第3話 私の専属メイド
カチュアノに彼女の住む国である、ダルカールへと連れてこられたエートラ。
エートラは不安ながらも新しい生活を始めるのであった。
エートラ(私はこれからこの国で生活するのか…。)
カチュアノ「もうすぐね。」
エートラ「…。あの、もしかしてカチュアノさんの家って、あのお屋敷ですか?」
カチュアノ「ええ、そうよ。叔父様が国王をやってるの。」
エートラ「!?」
カチュアノ「エートラはあまりしゃべらないけれど、反応が分かりやすくて面白いわね!」
エートラ「じゃあ、もしかしてカチュアノって……なに?」
カチュアノ「私?うーん…私は私、カチュアノよ!次の王女にもなってみせるわ!」
エートラ(それは無理なんじゃ…?残念だけどそういう仕組みじゃないんじゃ…。)
カチュアノ「あ、エートラ!いま"カチュアノにはムリでしょ"みたいなこと考えたわね!?」
エートラ「えっ!?いや、全然…?」
カチュアノ「エートラはすぐに顔に出るんだから…、貴女の考えは全てお見通しよ!いとこや兄弟たちの中でも私は結構頭いい方なんだから!」
エートラ「カチュアノさん、応援してます。」
カチュアノ「ん!」
執事「お嬢様、つきましたよ。」
カチュアノ「おりましょう。」
エートラ「はい…。」
執事に手を添えておりるカチュアノは実に"お嬢様"という言葉が似合っていて、エートラは驚きを隠せません。
エートラ「カチュアノさんって凄いね。」
カチュアノ「エートラ、行きましょ!案内するわ。」
カチュアノはエートラに広い庭の大きな屋敷の中を紹介してくれました。
エートラ「うわー…お城みたい…」
カチュアノ「そりゃそうよ、お城だもん。」
エートラ「えっ、お城なんですか?」
カチュアノ「ええ、この家は私のお城よ。」
エートラ「私の…えーっと?」
カチュアノ「そのままの意味よ、私にとってはここはお城なの。人々はみんな自分のお城を持ってるのよ。」
エートラ「家を持ってない人は…。」
カチュアノ「家を持ってない人だって心の中に自分のお城をもってるのよ。もちろんエートラ、貴女もね。でも、今日からはここも貴女のお城よ!」
エートラ「そうですね!」
カチュアノ「ふふふ、そうよ!エートラこっちよ、ここが中庭!」
エートラ「わぁ…。」
カチュアノ「ここが大広間!」
エートラ「凄い…。」
カチュアノ「そしてここが…」
少年「おい、カチュアノ」
カチュアノ「レヨ兄様!」
レヨ「なんだ、その薄汚い者は…屋敷では見ない顔だな。」
カチュアノ「新しい私の専属メイドよ。」
レヨ「ほう……こんな者がか?」
カチュアノ「…!レヨ兄様には関係ないでしょ!」
レヨ「…ふん、まあいい。それよりカチュアノ、父上がお前を呼んでいたぞ。」
カチュアノ「わかったわ、エートラ、行きましょ。」
エートラ「はい、カチュアノさん。」
カチュアノ「もう、"カチュアノ"って呼び捨てにしていいって言ったじゃない。」
エートラ「え?」(え?)
カチュアノ「?」
エートラ「でも専属メイドなら、呼び捨ては変じゃないですか?」
カチュアノ「むう…。」
二人は黙り込んでしまいました。
コンコン
カチュアノ「お父様、カチュアノです。」
父「入りなさい。おお、二人とも大きく…」
カチュアノ「…」
父「っうぉっほん…!カチュアノ、そこにおる者は?」
カチュアノ「お父様…」
父「…カチュアノ、そこにおる者は…?」
カチュアノ「私の専属メイドのエートラです。ほら、挨拶して?」
エートラ「エートラです。よろしくお願いします…。」
父「おぉ、執事が言っていた者か。勿論、素性は調べさせてもらうが、カチュアノが選んだメイドだ。信用している。しっかり仕事に励みなさい。」
エートラ「はい。」
カチュアノ「お父様、私達が部屋に入ったとき"二人とも"とおっしゃっておりましたが、誰と勘違いしていたのですか?」
父「それはもちろん、ファウ姫とだ…。お前達が二人で出かけたから、てっきり二人で帰って来たと思ってな…。」
カチュアノ「お父様、そうでしたの。ですが、ファウは…」
父「な!?ファウ姫に何かあったのか!?」
カチュアノ「ええ、旅行先が気に入ったようで、帰ってきませんでした。」
父「そ、そうだったのか…それにしてもファウ姫にも困りものだな。」
カチュアノ「それで、用事と言うのは?」
父「実はな…シロイアの王子が来ているのだが、是非とも我が国の王女であるファウ姫を嫁に迎えたいと言っていてな……。」
カチュアノ「ええ?ファウはまだ18歳ですよ?」
父「もちろん、結婚相手を決めるには早すぎる。だが、向こうも諦めなくてな。」
カチュアノ「なんてこと…」
父「そこでだ、カチュアノよ。お前にファウ姫と結婚してもらおうと思ってな。」
カチュアノ「は?」
父「もちろん、本当にというわけではない。お前が男装をして驚かしてくれれば良いんだ。」
カチュアノ「お父様!そんなことをして、ばれてしまったらシロイアとの戦争は避けられません。それに私は男装なんて出来ません。あと驚かすって何を驚かすんですか!?」
父「驚かしてくれれば良いんだよ。」
カチュアノ「訳のわからないことを言わないでください!」
エートラ「?」(?)
