外伝⑫【魔法学校の図書室】
いつもと変わらぬ朝食時にエルメロイが唐突にエルメリーチェへ魔法学校へ行く事を進めた。
「本当は六歳から通えるんだが、まぁ色々自衛の為に叩き込んでおきたかったからな。学校は一応出ておいた方が良いと思うんだ。というよりは経験しておいた方が良いが正しいかな。」
エルメリーチェはチラりとクルトを見てしまう。クルトが側にいれば底知れぬ安堵感を得られるからだ。
「リーチェ、あそこは全寮制だが、力あるサルバトーレ家は別だ。ワープで通う事を許されている。」
エルメロイはリーチェが不安に思っている事を読み取って補足をつけた。
「なら、通ってみようかしら。でも、学ぶ事ってありますの?」
「あるさ。俺もお前に近いくらい知識はあったが、通ってて良い事だらけだった。」
「嘘をつけ。ヒスイと悪巧みばかりして、ヒスイに馬車馬のようにこき使われていただけだろう。」
クルトは朝食を食べながら淡々と事実を述べた。
「叔父様?」
エルメリーチェは怪訝そうな顔をしてエルメロイを見た。
「とにかく、どうせお前は飛び級で、すぐに卒業だろう。行くだけ行って、つまらないのなら卒業してしまえ。」
「なんっか裏を感じるのよねぇ。まぁ行ってみますけど。」
エルメリーチェは学校へ通う事となり、学力テストを受けてみれば本当に卒業してしまいそうなレベルだったが、1つだけエルメリーチェを留まらせてしまうものがあった。
図書室である。家のエルメロイの趣味満載な図書室と違い、色んなジャンルの本があり読んでみたいと思ってしまった。世界中の本が揃っているらしい。
道徳を学びたいと嘘をつき、エルメリーチェはしばらく在学する事にした。本を一気に読みたくて寮生活との併用を希望し、朝から晩まで授業にも出ず図書室で過ごした。
正直、寮へすら返っておらず、ひたすらに本を読み漁っていた。
しかし、急に酷い眩暈に襲われ、体に力も入らず深夜の人がいない図書室で一人倒れてしまった。
-あれ、どうしてしまったのかしら・・・魔力切れだとかそうのは無いはずなのに、魔法を捻りだす事すらできないだなんて。やっぱり外へ出るもんじゃないわね。本に夢中になってるうちに誰かに呪われてしまったのかしら・・・。-
「馬鹿者。」
とても心地の良い重低音が響いて、今にも息絶えそうだなと感じていたのに不思議な安心感に包まれた。薄っすらと目を開ければ水色の髪が視界に入った。この世界で水色の髪色をしているといえばクルトだけだ。
-そんな、クルト・・・様?-
クルトは何かを口に含んだ後に水を含み、そして口移しでエルメリーチェにそれらを飲ませた。
-え?-
しかしエルメリーチェの意識はそこで途絶えた。
エルメリーチェは目を覚ました。すると見覚えのある天井だった。
-あれ?私の部屋だわ。どうして?私図書館で・・・。そうだわ!!図書館でクルト様に!!!-
起き上がると隣にクルト・クラリアスが寝ていて一瞬固まって、その後カァァっと赤面してしまう。
-やってしまったわ。私、過労死しかけたのかしら。無我夢中で本を読んでいて、いったい何日間読みふけっていたのかしら。でも不老不死なら死なないはず。だけど・・・そうね。魔力持ちは魔力を原動力に体の機能を動かすよう成長する。魔力がないものは、魔力無しでも生きていけるように成長する。って事は私は魔力が無くなってしまうまで補給する事なく使い続けて本を読んでいた事になるわね。-
「まだ寝ておけ。大馬鹿者。」
そう言ってクルトに片手てで抑えられてベッドに寝かされてしまう。
「ク、クルト様・・・///」
「お前は相当俺を殺したいようだな。」
「ち、違います。申し訳ありませんでした。とても珍しい本が沢山あったもので。つい。」
「ほぅ、俺よりも本が大事か。」
「そんな事ありません!夜になれば帰るつもりでした。」
「飲まず食わずでろくに睡眠もとらず、3週間だ。どの口が夜になれば帰ると言っている?」
