外伝①【未来のウルコク】
-最初に言っておこう。これは、一見恋愛物語に見えるが…長い長い時間をかけた夢と魔法が詰め込まれた友情物語だ。-
ここは地球を模して創られた星。名は【ウルコク】。エルナザール帝国歴1750年まで名は無かったが、賢王ティファニールによって名付けられた。
エルナザール帝国歴1800年。
賢王ティファニールは丁度100歳で崩御し、孫のクロエルが王となった。賢王ティファニールが健在であれば、あれほど痛ましい事件は起きなかっただろう。と、歴史書を知る者は誰もが思うであろう。
エルナザール帝国では魔法が使える者は皆爵位を得る。俗世の貴族階級と違い、爵位=資格のようなものだった。その中でも古くから血を絶やさず、1つの属性を極めし一族は公爵・侯爵位を得ていた。稀に俗世の貴族社会と勘違いし、奢り高ぶる者も現れるが、そういったものは大体エルナザール城敷地内にある白い塔へ幽閉されてしまうのだ。
「ふん、長生きし過ぎだクソじじいが。最後まで俺が王になる事を反対しやがって。」と軽率な発言をするのは、たった今王となったクロエルだ。クロエルは金髪をオールバックにしていて、目元に皺があり、瞳の色は緑色だ。
「お父様こそが王に相応しいです。」と今年18になるクロエルの息子ロジェル王子。
ロジェル王子は金髪にふわふわの癖っ毛。誰がどう見ても王子と言わんばかりのルックスを持つ王子だ。
瞳の色は緑色で代々の王家らしい瞳の色をしていた。クロエルが王になるのを阻止する輩は多かったが、聖女と結婚した王子が王になるという暗黙のルールがあり、このような結果となった。
事が始まったのは数年に一度行われる【星降る夜の儀式】の後だった。
【星降る夜の儀式】それは、国に張り巡らされている結界の張り替えをする儀式、儀式が成功すれば、お祝いに豪華な夜会が開かれる。
儀式は無事に成功し空には魔力による流れ星が降り注ぎ幻想的な夜となった。
ロジェル王子は婚約者エルメリーチェ・サルバトーレ侯爵令嬢と共に星降る夜空を眺めていた。
「リーチェ。僕はね…絶対に運命に逆らってみせる。君を…永遠に幸せにしてみせる。さぁ、夜会へ行こうか。」と優しく微笑んでエルメリーチェをエスコートするロジェル王子。
星降る夜の儀式後、必ずどこからか聖女が現れて時期王と結ばれるという言い伝えがある。
その強制力には何者の逆らえない。
会場に入った瞬間ロジェル王子はエルメリーチェのエスコートをやめてしまった。王クロエルの前にいる純白のドレスを着た女性に吸い寄せられるかのように歩いて行ってしまう。
「ロジェル王子?」と呟きながら、不安そうな顔をしてロジェルの行動を見つめるエルメリーチェ。
ロジェルは父親のクロエル王と少し言葉を交わして、クロエル王の目の前にいる純白のドレスを着た女性にこの上なく優しく微笑み話しかける。そして…。
「父上!僕は真実の愛を見つけてしまったようです。ですから、エルメリーチェとの婚約を破棄させて頂きたい!!」と大勢の目の前で発言してしまうロジェル。会場内は大騒ぎだった。
「ロ…ジェル様?…」と唖然とするエルメリーチェ。
直ぐにエルメリーチェの父、エルメライド・サルバトーレ侯爵が娘に近寄り、娘の肩を抱く。
「彼なら抗えると思ったのですが…ダメだったようですね。リーチェ、約束通り諦めて帰りましょう。」と言って帰ろうとすればクロエル王が此方をみつめてニヤリと笑いながら近寄ってきた。
「これはこれはサルバトーレ侯爵。夜会は楽しんでくれているかね?」と声をかけるクロエル王。
「…帝国の太陽にご挨拶申し上げます。婚約破棄の件は受理致します。娘は傷心しております。急ぎ連れて帰りますので…。」と丁寧に頭を下げるエルメライドは直ぐにでも飛び立とうとするが、クロエル王はガッシリとエルメライドの肩を持つ。
「いやぁ、誠に残念だ。私にも経験がある。お前の妻…アリアラと…なぁ?」と、ゲスイ顔をするクロエル王。
怒りで気が狂いそうな気持ちをグっとこらえて頭を上げた。
「いえ、お構いなく。先に失礼させて頂きます。」と冷静な顔をするエルメライド。
「いやいやいや、雷属性の名門貴族をこんなに早く帰らせてしまうなんて、そんなそんな。我々のせいで傷心しているエルメリーチェ嬢に何もせず返す等…。是非このまま今宵は王宮に泊まってゆくがよい。」
「……クロエル…。」と今にも殺しそうな勢いで睨みつけるエルメライド。
「お父様、私は大丈夫です。先にお帰りになって下さい。明日になれば私も急ぎ帰ります。」と涙ぐみながら微笑むエルメリーチェ。
「リーチェ…。」と言って、エルメリーチェの額にキスを落としてから、王に礼をして先に帰ってしまうエルメライド。こうする他に…手が無かったのだ。
