外伝⑮【記憶の喪失と継承】
『リーチェ・・・リーチェ。』
誰かが脳に直接声を送っているという事だけはわかるが、誰なのかサッパリわからないエルメリーチェ。
-ここは・・・どこ。私・・・。-
エルメリーチェが目を覚ますとそこは、見知らぬ天井だった。
-帰らなきゃ・・・どこへ?名前は?何もわからない。-
起き上がって辺りを見渡せばボロボロの小屋に寝かされていた。10歳にも満たなさそうな黒髪の小さな女の子が近くに座っていた。
「わ。起きた。」
「ここはどこですか?」
自分の服を見れば泥だらけでボロボロだった。だけど近くにいる女の子の服も泥だらけでボロボロで、こういうもんなのかと納得してしまうエルメリーチェ。
ズキズキと色んな所が痛み、聖属性の魔法で治癒をしていくエルメリーチェ。
「わぁ!!魔法!?」
少女は目をキラキラと輝かせた。
「えぇ。魔法使えないの?」
エルメリーチェが問えば少女はコクリと頷いた。
「そう・・・。」
「お姉ーちゃん、結婚してるの?」
エルメリーチェの左手の薬指には水色のキラキラと光る薄く虹色がかった不思議な宝石をふんだんにあしらった指輪がはめられていた。
「結婚してるみたいね。誰とかしら?」
首を傾げるエルメリーチェ。
「覚えてないの?」
「覚えてない。」
『リーチェ・・・。』と再び頭に響くので眉間に皺を寄せて、こめかみを抑えるエルメリーチェ。
「リーチェ・・・。」
「お姉ーちゃん、リーチェっていうの?」
「そう・・・みたい。そう呼ばれてた気がする。」
「リーチェお姉ーちゃん、魔法もっと見せて!絵本で読んだ事があるの!ママが昔沢山読んでくれたの!」
「えぇ、いいわよ。」
エルメリーチェは頭に思い浮かぶ赤い花を手のひらに咲かせて少女に渡した。
「凄い!本物だ!」
「魔法が使える人がいないの?」
「うん!絵本でしか見た事ないよ!じゃあ、お姉ちゃん!ママを治して!」
「怪我をしてるの?」
「ママね。ずっと前から喋れなくなっちゃったの。」
「分かった。治してあげるわ。」
エルメリーチェは立ち上がった。少女は、すぐそこの何かで膨らんでいる布を指差した。
「お母さんだよ!」
-具合が悪くて眠ってるのかしら。-
エルメリーチェが布をめくれば白骨体があり「ひっ」と小さな悲鳴を上げて後退ってしまう。
「ママ、白くなっちゃって喋らないの。」
「……。」
-ダメ。分かってる。分かってるのだけれど。-
試してみたい気持ちになってしまった。迷っているのは頭の中には知識だけ豊富にあるからだ。自分の名前、自分の家、自分に関する事は全くと言っていいほど覚えていないけれど、知識は豊富にあった。
手に聖属性の光を200%灯した。
『やめておけ。』
-まただわ。いったい誰の声なの?-
「どうしたの?お姉ちゃん。」
少女は不安そうな顔をしてエルメリーチェの顔を見る。
「あのね、貴女のお母さんはもう亡くなってるの。」
「なくなってる?」
「えぇ、病気やケガじゃなくて、死んでるって事よ。もう治せないの。」
「魔法でも?」
「魔法でも。死んだ人を生き返らせると闇に落ちてしまうの、闇に落ちたら…。」
「…?」
少女は首を傾げた。
「える・・・エルナザール帝国…そうだわ!私、エルナザール帝国。あのね、闇に落ちたら神の国から追い出されてしまうの。」
「ふぇっ…えーーーーん!!」
少女は泣きだしてしまった。エルメリーチェは為す術もなく少女を慰めた。
一方、サルバトーレ邸では。
エルメロイがクルトの部屋へ食事を運んで、ベッドに横たわるクルトの体を魔法で起こした。
「起きれるか?」
「あぁ…。」
「食事はとっておけ。お前が生きてるって事はリーチェが生きてるって事だからな。」
「なら、もっと旨い飯を作る事だな。クソッ。」
クルトは何かにイライラしてるような顔をした。
「どうした?」
「聞くな。死ね。」
「ひど!!!……継承を渋って後悔してるのか?」