「さ!?」
驚きと焦りで言葉がでないエルメリーチェ。内心どうしようとハラハラしてしまっている。
「お前のせいで俺は飯を1日に5食食べねばならんかった。それ以外の時間は睡眠だ。魔力が生命維持に永遠と使われたからな。眠くて起きていられなかったな。」
「本当にすみませんでした。」
「もう少し寝ろ。お前自身十分な魔力量があるというのに、どれほど無理をすればこうなる。」
「しょ、正直本の内容しか覚えておりません。」
エルメリーチェは目を瞑って布団で口元を隠した。
「お前は大馬鹿者だ。」
エルメリーチェが眠ると、クルトはベッドを抜け出してエルメロイの部屋へ移動した。
「どうだった?」
エルメロイはエルメリーチェの様子を聞く。
「問題ない。俺も起きていられるようになった。」
エルメロイの部屋の壁に持たれて目を瞑るクルト。
「良かった。で、もう1つの方は。」
「大問題だ。少なくとも学校の図書室ではなかったな。王宮の図書室と入れ替わっていた。禁書の棚も魔力が高い者だけが閲覧できるように細工されていた。」
「やっぱり動いてきたか。にしては地味だな。」
「俺にもさっぱりだ。王室は俺とリーチェの魔力共有について全く認知していなかった。恐らく、お前の【エル】の目かヒスイの心眼でしか認識できないだろう。」
「クロエルの狙いが全くわからない。」
エルメロイは小さな溜息をついて天井を見上げた。
「やはり、俺は離れぬ方が良いだろうな。」
「何でお前、そんな呪術かけちまったんだ?」
「俺が知りたい。どうやら未来の俺は酔狂だったのだろうな。」
「いや、愛だの恋だのしたいのは酔狂じゃないだろ。世界が崩壊する寸前にまともになったんじゃないのか?」
「本当にどんな想いだったのだろうな。」
「おい無視かよ。で?ぶっちゃけどうよ。楽しいのか?」
「何故、お前に言わねばならん。」
「友達だろ?何でも言って共有するのが友だろ?」
「なら、貴様の魔力共有の相手を言え。そうすれば俺も言ってやらんこともない。」
「ヒスイだよ。ヒスイ以外にありえないだろ。察してたんじゃなかったのかよ。」
エルメロイは椅子から立ち上がりベッドに寝転がった。
「何故言う気になった。」
「リーチェが俺と同等くらいになったからだよ。アイツは天才だ。ヒスイ以上のな。アイツも戻ってきたらビックリするんじゃねーのー?」
「なるほどな。」
そう言ってクルトは部屋を出ようとドアノブに手を掛けたがドアが開かなかった。
「おい、逃げるな。言うまで出れんぞ。」
エルメロイは横向きになり、クルトを見て顔をニヤつかせる。
「ゴミクズが。」
「ゴミクズはお前だろう。俺にだけ言わせて何自分は逃げようとしているんだ。」
クルトは「はぁ…。」と溜息をついた。
「あれだけ毎日好意をぶつけられたら、誰だって好意を抱いてしまうだろうな。俺も例外ではない。」
「ほう、好きなんだな?」
「好きか嫌いかで言うなら好きだろうな。」
「素直に言えよ~ロリコン♡」
部屋を氷らせてドアを破壊してエルメロイの部屋を出るクルト・クラリアス。
「ひっでぇ!お前の氷溶かすのにどれほど魔力と時間がいると思ってるんだ!」
そう叫んだ後に少し嬉しそうな顔をするエルメロイ。
エルメリーチェは完全に回復して、再び図書室へと足を運んだ。
図書室内にあるローテーブルに、ある程度読みたい本を積み上げて読書を始める。エルメリーチェの前には懐中時計を片手に本を読むクルト・クラリアスの姿があった。
夜になれば「帰るぞ」とだけ言われ、サルバトーレ邸へと二人で帰って食事をとり、睡眠もとった。朝になれば早朝ランニングをして朝食を食べてからクルトと一緒に、また図書室へと足を運んだ。
エルメリーチェは完全にクルトに管理されて生活していた。
そんな生活を5年も繰り返すのであった。
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