第二十一話【悪夢ですわぁ~~~~~~~~!!!!】
ヒスイとエルメロイはセットで毎日朝食後から夕食の時間まで家を空ける。
エルメラルダは一人っきりだった。一応後ろにずっと影はいるけれども、何かお話してくれるわけでもないので実質一人だ。
ヒスイと出会う時までいたエルメラルダ付きのメイドもいなくなっており、新人ばかりだ。流石に本館のメイドは変わってないけれど。
サルバトーレ家は邸宅と呼ぶには大きすぎて、城と呼ぶには少し小さいかもしれない。エルメラルダは生を受けて初めて本城の図書室に入った。
「うわぁ…広すぎ…。」とあまりの広さに声を漏らす。
(何もできないままじゃダメだ。弱いままじゃ…ヒスイの役に少しでも立てるようにならないと。)
そう考えるエルメラルダは自分で魔法の勉強をしようと考えていた。
魔法についての本を探していると、エルメラルダは影に肩をトントンとされて「え?何?」と振り向いた。影は机を指さした。そこには魔法の本が積み上げられていた。
「え!?探してくれたの?」とエルメラルダが問えばコクリと頷く影。
「あ、ありがとう…。」と言って机に向かい魔法入門という本を手にとって開く。
一方ヒスイとエルメロイは城の中のエルメラルダの部屋にいた。
「だいぶと慣れましたか?」と言って冷たい水をエルメロイに差し出すヒスイ。
「まぁな。腐敗しきってるってもんじゃないな。俺がここに通っていた時より、数倍は濃くなってやがる。ウリュウさんとか気づきそうなものだがな。」と冷たい水を受け取ってグイッと一気に飲む。
「アナスタリア付きの魔法士か。敵が母上なのか兄上なのかまだ検討がついていませんので、なんとも。ウリュウと言えば、幼馴染がいるとエルが言ってまして、調べたところ…彼にそんな幼馴染等存在していませんでした。」と言ってヒスイは向かい側のソファーに座った。
「ここにはどうして何も届かない?」
「それがサッパリ。エルが好きな場所や存在している場所には届かないみたいですね。」
「エルの聖属性と王妃の聖属性…違う属性って事か?」
「まぁ、その通りですね。父上が闇属性を持ってる…とかなら、説明はつきますけど、母上は完全に外部からやってきた人間ですから…それに聖属性を持ってるというのは紛れもない事実です。自分含め、兄弟全員全属性をその身に宿してますからね。」
「全属性か。亡くなった祖母が王族で全属性を宿していたが…僅かにしか遺伝されなかったな。」
「凡人程度に7色使える場合、僅かとは言いませんよ。あぁ。それでエルが聖属性なんてもの持ってるんですか。すっかり忘れてましたアンタの家系の事。」
「おい、親友じゃなかったのか。」
「まぁ、まぁ。ふーむ…。聖と闇は表裏一体ですからねぇ。持っててもおかしくはないですよね。」
「どうするんだ?」
「一つ良い提案があります。」
「なんだ?」
「こんなしょーもない国さっさと捨てて、エルと二人で遠い土地でいつまでも幸せに暮らすというのはどうでしょう。」とにこやかな良い笑顔で提案するヒスイ。
「そんな事微塵も考えていないのだろう?俺にはわかる。お前は…お前の描く幸せの最終地点はそこじゃないはずだろ。」と真面目な顔をするエルメロイ。
「昔っから堅っ苦しい奴ですよね。そうですね。まぁこんな与太話はさて置き。城中に陣を少しずつ張って、最後にドカーンっとかましましょう。」
「最初からそう言えよ。」
「アンタとの相性の確認をしてただけですよ。命を預ける相手なんで自分だって慎重になりますよ。自分の魔力量の限界まで詰め込んだ陣をゆっくり張っていきます。体が動かなくなるかと思うので連れ帰って下さい。」
「良いだろう。」
そして夕食の時間。
ヘトヘトになった二人がサルバトーレ城に帰ってきた。
「ヒスイ!?お兄様!?大丈夫?」と二人に駆け寄るエルメラルダ。
「自分は魔力の使い過ぎです。ロイは…属性酔いってとこですかね。」とヒスイが説明する。
