外伝④【暴かれつつある真実】
エルメリーチェが目を開けば視界がとてもぼやけており、自分がどこにいるかという認識はできなかった。だけどなんとか目を凝らして見ようと努力し段々と見えるようになっていった。また、誰かに抱きしめられているという感覚があり、そしてそれが誰かというのは直ぐに理解できた。
「ねぇ、おかしいわ。この子全く泣かないの。」と不安そうにする女性。
女性の名はアリシア。雷属性筆頭貴族サルバトーレ侯爵夫人。黒髪に金色の瞳。
「俺の祖父も生まれた時に全く泣かなかったらしい。遺伝じゃないかな。」と穏やかに笑う男性。
男性の名はエルメライド。雷属性筆頭貴族サルバトーレ侯爵家当主。金髪に紫色の瞳。
「まぁ、ヒスイ様が?」と驚くアリシア。
「心配なら一度見せにいくといいよ。」と言ってアリシアの肩を抱くエルメライド。
「名前はどうします?」
「ふむ、エルメリーチェ…なんてどうかな?」
「まぁ!可愛らしい名前ですこと。エルメリーチェ。可愛いリーチェ。」
「俺は父上に報告しに行ってくるね。」
「えぇ。」
-つまり、私は赤ちゃんに戻ったって事?そうだよね?
どうしてこんなにも戻っちゃうのよ。どうしろっていうのよ!!!-
-というか、そうよ。今お父様は俺の祖父って言ってたわよね。御祖父様じゃなくて、曾祖父様に早く見せに行ってよ!!会わないと。何かないのかしら、何か。-
エルメライドが部屋を出るとアリシアと二人きりになるエルメリーチェ。
「はぁ…。全く気持ち悪いったら、ありゃしないわよ。何の一言も発さないだなんてね。クロエルの嫌がらせになるかと思って、エルメライドと結婚して子供まで作ったってのに。クロエルは未だに聖女聖女って。腹立たしい。」
-待って、何を聞かされてるの?驚いた。母上っておしとやかで、気品があって…あれ?これ本当に母上ですか?それとも別の世界に飛んじゃった?-
「なぁに?言葉が分かってるみたいで気持ち悪い子ねぇ。出産なんてもう懲り懲り。痛すぎなのよ。」
-落ち着いて下さい。お母様。ん?待って。お母様がこういう性格だからクロエル王もあんな感じだったのでは?あれ?なんか今考えが整いそう。-
暫くしてエルメライドが戻った。
「念のため、離れの屋敷にいる曾祖父様に見てもらいに行こうか。お父様も心配しておられたよ。」
「そうですわね。私はまだ暫らく動けそうにありませんので、お願いしても良いかしら?」
アリアラはとても申し訳なさそうな顔をする。
「そうだね。君はまだ安静にしてないといけないよ。」
エルメライドはとても優しい笑みを浮かべながら生まれたばかりのエルメリーチェを抱いて離れの屋敷へワープした。
-母上。楽をしようと追い払いましたわね?まぁ、母上は魔力がありませんものね。こんな調子でどうやって弟達は生まれてきたのかしら。-
屋敷と呼ぶには大きすぎる曾祖父母が住む離れの屋敷にやってきた。エルメライドのワープの精密さはなかなかの腕前だった。ドンピシャで曾祖父母がいる部屋の前に着地したのだから。
部屋のドアをノックすれば「どうぞ。」と聞き覚えのある声がして、開くと曾祖父母がピッタリくっついて仲良さそうにソファーに座っていた。とんでもなく皺くちゃで生きている化石のような二人だけれど意識や喋りは結構しっかりしている。
「よく来ましたね。座って下さい。その子が自分のひ孫ですか。」
エルメライドの腕の中にいるエルメリーチェをじーっと凝視する曾祖父。
「名前はなんていうの?」
曾祖父の隣に座っている曾祖母が問いながら、抱っこさせてとアピールする。
「エルメリーチェです。御婆様」
エルメライドはエルメリーチェを曾祖母に渡す。
すると眩い光がエルメリーチェから放たれ、体内から真珠のようにキラキラしたものが放出されて、それは曾祖父の目の前に浮かぶ。
「これは…自分が作ったモノのようですね。どれ…。」
曾祖父がその真珠に魔法を使うと、一瞬でとんでもない映像がその場にいた全員の頭の中に入っていった。
しかし、その場で困惑しているのはエルメライドただ一人だった。
