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第三話【和紙。】

コンコンと激しいノックが鳴り響く。

それを無視して笑みを浮かべながら読書をするヒスイ。悪役令嬢ことエルメラルダは朝っぽらからヒスイの部屋の扉を激しくノックする。

コンコンコンコンコンコンコンコンコンコン…


流石に出てやらないと可愛い手に傷がつくかと思い、渋々影と目を合わせて影にドアを開けさせる。

「家に帰れないってどういう事ですか!!」と怒鳴り込んでくるエルメラルダ・サルバトーレ侯爵令嬢。

「家に返したら逃げるでしょ?それに王宮の方がなーーんでも揃ってて便利ですよ。」と言ってエルメラルダと目を合わせずに書物のページをめくるヒスイ。

「いや、そりゃサルバトーレに比べたら色々豊富だけど…。でも料理が…。」とちょっと困ったような顔をしてシュンと元気を無くすエルメラルダ。

「ん?料理?」と言ってやっと顔を上げてエルメラルダを見るヒスイ。

「そう、料理の味が薄すぎる!!この世界は塩しかないの?…でも素材だけの味を生かしてるにしては良くやってる方だと思うけど…。」と令嬢が言えばヒスイ王子はベルを取り出して鳴らすと、すぐに、エルメラルダ曰く、お堅い系で几帳面で真面目執事のダリが現れた。

「ダリ、すみませんが、エルメラルダに調理場を提供して下さい。コックのエドウィルを付き添わせて下さい。エルメラルダは自分の婚約者です。くれぐれも…失礼のないよう。影にも見張らせますから、よろしくお願いします。」とニコリと笑うヒスイ。

「はっ!畏まりました。」とダリ。

「ま、待って!!待ってください!!私料理をするなんて一言も…それに調味料は塩しかないんでしょう?なら今の状態で料理をしても良い物は作れないです。」と出て行こうとするダリの前に立ちはだかるエルメラルダ。

「ダリ、待った。」とダリに待てをかけるヒスイ。

「エルメラルダ、必要な物を今からこの紙に書いてください。」と言ってヒスイは紙と羽ペンを用意してエルメラルダに向けた。

「…料理はさせるんだ。」とぼやきつつも、サラサラと丁寧に必要な物をかいていく。

「そういえば、前世の世界は貴族社会じゃなかったんですよね?全員農民みたいなものですよね。弟さんに毎日料理を振る舞ってたんでしょ?」

「まぁ…はい。そうですね…。ところでこの世界にはカツオっていう名前の魚はいますか?」

「は?」

「いないですか。そうですか…では胡椒は?」と言ってエルメラルダは胡椒という植物の絵を描いてヒスイに見せる。

「あー……草ブドウ…?一度試しに取り寄せます。」と言って難しそうな顔をするヒスイ。


エルメラルダの要望は羊皮紙3枚分にもなった。それをダリに渡して一息つく二人。

「王子、気づいた事があるのですが。」

「なんです?」

「羊皮紙ってもったいなくないですか?もっと沢山気軽にかけるモノがあった方が良いと思いません?」

「あってもなぁ。別に困ってないですけど。」

「いいえ!私は困ります!植物の繊維を使って紙を作りませんか?」

「調味料とやらが届くまでには時間がかかると思うので、暇つぶしにソレやってみますか。」


という事で悪役令嬢エルメラルダとやる気のない第四王子は早速何故か空を飛ぶ馬車に乗って山へやってきました。エルメラルダは動きやすいようにズボンをはいていてそれがとても珍しくてじーっと見てしまうヒスイ。

「どうしてズボンなんです?」とこらえきれず質問してしまう。

「え?動きやすいから。今から山にいくんだから。……って、そっか。そうだよね。この世界じゃズボンなんてはく女性いなかった。」と少し青い顔をするエルメラルダ。

「うう…あのやる気の無い王子が山へ…。」と涙を流す護衛騎士。

「お前、今日は護衛騎士ではなく荷物持ちですよ。」と冷たく笑うヒスイ王子。

「山だ…。」と言って山を見つめるエルメラルダ。

「エル、熊くらいはでると思いますから、なるべく自分から離れないように。」

「熊!?わ、わかりました。」

(い、今私の事、エルって呼んだ?)

