第11話 気持ちの持ちよう
エートラ「サムがいない…。」
メルセル「奴は一体…。」
カチュアノ「私は一応お父様に言ってくるわ。」
そういうと、カチュアノは走って去って行きました。
メルセル「…多分、今から追っても捕まらないだろうな…。」
エートラ「私達もお皿を渡して正式にナガルを仲間にできたら、ララランに向かいながらサムを探してみよう。」
メルセル「あんな危ない奴が脱獄したなんて危険だしな。」
トパル(そういえば、そろそろ食器が届いてるんじゃないですか?5日もたってますし。)
エートラ(そっか!忙しすぎて忘れてたよ。)
メルセル(取りに行こう。)
エートラたちは早速、食器屋に向かいました。
メルセル「この辺なのか?」
エートラ「そう言えば、前にきたときはメルセルと会う前だったね。」
トパル(そうでしたね。)
メルセル「ああ、それでその店はどこなんだ?」
エートラ「もう見えてくると思うけど…。」
トパル(エートラさん、ここです。行き過ぎてますよ。)
エートラ「え!?もうちょっと早く言ってよ!」
エートラたちは、そうしていつものように仲良くケンカしながら、カチュアノの依頼をこなしました。
カチュアノ「エートラ、ありがとう。後でお礼をギルドに送っておくから、取りに行ってくるといいわ。」
エートラ「カチィさん、お礼を言わなきゃならないのはこっちだよ。本当にありがとう!」
カチュアノ「ふふ。お金を貰ってきたら私からシロイア国に送っておくわ。貴方たちはララランに行きなさい。」
エートラ「ええ!いいの?」
カチュアノ「いいのよ!私が決めたのだから。」
エートラはお金をギルドに取りに行き、シルベベシアとカチュアノに別れを告げ、ダルカール王国をあとにしました。
メルセル「それで、ララランという町はエートラの故郷なのか?」
エートラ「うーん、故郷ってわけじゃないけど、そんなところかな。私が記憶にある中で一番最初に着いた町なの。」
トパル(そうだったんですね。)
エートラ「そーなの。テガも元気にしてるといいけど。」
メルセル「テガというのは?」
エートラ「私にララランを案内してくれた人だよ。家も貸してくれたの。」
トパル(へー。到着が楽しみですね。)
エートラ「うん。」
エートラたちはナガルに乗り、ララランをめざしました。
町についた頃にはすっかり日もおちていて、辺りは真っ暗になっていました。
エートラ「結局道中でサムを見つけられなかったね。」
トパル(もう既に遠くに逃げたか、街に入って人混みに紛れたのかも知れません。)
エートラ(森に帰ったのかな?)
トパル(そうかもしれません。)
エートラ「…とにかく…帰ってきたぞー!」
メルセル「エートラ、今日のところは宿に泊まるか?」
エートラ「そうだね、トパル!宿はどこにあるの?」
トパル(何で私に聞くんですか。一応エートラさんの故郷でしょ。)
エートラ「だって1日しか住んでなかったんだもん。」
トパル(よくそれで帰る気になりますね。私だったらダルカールに永住します。)
エートラ「急に出てきちゃったから…。心配かけちゃう。」
メルセル「ふぁ~あ…。なぁ、そろそろ宿探さないか?」
エートラ「うん。それにしても、真っ暗だね。」
トパル(田舎ですからね。灯りもないんでしょう。)
エートラ「そこまで田舎じゃないよ。この町って、シロイアからもダルカールからも近いし。」
メルセル「なあ、皆…、この町、人の気配がないぞ。」
エートラ「えっ?どういうこと?」
トパル(誰もいないんですよ。)
エートラ「そんなことある?」
トパル(メルセルさんがあるって言ってるじゃないですか。)
メルセル「ああ。3軒ほど調べてみたが中にも誰もいない。」
エートラ「なんで?」
トパル(知りませんよ。エートラさんは何か知らないんですか?)
エートラ「だから、1日しかこの町にいなかったんだってば。町の外れでお祭りでもやってるんじゃない?」
トパル(この季節にお祭りなんて無いですよ。しかも、お祭りだからといって、家に1人も人がいないなんてことあり得ません。)
エートラ「そっか、じゃあトパルだったらどんなふうに考えるの?」
トパル(私なら…)
メルセル「皆!来てくれ!町の中心部は家が壊されている!」
トパル(…町が他の国や魔物に襲われたとかですかね。)
エートラ「トパル、ずるい!」
メルセル「おーい!早く!」
エートラ「う、うん!」
メルセルはエートラ達を町の中心部へ連れていきました。
トパル(酷いですね。)
エートラ「ララランってどこかと戦争してたのかな?」
メルセル「わからないな。しかし戦争は国同士でやるものだ。ダルカールは今どことも戦争はしていないはず…。それにダルカールのお嬢さんが何も言わないとは考えづらい。」
エートラ「となると…」
トパル(魔物の仕業ですかね。)
エートラ「うん。」
メルセル「ここの騎士たちは何をやっているんだ。中央ダルカールまでなら馬を走らせれば1日で着くというのに、助けを呼ぶことも出来ないのか…!」
トパル(壊されてるのは町の中心部だけ…魔物ならもっとめちゃくちゃに壊しそうなものだと思うんですけどね。)
エートラ「トパルは魔物じゃないと思ってる?」
トパル(どうでしょうか。)
エートラ「…逃げた人達はどこに消えたんだろう。」
トパル(死体もありませんね。)
エートラ(テガ大丈夫かな…。)
トパル(こんなに町も壊されてますし、分かりませんね。)
エートラ「そうだ!テガの家は町から離れたところにあったんだ!まだ無事かも!」
メルセル「そうだったのか。よし、急いでその家に行ってみよう。」
ナガル「ガァ!」
エートラたちは、テガの家へと急ぎます。しかし、その途中で人影を見つけました。
メルセル(静かに、誰かいる。)
エートラ(あれは…シロイアの兵士?)
