1-24 節末の祭り
「なんだい、結局ここから出ていっちまうんだね」
シルフの護衛の後、魔道具屋が休みなので住居側から訪ねたところキャリーさんの時間を頂けたのでお邪魔して話をしている。
今日は5節の21日、節末のイドの日なので街はいつもの安息の日とは違い賑わっている。休んでいるお店もあるが多くの店は店前や大通りに屋台を出したりして祭りのような雰囲気だ。
教会は何かしないのかシルフに聞いたところ「お片付けのお手伝い等を」と苦笑いしていた。まぁ教会は普段から商売してるわけじゃないしな。日本の自治会のお祭りみたいな感じを想像したがあくまで普段の商売の延長のようだ。
今訪れている魔道具屋も店舗は閉めている。屋台などで使ってる魔道具が壊れたりして急に来客があった場合だけ対応しているそうだ。
節末の祭りの方は置いておいて、キャリーさんに旅に出ようと思っていることを話すとキャリーさんは分かっていたけど面白くない、といった感じの反応だった。
「結局うちには何にも持ち込んでくれなかったねぇ」
「狩りに中々行けなかったもので」
チラッと隣に座るシルフに目線を送るが知らん顔で出されたお茶を飲んでいる。訓練をするようになってから前より強気になって来た気がする。前はもっとこう・・・いや、やめておこう。
「そんなんじゃ将来女遊びもできなくなっちまうよ」
「そんなのダメです!!」
「って言ってるけどどうなんだい?ギンジ」
「どうなんですかね?僕もまだ子供なのでわからないです」
「子供ねぇ。あたしゃいい男は女をいっぱい囲うべきだと思ってるけど、せいぜい女を泣かせないようにするんだよ」
「・・・気を付けます」
横ではずっとシルフが「ダメデス!ギンジサン!!ダメデスヨ!」と騒いでる。カワイイカワイイ。
「で、一人で行くのかい?」
「その覚悟もしていますが、今は返事待ちでして」
「はぁ。呆れたもんだねぇ。シルフ!どうせ付いていくんだろう?さっさと返事してやりなよ」
「でも・・・私が付いて行ったら邪魔じゃないかなって」
「ギンジが良いって言ってるんだから付いて行きゃいいんだよ。ダメって言われても無理やり付いていって捕まえとくくらいじゃないと良い男は捕まえられないよ!」
「やっぱりそうですか!?」
「毎日採集について来てもらっておいてそんなことも分かんないのかい!もちろんこの先他の女も群がってくるかもしれないからね、独り占めってわけにはいかないだろうさ。それでもこの男は優しいからね。捨てられることはないさね」
「むむむ・・・でも他の女の人・・・」
「そこは仕方ないから諦めるんだね。シルフに優しくするように他の女にも優しくしちまう、そんな男だよ」
本人の前でする話なのかこれは??
「ギンジさんそうなんですか!?」
急に話に巻き込まないで。
「なってみないと分からないけど・・・」
「シルフ!冷静になりな。目の前に困ってる人がいて放っておくようなギンジを見たいわけじゃないだろう?」
「それはそうですが」
「わかんない子だねぇ」
そう言ってキャリーさんはお茶を飲んで一息ついた。
「行先は決まってるのかい?」
そう聞かれたのでマックさんに相談して街道沿いに隣の街を目指すことになると思うと伝える。
「何か目的があるのかい?そういえば魔法を覚えたいって言ってたね。ここよりは魔法使いを見る機会は多いかもしれないけど教わる機会がほとんど無いのはどこでも同じだよ?」
「それは理解してるつもりです」
「まぁここでじっとしてても仕方ないさねぇ」
キャリーさんはその後も「若かったらあたしが付いていくんだけどねぇ」とか言ってシルフをからかって遊んだあと「あんまり無茶するんじゃないよ」と声をかけてくれた。
魔道具屋を出た後、祭りを見て回りたいとシルフにお願いして一緒に回る。やはり食べ物や酒を売っている出店が多く、色んなところに椅子やテーブルが並べられていてその場その場で宴会のような盛り上がりをしている。ビアガーデンみたいだな。屋外で複雑な調理は難しそうで肉や野菜を串焼きにしたものや、店から作ってきたスープが入った鍋を屋台で温めて出す、くらいのものが多かった。
俺も少し串焼きを買ってシルフと一緒に食べる。酒は日本と違い俺が飲んでも問題なさそうだったが止めておいた。
出店の多い大通りを往復したあとお土産を買って教会に戻る。ジャックとメグは買って来た串焼きに喜んでいたのでそれと合わせてそのまま夕食を取った。
地球のお祭りみたいに電飾があったりするわけじゃないので見た目としては地味だったが1節の疲れを吹き飛ばすような街の人の活気が感じられる祭りだった。ただ明日は教会だけじゃなく街の人達で街の清掃になるそうなので俺も参加しようと思う。
そして祭りを見て回りたかった理由がもう一つある。屋台で調理をするんだから火の魔法を使ってる人がいるんじゃないかと思ったからだ。これは狙い通り何人か使っている人がいたので魔力の流れを目に焼き付けた。ただ魔力共有をしたわけじゃないのでこの記憶を頼りに自分の魔力を操る試行錯誤は必要そうだ。明日から訓練をしてモノにできたら次はシルフに教えていかないとだな。
夕食後に少しシルフの剣の素振りを見たあと、明日の清掃に備えて俺は眠りについた。
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