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1-18 魔法教師

 今日はシルフが街の清掃に出ているので色々と調べものをする。出かける前にシルフに念を押されてしまったので相変わらず一人で狩りに出るのは自粛だ。

 ちなみに昨日もシルフの護衛をして少し魔力共有をした。手ごたえはわからないがシルフは嬉しそうにしているのでとりあえず良しとしよう。


 役場に行き資料室を使わせてもらう。


「今日は何を調べに来たんだい?」


 資料室に入るとマックさんが声をかけてくれる。


「おはようございます。今日も色々聞いても大丈夫ですか?」

「構わないよ」


 今日調べようと思っていたのは魔法を教わる方法だ。


「この街では魔法を教わるのは難しいかもしれないね。魔法教師が定住していないからね」

「魔法教師という職業があるんですか?魔法を教えるのに資格みたいなのが必要なんですか?」

「別に教えるのに資格が必要というわけではないよ。親が子供に教えたりすることは珍しくないしね。ただ魔法教師を名乗るにはジェドウィックにある魔法協会の認定が必要だね」


 ジェドウィックというのは街の名前らしい。魔道具の生産で栄えている街で魔法使いも数多く住んでいるとのこと。プレートやボックスなんかも魔法協会が生産して管理しているそうだ。


「魔法教師が協会公認であるかどうかって大事なんですか?」

「そもそも魔法を教わるのは時間がかかるし、お金もかかる。その上で魔法が使えるようになる保証はない」

「使えるようにならないこともあるんですか!?」

「才能もあるからね」


 魔法を習得できるかどうかは賭けになる。それに大量のお金を払うわけだからお墨付きは必要か。


「魔法が使えることと人に教えることは別だ。魔法が使えても人に教えれる才能があるかは分からない。魔法を教えるには教える相手の魔力の流れを感じて助言することが必要だ。しかしこれをやってる'フリ'をするのはとても簡単なんだよ」

「つまり魔法教師詐欺があるってことですか?」

「その通りだね」

「詐欺なら犯罪者として捕まえたりできないんですか?」

「証明できないよ。『ちゃんと教えました』『才能がなかったみたいです』と言われたらどうしようもないからね」

「なるほど」

「もちろん、公認であっても習得が保証されるわけじゃない。だから魔法教師としての実績がある人は人気があって予約が取れないし、そういった人でも習得は確実なわけじゃない。お金持ちじゃないと中々できない賭けだね」

「そんなにお金がかかるんですか?」

「魔法教師の拘束期間や魔法の種類にもよるけど万単位だよ」


 万!?1万ベルならだいたい100万円か・・・それが最低ラインなら中々すごい商売だ。というかそんな価値観のものをシルフにタダで教えようとしている俺って結構ヤバイのかな。いや、家族に教えたりすることは珍しくないんだ。大丈夫なはず。


「そこまでして習う人っているんですか?」

「習得できてうまくいけば自分の家族や子孫に受け継いでいけるんだ。お金があるなら挑戦する価値はあると思うよ」


 それもそうか。もちろん自分に才能が有れば教師側になることもできるんだ。魔法ってお金になるんだな。


「ジェドウィックってヘルムゲンから近いんですか?」

「近くはないね。王都の近くだからここからだと馬車で1週間くらいかな。他の街を通ることになるし天候などにもよるから目安だけど」

「わかりました。ありがとうございます」


 とりあえず普通の手段で魔法を教わるのは難しそうだ。絶対金が足りないし魔法教師が捕まるかも怪しい。正直習得に時間をかけない自信はあるので値引き交渉もできるかも知れないけどすぐに習得できてもそれはそれで怪しまれそうだ。

 ジェドウィックの街に行けば魔法使いも多そうだし魔法を目にできるかもしれないけどまだこの街を離れる気がない。今日の調べものはこれくらいか。


「魔法のことで気になるなら魔道具屋で聞いてみるといいよ」

「キャリーさんですか?」

「知ってたのかい?それなら話も早いだろう」

「訪ねてみます。ありがとうございます」


 