父「では、カチュアノよ。頼んだぞ。」
カチュアノ「お父様!?待ってください、私には無理です!」
父「大丈夫、カチュアノなら、きっとうまくいくさ。」
カチュアノ「だから!何を根拠に言ってるんですか!」
父「それでは、私は部屋に戻る。」
カチュアノ「ちょっ、ちょっと、話を聞いてー!!」
エートラ「??」(??)
カチュアノ「……。」
エートラ「…?」
カチュアノ「この国は終わりだわ。」
レヨ「あれが私の父とは恐ろしくなってくるよ。だが、あそこまで言うんだ。おそらくシロイアには、なにかあるんだろうよ。」
カチュアノ「レヨ兄様!」
レヨ「結婚話、いいじゃないか。あの能天気な姫にはこれ以上の縁談は無いだろう。」
カチュアノ「レヨ兄様、確かにファウはちょっとぬけてるところがあるけれど、立派な私のライバルよ!そんな言い方はよしてほしいわ。」
レヨ「はは、そうかい。だがそれより、自分の心配をした方がいいぞ。シロイア王子問題、どうするつもりだ?」
カチュアノ「どうするって、私は何もしないわ。」
レヨ「だが、あの父上のことだ、もうすでに、シロイアに連絡をいれてるだろう。」
カチュアノ「え!ということは…」
レヨ「ああ。」
エートラ(ああ?)
カチュアノ「いけないわ、お父様を止めなくては。」
エートラ(なんだか難しい話になってるよ…。)
カチュアノ「レヨ兄様も来てください!二人でお父様を説得しましょ!」
レヨ「ったく、そのくらい1人でやれよ。」
そんな話が何回か繰り返されたあとカチュアノとレヨは部屋を急いで出ていきました。そして取り残されたエートラ。
エートラ(なんかもう全体的に無理だ。ここから逃げよう!)
エートラはこっそり窓から外に出て、屋敷の庭に生えている木にとびうつりました。
エートラ「ここからなら見つからないかな?」
すると窓の下の方から声が聞こえてきます。
執事「お前!何をしている!」
エートラ「えっ!?」(なんで見つかったんだろ?さすがは執事だなあ……。)
執事「早く降りてこい!」
エートラ「でも……。こうなったら…!」
焦ったエートラは、木から元いた窓に飛び移り、さらに隣の部屋のベランダにジャンプしました。
ベランダからベランダにジャンプし続け、屋根に登れそうなベランダを見つけると、上にあがりました。
そしてお屋敷の屋根を駆け抜け、執事がいないことを確認すると中庭の木に飛び移りました。
エートラ(ここならまだ人が来てないな。)
エートラは中庭から直接外の庭につながる門を飛び越え、街の細道に逃げました。
エートラ(大通りに出て人に紛れよう。)
執事など屋敷の人たちに見つからないよう、エートラは急いで、しかし、早歩きで大通りに出ました。
エートラ(ここまで来たら大丈夫かな?)
しかし後ろから誰かの足音が聞こえる気がします。
エートラは路地に入り込み、また別の道を進みました。
しばらく走り続けていると、目の前に大きな建物が見えてきました。
看板には『ギルド』の文字が書いてあります。
エートラ(ここがこの町の冒険者ギルドか……。とりあえず入ってみようかな。)
エートラが扉を押し開けると中には沢山の人がいました。
エートラ「わぁ…」(人がいっぱいだ…!)
受付嬢「こんにちは、冒険者の方ですか?」
エートラ「は、はい。あのお姉さん、旅に必要な物とかってどこで買えますか?」
受付嬢「防具屋とか薬屋ならここからそんなに遠くないですよ。案内しましょうか?」
エートラ(でも、お金どうしよう…あっ!)
エートラ「あの、この薬草って買い取って貰えませんか?クエスト受けてないんですけど。」
受付嬢「この辺りではあまり見ない薬草ですね。良いですよ。珍しいので高い値段をつけれそうです。」
エートラ「本当ですか、ありがとうございます!」
受付嬢「では、こちらが買い取り額になります。」
エートラ「えっと……はい。」
受付嬢「品物、確かに受け取りました。それじゃあ行きましょうか。」
エートラ「よろしくお願いします!」
二人はギルドを出て少し歩くと、一つの店に入っていきました。
店員「いらっしゃいませー!」
受付嬢「こんにちは。この子の装備を見繕ってくれないかしら?」
店員「おや、新しい冒険者さんかい?」
受付嬢「まぁね。安めのをお願い。」
店員「はいよ。」
店員と受付嬢にアドバイスしてもらいながら、エートラはナイフ、ローブ、携帯できる食糧などを買いました。
受付嬢「ありがとう。さぁ次は薬屋ね。ポーションとかを売ってるの。非常用に買っておかないとね。」
それからしばらくして…。
受付嬢「これで、だいたい揃ったわね。」
エートラ「はい。ありがとうございました。」
受付嬢「いいのよ、新米冒険者を助けるのも受付の仕事だもの。それに、私もそういうのが好きなの。」
エートラ「…私もいつかお姉さんのことを助けます!」
受付嬢「ふふっ…頼もしいわ。私はシルベベシア。よろしくね。」
エートラ「エートラ・シエクです。」
シルベベシア「シエラさん、冒険の無事を祈ります!」
エートラ「ありがとう。」(シエクだけど…。)
エートラはシルベベシアに別れを告げ、元の町へ戻る旅に出ました。
エートラ(けっこうお金使っちゃった。買った食糧にも限りがあるし、早く町を見つけないと。)
エートラが森を歩いていると怪しげな店がぽつんとありました。看板を見上げると…。
エートラ(魔物の店?)




