第二十四話【闇に落ちないで下さいまし・・・アナスタリア様・・・。】
【4ヶ月後】
サルバトーレ邸は随分と賑やかになっていた。
ハルク、ミロード、ティファニールとそれぞれの従者が離れに住んでおり、人数が多すぎて改築工事をしたほどだ。
現在、エルナザール帝国は王とアナスタリアと王妃とそれぞれの従者以外が避難していた。
アナスタリアが闇属性のオーラを王の目の前で纏っていたからだ。闇属性が宿れば、とても分かりやすく目に映る。黒い煙のようなものが体にとりつくのだ。闇は伝染してしまう。
王は急ぎ、オーブの部屋にて城全体に結界を張った。オーブの部屋はヒスイとエルメラルダが簡単に侵入していたが実際は城にとって、とても重要で貴重な場所だった。
そして闇に対抗する勢力が今、サルバトー城本館の会議室に集合していた。
ヒスイを中心にエルメラルダの兄と父、氷属性以外の各貴族の当主、そして3人の王子達。オミドーは残念ながら王の側に残った。
「王は無事だ。ワシが確認してきた。オーブの部屋で結界を張り続けている。」とエルラダイ・サルバトーレ侯爵が唸るような低い声を出した。
「俺が最後に兄上と会った時、完全に落ちていたよ。闇にな。」とハルクが報告をする。
「ぬぅ…ヒスイ殿下に言われるまで微塵も感じんかったわい。」とエルラダイは悔しそうな顔をする。
「まぁ、まぁお義父様。聖と闇は特別ですから…気づけないのも仕方がないですよ。」とヒスイはにこやかな顔でエルラダイを慰めた。
「ぬぅぅ・・・息子だけでなく、娘までも傷モノにしよってからに!!永遠に呪ってやるからのぅ!!覚えておけ!!」と怒るエルラダイ。
「呪っても良いですけど、エルが悲しみますよ?お父様大っ嫌いなんて言われちゃったりして。」とヒスイ。
「おい、話を逸らすな。いくら王と言えども、長くは持たないぞ。」とエルメロイ。
「んー…あともう少しなんですけどねぇ。一発一発に重みのある陣を張り付けてますから。時間がかかって仕方がないですね。」とヒスイ。
「にー様、ちょっと良いですか?」と弱弱しく手を挙げるティファニール。
「ん?なんです?」と優しく聞くヒスイ。
「言わなくても…いいかなって最初は思ってましたが、エルお義姉様の事です。日増しに属性魔力量が増えていて、もう僕にはお義姉様に魔法を教える事が出来なくなってしまって…それで…。」と何か言いにくそうにしているティファニール。
それもそうだ。エルメラルダに魔法を教えているなんて誰にも言っていなかったからだ。魔力量増加が知られれば不味いと思い魔力感知を薄めるアイテムをエルメラルダに渡してヒスイ対策までしていた。だけど、それももう限界だった。怒られても良いから言わなければ、どうなるのか全く予想がつかない状態だった。
「……そう…ですか。」と驚き言葉を詰まらせるヒスイ。
「おい、影からの報告も無しだったのか?」とエルメロイ。
「そうですね。エルの意志を汲んだのかもしれません。エルを優先しろと命じましたから。」とヒスイは少しだけ焦った顔をする。
「で、決戦の日はいつになる。」とエルラダイ。
「後、3ヶ月はかかります。」とヒスイが言えば全員が口をそろえて「3ヶ月だと!?」と驚く。
「ここをしっかりしておかないと、まともに戦えません。それから、エルメラルダの知る予知を元にティだけはここに残って下さい。」とヒスイ。
「なんで!?僕もにー様達と戦うよ!?僕だって戦えるよ?まさか良くない予言でもあるの?」と椅子から立ち上がり必死にアピールするティファニール。
「その逆です。この戦いでアナスタリア兄様がどうなるのか全く見当がつきません。ですので、次期王となるのはティファニールが妥当でしょう。エルからのお墨付きですし。」とヒスイ。
「は?どういう事?意味がわからないよ僕。」とティファニールは驚いて座ってしまう。
「兄上達は自分が王になりたいとかありますか?ミロード兄様はキャサリンがいますし、ハルク兄様は……今更勉強したいですか?」とハルクにだけ怪訝そうな顔をして伺うヒスイ。