 役場を出てこの前ザックさんに連れて来てもらった食堂で昼食を取る。以前利用した飲み屋のランチよりはいいお値段だったので飲み屋よりもランクが高い店のようだ。いや、飲み屋がリーズナブルなのかもしれない。


 昼食後に魔道具屋に行く。


「キャリーさんはいますか?」


 お店には息子さん(と言ってもキャリーさんがお婆さんなので息子さんも俺からするとおじさんなんだが)が立っていたので聞いてみる。「ちょっと待ってね」というとお店の奥に入っていきすぐキャリーさんと一緒に戻ってきた。


「誰かと思ったら狼の兄ちゃんかい。何かおもしろい素材でも持ってきたのかい?」

「こんにちわ。今日は買取では無いんですが少し相談と言いますかお話しを聞きたくて」


 そう切り出してマックさんと話したことをかいつまんで説明する。


「店先で長話もあれだからね、こっちおいで」


 そう言って奥に案内してくれる。息子さんにお辞儀だけのお礼をするとキャリーさんの後ろについていった。お店と住居が併設されているようで台所と居間が合体したような部屋に通される。地球で言うところのDKと言った感じだ。勧められた椅子に座ると飲み物が出された。


「急に押し掛けたのにすいません」

「構わないよ。それより魔法を覚えたいってことだけど金はあるのかい?」

「いえ、正確な金額は知らないんですが何万ものお金を用意するのは難しいです」

「金が無いんじゃあ話にならないね」

「お金があればなんとかなるんですか?」

「魔道具屋の看板掲げてるんだ。少なからず協会とは繋がってるからね。紹介とかはできなくないよ。もちろん紹介料はもらうけどね」


 そう言えばジェドウィックの街は魔道具の生産も有名だと言っていたな。仕入れ先はそっち方面になるのか。お婆さんも魔道具作れるのかな。その辺りもおいおい聞いてみたい。


「やはりお金が必要ですね」

「そりゃそうさ。教える側の人間だってほとんどは金を払って使えるようになったんだ。それをただで寄越せってのはお門違いだよ」

「その通りですね」

「兄ちゃんだって何かしたいことがあって魔法を覚えたいんだろう?そのための対価は必要だよ」


 魔法のことを聞きに来たのにお金の話になっちゃった。どの世界でもお金は大事だな。


「ちなみにキャリーさんは魔法を教えたりしないんですか?」

「金は無いんだろう?」

「それはそうなんですが」

「ハハハ、冗談だよ。あたしゃ魔力酔いが酷くてね。気分が悪くなるから覚えるときも大変だったよ。それを誰かに教えるためにやるなんてお断りだよ」


 魔力酔い!?そういうのもあるのか。魔力共有すると気分が悪くなるという。治癒魔法をかけられるのも苦手だそうだ。息子さんには自分の体調に影響が出ない範囲でゆっくり教えていったらしい。

 魔力酔いの人の魔力の流れも見てみたいな。目で見て分かる様なら何か対策とかもできるかもしれない。


「今日はありがとうございました」

「おや、もういいのかい?」

「今すぐどうこうできるわけじゃなさそうなので、ゆっくり考えます」

「若いのに焦らないのは偉いもんだがゆっくりしすぎるとあっという間に爺になっちまうよ」

「そうなる前にまた相談にきます」

「間違えたって構やしないんだから若いうちに無茶しとくんだよ」


 キャリーさんにもお礼を言って住居側の出入り口から失礼する。キャリーさんはいろんな話もしてくれるし付き合いは短いのにとても良くしてもらってると思うが、時々品定めをするような目で見られている気がして油断できない感じがする。まぁシルフもお世話になっているみたいだし、俺も迷惑をかけないように気を付けよう。


 教会に戻ってシルフに魔力共有をする。今日はやらないと思っていたようで「いいんですか!?」と喜んでいた。可愛いやつめ。

 魔力酔いみたいなのは無いか聞いてみたがそういうのは無いそうなので今後もゆっくり魔法のトレーニングを続けていこう。



読んでいただきありがとうございます。

PVも増えていてとても喜んでいます。


もっとたくさんの人に読んで頂けたらと思っています。

ブックマーク・いいね・☆評価・感想などで力を貸していただけたらと思います。

よろしくお願いします。

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