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3-12 氷の魔法

遅くなってしまい申し訳ありません。

「はい、このまま丸かじりでどうぞ!」


 氷菓子を目の前で作った少女に代金を支払い串を刺した凍った果物を受けとる。見た目は林檎飴みたいだな。俺は受け取った氷菓子をシルフに渡す。


「あと2つ貰ってもいいかな?」

「まいどあり!さすがお兄さん女の子2人連れてるだけあるね!」


 俺は追加注文して少女の魔法の流れに目を集中させる。と言っても見ただけでなんとかなるなら苦労はしないんだが・・・

 少女は串を刺した果物に手をかざして魔力を込めると先ほどと同じように氷菓子を作って俺に渡す。同じ作業をもう一度繰り返してあっという間に俺たち3人分を作り終えてしまった。


「はい、まいどあり!お兄さんこんな可愛い女の子2人も連れてるのにそんなに見つめられたら照れますよ。悪い男ですね」

「それって何かを凍らすんじゃなくて氷を作ることもできる?」

「あ、魔法に興味がおありでしたか。3つも買って貰ったからおまけですよ?」


 そう言って少女は手のひらにピンポン玉くらいの氷の球を作って見せてくれた。


「こんな感じですね!満足いただけましたか?」

「ありがとう。売り物じゃないのに悪いね」

「そんなそんな!こちらこそありがとうございました~」


 3人で氷菓子をかじりながら宿に戻る。


「冷たくておいしい~」

「不思議な食感ですわね」


 2人は初めて食べる種類の食べ物に驚きながらもおいしそうに食べている。うん。表面だけ氷で覆っているわけじゃなくて中の水分も凍っていてシャーベットのような食感だ。なんか懐かしく感じる。


「それで、あの魔法は使えそうですの?」


 俺が魔法を盗めないかと見ていたのが2人にはしっかりバレていたようでセレンに聞かれる。


「試してみないとわからないけど、やっぱり魔力共有無しだと難しいかもしれないな」

「それは残念ですわね」

「セレンも新しい魔法覚えたいの?」

「もちろん覚えられたら一番ですが(わたくし)はあまり得意ではないので。それよりギンジやシルフが氷の魔法が使えたら先ほどの凍った果物がいつでも食べられますわ」

「フフッ、セレンって食いしん坊だったんだね」

「何を言いますの!?シルフだっておいしいおいしいと言っていたではありませんか!」

「そうだけどそのために魔法を覚えたいわけじゃないよ~」


 実際氷を作りだしたり物が冷やせると色々と食料の持ち運びとか冷たい飲み物がいつでも作れるとか便利そうなんだよなぁ。戦闘面でも相手を無力化したりするのにも便利そうだし。


「氷の魔法って珍しいのかな?」

(わたくし)は使える人を見たのは初めてですわ。魔道具は何度か見たことがありますが」

「私も見たことないですね。あんなふうに凍るほど冷たい物を口にしたのも初めてです」


 氷の魔法は希少か。そうなるとさっきのお店の少女は腕利きの魔法使いなんだろうか。


「そうなるとさっきのお店の子は魔法教師とかはしないのかな?」

「魔法の種類によっては使える人を増やさずに独占した方が稼げると聞きますしもしかしたらそういった考えかもしれませんわね。氷の魔道具は高価ですし数も少ないですから魔法協会も公認を出さないのかもしれません」