「子を…失う事は何よりも悲しく辛い事だと思います。自分でも耐えられるかわかりません。ですが、エルメライド。お前が犯した過ちは到底許される行為ではありません。リーチェは1000年も幽閉された後に…また悪夢のようなこの地へ戻されたのですから。」
全てを理解したかのような冷静な口調でエルメライドに話しかける曾祖父。
「しかしそれは未来の私です。しっかり肝に銘じます。そんな過ち犯しません。」
未来の自分の話をされても困ると実感も湧かずに焦るエルメライド。
「いいえ、エルメライド。未来を言ってるわけではありません。自分も舐められたものですね。」
曾祖父はパチンと指を鳴らした。すると、驚いた事に父エルメライドと変わらぬ年齢へと姿を変える曾祖父と曾祖母。それを見たエルメライドは驚き目を見開いた。
驚いたのはエルメライドだけでないエルメリーチェも驚いて開いた口が塞がらなかった。
「いったいどのようにして?魔法?幻覚ですか?」
慌てふためくエルメライド。
-こんな余裕のないお父様初めて。どうしてしまったのかしら?-
「孫だからと、甘やかし過ぎたようですね。それから、古い友人にまで迷惑をかけてしまったようですね。エル、永遠の時を自分と過ごしてもらえますか?」
曾祖父はとても申し訳なさそうでもあり切そうでもある顔をして曾祖母をエルという愛称で呼びながら質問する。
「何年アナタに付き合ってきたと思ってるの?世界が終わるまで付き合うわよ。」
曾祖母はそう言って曾祖父と同じく挑戦的な笑みを浮かべて全てを理解した上でエルメリーチェをあやす。
その答えを聞いた曾祖父は早速、手に虹色に近い魔法の光を灯す。
「何をやっているのですか!?その魔法は何ですか!?」
焦るエルメライド。
「ほぅ。流石は自分の孫と言ったところですかね。これが分かりますか。」
とても挑戦的な笑みを浮かべる曾祖父はエルメリーチェから見て、とてもカッコ良く見えた。
「いけない!!お父様!!召喚!!」
エルメライドが叫べば一瞬でエルメリーチェにとっての祖父が現れた。
あまり記憶に残らない祖父が急に現れて目が飛び出そうになるエルメリーチェ。
-待って、待って。ちょっとストップ。いったい何がどうなってるの。もうわけがわからないって!!私健やかに18歳まで育つんじゃないの!?何コレ!?曾祖父様と曾祖母様が急に若返って、お父様が御祖父様を呼んでって今から何が始まるの!?-
「エル、すみませんが…3分ほど足止めをお願いできますか?」
曾祖父はエルメリーチェを曾祖母から取り上げた。
「腰の痛みもないし3分と言わず30年持たせてあげるわよ。」
「30年は自分が寂しくて耐えられそうにありません。」
曾祖母の体から金色の鎖が出てきて父エルメライドと祖父を縛る。
「ぐっ!?聖女の力だと!?母上!!どこにそのような力が!!」
祖父が怒鳴り声に近い声で曾祖母に問う。
「子を罰しなければいけない親の気持ちを考えた事がありますか!!どれほど、どれほど痛いか!!」
曾祖母は涙ぐみながら祖父に語り掛けた。そして小さな声で「行って。」と曾祖父に声をかければ曾祖父はエルメリーチェを連れてワープした。
二人は白いカーテンが沢山ついていてベッドも沢山並んでいる場所へ着地した。
-曾祖父様、どこへワープしたのかしら?ここは見覚えがあるわ。王宮の医療室ね。こんなところへ何の用かしら。-
曾祖父は迷いなく歩いて行き、とある白いカーテンをシャッと音をさせながら開いた。そこには、今にも老衰して亡くなってしまいそうな人が横たわっていた。
「楽に死ねると思いましたか?残念ですね。お前も付き合え。エルメロイ。」
そう声をかければキラキラとした虹色の粒子を手のひらから出して今にも老衰で亡くなりそうな老人を若返らせてしまう。金髪の長い髪がニョキニョキと生えて皺は全てなくなり、背も伸びて着ている服がパツパツになっていった。
そしてゆっくりと目を覚ました。すると美しい紫色の瞳が見えた。髪は長いが体つきは男性であった。
イイネとブクマ助かります!!!ありがとうございます!!




