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第一話【出会い】

エルナザール帝国 第四王子は超がつくほどの天才であった。

生まれてすぐにうぶ声を上げず、叩けば「あー・・・あー・・・」と力なく声を上げる赤子だった。

首の据わりは異常に早く、言葉は全て理解しているかのようだった。

3歳の頃には難しい文字の本を読み、この国の弱点等をまとめた書類を国王に提出し、次期国王候補にすると息巻いていた王。

そんな第四王子が18歳の成人を迎える頃には、次期王の候補からはすっかり外れているのであった。

しかし、第四王子こそ次期王に相応しいと誰もが思っていた。

現在の次期王は第一王子のアナスタリアだ。見め麗しい母親譲りの金髪に父親譲りの宝石のようにキラキラとした青い瞳。もし、第四王子が産まれていなければ誰もがこの王子こそ次期王に相応しいと言っていたであろう。アナスタリアは実に優しく優秀だ。第四王子の為に自ら次期王になろうとしているのだから。

では、なぜ第四王子は次期王候補から外されてしまったのか。それは…

第四王子、名をヒスイ。父親譲りのエメラルドの髪と母譲りのエメラルドの瞳を受け継いだ宝石の翡翠のように美しい王子。彼は何でもできた。疫病がでたなら、それを防ぐ薬や対策を秒で組み立て、実際に防いだ。

そんな優秀な王子だが、彼には生気がなかった。何をやっても退屈らしく、言われれば「えー…」と一言言って助言はくれるのだけど、自分で動こうとは決してしなかった。

常にソファーに横になって天井を見つめていた。


「なぁ。ヒスイ。本当に俺が次の王でいいのか?」とアナスタリアはヒスイに問う。

「……はい。王なんて国民の奴隷なだけですから。それに、この国の弱点は全て排除済みなんで、どうぞ平和な国をお過ごし下さい。」と言いながら目を閉じる。

「奴隷…か。どうしてそう思うんだ?お兄ちゃん馬鹿だからわからないよ。」と困ったような顔をするがそれでも笑みは絶やさない。

「そうですね。王は…国民あっての王なわけでしょ?国民が平和に暮らせるように外交だのなんだのって…王制度なんて廃止してやりたい奴がやればいいのに。まぁ…国民は何もしてくれないわけですよ。自分らが不幸なら王のせい、幸せでも王のおかげ。なんでもかんでも王。奴隷じゃないですか。」

「なるほどなぁ。でも、この国は俺達が王でないといけない理由と責任があるだろ?」

「まぁ、まぁ。兄上様、そう悲観せずとも兄上様はこの国で…自分を抜いて一番目くらいに賢いと思います。もっと自信を持ってください。」

「お前に言われてもなぁ…。」

ヒスイ王子は起き上がって時計を見て「ん…もう15時。お兄様、お茶会の時間では?」と言ってアナスタリアの顔を見る。

「そうだった…お前も一緒に…参加するわけないよな。」

「まぁ…顔くらいなら見せにいってもいいですよ。」

「無理しなくていいよ。」と言ってアナスタリアはヒスイの頭を優しく撫でた。


しばらくして、ヒスイは起き上がった。なんだかんだ言ってヒスイもアナスタリアの事を少しは気に入っていて、ちょっとは力になってやろうくらいは思っているのだ。

本当は正装をしてお茶会にでるべきなのだが、面倒なので正装の豪華な上着だけ羽織ってお茶会会場へ向かった。

その途中、お茶会が開催されている場所まであと少しというところの廊下でドンッと音を立てて誰かとぶつかってしまった。

ヒスイがぶつかってしまった相手は現王の宰相の娘で、日頃アナスタリアに強引にせまっている事で有名なド☆メンヘラなエルメラルダ・サルバトーレ侯爵令嬢だった。なんなら縁談も宰相パワーで強引に決まってしまいそうな勢いだ。

ヒスイが顔をみた瞬間「うげっ。」と心の声がでてしまった。ド☆メンヘラ令嬢のドレスは今日も奇抜だった。引くほどに。実際ドン引きだ。真っ黒な髪ツインテールに紫色の瞳、水色ベースにヒラヒラな部分が全て蛍光色よりのピンク色!!どこを探してもこんな奇抜なドレスを着ている令嬢はいないだろう。

「ちょっと!!どこ見て……う゛っ!!」と令嬢は苦し気に頭を抱えて呻き始めた。

「ん?」

令嬢の様子がおかしくなった。普段なら絶対に怒鳴ってきたはずなのに、彼女は身分等構わず誰にでも怒鳴り散らす悪癖を持っていた。

「うあああああああああああああああ!!!」と凄い声を出したかと思えば意識を失ってしまった。

「は?………おー…い…。おー…い。メンヘラさん?」と声をかけながらツンツンと突っつくヒスイ。

しかし完全に意識を失っているようで返事はなかった。ヒスイは軽く溜息をついてから左手を軽く上げれば、黒い服に仮面をつけた人がサッと現れた。それは第四王子専用の影と呼ばれる暗殺・護衛・補助の全てをこなす存在だ。普通、影は暗殺のみを実行する役職として呼ばれるが、この影は第四王子の影という特殊な意味を込めて影と呼ばれている。本来なら護衛騎士数人と影数人をつけるべきだが、第四王子は超がつくほどの天才で一人で1国を滅ぼせてしまうほどの力があった為、護衛がいては逆に迷惑だろうという事で一人だけ側においていた。

