外伝②【離塔幽閉と不老不死の呪い】
玉座の間に連れていかれたエルメリーチェ。
そこには沢山のお偉い貴族達が集まっていた。玉座の側にはロジェル王子、隣には聖女ユリカ様。
玉座には現王クロエル。その隣の玉座には現王妃、聖女マリコが座っていた。
一体何が始まるというのだろう。先程自我を取り戻したばかりのエルメリーチェはただただ恐怖する事しかできなかった。
「汝、エルメリーチェ・サルバトーレは…聖女ユリカに対し、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者として…離塔へ幽閉とする事に決定した。」と王が言えば、その場にいる全員が唖然とした。
本来離塔幽閉は闇属性が発現してしまったらというルールだ。
「いいえ…お父様…そんなものでは…そんなものでは…ユリカが受けた屈辱は…晴らせません。このような刑では軽すぎる!!!」とロジェル王子。しかしロジェルの瞳には生気がなかった。隣で聖女ユリカが悲しげな顔をしているが、内心は心の底からエルメリーチェを嘲笑い気持ちが良いと思っている。
聖女に良いように操られるロジェルを見てニヤリと笑うクロエル王。
「そうか、そうだなぁ。息子よ。愛する者をいたぶられるというのは…とても胸が痛い。ならばこうしよう…終わらぬ魔法をかけよう。」とクロエル王が言えばその場にいる全員が口々に「王!!それはなりませぬ!!」と王を止めようとする。
「皆はこんなにも心を痛めておる息子の事をなんとも思わんのか?それとも…お前たちにかけてやろうか?」とクロエル王が脅せばだれもが黙り、跪いた。
「では…エルメリーチェよ…ん?なんだ?その目は。」とクロエル王はエルメリーチェの顔を見て怪訝そうな顔をする。
「…いえ、何も。」と言ったエルメリーチェ。終わらぬ魔法、それに関してエルメリーチェは曾祖父から聞いた事があった。不老不死になってしまうのだと。エルメリーチェの魔法の才を認めていた曾祖父はできる限りの事をエルメリーチェに叩き込み、この世を去った。
きっと今の現状を曾祖父が見れば「自分がリーチェの代わりになります。」とか言って、あっさり何のためらいもなく呪いに掛かってしまうだろう。
本当に…王族とは…愚かだ。そうえいば…あれほど愛していたロジェル王子への気持ちは…もう無い。
「……可哀想に…。」とエルメリーチェが呟いた瞬間、七色の光が体中に降り注いだ。それはクロエル王の手から放たれている魔法の光。
エルメリーチェは七色の光に包まれたまま冷たい手錠をかけられて…真っ白な高い塔に幽閉された。
幽閉された部屋の中はベッドに机、お手洗い、お風呂、枯れない水。最低限ものは揃えられていた。
昔、この塔の設備はとても酷いもので、エルメリーチェの曾祖父が強力な魔法を使って作り替えた。クロエル王はそれを酷い物に戻そうとあれやこれや魔法をかけたが、全く歯が立たず、質の良いまま残っている。エルメリーチェは曾祖父に感謝しかなかった。
「リーチェ…リーチェ…。聞こえるか?」と父エルメライドの声がして顔を上げるエルメリーチェ。
「お父様?」と天井を見るエルメリーチェ。
「リーチェの額に、もしもの時の為に魔法をかけておいた。」
「お父様…すみませんでした…。私…。」と申し訳なさそうに俯いてしまうエルメリーチェ。
「いや、すまなかった。母さんの件で…あぁ…もうどうする事もできない…。謝ったところで…ヒスイ御祖父様が生きておられたら…クロエルなんて愚王の呪い…簡単に解いてくれただろうに。」と声を少し震わせながら話すエルメライド。
「曽祖父様は…亡くなる前にとても多くの事を私に教え与えてくださいました。それだけで十分です。それに…聖女様に操られていたとはいえ…多くの人を虐げ、多大なる迷惑をかけたのは確かでございます。自分の弱さ故に…。ですから…」とエルメリーチェ。