「……。」
クルトは罰の悪そうな顔をした。
「おいどうしたんだ?」
「…お前、絶対にリーチェを裏切らないと約束できるか?」
「もちろん。」
「証拠をくれ。」
「証拠か。お前がそこまで言うの珍しいな。良いだろう。見ろよ。証拠。」
エルメロイが服を脱いだ。すると魔力共有の契約内容を記した呪文のようなものが体に刻まれており、それは絶対にエルメリーチェを裏切れないという確固たる証拠だった。
「お前に…継承を施す。」
「は?このタイミングで?あれだけ渋ってたってのに?」
「お前が俺に対してどうなるかを試したい。」
「実験材料かよ!!だが、継承できるなら何でも良い!」
「継承したとしても、お前はヒスイが隣にいなければ200%出力をできないのだろう。なら、問題ない。」
「俺は元々凡人だったからな。」
「隣にベッドでも置け。継承は長いぞ。」
エルメロイはベッドを作り出してクルトの側に設置した。
「ほいよ。」
「始めるぞ。手を貸せ。」
エルメロイは手をクルトに差し出した。
すると裁縫針サイズの氷柱を作り出してエルメロイの指を刺した。
「痛っ!!おい!!刺すなら刺すっていってくれ!!痛いから!!」
「喚くな。」
クルトは自身の指先に氷柱を突き刺して血を出した。その指をエルメロイにの傷口に重ねた。
「うげ。お前変な病気持ってないだろうな。」
「持ってる。」
「おい!!!…っ!?」
エルメロイはドサッと仰向けでベッドに倒れた。クルトは立ち上がってエルメロイを綺麗に寝かせて、自分もベッドへ戻り食事をとり始めた。
エルメロイは創世記の夢を見ていた。
かつて神は一人だった。
全てを管理し、世界のバランスをとっていた。しかし、そこへ神を地へ落とそうとする悪い人間が現れた。
悪い人間は自分こそが神でなければならない、神になれると妄信していた。
悪い人間は一国の王であった。王には8人の妃と18人の子供がいた。
悪い人間の王は8人の妃に命じた。最も優秀な子を1人選び神討伐へ向かわせよと。
選ばれた優秀な8人の王子、王女は父を疑わず、悪い神だと信じ討伐へ向かった。途中異世界から来たという少女を仲間に加えた。
王子、王女は無事に神を討伐した。
神は死ぬ間際に国のバランスについて語った。そして自分は終わっても構わないからこの星を守護せよと使命を与えた。それはその場にいた9人にとどまらず、それぞれの兄弟に属性と神の記憶を与えられた。
異世界から来た少女には【聖】の属性が与えられた。
少女が力を使う時、瞳の色と髪色が金色に変色した。
【氷】の属性を持った王子と、その弟と妹は髪の毛の色が水色に瞳の色も水色に変色した。
【火】の属性を持った王子と、その妹は髪の毛の色が赤色に瞳の色は橙色に変色した。
【水】の属性を持った王女と、その兄は髪の毛の色が青色に瞳の色も青色に変色した。
【地】の属性を持った王子と、その兄二人は髪の毛の色が茶色に瞳の色も茶色に変色した。
【風】の属性を持った王女と、その兄と弟は髪の毛の色が灰色に瞳の色も灰色に変色した。
【木】の属性を持った王子と、その弟は髪の毛の色が緑色に瞳の色も緑色に変色した。
【雷】の属性を持った王子と、その妹は髪の毛の色が金髪に瞳の色は紫色に変色した。
後に王子、王女達は嘆き苦しむ。呪われてしまったと・・・。
そして・・・悪い人間の王は全属性をその身に宿し神となった。
しかし王は後悔した。神こそ一番の印だと思っていたが実際は世界のバランスを維持する為だけの存在。いわば世界の奴隷である事に気が付いてしまった。
王は嘆き苦しみ【闇】を生んだ。闇の力で世界を破壊しようとした時、神を討伐した王子、王女らが力を合わせて王を討った。
神に使命を与えられた王子、王女は手を取り合い嘆き苦しみながらもこの世の生命の為に尽くし生きた。
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