外伝⑦【雷属性魔力】
-ん?何か…口に突っ込まれてる?-
エルメリーチェが目を覚ませば口に哺乳瓶を突っ込まれており、ゴクゴクと自然に飲んでいた。
「あ゛…あ゛あ゛。」
エルメリーチェは顔を青くして無意識のうちに飲んでいた哺乳瓶を離した。
「おいおい、露骨に嫌そうな顔をするなよ。」
溜息をつきながらエルメロイはエルメリーチェを抱っこしながら玄関ホール近くの部屋に入った。そこは、簡素なベッドに机に本棚しかない執事用の部屋だった。
「ここの部屋を貰ってもいいか?」
-お前の部屋かい!!-
エルメリーチェは思わず哺乳瓶を投げた。
「おいおい、割れたらどうするんだ。ガラスを作るのも難しいんだぞ。」
エルメロイは哺乳瓶を拾い上げて、再びエルメリーチェの口に突っ込んだ。
-この人と一緒にいたら私の人格が破綻しそう。天然なの?凄い人なはずなのに凄く凄い人に見えない…。どうしてだろう?こんなに美形なのにそんな事ある?-
エルメロイは自分のベッドの近くにフカフカなベビーベッドを作り出してそこへエルメリーチェを寝かせた。そして自分のベッドも高級そうなフカフカベッドに作り替えてしまう。
「お前の呪いは見ていて痛々しいな。ふむ…名前はエルメリーチェだったか?しっかりサルバトーレ家の名前を継いでるじゃないか。サルバトーレ家は代々名前に【エル】が入るんだ。これはこの国の創世記に登場する雷属性を守護する人の名前が【エル】だからなんだ。」
-どうでもいい~~~!!ほんとにどうでも良い話キター。-
「今どうでも良いと思っただろう?魔法はイメージが大事だと言っただろ?これを知らないと雷属性特有の固有技ワープが使えないんだ。」
-まじですか?-
エルメロイはベッドに腰を下した。
「生後数週間の癖に眉間に皺を寄せるな。お前ならすぐ使えるだろうと思って話しているんだ。基本的に高度な魔法は出力100%を超えるところから始まる。雷属性200%がワープだ。ここで一番大事なのが何度も言っているがイメージだ。実際に国の外へでて雷を浴びれば誰でも取得できるが…まぁ狙ってなかなか浴びれるものでもないからな。良いか?衝撃だ。一番に感じるのは衝撃だ。次に歪みだ。実際に今から雷を浴びせる。」
-は?ちょっと待って!?無理!!無理よ!!何考えてるの?それ虐待よ!?-
エルメロは手に眩いくらいの紫色の光を灯す。エルメリーチェは目を開けていられずギュッと目を瞑った。
「死ぬなよ。エルメリーチェ。」
-やめてええええええええええ!!!!!-
とんでもない雷エネルギーがエルメリーチェの体を包み眩い光と共に意識も飛んでしまった。
-衝撃。歪み。無数のナイフのようだわ。体にそれらが全て刺さっていく感じね。-
エルメリーチェは過去の中にポツンと立っていた。
-ここはどこ?私は何歳だっけ。-
ふとの目の前には曾祖父ヒスイが現れた。隣には曾祖母がいた。曾祖父と曾祖母は必ずセットだった。
「リーチェ。時間がありません。できるだけ魔法を覚えてもらいます。」
-曾祖父様が小さな私に言った言葉だ。どうして急いでるの?-
「まさか…こんな事になるとは。」
-曾祖父様はどうして深刻な顔をしているの?-
曾祖父ヒスイによるスパルタ訓練を走馬灯のようにして思い出してゆくエルメリーチェ。
そして曾祖父ヒスイとの最後の記憶を思い出す。
「間に合わない…か。なら、せめて。リーチェ、自分と曾祖母様に雷の魔法をできるだけかけて下さい。お願いします。」
9歳のエルメリーチェは眩い光の雷属性魔力を両手に灯し右手を曾祖父ヒスイへ左手を曾祖母エルメラルダにくっつけて幼いながらに200%以上の魔力を放出して見せた。その時とエルメロイが放った雷魔力のエネルギーはとても酷似していた。だからこそ最後の記憶を思い出す事ができたのだ。