「違う。そんな事ないんだ…エルメリーチェっ!!だが……もうリーチェとは、この命が尽きる迄、こうして話す事しかできない。」と苦痛の声がエルメリーチェの耳に響いた。
「お父様、私の事よりも弟達を…どうか…。一生のお願いです。弟達を笑顔に…幸せにしてあげてください。」と祈るエルメリーチェ。
「…わかったよ。可愛い可愛い・・・私のリーチェ。」
エルメリーチェの人生の中で、エルメライドとの会話は…瞬きをするかのように一瞬の出来事であった。毎日毎日…聖女に操られて色んな人を虐げてしまったという後悔。父親から止められていたのにロジェルと婚約してしまった事。全て自業自得じゃないかと毎日毎日…懺悔の祈りを捧げていた。
心から全てを悔いたエルメリーチェだが…長い長い時を過ごして何もかも馬鹿らしくもなってきた。
自分自身にも腹がたった。何を良い子ちゃんぶって大人しく呪いを受けちゃってるの。バカバカしい。そんな事を考える時期もあった。しかし…何もなかったのだ。今のエルメリーチェにとって何もなかった。エルメリーチェは無となったのだ。
稀に…目を瞑れば曾祖母の優しい笑顔が目に浮かんだ。どうして御祖父様や御祖母様ではなく曾祖父様や曾祖母様なのだろうと不思議に思った。
超天才児と言われた曾祖父。異世界から来たと言われた曾祖母。
(確かに会話もユニークだった……そうだったっけ。もう記憶にない。無くなってゆく…全てが。)
眠ろうと思っても体が疲れていないせいか眠れない。魔法力を高めようとしても魔力自体を手錠で封じられていて実行不可能。
エルメリーチェは廃人となりたかった。頭が壊れてしまえば楽なのにと。
そうしてどれだけの時が流れていったのだろうか。
キィィィっとドアが開くような鈍い音がした。それは聞いた事もない不思議な音にも思えた。
「とても…時間がかかってしまった。悪かったねぇ。」
知っているような知らないような男性の声がした。
「リーチェ…大丈夫?」
知ってるような知らないような女性の声がした。
何を言われているのか少ししかわからなかった。そして声の出し方も分からなかった。
「あ……うぅ…。」と唸るような声しか今のエルメリーチェは出せなかった。
扉が開いて、謎の二人に凄い勢いで抱きしめられた。強く強く強く…抱きしめられた。
「自分が言ってる事は理解できますか?」と真剣な目をしてエルメリーチェに問う男性。その男性が被っている王冠には見覚えがあったエルメリーチェは、とても恐いものに思えて体が震えてしまった。
「リーチェ…。名前はわかる?」と女性は声をかけながら金色の魔法の光をエルメリーチェに送った。
「自分の力不足です。力あるものがしっかりと導かなければ…。だからこう…なった。」とエルメリーチェを抱きしめる手を離し、立ち上がって壁をドンッと殴った。
「やめて、リーチェが恐がるから。リーチェ、ひいおばあちゃまよ?覚えてる?」と小さな子をあやすように声をかける曾祖母と名のる女性。
「う……あ………あ…。」
エルメリーチェは思うように声が出なかった。正直耳から聞こえる音もまともに拾えていなかった。
「すぐに治してあげるからね。」と言って、曾祖母と名のる女性は金色の光を強めた。
「無理はしないで下さいね。自分達には…以前のような力は無いのですから。」と切なそうな顔をする男性。
「そうね。私達は…力があるのに、とても愚かな事をしてしまったわね。自分たちの幸せを優先してしまった…。」と悲しそうな声をするエルメリーチェの曾祖母。
何故か心が慰めたくなってしまったエルメリーチェは曾祖母の頭を撫でた。
「あぁ…リーチェ!!リーチェ…。」と泣きながら抱きしめるエルメリーチェの曾祖母。
「悪いのは…愛する二人を巻き込んでしまった自分ですよ。」と言って男性はエルメリーチェと曾祖母と名のる女性二人を抱きしめた。
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