「気持ち悪い…吐きそうだ。」と口元を抑えるエルメロイ。
「もぅ。」と言ってエルメラルダは聖属性の光を手に灯し、右手をヒスイへ左手を兄エルメロイへあてて「少しでも気分が良くなりますように。」と言って癒した。
「なぁ…ヒスイ。」とヒスイを横目でみるエルメロイ。
「間違いありませんね。」とエルメロイを横目でみるヒスイ。
「何?二人とも。」と眉をハの字にさせてわけがわからないと言わんばかりの顔をするエルメラルダ。
「お腹空いた。」とエルメロイとヒスイは声を合わせて言った。
「あっはは!もぅー夕食なら出てきてるよ!私がシェフに教えたから、凄く良い味付けだよ!」
夕食後、エルメラルダは豪華になった離れの城の自室のソファーで機嫌よく本を読んで寛いでいた。ヒスイはエルメラルダと同じ部屋のエルメラルダのベッドの上で寛いでいた。
「ヒスイー魔法って凄いねー!」と上機嫌なエルメラルダ。
「ん?今日は何をしてたんですか?」
「魔法を勉強してたの。少しだけど雷の魔法が使えるようになってきたよ?ファンタジー世界にいるみたいで楽しいの!」とワクワクといった感じに興奮するエルメラルダ。
「ファンタジー世界ねぇ。エル、もう寝ますよ。」とヒスイが言えば「はぁーい」と言ってヒスイの隣に寝転がるエルメラルダ。影が部屋に灯っている灯りを消す。
ヒスイは何のためらいもなく隣で寝てくれるエルメラルダが可愛くて、エルメラルダの額にキスをする。
「おやすみなさい。エル。」と言えば今度はエルメラルダがヒスイの頬にキスをして「おやすみヒスイ。」と言って眠る。
エルナザール帝国城内ティファニールはベッドの中でクマのぬいぐるみを抱きしめて苦痛に耐えていた。
「ハァ…ハァ…吐いても吐いても気持ち悪い…どうして皆平気なの…にー様…どこへ行っちゃったの…。僕…おかしくなりそうだよ。」とか細く呟く。
そんな夢を見てしまったエルメラルダは真夜中に目を覚ました。
汗がびっちょりで息も粗い。自分がティファニールになったかのような苦しみに襲われた。
「何…あれ…。」とつい声を漏らした。
「ん…どうしました?」と眠そうに目を擦るヒスイ。
「ティファニール様が…苦しそうな夢をみて…。」と手を額にあてるエルメラルダ。
ヒスイはガバッと起き上がる。
「ロイ!!」と叫べば目の前にエルメロイが寝巻姿でベッドの脇に現れた。
「なんだ?…っておい!!!誰がエルと一緒に寝て良いと言った!!」と怒るエルメロイ。
「そんな事言ってる場合じゃないです。ティが危ない!」とヒスイが言えば、ヒスイとエルメロイは光の球体となってその場から消えた。
「え…何が起こってるの?」とその場に取り残されてしまうエルメラルダ。
ティファニールの部屋は黒い煙で充満していた。
「ティ!!!」と叫んでベッドの中にいるティファニールを見つけて抱きかかえるヒスイ。
エルメロイは「いくぞ。」と言ってヒスイの肩に手をのせて再び光の球体となってエルメラルダの元へ戻る。
一瞬の出来事だった。
「うわっ!!戻ってきた!ビックリしたぁ!」と目を大きくして驚くエルメラルダ。
「ティ、しっかりして下さい。ティ!!」と言ってヒスイがソファーにティファニールを寝かせる。
ティファニールの目に正気はなく、目を開けたままぐったりとしていた。
「え…何がどうなってるの?」と真っ青な顔をするエルメラルダ。
「エルが見た夢の通りの事が起こったんです。」と冷や汗をかいているヒスイ。
「そんな!!」と驚くエルメラルダだが、急いでベッドから出て、手に聖属性の光を灯しティファニールの額に触れた。
暫らくするとティファニールが「カハッ!!」とまるで溺れて水を飲んでしまっていたかのように黒い煙を吐き出してから息をする。それと同時にとても苦しそうに眼を瞑って肩で息をする。
「ハァ…ハァ…。に…様。」
「にー様はここにいます。」とティファニールの手を強く握りしめるヒスイ。
いつもありがとうございます!!!お楽しみくださいませ!!