「そういうこともあるのか」


 独占が悪いとは思わないが自分の判断でできないわけじゃなくて組織が利益の為に誰かの邪魔をしたりするのはなんか良い気がしないな。


「それならあの子に教えてもらえないかお願いしてみてもよかったかも知れないな」

「でもギンジさんあっという間に魔法覚えちゃうんじゃ」

「そうですわ。信用できない相手にギンジの特異さが知られる方が危険ですわ」

「そうか。かといって何日も拘束できるほど報酬払えないだろうしな」

「公認じゃないことを差し引いても珍しい魔法ですからね。お金を積むならそれなりに必要になると思いますわ」

「難しいなぁ」

「でも魔力の流れは見たんですよね?とりあえずそれで練習してみましょう!ギンジさんならできますよ!」

「そうですわね。とりあえず今日のところは収穫がありましたからいいではありませんか」

「収穫かぁ。でも見ただけだからなぁ」

「何を言ってますの?ねぇシルフ?」

「本当ですよ」


 2人はそう言って腕にはまったブレスレットをこちらに見せてくる。そう言えばそうだったな。2人が嬉しそうで良かった。

 宿に戻ってから寝る間際まで度々ブレスレットを眺めたりしてニコニコしている2人を見ると氷の魔法くらいまたの機会でいいだろうと思いながら俺は眠りについた。



 節末祭の翌日、朝食の前に少し宿を出て街を見渡すと昨日あれだけいた人や店はどこにいったのか節末祭の前と変わらない街並みに戻っていた。これを毎節やっているのか。おもしろい街だ。商人達もまた色んな街を回って商品を仕入れて次の節末祭に戻って来るんだろう。


 朝食を取った俺たちは今日からは問題ないということで早速馬車を出して採集に向かう。うん。これが俺たちの日常という感じだな。馬も丸二日宿で休んでいたので元気いっぱいという感じだ。もしかしたら宿に引きこもってたせいで逆にストレスだったかもしれない。犬の散歩じゃないけど、牧場なんかでも走り回ってたりするもんな。


 森に出たらシルフが採集をしてセレンがシルフの近くで警戒、俺は馬車の警護といった分担で作業を行う。こうなると稼ぎ頭は完全にシルフだな。もしかして俺はこのままではヒモになってしまうのでは・・・いや、馬車の警護も立派な仕事だ。そう思おう。


 森で持ってきた昼食を取って昼過ぎまで採集をして街に戻る。魔道具屋に寄って採集した素材の買い取りをお願いする。


「またたくさん持ってきてくれたな。ちょっと待っててくれ。数だけはちゃんと数えないといけないからな」


 いちいちお店のカウンターに素材を並べるのも手間なので馬車から直接店の倉庫?のような素材の保管室に素材を運び込む。店員さんが作業をしている少しの間、店の商品を見て回る。うん、魔法が使えるからかやはり魔道具は高いな。この魔道具代が不要になると考えると魔法教師の依頼料が高いのも頷ける。


「今回もたくさんありがとう。それとこれはお嬢ちゃんと約束してたやつだ」


 査定が終わった店員さんがカウンターに出したのは何枚かの紙と陶器でできたボウルのようなものだった。すり鉢かな?すりこぎ棒のようなものも付いている。


「これが約束していた調合のレシピと器具だね。この鉢は素材をすり潰したりするのに使ってくれ。もちろん使う度に洗うんだよ」

「ありがとうございます!助かります!」

「レシピはとりあえず火を使わずに素材と水があれば作れるものにしておいたからそのあたりから練習して上手くできるようになったら他のレシピを手に入れてもいいかもしれない」

「はい!!」

「このすり鉢とすりこぎ棒の料金はは今回の買い取り金から相殺させてもらう。それとこれはこれから調合を頑張るお嬢ちゃんにおまけしておくよ」


 そう言って店員さんは3本の空瓶をサービスしてくれた。


「いいんですか!?」

「これくらいは構わないよ。それと別に入れ物は売り物にするんじゃなければこんな未使用の瓶を買わなくても飲み終わった酒瓶とかでもいいからね。ただやっぱり調合して作ったものは液状のものが多いから蓋だけはしっかりね」

「ありがとうございます!」


 親切な店員さんだ。シルフもしきりにお礼を言っている。


「それじゃあ頑張るんだよ。それと街にまだ滞在するようならまた素材の持ち込みを待ってるよ!」

「はい!お世話になりました!」


 親切な店員さんと別れて魔道具屋を出る。シルフは貰った器具や瓶を丁寧に馬車に詰んだあと貰ったレシピをパラパラと見ている。


「どう?簡単に作れそう?」

「やってみないと分かりませんが素材は私でも手に入るものですし作業も水の量や混ぜる順番くらいのものなので何とかなりそうです。あっ!!」

「どうした!?」

「レシピに載ってる素材は今日は売らない方が良かったかもです・・・」

「ハハハ、店員さんに一本取られたね」


 ちょっと残念だけど採集はこれからも続けていくし今後はシルフが調合に使う分は売らないで確保していこう。そうなると馬車の中で素材を入れる入れ物が必要だな。それも買いに行かないと。

 その後、役場に行って今日セレンが狩った魔物の買い取りをしてもらってから俺たちは宿に戻った。

読んでいただきありがとうございます。


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色んな人に読んでいただけると嬉しです。


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