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2-6 日課と手紙

「ギンジです。こっちはシルフと言います」

「シルフです」


 カーティラ=リアンクルと名乗ったこの街の領主の白虎のおっさんにこちらも自己紹介をした後、泊まってる宿を聞かれたので場所を答えた後、俺とシルフは宿に戻って休んだ。


「ヘルムゲンでも領主様は遠くから見たことがあるくらいで話したことはありませんでした」


 そう言ってシルフは「何か失礼なかったでしょうか」と不安がっていた。まぁお忍びってほどでもなかったが自ら街をうろついていきなり声をかけてくるくらいだから大丈夫だろう。そう思いつつも偉い人相手だと不安になってしまう自分の小市民っぷりが少し悲しい。


 翌日は森に出掛けて採集をした後、教会に顔を出して子供たちと稽古をした。

 子供たちは完全に我流だったので剣の振りも型もめちゃくちゃだったが獣人の特性か身体能力と反射神経は良かった。きちんと素振りなどの基礎をやらせたら強くなるだろう。

 子供たち同士の打ち合いを見た後、俺が少し手合わせをした。太刀筋はめちゃくちゃでも気の流れを見れば動きはわかる。俺に全然攻撃が当たらなくて悔しそうにしつつも「すげー!つえー!!」と騒いでいた。

 体も歳の割に大きいのでシルフと手合わせさせるとちょうどよかった。シルフは子供たちのめちゃくちゃな動きに翻弄されていたが魔物と闘う練習だと思えばちょうどいい。

 また夕飯に誘われたが昨日のこともあり早めに宿に戻るからと伝えてまた来る約束をした。


「今日も買い取りですか~?」


 教会を出た後に今日の採集分の素材を売りに魔道具屋に寄る。猫耳少女の店員さんは俺たちに声をかけるとすぐに査定をしてくれた。


「採集が丁寧で助かります~」


 そんな風に言われてシルフは上機嫌だ。査定が終わると猫耳少女はシルフに色んな素材を見せながら「これは~もう少し森の奥の方で~」と取ってきてほしい素材と最終場所を説明している。シルフも気を良くしたのかフンフンと頷きながら素材をしっかり見て覚えようといている。明日はもう少し森の奥まで進むことになりそうだ。


「森の奥に行くとどんな魔物がいるの?」


 危険なのがいるなら深入りは慎重にしないと。そう思って俺は聞く。


「そうですね~ほとんどはお猿さんで、大きいお猿さんもいるそうです。大きいお猿さんは群れの数が多かったりして危ないですね~。あとは熊さんも時々目撃されますね~」


 ボス猿に熊か。素材として価値はあるのか?


「お猿さんはダメですね~。魔晶以外は価値が無いです~。熊さんは毛皮も肉も買いますよ~」


 熊の買い取り値段を聞くと、げっ!黒狼より高い。そうなるとあれより危険ってことか。しかも少人数じゃないと襲ってこない黒狼と違って集団で狩りに行くことも可能だとすると強さはもっと上なんじゃないかな。それとも希少性か。


「あんまり森の奥には行かないようにします!」


 一緒に話を聞いていたシルフがそう言ってお願いされた素材が取れないかもと猫耳少女に断りを入れる。シルフは安全第一だからな。俺も今回はシルフに同意だ。猫耳少女は「残念です~」と悲しそうな顔をするが俺たちは獣人たちみたいに肉体派じゃないからね。もう少し魔法が上達しないとやばい魔物は不安だ。



「とりあえずは今やれる範囲で狩りと採集をしながら少しずつ進んでいこう」


 宿に帰って食堂で夕飯を食べながらシルフにそう提案するとシルフもそれに同意してくれた。

 明日は安息のイドの日だから採集をしても魔道具屋が多分空いていないしどうしようか考えていると女将さんが俺たちのテーブルまでやってくる。


「お兄ちゃんたちにだってさ」


 そういって手紙と思われる封筒を机に置いた。


「街に来たばかりなのになんかやらかしたのかい?」


 女将さんの発言に「??」となりながらも封筒をみると表には『ギンジ様・シルフ様宛』となっている。裏を見ると差出人には『カーティラ=リアンクル』と書かれていた。

 宿を聞かれたから何かあるかもと思ったが領主のおっさんは行動が早すぎた。シルフに確認を取って封筒を開けて手紙を開く。


『いきなり手紙を送ってすまない。明日、領主邸まで来てくれ。時間は昼間、日が暮れるまでなら都合のいい時で構わない。もし来れない場合は封筒に一緒に入れている札を領主邸まで届けさせてくれ。役場か街の衛兵に言付けてくれればいい』


 呼び出しですね。手紙には一応領主邸の場所がざっくり書かれた街の地図も入っていた。


「手紙はなんだったんだい?」


 心配してくれてるのか野次馬根性なのか、女将が訪ねる。


「なんか呼び出されたみたいです」


 そう言って手紙を女将に見せる。見られて困るようなことは書いていない。


「ふ~ん・・・で、行くのかい?行かないなら断りの連絡は私から衛兵に渡しても良いけど」

「いえ、特にやましいこともないですし行ってきます」


 面倒ごとの予感はあるが相手は領主だ。リアンクルにいる限り逃げられないだろう。かと言ってすぐ次の街へ!という気分でもないし準備もしていない。「ギンジさん、やっぱりなにか粗相があったんじゃ・・・」とシルフが心配してるが「大丈夫だよ」と返す。

 本当に何かあったならこんな手紙じゃなくて直接捕まえるなりなんなりをしにくればいいんだ。別にシルフが心配するようなことはないだろう。


 もちろん、本当に何もないなら呼び出されるはずもないわけで。

 心配するシルフをなだめながら今日は休むことにして部屋へ戻った。

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