「可愛いリーチェ。自分達を許して下さい。」
「可愛いリーチェ。必ず、貴女を救いに戻るわ。」
曾祖父ヒスイと曾祖母エルメラルダの死は魂の離脱によるものだったと。
-もうあの頃には何かが始まっていたのかな。曾祖父様はきっと魔法がちゃんと使えない何かがあったんだわ。だから急いで私を育てようとした?大事な事は何も教えてくれないじゃない…みんな。良いわよ。強くなればきっと全てわかるわ。強くなってやろうじゃない。もうお淑やかに生きる必要なんてない。強さこそが全てだわ。弱いから死んでしまうのよ。私がクロエル王よりも強ければきっとこんな呪いにもかからなかった。聖女にも勝てたかもしれない。だって私は全属性を操る事ができるから。-
目が覚めると、また哺乳瓶を口に咥えさせられていて眉間に皺を寄せてしまうエルメリーチェ。
「お。やっと意識が戻ったか。」
エルメロイは嬉しそうな顔を浮かべた。哺乳瓶を取り上げられて、抱っこされ、トントンと背中を叩けばゲプッとゲップをさせられてしまう。
そしてエルメロイは机の上に置かれている指輪をとってエルメリーチェにはめた。光の粒子に包まれて大人になるエルメリーチェ。
「私、どらくらい気絶してたの?」
「1週間だな。気絶していても、空腹になれば寝ながらでもしっかりミルクは飲んでいたし、生命維持はできていたから問題はなかったぞ。」とエルメロイ。
-何故だか殴りたい衝動に駆られる。何故だろう。-
エルメリーチェは殴りたい衝動をレディだからダメよねと、なんとかこらえた。
昔の記憶を少し思い出せたエルメリーチェは今なら簡単な魔法なら使えるという自信が何故かあった。試しに木属性魔法でドレスを何着か作ってみた。味気ない寝巻のようなドレスが4着できた。
「ドレスには宝石がついているだろう?金具とかな。地属性を使うんだ。木属性よりもうんと出力を落としてな。」
エルメロイの指摘はとても的確だった。言われた通りに魔力を出力してみれば美しいドレスが一着出来上がった。
「凄い!できた!!」
喜びに目を輝かせるエルメリーチェ。
「時間はたっぷりあるんだ。お前も俺も。とりあえず、学校で習う全ての事を1人で立って歩けるようになるまでに覚えろ。それからお前の場合魔力共有のせいで魔力を使い切って魔力量を伸ばすといった事ができない。毎日走れ。それがこれからの目標だ。」
「わかったわ。」
「それから、週に1度は魔力を使い切れ。相手の魔力量強化に繋がるからな。魔力が増えれば俺が認識して特定する事ができる。」
「そんな事までできるのですね。」
「お前も直ぐにできるようになるさ。」
「エルメロイ様、私はどうして全属性を扱う事ができるのですか?」
「ふむ。何だったかなぁ。お前の母親はアリアラだったな。アリアラの家は代々聖属性魔力を宿す神官の家系でな、アリアラ自体は魔力無しだったが、血は聖属性を受け継いでいた。母親が聖なら、その子は全になる。不思議とな。ただそれだけだ。」
「ざっくりしてますね。」
「本当にな。地下に図書室を作っておいたからそこで勉強するといい。わからない事があれば、それを紙に纏めてここの机に置いておけ。俺は領地運営もしなければならんからな。」
-とか言って私の相手が面倒くさいだけじゃないの?まぁいいけど。-
それからエルメリーチェはエルメロイに言われた通りに1人で立って歩けるようになるまでに、沢山の事を学び、そして週の1回は魔力を全て使って、資金を増やす為に美しい調度品を作った。もちろんそれらはすぐに売った。朝からしっかりと運動もして確実に力をつけていった。
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