「僕は異議なしだよ。ヒスイの言う通り、親友との最後の約束を果たさなければならないからね。」とミロード。
「…勉強は嫌だ。俺は今騎士団長になる夢があるから…確かに王になる気はねぇよ。」と拗ねたように話すハルク。
「ここは一致ですね。それからもう一つ。今一度貴族社会についての認識の確認をします。エルナザールの外の国は我々を模した全く訳の分からない貴族制度があります。我々はそれに模してはいけません。この国の貴族制度は力あるものの責任。属性別に階級が示されている。そこには決して甘い汁を吸おうと欲を出してはいけません。欲は【闇】になります。かつて俗世と関わり、【闇】に落ちてしまった貴族が何人もいます。そこをしっかりと理解して頂きたいなと。」とヒスイ。
「お前が王になれよ。」とハルク。
「いえ、自分は…ラスボスと戦わないといけませんので。」とヒスイ。
「まさか、今回の戦いで死ぬ気じゃないだろうね。」とミロード。
「いえ、今回の戦いでは死にません。その為に莫大な魔力を費やした陣を城に埋め込んでますから。エルの話では戦いの1年後くらいに、また面倒な事件が起きるみたいです。9割当たると思って下さい。各貴族への影響は一切ありません。」と面倒くさそうに話すヒスイ。
「お前…エルを置いて死んだら許さないからな。」とエルメロイ。
「影がいる限り、自分が死ぬ事がありません。不死身ですから多分。」とヒスイは少しだけ目を逸らす。
「ぬぅ…ワシは王のケアを続けよう。できる限り急いでもらいたい。」とエルラダイ。
「そうですね。自分もさっさと面倒事を終わらせて、早くエルとの結婚生活を楽しみたいです。」とヒスイ。
「事実上結婚生活してるのと変わらんだろうが。」とエルメロイ。
「じゃあ言い変えます。早く子作りがしたいです。」と言えばヒスイはエルメロイとエルラダイにゲンコツをくらい、会議はお開きとなった。
ヒスイは真っ直ぐエルメラルダがいる部屋へ向かった。
コンコンと一応ノックをしてから入る。
「あ、ヒスイ。会議は終わったの?」とニコニコするエルメラルダ。
「はい。それよりエル。魔法を学んだって聞きましたけど。」とヒスイはエルメラルダの体をまじまじとみてみる。魔力感知阻害はエルメラルダの耳についているイヤーカフスだった。
ここ最近魔力を空っぽにして帰る事が多くてエルメラルダに気が回らなかった自分を悔やむヒスイ。
それにしても良く作ったなとティファニールを心の中で褒めるヒスイ。
「そうなの!!もう移動もできるようになったよ!」とニッコリとするエルメラルダ。
「…それは少し寂しいですね。」と影を落とすヒスイ。
「どうして?」と寂しそうな顔をしているヒスイに近寄って、ヒスイの手を握る。
「何もできないままの方が守りがいがあるじゃないですか。もっと自分に依存してほしいのかもしれませんね。」とヒスイ。
「依存なら…もうしてるよ。私はもうヒスイのいない未来なんて想像できないもん。」と言ってヒスイの手を頬にあてて擦り擦りするエルメラルダ。
「エル・・・。」
「嬉しかったの。前世の話をした時、ヒスイはいつも、苦労してるんですね。もうしなくても良いですよって言ってくれて…。それが心に響いて…甘えても良いんだって。だからね。ヒスイじゃなきゃ私はダメなの。私の話をちゃんと理解しようと耳を傾けてくれるヒスイじゃなきゃ…ダメなの。」とエルメラルダ。
「エル、あぁもぅ・・・可愛すぎです。自分もエルと同じです。」と言ってヒスイはエルメラルダを抱っこしてソファーまで連れていきそっと降ろして自分も隣に座った。
「同じ?」と首を傾げるエルメラルダ。
「自分もエルとの未来しか考えられないって事です。エルがいるから生きようと思えます。エルがいて初めて呼吸ができる気がします。結局…自分は生きる目標というか未来を欲していたんですね。」とヒスイは体制を崩してエルメラルダの膝に頭をのっけた。
「甘えたさんだね。ヒスイ。」と言ってヒスイの頭を撫でるエルメラルダ。
さてお盆休みです!!更新バリバリ頑張りますのでイイネとブクマお待ちしてます!!




