第10話 心の距離
そしてダルカールの屋敷。
エートラ「私はメルセルを許します。」
カチュアノの言う通り、エートラが許すと発言するとメルセルとロロル王国の兵士たちはすぐに解放されました。
ロロル王国の将軍エイバサはすでにメルセルとエートラが殺したのでロロル王国の戦力は落ち、今回の事で世界一の大国ダルカールを敵にまわしてしまったのでロロル王国は破滅の一途をたどるのでした。
エートラ「カチィさん、改めてありがとうございます。」
カチュアノ「また戻ってる…。いいのよ。ダルカールの兵を勝手に使ったから叔父様には怒られる覚悟だったけれど、兵を一人も死なせずにロロル王国をダルカールの領地にできそうなんだから、叔父様も許してくださるわ。」
エートラ「あの将軍ってそんなに偉い人だったの?」
カチュアノ「エイバサ様はそんなにたいしたお方ではないわ。ダルカールはもともとロロル王国を攻めるつもりだったのよ。それがちょっと早まっただけ。」
エートラ「そうだったんだ。」
カチュアノ「ええ。これで一件落着。あとはパーティーの用意をしないといけないわね。」
エートラ「気が付いたらあと数日になってますね。」
カチュアノ「いろいろあったから。そう考えると、時が流れるのは速いものよね。」
エートラ「うん。でも…」
メルセル「エートラ!」
エートラ「あ、メルセル!もう帰って来たの?」
メルセル「ああ。行きはロロルの兵士たちと行動していたから少し時間が掛かったが、帰りは私1人だったからな。」
エートラ「そっか。でも、ロロルの兵士をわざわざロロル王国に送っていくなんてね。」
カチュアノ「そうよ。兵士なら自分たちで帰れるんじゃないの?」
メルセル「それはそうかもしれないが、まあ念のためだ。それに、ロロル王国に荷物があったんだ。家も引き払ってきた。」
エートラ「家、もってたんだ。」
メルセル「…国から貰ったんだ。まあ、そんなにいいものではないよ。他の場所に行くなと言うことさ。でも、もうこれで私を縛るものは無くなった。」
エートラ「じゃあ…!」
メルセル「ああ。私はこれからエートラの為に生きたい…!」
そういうと、メルセルは膝をつき、エートラに頭を下げました。
エートラ「え!?ちょっと、止めてよ。私達、仲間でしょ!」
カチュアノ「仲間…。エートラ…、その、メルセルを何故そんなに信用できるの?」
エートラ「え?えーと…」(心の声が聞こえるから、とは言いにくいなぁ。あ!)
エートラは袋から、黒くて長い指輪を取り出しました。
エートラ「これ!これを使えばカチィさんも安心でしょ?」
カチュアノ「それって、魔物の…?」
エートラ「そう。これで裏切ったりは出来なくなるよ。」
カチュアノ「でも、それって魔物にしか使えないでしょ?メルセルには…。」
エートラ「?メルセルは魔物だよ?」
カチュアノ「え。そうだったの!?」
エートラ「そっか。カチィさんには言ってなかったっけ…。」
カチュアノ「言ってないわよ!もう。まぁそれなら安心かしら…。」
エートラ「じゃあメルセル、契約していいかな。」
メルセル「もう裏切る気は無かったが…ありがたいよ。」
エートラ「そういえば契約ってどうするんだっけ?」
カチュアノ「はぁー。」
メルセル「魔物と契約するには、"魔物を入れたい指輪に書かれている文字"を書いた魔方陣に入れる必要があるんだ。」
エートラ「なんかややこしいね。」
カチュアノ「ちょっと魔方陣の本を探してきますわ。」
数十分が経ち、カチュアノが本を持って帰ってきました。
カチュアノ「あったわよ。」
エートラ「遅かったけど、どこまで行ってたの?」
カチュアノ「ダルカール城の図書室よ。これで、出来ると思うけれど…。」
エートラ「よし、やってみよう!」
カチュアノ「ちょっと、エートラ。まずしっかり読んでからにしない?失敗しても困るし。」
エートラ「そっか。それもそうだね。」
数時間後…。
エートラ「できた!」
カチュアノ「もう夕方ね。お夕食の時間だわ。」
メルセル「何回か失敗してしまったからね。」
エートラ「ほんと、生きてて良かったよ。」
カチュアノ「魔物屋の人たちはこんな作業を何回もするなんて…私なら死んでしまうわ。」
エートラ「とにかくまた何か起こる前に早く契約しよう!」
カチュアノ「そうね。」
メルセル「だな。」
エートラ「ここにメルセルが入って…この指輪を…わっ!」
エートラが指輪を翳したとたん、部屋の中が激しい光に包まれました。
カチュアノ「ちょっと、どうなったの!?」
エートラ「成功したときに光るって書いてあったから、成功じゃない!?」
カチュアノ「それにしても…光り過ぎじゃないの…!」
光は30秒ほどで、少しずつ収まっていきました。
カチュアノ「はぁ…やっと止まったわ。」
エートラ「光は魔物のエネルギーに比例して大きくなるって書いてあったから、メルセルが凄く強いってことだよね!」
カチュアノ「でもエートラは初めてやったから、他と比べれないでしょ?」
エートラ「うーん、でも強いよ!これより光るなんて考えられないし…。」
メルセル「あはは…。」
エートラ「他といえば、トパルとナガルどこ行ったんだろう。」
カチュアノ「そうね。一緒にダルカールへ帰ってきたとこまでしか見てないわ。というか…帰ってきてからもう5日もたっているわよ。今さら仲間がいないことに気づいたの?」
エートラ「いやーメルセルのこととかで頭がいっぱいで…。」
カチュアノ「仲間思いなんだかわからないわね。」
エートラ(トパル!ナガル!)「…近くにはいないみたい。」
カチュアノ「分かるの?」
エートラ「うん。大体だけど。あ、そうだ。」(メルセル、この声の距離を確かめとこっか。)
メルセル(ああ、なら私が離れていくから、エートラは呼んでいてくれ。)
カチュアノ「…どうしたの?」
エートラ(うん。)「いや、何でもないんだけど、長さが測れるものを持ってきてくれないかな?」
カチュアノ「ええ、いいけど…急にどうしたの?」
エートラ「うーん…ちょっと心の距離がどのくらいかなーと思って。」
カチュアノ「そう。まあ、取り敢えず持ってくるわ。」
エートラ「ありがとう。」(じゃ、メルセル良いよ、離れて。)
メルセルはエートラから離れて部屋から出て、廊下に立ちました。
エートラ(まだ聞こえるー?)
