3-11 ケルソンバートの節末祭
節末祭当日、宿の食堂で朝食を取りながら節末祭にはいつ頃繰り出そうか話していると
「買い物客は夕方までずっと減らないよ。昼過ぎくらいまでは増え続けるしね。それに珍しい商品は売り切れちゃうからどうせ祭りに参加するなら早い方がいいよ」
と宿の主人が話してくれた。個人的には少しげんなりする話だったがシルフとセレンの2人はそれなら早く行こうと乗り気になったので朝食を済ませてから街に繰り出した。
「人が多い・・・」
俺たちが滞在しているケルソンバートの節末祭はとにかく人が多かった。昨日の夕方に街を歩いたときもすでに準備にかかる商人や街の人達で賑やかになるのは分かっていたが当日こんなに人が集まるとは思っていなかった。もちろん日本の夏祭りなどのイベントみたいにギュウギュウ詰めというわけではないが休日のショッピングモールくらいは混雑している。街の大通りの両側に出店が並んでいて店の人が客寄せをしたり商品のデモンストレーションをしたりしてアピールしている。
「見たことない食べ物とかよく分からないものを売っている店もありますね」
「売る方も買う方も周辺の街から集まっているようですわね。私たちもその一人というわけですが」
2人の感想の通り、ここにくるまでに見たことのない料理や使い方の分からないような魔道具や変わったデザインの服など色んな店がある。他の街の情報をまとめて新聞の様にして売っている人もいた。TVもネットも無いのでこういった情報は需要が高いだろう。俺も1部購入しておく。
「とりあえずはぐれないようにして、もしはぐれたら面倒だけど宿まで戻って合流しよう。あと気になる店や商品があったら遠慮なく言ってくれ。おもしろそうなものなら俺も気になるし3人で祭りを楽しもう」
「宿の人も時間がたったら売り切れちゃうお店もあるって言ってましたよね」
「そうですわね。後で戻って無くなっていたら後悔するかもしれませんわね。それとはぐれるのが不安ならこうすればいいですわ!」
「うわっ!」
そう言ってセレンが俺の腕をとって組んでくる。
「ほらシルフも!」
「ええっと・・・失礼します!」
反対側からシルフに腕を組まれる。両手に花ですね。というか人混みだと横に広がる方が邪魔なんだけど・・・まぁ今はまだ大丈夫そうか。
「これだとはぐれないけど他の人の邪魔になるから、その時はすぐ離してね」
「「わかりました(わ)」」
そんな感じで3人で節末祭を回る。目についた店で立ち止まるたびに何か買いそうになるがこの人混みだ。荷物が増えてしまうと邪魔になるので衝動買いすることなく次の店に行く。こうなると買うのは食べ物くらいで珍しいという果物を食べて3人でその酸っぱさに驚いたり、小さなミートパイのようなものを食べたりしながら通りを少しずつ進んでいった。
「ギンジ!こちらのお店はキレイですわ!」
セレンがそう言って女性向けのアクセサリーを売っているお店へ足を向ける。俺もどんなものが売っているのか興味があるので並んでいる装飾品を見てみる。シルフも遠慮ぎみではあるがやはり気になる様で可愛いデザインの物を見ている。
「せっかくだから2人に1つずつ買ってあげるよ」
「いいんですか?」
「さすがギンジですわ!」
「と言っても今は3人とも財布は同じだけどね」
「そうかもしれませんが、本当にいいんですか?」
「シルフ、男が女にプレゼントすると言ってるんですから遠慮しては失礼ですわよ」
セレンはそう言ってより一層気合を入れて商品を見ている。シルフはセレンとは違って商品についてる値札を見て目を回してるみたいだ。並んでいるのは指輪やブレスレット、首飾り、イヤリングや髪飾りなど多種多様だ。金属や宝石を加工する職人もいるんだろう。お店の人に尋ねるとこの人は自分で作るんではなくてこういったアクセサリーを買い付けて行商をしているとのこと。このケルソンバートの節末祭にもよく来るし他の街の貴族やお金持ちに顧客がいて直接取引をしているとのことだった。
「セレンはこういう装飾品は持ってなかったの?」
「興味はありましたがずっと家にいる身では必要ありませんでしたから」
「じゃあちゃんと可愛いのを選ばないとな」
「もちろんですわ!」
「それじゃあこれなんてどうだい?」
俺たちの話を聞いていたお店の人がおすすめして来たのは2つの似たデザインをしたブレスレットだった。
「これはどっちも同じ職人さんが作ったものでね。シンプルだけどいいものだよ。3人の関係は分からないけどお嬢ちゃん2人も仲良さそうだし、どうかな?」
「これはいいですわね!シルフ!私とお揃いでは嫌ですか?」
「ううん、とってもキレイだしセレンと一緒なのも嬉しい」
「それじゃあこの2つを貰えますか?」
「お買い上げありがとうございます」
男が連れている2人の女にプレゼントをするという状況で2人に差ができないように同じものを勧めてくれたのは助かった。お店のおじさんは2人に聞こえないように俺に値段を耳打ちして「いいかな?」といった感じの目線を送ってくる。高いと感じたが相場はわからないしハンドメイドのアクセサリーで全て一点物だし他の並んでいる商品の値段を見ても特別高いわけでもないようだし支払ってしまおう。本当はこういう場所では値切ったり交渉するのも楽しみではあるだろうがプレゼントを贈る相手の目の前で値切るのはちょっとカッコ悪い。ここは男らしく支払おう。と考えていると金額に迷ってると思われたのか「2つも買ってくれるから今回だけだよ」と少しまけてくれた。俺はおじさんにお礼を言うと商品を受け取って2人に渡した。
ブレスレットのデザインはほぼ同じだったがそれぞれ嵌まっている石の色が違ったので透明のダイヤのような石が嵌まっているものをシルフに、赤いルビーのような石が嵌まっているものをセレンに渡す。
「ありがとうございます。大事にします」
「私も大事にいたしますわ。ギンジ、ありがとうございます」
そういって2人はブレスレットを身につけたあと、嬉しそうに眺めたり目線を合わせて笑ったりしていた。
その後も色んなお店を見て回ったが特に目ぼしいものはなかったので一通り回ったあと宿に帰ることにした。
「そこのお兄さんお姉さん、よかったら1つどう?」
そう言って店の前を通った俺たちに話しかけてきた女の子の前には色んな果物が並んでいた。まぁ果物くらいなら買ってもいいか。と思ったが並んでいるのは特に珍しくもない普段街で買えるようなものばかりだった。
「あら、これでしたら食べたこともありますしいつでも街で買えると思うんですが何か特別なんですの?」
セレンが呼び止められた俺の横に来て店先の果物を一つ手に取り店員の少女に尋ねる。
「おお!こちらのお姉さんもお連れさんなんですね!お兄さん両手に花で隅に置けませんねぇ。こちらの果物はもちろんどこにでもある皆さんご存知のものですが・・・」
そう言って少女がセレンが手に取った果物を手に取って魔力を込める。おお・・・
「この通り!あたしの魔法でこの通り世にも珍しい氷菓子に早変わり!」
少女が使ったのは氷の魔法だった。
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