3人で山の中へ散策に入った。


「紙作りに一番欠かせないとは トロロアオイ って名前の植物です。この世界にソレがあるかどうか…。」

「トロロアオイ…あ。あります。確かあるはず…。」と言ってヒスイ王子は山をサクサク歩いて行き、目的の植物の場所へ。

「この特徴的な葉っぱはそうですね。必要なのはこの植物の根っ子です。」とエルメラルダが言えば、ヒスイ王子は手袋をして、いとも簡単にトロロアオイを根ごと引っこ抜いた。

それを護衛騎士に持たせた。

「次はクワ科の落葉低木。」

「クワ科?すみません。こっちの世界ではそう言った名前の木がありませんけど、落葉低木なら…んー…いくつか。」

「甘味のある赤い木の実がなる木です。あっちではコウゾって呼ばれてました。」

「コウゾ…あぁー…赤い木の実で落葉低木。あります、多分。行きましょうか。」


歩くこと30分。

今世のエルメラルダは今まで山登り等した経験がなかった。それどころかカーペットが敷かれていない道を歩く…等皆無なわけで。

「エル、自分の配慮が足りませんでしたね。よければどうぞ。」と空気を読んだヒスイ王子はおんぶをしようとしゃがんで背を向ける。

「王子…この歳でおんぶですか…でも仕方ないですね。」と恥ずかしいけれども痛みに耐えきれず渋々おんぶされるエルメラルダ。

「この歳っていったいなん歳なんですか?」

「今年で32歳です。」

「うわっ。ババア。」とヒスイ王子に言われて反射的に頭をコツンと殴ってしまった。

「イデっ∑…クソババア。」と涙目で訴えるヒスイ王子。

「でも今は王子よりもわーーーかい体を手に入れたので。」

「エルって何歳でしたっけ。」

「記憶が正しければ16歳かと。」

「16ねぇ。前世では結婚とかしてたんですか?」

「そんな事してる余裕なんてないですよ。それに…ウルコクの皆が私の旦那様///」

「ウルコクねぇ~・・・。あ、着きましたよ。この木ですか?」

「そうです!!この木です。靭皮(植物の外皮の下にある柔らかな内皮)を使います。」と言ってお目当ての木を指すエルメラルダ。

「よくそんな言葉知ってますね。前世は学者か何かだったんですか?」と上を向きながら喋るヒスイ。

「ううん、前世は本をパソコンに打ち込んで電子情報として残す仕事をしてたかな。途中でリストラされて数字を打ち込む仕事をしてたけど。」

「パソコン?電子・・・?」

「えーーーっと本を書き写す仕事って言えばわかりますか?」

「なるほど、それで変に物知りなんですね。」

「まぁそんな感じです。」

コウゾの木の靭皮を出来るだけ沢山とって下山した。


下山先では、芝生の上にシートが敷かれていて、その上に高級そうな椅子にテーブルが置かれており、ランチが用意されていた。

「さ、食べてから帰りましょうか。」と言って、ヒスイ王子がパチンと指を鳴らせば泥だらけだった服が一気に綺麗になった。

「ちょっと待って。今の何。」

「何って魔法の事ですか?エル、もしかしてエルメラルダの時の記憶がなかったりします?」

「ううん・・・記憶はあるんだけど…この子ちょっと頭が悪すぎて・・・ね。」とどんよりするエルメラルダ。

「あぁ…ははっ。苦労しますね。」と苦笑するヒスイ。


ランチを食べた後、和紙作りに必要な道具を説明して、それを買ってから城に戻った。

和紙作りは王宮の庭で行われた。


「本で読んだだけだから上手くいくかわからないけど。王子、魔法で水をお湯にする事もできますか?」

「…それができるのは恐らく王族くらいなものでしょう。国民のほとんどが魔法を使う事ができません。爵位を持っている者か…もしくは魔法学校を出ている者くらいです。」と説明しながらも沸騰したお湯を大鍋いっぱいに作るヒスイ。

「そうなんだ。」と言いながら、取ってきて洗った皮をぐつぐつと煮てゆく。


作業は夜までかかり、本当は最後干して乾燥させるところをヒスイの魔法で少し乾燥させて、土魔法で平らな石を作り出してそこに挟んで挟んだ状態で更に乾燥させて・・・出来上がった。


「これが和紙とやらですか。この国の人では到底作れそうにない魔法の数々で作り上げた伝説の紙ですよ。これは。」

「すみません、王族の無駄使いをさせてしまって。」

「いえ、自分には貴重過ぎる経験でしたのでOKです。ふむ、まぁ自分がアレンジを色々加えれば量産できそうですね。」と言って和紙を見つめるヒスイ。

「現代チートを使ってしまった気がする。」

「なんですか?現代チートって。」

「別世界の知識を与えて自分凄いだろ!ってやる事です!」

「なるほど。まぁ、確かに。こっちの方がメモとしては良いかもしれませんね。ふむ。そのように手配していきますか。」

後日、やる気のない王子は、これは必需品だと確信し、魔法学校卒業生、又は貴族の血筋を集めて超アレンジを加えた量産しやすい紙作りを教えるのであった。

自分の別作品【RealSocialGame】は本編は完結してますが後日談を色々書かないといけないので、それの更新日が日曜日なので毎週土曜日に1話かブクマやイイネがおおければ2話づつ更新していこうかと思います。読んで下さってありがとうございます。


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