メルセル(ああ。もう少し離れるよ。)
エートラ(聞こえる?)
メルセル(ああ、まだ聞こえるよ。)
エートラ(聞こえる?)
メルセル(…。)
エートラ(ここが限界みたいだね。)
カチュアノ「持ってきたわよ。」
エートラ「ありがとう。じゃあこれで…。」
カチュアノ「家の中だからはかりにくいわね。」
エートラ「20ロフトくらいかな?」
カチュアノ「そうね。って結局何の長さなの?」
エートラ「なんだろうね。」
カチュアノ「?…そういえば、エートラは記憶がないのに長さの単位はわかるのね。」
エートラ「うん。他にも名前とか、お嬢様とかドラゴンは覚えてたよ。」
カチュアノ「へぇ?エートラっていったいどこから来たのかしら。」
エートラ「全然わからないけど、多分どこかの国だよ。」
カチュアノ「?…そりゃそうでしょ。」
エートラ「あ、そうだ。2人を探しに行かなきゃ。カチィさん、また!」
そう言うと、カチュアノの返事も待たずに、エートラは屋敷の外に飛び出しました。メルセルも後に続きます。
エートラ「でも心の声って思ってたより近くでしか聞こえないんだね。」
メルセル「ああ。これは、探すのに時間がかかりそうだ。」
エートラ(これだったら大声出した方が遠くまで聞こえそう…。)
メルセル(トパルー!!)
エートラ「ナガルー!!」
二人にはなんの手がかりもなく、ただやみくもに探し回りました。
しばらく探していると、何処からか聞き覚えのある泣き声が聞こえました。
エートラ(この声は!!)
メルセル(見つけたか?)
エートラ「うん!多分こっちのほうだよ。」
二人は森の中に入りました。
エートラ「ナガル!」
ナガル「ガゥ!」
エートラ「良かったー…って、あれはサム!?」
メルセル「誰だ…?」
サム「こんにちはー。サムだよー。」
エートラ(どうしよう…。メルセル、あれはダルカールの罪人なんだけど、取り押さえられる?)
メルセル「ああ。任せておけ。」
メルセルはサムに向かって走り、蹴りを繰り出しました。
サムは勢いよく、吹き飛びます。
サム「わー。」
メルセル(思ったより軽いな…。エートラ、奴をどうする?)
エートラ(どうしようか?)
トパル(切り捨てて行きましょう。)
エートラ(あ!トパル、良かった無事だったんだ。)
トパル(無事じゃないですよ。3日ぐらいの間、ずっとそいつに追われてたんですから。)
エートラ(え、そうだったの。なんで?)
トパル(知りませんよ。おもにナガルを追っていたので、ナガルが欲しかったんじゃないですか。)
エートラ(そっか。ナガルを欲しがってる人って多いよね。それで、サムはここで切り捨てるの?)
トパル(はい。脱獄していますし、2度も私達を襲い、ナガルを連れて行こうとしました。間違いなく死刑です。)
エートラ(そうなの!?)
メルセル(ナガルのことはともかく、奴は脱獄しているから、あり得ない話ではない。)
エートラ(そうなんだ…。なら…)
メルセル(待て、私がやろう。)
メルセルはエートラを止め、自分が代わりに剣を抜きます。
そして、そのままサムの首に向かって振り下ろしました。すると、切り離されたサムは両方とも煙のように消えてしまいました。
メルセル「なっ!」
エートラ「!」
メルセル(消えてしまった。確かに切った手応えはあったが…。)
トパル(エートラさん、一体あいつは何者なんですか。)
エートラ(うーん…。私にもわからないよ。)
メルセル(人を切っても煙のようにはならないことは私が一番知っている。あいつが人間ではないことは確かだ。)
トパル(…。そもそもあれは幻覚なのでは?)
エートラ(本物?のサムってまだ屋敷に捕まってるのかな?)
メルセル(帰ったら地下室を確かめるべきだな。)
ナガル「ガァ?」
エートラ「とにかく二人が無事で良かったー。帰ろう!」
ナガル「ガゥ!」
トパル(もうくたくたです。)
エートラたちは屋敷に戻り、カチュアノに頼んでサムを捕らえているであろう地下室に足を運びました。
カチュアノ「エートラ、こっちよ。」
エートラ「これがドアになって地下室に繋がってたんだ。」
カチュアノ「ええ。脱走されにくいように、ちょっとたどり着き難くしてるらしいわ。ほら、開いたわよ。」
エートラ「へー。地下室って、ずいぶん暗いんだね。」
カチュアノ「まあね。地下には窓もないし。」
メルセル「これでどうかな?」
エートラ「あっ、明るい。メルセル、ありがと。」
カチュアノ「…!エートラの言った通りよ…。」
エートラ「サムがいない…。」




