり傷ですら治さない女が、聖なる存在などと厚かましい!そもそもお前らが神の聖地を滅ぼさなければ!我々は呪いなど受ける事はなかったんだ!」


「呪いってなんなのよ?私は呪いなんて知らない!」

「見てみろ!」


 私を引き摺り出した男は私の髪の毛を掴んで街の方へと顔を向けた。


 ビスカヤとバレアレスはネグロ川を境にして国境を接しているのだけれど、その川が氾濫したようで、国境の街スブラが汚泥の中に沈みこんでいる姿が目に入った。


「お前らが聖国を滅ぼしてから山の木々は枯れ、実りは腐り落ち、食べる物に窮した山岳のクピが山から降りて来る事になった。北部ビスカヤはクピ族の襲撃を受けて街は滅び、堤防が壊され、山から流れる川はあっという間に増水し、十の村や街を呑みこんだ!」


 はい?

「死者が出て、疫病が流行りだし、われらは聖女の派遣を望んだが即座に断られた。金がない者には聖女の加護はやれぬと言われたんだ!」


 私の髪の毛を掴んでいる男はおそらくこの集団のリーダーか何かなのだろう。

 私の首に短刀を突きつけているけれど、その瞳には深い知性が感じられた。


「わ・・わ・・私は知らなかったのです!」


 状況は分かった、金の亡者となった祭司長統括あたりが見習い聖女の派遣を出し渋ったって事なのでしょう。


「皆が苦しんでいるのを知らなかった!聖女教会の幹部がお金に欲が膨らんだ悪い人たちだという事は気がついていたのですが、まさか、下々の者を見捨てるような事をしていただなんて!救済の手が届いていなかったなんて知らなかったのです!」


 こんなところで殺されたら堪ったものじゃないので、涙を流しながら訴えた。


「今すぐ!私に皆さんを助ける手伝いをさせてください!私は至高の聖女!聖女の中では一番の癒しの力があるのです!」


 胸の前で手を握りしめ、懇願するようにして汚い衣服に身を包んだ髭モジャのリーダーの男を見上げる。

「私!皆さんを癒したいんです!お願いします!」


 何といっても私はヒロインよ?

 リーダーは私を馬車から下ろすと、病人が集められた集会場みたいな場所へ私を連れて行ったのよ。


 洪水で飲み水が汚染されて、それで下痢と発熱を引き起こして、次々に死んでいるみたい。この世界は衛生に対する重要性を全く理解していないのよね。

 床に転がされるようにして並べられた人の数も五十人以上居るように見えるけど、私は至高の聖女よ?私の能力を目の前にして床に平伏し、馬車を襲撃した事を後悔するがいいわ。


「エリアヒール!」


 頭上に高々と手のひらを上げて、癒しの力が建物全体に広がるように体の中の魔力を放出する。


「エリアヒール!」


 こんなの簡単よ!一回目の生ではこれ以上の怪我人も治した実績があるのよ!


「エリアヒール!」


 そういえば、大勢を治したのって一回目の生でのみだったわね。2回目、3回目からは手際良くセレスティーナを処刑する事を最優先にしていたから、民を癒すとか守るとか、そういう事は一切やってこなかったものね。


「ヒールスペシャル!」


 しゃがみ込んで、近くに転がっている男に直に手を触れて、治癒の力を流し込もうとしたんだけど、なんでだろう、全然出来ない。


 そういえば今回の生では、人を治したのって十歳の祝福の儀で欠損した腕を再生したのが最後だったかも。

 至高の聖女である私を祭司長たちは出し惜しみをしていて、あんまり人を治す機会というものがなかったのよね。


 前はやっていたわよ、前のループでは良く人を治していたわ。

 だけど、そういえば最近のループでは簡単な儀式をやるばっかりで、人を治すのは他の人に任せっきりだったかもしれないわね。


「ヒールスペシャル!ヒールスペシャル!」


 全然癒しの力が放出されない、自分の体の中にあるのは分かっているし、祭司長だって、

「歴代聖女の中でも最大の力を蓄えておりますな!」

と言って、私を褒めていたのに。


「ちょっと待って!ちょっと待って!」

 普通、ループしていたら、前に獲得していた能力は継承されるものよね?ねえ?そうじゃない?じゃないと、色々と面倒な事が多くなるじゃない!


「私は出来る・・私は出来る・・スペシャルエリアヒール!」


 な・・な・・何も起こらないわ・・体の中には確かに癒しの力があるというのに、何故だろう、全然力が発揮されないんだけど・・・


「やっぱり聖女には癒しの力なんてなかったんだ・・・」

 外から中を覗き込んでいた誰かがそんな言葉を漏らし出した。


「聖女教会から派遣されてくる見習い聖女たちも癒しの力だなんてものは使わない、普通の人間と同じように薬を塗ったり、薬を飲ませたりするだけだ」


「見習いだからという事じゃなくて、そもそも癒しの力なんてものはこの世に存在しないんじゃないのか?」


「だったら、ありもしない聖女の力を声も高々に喧伝して!あろうことか神の聖地である聖国を滅ぼしたって事か!」


「次はうちが滅ぼされるんじゃないのか?」

「嘘つきの聖女のせいで・・・」


 周りを取り囲まれるようにされた私は、あまりの恐怖に失神しそうになってしまったわ。失神しそうになったって事は、都合よく失神できなかったのよ。


「偽者聖女を引き摺り出せーーー!」


 無数の手が伸びてきて、乱暴に捕まれ、私は引きずられるように外へと運ばれて行ったのだった。



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