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第十五話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 私はチュス・ドウラン、女性騎士である私はバレアレス王国に嫁ぐ事となった姫様の護衛として選ばれる事になったのだ。


 輿入れされる姫様に同道するのは私一人、侍女の一人も連れて行けない姫様のお立場に胸を鷲つかみにされるような気分に陥ったのだが、


「チュス!来てきて!ちょうど良い遺体を拾ったのよ!これを棺に入れてバレアレス王国まで運んで行きましょう!」


防腐処理は必要なのか、匂いを消すにはどうしたら良いのか頭を悩ませる姫様を見下ろして、

「姫様は、本当にバレアレス王国から逃げ出したいのですね」

何とも言えない気分で、遺体を運ぶ手伝いをする事になったのだった。


 神の血筋を持つ巫女でもある姫様は、何でも過去8回もバレアレス王国へと嫁ぎ、8回とも彼の国で死んでいるのだという。


 全て惨たらしいと思えるような死に方であり、姫様の父であるカンタブリアの聖王は、

「姫、其方も一緒に私たちと亡命をしよう、姫!お願いだから!」

と何度も懇願しても、聞く耳を持たない。


「私が父様達と一緒に他国へ亡命をすると、必ず父様も母様も死ぬのです。そうして生き残った私は王国へ嫁ぐ結果となるのですから、私は一緒には参りません」

断言する姫様を前にして、聖王は絶望の表情を浮かべるのだった。


 祖国が滅びるのも、姫がバレアレス王国に嫁ぐのも神が決められた事であり、まるで物語を進めていくかのように、姫様は処刑台の上へと連れて行かれる事になるという。


「いつの時でも国家を揺るがすほどの横領事件が取り沙汰されるようになって、その犯人が私だという事になるの。前回は、その横領犯を捕まえるために私なりに動いてみたんだけど、うまくいかなかったのよね」


 おいたわしや、姫様はギロチンや絞首刑の他に、犬に噛み殺されたり、暗殺までされていたという。


「今回も横領犯を追って自分の身の潔白を証明するつもりではあるけど、それはあくまで最終手段。とにかく、今回の生では結婚の儀を行う当日に、自分の全てをかけて仕掛けてみるつもりよ!」


 その結果、私の胸を(シャツを着ている状態とはいえ)さらけ出す結果になるとは思いもしなかったが、そのお陰もあって、過去の生で私が貼り付けられという『王妃の愛人』というレッテルが、今回の生では付かなかったようだと姫様は言っていた。


 アデルベルト陛下は無慈悲で無情、うら若き乙女も自分の都合でいくらでも罪に問うことが出来る鬼畜野郎という評判を姫様から聞いていたのだが、私の目からは大分違った印象を受けている。


 姫様はバレアレス王国への輿入りが決定する数日前から連日、悪夢にうなされ、結婚をした後も悪夢に悩まされる日々を送っている。


 誰一人やって来ない与えられた部屋で、

「昼寝三昧の日々!天国だわ!」

と、姫様は言い、昼間から惰眠を貪っているように見えていたが、夜中に悪夢を見るから昼間に寝ているだけの事であって、いつでも顔色は悪く、焦燥し、窶れて痛々しい状態となっていた。


 冤罪を防ぐためにセレドニオ様の下で姫自らが働いている間も悪夢は続き、

「いやよ!やめて!やめて!やめて!死にたくない!死にたくない!」

眠りながらもがき苦しみうなされる姫を起こすのは私の役目。


「姫様、姫様大丈夫ですよ」

 私が軽く肩を揺すぶると姫様は目を見開き、そうして、その場でうずくまるようにして泣き出すのだった。


「死にたくない・・殺されたくない・・私は生きたい・・・生きたい・・・生きたいのよ・・」


 それは姫様の魂の慟哭だった。生きたいと泣く姫様を前にして、私は何も出来ない自分の無力さをいつでも突きつけられる事になる。


「ああ・・今度のヒロインはリリアナ・イリバルネ様なのね」


 王の庭園で仲睦まじい様子で二人で歩く、アデルベルト陛下と美しい令嬢の姿を窓越しに眺めた姫様は呟くように言っていた。

「今度は私、いつ頃に死ぬことになるのかしら・・・」


 まるで物語のように進むこの先の世界で、王は姫様以外の人を愛し、お飾りの王妃でしかない姫様はいつでも害悪のような扱いを受ける事になるのだという。


「また・・痛い思いをするのは嫌だな・・・」


 その言葉を聞きながら、ああ、今日も姫様は満足には眠れないだろうと私は思った。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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