1-19 魔法の訓練
本日1-19・1-20の2話投稿しています。
「すいません。全然できるようにならなくて」
水の魔法をシルフに教え初めて10日ほどたった。シルフが街の清掃に行っている日は資料室に行ったり魔道具屋の婆さんと話をしたりしたがそれ以外の日はほぼ毎日シルフの採集の護衛をして、魔力共有で水魔法の訓練をした。
1週間は俺が魔法を使う時の魔力を感じてもらい、8日目からはシルフが魔法を使うように練習を始めた。
魔力共有を始めてから感じていたことだが、シルフは体全体の魔力の流れを操るのが上手にできないようだ。シルフ個人の問題ではなく単に得手不得手の問題だと思う。
「仕方ないよ。初めに説明したけど今教えてる水の魔法は普通とはちょっと違うから」
「はい。空気?にある水を取りだすんですよね?」
「そう。分かりにくくてごめん」
「いえ、ギンジさんのせいじゃありません。私が上手くできないのがダメなので」
魔法を使う練習を始める前に水生成の話をした。空気には水の成分があって魔法を使ってその成分から水を作りだすと話した。はじめはちんぷんかんぷんだったみたいだが湯気や水蒸気の話をしてざっくりと理解してもらった。はず。
今日で魔法の練習は3日目だがまだうまく掴めないようだ。そりゃ難しいよな。根本的に理科の知識がないのだ。
ただ俺がこの魔法を知ったのは衛兵の人が使っていたからだ。だから無理ではないと思う。
「じゃあもう一回俺が水を出すから、同じような魔力の流れを意識してやってみて」
「はい!頑張ります!」
そう言って俺は手から水を出す。反対側の手はシルフと繋いで魔力の流れを感じてもらう。俺が水を止めると今度はシルフが繋いだ手と反対側の手に魔力をこめる。魔力の流れを目で見てみるがやはり体を流れる魔力を上手く感じて操れていないようだ。ただ魔法は発動していなくても魔力を操っているので数を繰り返すと少しずつシルフが疲れてきているように見える。
「今日はこれくらいにしとこうか」
「はい・・・すいません」
「いや、そんなすぐできるようになるものじゃないらしいから、気にしないでのんびりやろう。時間はいっぱいあるから」
「ありがとうございます」
訓練が魔力の共有から魔法の発動に移ってから以前ほど楽しそうでは無くなってしまったようだ。俺としては焦らなくてもいいので楽しい気持ちで訓練してほしいのだが。
訓練は相変わらず採集後の帰宅前にやっているので訓練が終われば街に戻る。街に戻る頃には訓練直後の暗い雰囲気はなくなっている。そのまま魔道具屋によってから教会に戻る。
もっと時間をかけてもいいんだけどどうせいつかは話すだろうしシルフは信頼している。もしこれで魔法の習得が早くなるならそれはそれで良しだ。
翌日、シルフは街の清掃だったので街を歩いて必要な物を買う。あとはシルフと話をして、シルフの反応次第だ。
清掃から戻ったシルフに「大事な話があるから夜俺の部屋に来てほしい」と伝える。「わ、わかりました!」と顔を赤くしていたので勘違いをさせてしまったかもしれない。でもそれくらいの覚悟はしておいてもらった方が良いかもしれないな。
「し、失礼します!!」
夕食後、しばらくしてからシルフがノックをしてから俺の部屋に入ってきた。緊張しているのか体はガチガチだし両手を握りしめている。とりあえず以前の時と同じように椅子に座ってもらい俺はベッドに座る。
向かい合うとシルフはそわそわして目が泳いでいる。そんなシルフに俺は「信じられないかもしれないけど実は・・・」と話し始めた。
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