「頭の打ちどころが悪かったのか、気を失ってます。客室に運べますか?」

「医者を呼びましょうか?」と影が言えばピクリと眉を動かすヒスイ。

「……医者?自分の診断を疑ってるんですか?」と言って自分の影を静かに睨むヒスイ。ヒスイは超天才で何でもできた。もちろん医者としても自分が一番だ。その診断を少しでも疑われて一瞬不愉快になったようだ。

「いえ、失礼しました。では。」と影が令嬢を運ぼうかと手を伸ばした。

令嬢は酷く青い顔をしていて、汗や涙を沢山流して熱もあるようだった。

「…いや、やっぱり自分が連れていくのでメイドを1人客室へ寄こして下さい。それから医者を。」

「え?医者?え?あ、はい。」と返事をして影は消えた。


「よっこらしょっ」と声を出して、令嬢をお姫様抱っこして客室に運ぶ。

その間、色んなメイドや執事に驚かれていた。令嬢を抱っこして運ぶなんてヒスイにとっては生まれて初めての事だ。


客室のベッドに寝かせれば奇抜なドレスを脱がして、じっくりと診察する。

しばらくして年老いた王国一番の医者と年配のメイドがやってきた。

「自分とぶつかってこうなったんですが、頭の打ちどころが悪かったのかと最初は思いました。ですけど、尻餅しかついてなかったはずなんです。打ったとすれば、その後気を失った時で、風邪等の症状は全く見られず…ストレス性のものかと思ってますがどうみますか?」と真剣な表情で王国一番の医者を見る。

「そんな…ヒスイ王子がそうおっしゃるならそれ以上の診断は私にはできません。ですが…そうですね。私もストレスによるものかと。」と冷や汗をかきつつビクビクしながら答える医者。

「やっぱりそうですよねぇ…。あまり前例のない症状ですから自分がしばらく看病します。すみませんが軽いものに着替えさせてください。」

「畏まりました。」とメイド。

「では、私はこれで。」と医者は帰る。


ヒスイは暫らく、医学の本を読みながら令嬢の意識が戻るのを待った。

その間、第一王子だけでなく第二、第三、第五と自分が令嬢を看病している噂が広まっているせいか何度も覗きにきた。

第二王子のハルクは金髪にエメラルドのメッシュが入っていて、瞳はエメラルド色。とても活発でスポーティーな王子。

第三王子のミロードは金髪ロングで碧眼、色んなメイドや令嬢をたらしこむ女泣かせな王子。

第五王子のティファニールは金髪でふわっふわの癖ッ毛が特徴的で、常にテディベアを抱いている。このテディベアはヒスイが持たせたらソレっぽくて可愛いだろうという事でプレゼントしたものだ。実際似合っていて可愛い。とても愛らしい王子だ。

それぞれが今の第四王子を見て感動していた。

何事にもやる気がなくて、常に退屈そうで、そろそろ生きるのが面倒と言い出すのではと心配していたからだ。令嬢の父親の宰相は第四王子以上に優秀な医者が世の中にいない事から完全に任せていた。


令嬢が目を覚ましたのは3日後だった。

目が開いたのを確認して、直ぐに魔法のライトを指先に灯して、それを目に近づけて診察をする。

「眩しっ……ここは…どこ…。」と変な口調で話し出す令嬢。

「王宮の客室です。」

「王…宮?………私、死んだの?」

「私?生きてますけど。」

「生きてる?」

「はい。健康そうです。」

「健康…?そっか…まだ働けるのね…。」

「え?働いた事あるんですか?」

第一王子のケツばかり追いかけてるような令嬢だ。働いた事等、ましてやそんな時間もないだろうと思っていたのに働けると呟いた事に酷く驚き動揺するヒスイ。

「そりゃぁ…毎日数字との戦いですよ。弟が良い学校に入ってるから、学費を用意してあげないと…。」

「いやいや、貴女の御兄弟は聡明なお兄さんだけじゃないですか。弟なんていないでしょ。それに…貴女が働かなくても領地運営だけで巨額の富があるでしょうよ。」

「は?…。」と言ってガバっと起き上がる令嬢。

はい。自分が執筆してる小説【RealSocialGame】が本編完結したので新作です!!

悪役令嬢ものにチャレンジしてみます!!また意味深系の小説になります。

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