トパル(どうやら、原因は魔物じゃなかったみたいですね。)
エートラ(そーだね。)
トパル(エートラさん、見てください。あの兵士たち何か様子がおかしいですよ。)
エートラ(ホントだ、なんか揺れてる。)
トパル(なんだかバカにされているような動きですね。)
エートラ(シロイアの王様、イイ人そうだったのに、何でこんなことを…?)
メルセル(待て、奥に魔物がいる…。人型のは珍しいな。)
エートラ(あ!兵士達が突然倒れちゃった。)
メルセル(奴が倒したのか?…もう魔物は行ったみたいだな。行ってみよう!)
エートラ達は兵士に近寄ります。
エートラ(…どう?)
トパル(気を失っているみたいですね。外傷は無いようです。)
エートラ(うーん。どうなってるんだろう?)
メルセル(この兵士たちのことは、あの魔物に確認しないことには分からないだろう。だが、いまは取り敢えず、テガという人の家へ急ごう。)
エートラ(うん。早く行かないと。)
トパル(エートラさん、この兵士たちに止めを刺さなくて良いんですか。)
メルセル(ああ、確かに。エートラ、どうする?)
エートラ(ううん。まだ兵士たちが町を壊したとは限らないし、やめとこう。)
メルセル(そうか。なら、先を急ごう。)
トパル(エートラさんは甘いですね。あとで困っても知りませんよ。)
エートラ(大丈夫だって。なんか最近強くなってきたし。)
トパル(強くなったって、ご飯食べなくても平気になったことですか。)
エートラ(他にもいろいろあるよ!…あ。テガの家だよ!)
メルセル(家は無事みたいだな。)
エートラ(中に入ってみよう。)
メルセル(やはり誰もいないようだな。)
エートラ(家も壊れてないし、町が襲われる前に皆逃げたのかな。)
トパル(机にうっすら埃がつもっています。町が襲われたのは少し前なのかも知れません。)
メルセル(1つの町が滅びそうなのに首都にすら気づいてもらえないとは、さすが田舎だな。)
エートラ(ねぇ皆、私、消えた町の人達を捜したい。)
メルセル(そう言うと思ったよ。)
トパル(本当に面倒ごと大好きですね。)
エートラ「捜すの手伝って!」
メルセル「仲間なんだから当たり前だよ。」
トパル(はいはい。)
ナガル「ガァガァ!」
エートラ「ありがとう、みんな!」
トパル(それで、どこから探すんですか。)
エートラ「えーと、どこがいいかな?」
トパル(…。)
メルセル「さっきの魔物を追ってみるのはどうだろう。何か知っているかも知れない。」
エートラ「それだ!よーし、出発!」
ナガル「ガァ!」
エートラ達はナガルに乗り、魔物が去った方に向かいます。
メルセル(皆、常に周りを見ていてくれ!あの魔物に気づかれないように追いつかなくては。)
エートラ(大丈夫!ナガルの足音もそんなに大きくないし、私達は心の声で会話できるから。)
メルセル(そうだな。見つけたらすぐ心の声で言うよ。)
エートラ(メルセルは頼もしいねー。このメンバーのリーダーみたい。)
メルセル(何を言っている。このメンバーのリーダーはエートラだろ?)
エートラ(うーん、私も口調だけでもかっこよくしてみようかな。)
メルセル(はは。エートラはそのままでいいよ。)
エートラ(そう?じゃあメルセルは副リーダーだね。)
メルセル(おいおい。私はこれでも新入りなんだぞ?トパルじゃないのか?)
エートラ(なんで?)
メルセル(エートラがいつも頼っているからだよ。頭も良いし副リーダーが似合うさ。)
トパル(誰が何でも良いですけど、追っていた魔物あいつじゃないですか?)
エートラがその方向を見ると、例の魔物と1人のシロイアの兵士が戦っていました。
エートラ(あ、ホントだ。なにやってるんだろ。)
トパル(明らかに戦ってますよ。)
エートラ(戦ってるかなぁ?)