しかしその後、エルメリーチェがサルバトーレ家へ帰る事はなかった。
何故なら彼女は…毎晩、聖女に聖属性の魔力をあてられて、聖女の思い描く悪女に改造されてしまったからだ。
この国の聖女とはいったい何か。ただ、聖という属性をもった…女というだけなのだ。聖属性を持った女性と子を持てば全属性を備えた子が生まれる。王族は全属性を持っていなければならなかった。その為、王族は聖女を囲い、全属性を備えた王族を生み出し続けなければいけない。ただそれだけだ。そういうシステムなのだ。
エルメリーチェは毎日毎日…聖女をイジメた。イジメてイジメて…イジメ抜いた。聖女だけでなく、自分に就いている優しい侍女達や執事達をも虐げ、イジメ続けた。
聖属性とは使い手によっては癒しを、使い手によっては魅惑を。今の聖女はもちろん後者だ。
そうしなければロジェル王子を心から支配する事ができなかった。
ある日、洗脳されているエルメリーチェはまたもや聖女をイジメなければと思い、聖女を探して庭園に足を踏み入れた時だ。
「リーチェ!!」と声がしたが、エルメリーチェはもう自分がエルメリーチェだという事さえわからなくなっていた。ずっと冷たい何かに体を浸けられているような感覚だったエルメリーチェだが、声の主に抱きしめられて温かさを感じた。
「もう…帰ろう。今すぐにだ。もう…いいんだ。」と泣きながらエルメリーチェを抱きしめ、ゆっくりとエルメリーチェの額にキスを落とす。
すると…聖女にかけられていた呪いが解け自我を取り戻すエルメリーチェ。
「お、お父様…私っ私!!!」と涙を流すエルメリーチェ。
「早くここを去ろう。」と言ってワープを使おうとすれば、それを阻止された。
クロエル王の手によって。
「クロエル…。」と殺気を籠めてクロエル王を睨むエルメライド。
「ハッハッハッハ。ダメだ。ダメだ。リーチェを連れ帰ろうとしよって。ラッド。」とクロエル王はとてもゲスイ笑みを浮かべる。
「何故リーチェに執着する。」とエルメリーチェを背中に隠し前へ出るエルメライド。
「わからないのか?聖女の魅力から解放された後…俺は絶望したぞ。親友だったお前に…心から愛するアリアラを取られていたのだからな!!!」と声を張り上げるクロエル王。
「違う。クロエル、お前はそういう運命だったじゃないか。王妃が現れ、アリアラがどれほど心を痛めて苦しんだか…。」と苦痛に満ちた顔をするエルメライド。
「そうだ。俺も苦しんだ。アリアラも俺と同じく、一生を苦しむべきだ。俺は…この国に囚われているのだからな。俺の息子も…俺と同じ苦しみを味わうべきだ。俺だけが苦しむなんて…おかしいじゃないか。そうだろ?…元親友よ。」とクロエル王。
「……な。流石は…賢王の孫だ。馬鹿になったとばかり思っていたが…そうか。正気で愚行を犯していたわけか。王族以外への復讐の為に!!!」と声を張り上げるエルメライド。
「そうだとも。こんな国。いつかは崩壊するぞ。いくらあのクソじじいが色々したとしても、我々の記憶から消し去られた真の王が王にならなかった時点で…終わってるんだよ。」とクロエル王。
「……どうあっても娘を連れて返してはくれないようだな?」とエルメライド。
「知っているだろう?魔法の才能だけは受け継がれている事を。」とクロエル王。
「私の命に変えてもこの子を!」とエルメライドが何かをしようとすれば「遅い。」と言ってクロエル王の腕の中にエルメリーチェが渡ってしまった。
「雷属性筆頭貴族サルバトーレ現当主がスピードで負ける等笑えるねぇ…。」とゲスイ笑みを浮かべるクロエル王。
「お父様!!!」と叫ぶエルメリーチェ。
「さぁ。リーチェや…あぁ、アリアラにそっくりだ…。素晴らしい…。リーチェよ…王命だ。エルメライドに別れの言葉を告げるのだ。」と命令するクロエル王。
「そ…んな…どうして…。」と驚くエルメリーチェ。
「さぁ!!!早く!!」と歪み切ったゲス顔でエルメリーチェの顔を見るクロエル王。
「……お父様。どうやらリーチェはここまでのようです。どうか私の事は忘れて弟達を大切にしてあげてください。弟達がずっと笑っていられるよう…お母様を支えて…。」と涙がポロポロ出て止まらないエルメリーチェ。
言い終えればエルメライドは近くにいた魔法士に取り押さえられる。そして王はエルメリーチェの肩を抱いてエルメライドに背を向ける。
「リーチェ!!!リーチェェェェェ!!!!」とエルメライドの叫びが空しく響き渡った。
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