魔物「危なっ!なんでこの兵士には私の魔法が効かないの!?」
兵士「何のことか分からない!それより、他の皆をどうしたんだ!」
魔物「キミみたいな兵士のことなら、皆、あっちの町に寝かせてきたよ。」
兵士「くそっ…生き残ったのは、僕だけか…。仲間たちの無念、必ず晴らす!」
魔物「ええっ、殺したなんて言ってないよ!?ちょっと待ってってば!」
兵士「うるさい!僕はもう魔物に惑わされたりなんかしないぞ!」
魔物「ちょっと、コワいって!話を聞いてよ!」
エートラたちから少し離れたところで、兵士が魔物に斬りかかり、魔物がそれを避けている様子が見えます。
エートラ(やっぱり、あれ戦ってないって。あの魔物が襲われてるよ。)
トパル(襲われるようなことをしたのかもしれません。)
メルセル(とにかく、止めたほうがいいな。)
トパル(待ってたら止まりますよ。)
エートラ(何でそんなこと言うの。それじゃ、あの子が助かるか分かんない!)
魔物「誰!?」
エートラ(あ、そうだ。心の声って魔物だったら誰にでも聞こえるんだった。)
トパル(そういう情報はもっと早く共有して下さい。)
エートラ(とにかく、突撃だ!)
魔物「キミたちは…?」
兵士「くっ…魔物め…、仲間を呼んだのか…。覚えていろ、お前はいつか必ず、必ず僕が倒す!」
そう言い残しシロイア国の兵士であろう人物は逃げて行きました。
魔物「え…?私、仲間なんて呼んでないって…。」
エートラ「これで、兵士もいなくなって、この子と話しやすくなったね!」
トパル(そーですね。)
魔物「あの~、キミたちは?」
トパル(エートラさんの計画は成功ばかりですからね。)
エートラ(も~!)
メルセル(あはは、そういうところがエートラの良いところだ。)
魔物「ちょっと!話、聞いてよ!その会話、私にも聞こえてるんだよ!?」
エートラ(そうだった。ねぇ、むこうの町を襲ったのは君?)
魔物「そうだよ。」
メルセル(なぜそんなことを…!)
魔物「別に殺してないんだから、いいじゃんそのくらい!」
エートラ「え!!町の人達はどのに行ったの!!!」
魔物「うっ…、そんな大声出さなくても…。」
トパル(魔物、早く場所を言いなさい。)
魔物「お前が魔物だろうが!もう逃げるよ!」
エートラ「あ!」
そう言うと魔物は消えてしまいました。
メルセル「逃げられたな。」
エートラ(ちょっと急に問い詰め過ぎたかな。)
トパル(早く探しましょう。)
エートラ(うん。あ、いいこと思い付いた!)
トパル(それ、本当に良いことですか?)
エートラ(ホントだって!)
メルセル(で、どんなことなんだ?)
エートラ(心の声って、思うだけで大きく出来るから、考えられる最大の音を思い浮かべれば、びっくりするんじゃない?)
トパル(はい。私はびっくりしますよ。)
エートラ(そうじゃなくて。あの子を驚かせたら、どこにいるか分かるってことよ。)
メルセル(なるほど。)
トパル(いや、それって私達もダメージ受けますよ。)
エートラ(大丈夫。耳をふさいでて。)
トパル(意味ないって。)
エートラ(心の耳だよ。)
トパル(えぇ。どう思います、メルセルさん。)
メルセル(心の目という言葉もある。エートラは気持ちの持ちようでなんとでもなるということを言いたいんだろう。)
トパル(違いますよ。)
メルセル(トパル、私達も出来るかぎり耐えよう!)
トパル(ダメだ、このチーム。)
エートラ(よし、じゃあいくよ!)
トパル(…ナガルも心ふさいだ方が良いですよ。)
ナガル「ガァ?」
エートラ(わああああああああああああああ!!)
メルセル(くっ!)
トパル(!)
ナガル「ガァ!!」
トパル(……で、どうなりました?)
エートラ(聞こえてないかな…?)
メルセル(もう射程距離より遠くにいるのだろうか。)
エートラ(そういえば、遠くには聞こえないんだったね。)
トパル(はぁ?)
メルセル(そうか、あのときトパルはいなかったな。この心の声は20ロフト先までしか届かないんだ。)
エートラ(そうそう。だから、20ロフトよりも先にあの子はいるってことだね!)
トパル(そうですか…!)
エートラ「わーっ!トパル、やめて!」
トパル(エートラさんが私がやめてって言ったときにやめてくれたことがありますか…。)
エートラ「あるでしょ!」
メルセル(本当に2人は仲が良いな。…ん、どうしたんだ、ナガル?)
ナガル「ガァ!」
メルセル(これは、おーい、エートラ!)
エートラ(トパル!メルセルが呼んでるって!)
トパル(そんなこと関係ありません!)
メルセル(例の魔物がいた!)
エートパル((え?))
2人が駆けつけると、草むらの中に、口を開けて気絶している、あの魔物がいました。
エートラ(気絶してる…。)
トパル(…心をふさいでなかったからですね。)




